転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第188話 闇属性魔導士、ダンジョンに挑む (2)

ダンジョン、それはこの世界特有の摩訶不思議な空間。

湧き出る多くの魔物、魔物を倒す事で手に入れる事の出来る魔石と呼ばれる鉱物資源、そしてドロップアイテムと呼ばれる数々の品々。

時には宝箱と呼ばれるものが出現し、ダンジョン産の不思議アイテムを齎してくれる。それが一体どう言った原理で起きているのかは一切不明ではあるものの、そこは欲望と好奇心を刺激し人々を惹き付けてやまない謎空間。

そんなダンジョンには今日もまた多くの冒険者や探索者と呼ばれる人々が集まり、己の目的の為その薄暗い洞窟へと歩を進める。

 

「という訳で到着しましたここが、グロリア辺境伯領都グルセリアにある通称ゴブリンダンジョンと呼ばれる謎の洞窟です。

まぁ俺も今日で三回目なんでそれほど詳しいって訳じゃないんですけどね、初めて来たのは授けの儀の後でケイトが学園入学の案内を聞きに行ってる時に観光で来ただけだし、昨日はただの下見だしね。

これ迄は授けの儀の後に職業を授かって冒険者登録をした見習いや、旅立ちの儀の後に正式冒険者になった新人が腕試しに訪れるだけの場所だったんですけどね、昨日も言ったけど新階層にオークが出る様になったみたいで、冒険者にとってのいい稼ぎ場所になったみたいなんですよね」

 

そう言い俺が指差す場所、そこはグルセリアの街壁内に広がる森の中にひっそりと佇む謎の洞窟。授けの儀の無い時期は領兵が暇そうに見張り番をするだけだったそこには多くの銀級冒険者が集い、装備をチェックしてから洞窟内に入って行く姿が見られるのであった。

 

「授けの儀の時期はそれこそお祭り騒ぎみたいに人がいるんですけどね、それに比べればましなんですが、結構人がいますよね。

俺ってダンジョン都市の事は父親から聞いただけなんですけど、そう言った所もこんな感じなんですかね?」

 

俺は顔を上げそうした事に詳しそうなザルバさんに聞いてみた。

 

「あぁ、私も若いころ何度か行った事があるが、ダンジョン都市はそもそもダンジョンを中心に発展して行った街だから、その周辺には冒険者を相手にした多くの商店や食堂、宿屋なんかがひしめき合っているな。

このゴブリンダンジョンがどう言った感じに改変されたのかが分からないから何とも言えないが、取れる魔石の量やドロップアイテム次第ではこの森を切り開いて新たな街が作られる可能性があるんじゃないか?」

 

ザルバさんはそう言い腕組みをしながら周囲の様子を見回す。そしてダンジョン前に設置されている一際大きなテントを指差し、俺に問い掛けて来た。

 

「なぁケビン君、昨日下見をしに来たと言っていたが、あのダンジョン入り口前に設置されているテントの事について何か知っているかい?

私がこれ迄訪れた事のあるダンジョン都市やダンジョンには、ああ言ったテントを設置してあるところはなかったんだが」

 

「あぁ、あれですか。何でもこのダンジョン、瀕死の状態になると強制的にダンジョンの外に排出されちゃうらしいですよ。ただその代わりと言っては何ですが、装備一式全部剥ぎ取られちゃうみたいです。

以前はそんな事はなく普通のダンジョンだったらしいんですけどね、昨年の冬の授けの儀の後多くの新人冒険者がこのダンジョンに挑んだ際に初めてその現象が確認されたらしいですよ?

大勢の人が賑わうダンジョン入り口脇に行き成り半裸の死にそうな男女が現れたって言うんで、結構な騒ぎになったらしいです。

で、それがゴブリンダンジョンの二階層のボス、ホブゴブリンに挑んでいたパーティーだったらしくて、その一件以来ホブゴブリンに挑んでの死亡者が激減した代わりに瀕死の負傷者が現れる様になったって言うんであのテントが設置される様になったらしいですよ?

新しい階層が現れたのはそれから一月くらい経ってからだったらしくって、食べ物屋台を出してるおじさん曰くダンジョンが成長する予兆だったんじゃないかって話でした」

 

「ダンジョンが冒険者を排出する?そんな事が本当にあるのか?

私もそこまでダンジョンについて詳しくないけど、そんな話初めて聞いたよ。

やっぱりダンジョンと言う場所はよく分からない場所なんだな」

そう言い心底不思議そうな顔をするザルバさん。

 

「そうですよね、その存在自体が不思議ですもんね。って言うかそんな不思議なダンジョンが学園の敷地内にあるって言う事自体不思議なんですけどね」

俺はザルバさんから話を聞いてからずっと疑問に思っていた事を聞いてみた。

 

「あぁ、その事か。俺も学生の頃はダンジョンのある地域に学園を作ったりダンジョンのある場所を有力貴族が占有するからなんだと思っていたんだが、学園のダンジョンは他の天然ダンジョンとは発生条件が異なるらしい。

これは一般には知らされていない事なんだが、ダンジョンと言うものが発生するにはある一定の条件があるらしいんだ。それは土地の魔力濃度に起因すると言われている。

ダンジョン都市と呼ばれる場所はこの土地の魔力濃度が濃くその淀みに何らかの切っ掛けがあってダンジョンが生まれたのではないかと言われている。

そうした場所のダンジョンは得てして大型のものが多く、その階層も二十層や三十層を越えるものもざらに存在しているんだ。

対して都市部に近い場所に存在するダンジョンは小型のものが多い。その階層も多くて六階層ほど。これは都市部の人が発した魔力が淀みを作りそれが原因で発生したものなのではないかと言われている。

 

こうした考えが生まれた背景に、フィールド型ダンジョンと呼ばれる魔物の発生地帯の事があげられる。これは戦争や犯罪などで多くの人間が亡くなった場所に発生するダンジョンの事で、人が亡くなった時に発した多くの魔力が淀みとなり生まれたものなんだ。こうしたフィールド型ダンジョンはアンデッド系の魔物が生まれ易いと言われているんだよ。

有名な所だと過去に魔法の勇者様のパーティーが挑まれたと言われている暗黒魔導師の呪われた森かな?

 

そうしたダンジョン現象について研究した国があってね、リフテリア魔法王国、オーランド王国の北に位置する魔法大国だよ。多くの魔道具や魔法杖、魔法に関するあらゆる研究の最先端が揃っていると呼ばれる魔法先進国家だね。

その国で二百年ほど前に発明されたのが人工ダンジョンなんだよ。

その発想はケビン君の生活魔法<ブロック>によるレンガ作りのやり方に近いかな?

要は人の力でダンジョンの基礎を作ってやりそこにダンジョン発生の要件を入れ込み、尚且つその核となるものを用意すればダンジョンに育つのではないか?と言うものなんだ。

必要なのは多少入り組んだ地下施設と周辺の魔力を集めてその地下施設に送り込む魔道具装置、そして核となるダンジョンコアの欠片。

詳しい事までは分からないけど、大体十年から二十年で都市周辺に自然発生する低層の小型ダンジョンほどに成長するらしい。

王都の通称中央学園にあるダンジョンは元々その場所にあった小型ダンジョンに魔力を集めて送り込む魔道具装置を取り付けたモノらしくてね、確か十階層にまで成長していたはずだよ。

まぁ私が通っていたのは騎士学園の方なんで詳しい事までは分からないんだけどね」

 

人工ダンジョンですと!?えっと、真珠の養殖?話だけを聞くと在りし日の記憶にあるビーカーで作る人工真珠の話を思い出すんですけど?

それよりもカキの養殖の方が近いのかな?もしかしたらダンジョンコアの欠片ってダンジョンの卵みたいな役割があるのかも。

ダンジョンって本気で謎が多いんだよな~。

 

「ん、おしゃべりはその辺にして早く行く。ダンジョンが私を待っている」

 

俺がザルバさんとダンジョンの話題で盛り上がっていると、ケイトから催促を喰らってしまいました。そうでしたね、今日はケイトさんの魔法の練習をしに来たんですもんね。

俺とザルバさんはケイトに謝罪し、彼女に付いて行く形でダンジョン内に足を踏み入れるのでした。

 

 

「じゃあまずは的当てからね。魔法の杖を使った場合どれくらいの魔力増幅があるのか分からないから、大森林産素材の長杖と短杖、魔の森産素材の長杖と短杖をそれぞれ試してみようか」

 

俺たちは昨日ダンマスゴブリンに教わった二階層の端の空間にやって来ていた。

ダンジョン前に集まっていた冒険者たちの目的はあくまでオーク、ダンジョンの地図もすでに出来上がっており彼らは真っ直ぐ三階層四階層に向かう為、一階層二階層は以前訪れた新人冒険者祭りの時と違って人気も無く閑散としたものであった。

 

「“大いなる神よ、我が手に集いて眼前の小虫を指先で潰したまえ、ダークボール”」

“ビューーーーー、バンッ”

 

「“大いなる神よ、我が手に集いて眼前の小虫を指先で潰したまえ、ダークボール”」

“ビューーーーー、バンッ”

 

「“大いなる神よ、我が手に集いて眼前の小虫を指先で潰したまえ、ダークボール”」

“ビュ~~~~~、バンッ”

 

「“大いなる神よ、我が手に集いて眼前の小虫を指先で潰したまえ、ダークボール”」

“ビュ~~~~~、バンッ”

 

う~ん、ブー太郎のログハウスあまり材木の方は勢いが良くなり過ぎだな。最弱魔法であの威力ってのはどうなんだろう。

大森林産の方は少し強くなってるって感じ?三割から四割り増しって所じゃないだろうか。

 

「ザルバさんから見てどうですかね?」

俺は隣で見ていたザルバさんに声を掛ける。ザルバさんはしばらく黙った後、考えを話してくれた。

 

「う~ん、入学したての新人という点を考えるとあまり目立たない方がいいんだろうけど、少し状況が変わって来たからな。

グロリア辺境伯様の紐付きって事になると多少の有能さは示さないといけなくなる。ケイトの場合は魔力量は普通の者よりやや高い程度と言う設定になっているって話だから玉数の縛りは継続、威力も抑えめって事だけど、優秀さの分かり易い目安はやはり威力だと思う。

そうであるのならここは敢えて大森林産の杖を選んでもいいんじゃないのかな?

あれくらいの威力であれば、グロリア辺境伯様の紐付きと言われても違和感のない申し分の無さだと思うんだが」

 

「なるほど、俺はどうしても隠そうとする思考が強いけど、敢えて見せ付けないといけない程度の威力ってモノがあるって事ですね。そう言ったあたりの機微についてはザルバさんの方が理解してると思いますんでそれで行きましょう。

でもそうなると多少は動けるところも見せた方がいいのかな?

ケイト、それじゃ大森林の長杖を使って軽く戦闘訓練でもしようか?相手はゴブリンね」

 

俺はそう言うと腰に下げた剣鉈ベルトのポーチから四角い黒い板の様なものを取り出し、指先でポチポチ触れながら操作するのだった。

 

“ガギャギャ”

 

こちらに気が付いたのか声を上げ近付いて来るゴブリン。爪を立て、顔を醜悪に歪め、ギザギザの歯を剥き出しにする姿はまさに人類の敵、恐怖の魔物そのものの姿である。

そんなゴブリンに対し、ケイトは数歩前へ踏み出し長杖を低く構える。その姿はまるでホッケーかラクロスの選手の様であった。

 

“グギャ”

“スパーン”

 

飛び掛かるゴブリンに合わせた一撃は見事ゴブリンの頭部を横凪ぎにし、数メートル先へと吹き飛ばすのであった。

 

「良いよケイト、大福との訓練が生きてるよ~。それじゃ今度はツキや切り落としも混ぜてみようか」

俺はそう言うと再び黒い板を操作し一体のゴブリンを「ちょっと待った~!」えっ、何ですかザルバさん、行き成り大きな声を出して。周辺に魔物の気配はないはずですけど。

 

「イヤイヤイヤ、えっ、何それ?って言うかケビン君、今魔物を呼び出してなかった?その黒い板を弄って。それって召喚の魔道具か何かなの?

ケビン君ってテイマーだけじゃなくって召喚士にもなっちゃったの?意味が分からないんだけど!?」

 

「イヤイヤ、俺は召喚士なんて大そうな物じゃないですよ?これは所謂ダンジョン産の魔道具って奴です。入手先は高級寝具セットと同じで秘密です。多分欲しくても手に入りませんから。

効果はダンジョン魔物の生成ですね。言う事を聞かせたりする事は出来ません。ダンジョンの外で使えるのか、どこまでの魔物を作れるのか等は不明ですね。

登録されてるのはゴブリンだけなんでゴブリンしか出せないんじゃないんですか?

一回に三体までなら出せますが、何体迄生成可能かまではちょっと。俺も少ししか実験してないんで。

これがダンジョンの外でも使えるとなったら大騒ぎですけどね、訓練に使う分には便利ですが」

 

俺はそう言いながら訓練用のゴブリンを生成、ケイトに突きの練習を指示するのでした。

 

お~い、ザルバさ~ん、帰ってこ~い。

ザルバさんは一人明後日の方向を向きながら、「ドレイク村長代理、心中お察しいたします」と呟くのでした。




本日二話目です。
いってらっしゃい。
by@aozora
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