転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第234話 村人転生者、溜まった仕事を消化する

「緑に黄色、今回は色々ありがとうございました。とても助かりました。

畑の方はあの二体が管理してくれていたんだ、それは助かったわ~。

今の時期の半月は大きいからね、草なんかすぐに伸び放題になっちゃうから。

それじゃ二体にも何かご褒美を上げないとね?

前に狩った大森林のトカゲの骨でいいの?了解。

隊長さんの所に持って行くのに解体した奴があるからそれを置いて行くね。

 

グラスウルフ隊の皆さん、今回はお世話になりました。

皆さんのお陰で無事に事態を収束させる事が出来ました。また何かありましたらよろしくお願いします。

 

隊長さん方にも本当にお世話になっちゃって、上空からの監視、凄く助かりました。人の動きは気配で何となく分かっても、あまり大勢だと何がどうなってるのか分からないもんで、隊長さん方が逐次報告してくれたお陰で事を上手く運ぶ事が出来ました。

それと報酬の方ですが、大森林のトカゲの肉と内臓ですね。女王様の所にお届けと言う事で、早速向かいましょうか。

それじゃここで解散という事で、良狼はクマ子とクマ吉に俺が礼を言っていたって伝えといて。業務報告は受けてるけど一応ね。

ブー太郎の修行はもう少し掛かるかな?秋までには店長として相応しい強さにしておくから」

 

マルセル村の片隅、ケビンの実験農場と呼ばれるそこでは、影空間から現れた多くの魔物が雇用主であるケビンの号令の下それぞれの棲み処に分かれて行った。

祭りは終わった、祭りの主役たちは未だ後片付けに奔走しているところだろうが、裏方である自分の出番は終わった。

協力してくれた多くの魔物、多くの人々には感謝の言葉しかない、それ程に大きな祭りであった。

舞台に出演していた為フィナーレの花火を見る事が出来なかった事が悔やまれるも、南門前の草原大爆発は感動ものだった。

あの爆発を背景にヒーローポーズを取りたい衝動に耐えるのがどれほど大変だったことか、青年ラクーン役での舞台出演がなければ絶対ハッチャケてたと思います。

在りし日の記憶にある岡本何某と言う芸術家は言っていた、‟芸術は、爆発だ!!”と。

西部にあるとある警察署ではパトカーの背景でドッカンドッカン爆破が起きていた。

キメポーズをしているヒーローの背景で倒された怪人が、‟グォ~~、ドカーン”って爆発していくって特撮もあったな~。

何もかも皆懐かしい。

 

俺の仮性心を大満足させてくれたランドール侯爵様、本当にありがとうございました。

ジャイアントフォレストビーの蜂蜜で出演者の皆さんの労を労ってあげてください。

 

でもバルカン帝国か~、俺の人生で関わり合いになる事なんてないと思っていたけど、何がどこでどう絡んでくるのかなんて分からないものだよな~。

在りし日の世界では、星の裏で起こった戦争の影響で入学式の制服が間に合わなくなったりくず鉄が値上がりしたりしたもんな~。

さすがにここオーランド王国でそこまでの事は起きないだろうけど、お隣のヨークシャー森林国がバルカン帝国の手に落ちるのはちょっと。

良き隣人、ヨークシャー森林国には頑張っていただきたいものです。

 

そんなこんなで忙しなく動き回っていたんですけどね、堪え性の無い方々の催促がですね。

最強生物は分かる、あれは仕方がない、天災みたいなものだ、一応準備はしてあるんでお届けするだけだし。

あなた様、何故枕元に立つ。神託を夢で受け取るって普通聖女様のお役目ですから、そりゃ勇者物語の中には‟天命を授かった”とか言って参戦する戦士もいましたよ?

でもその神託の内容が‟マスター、お代わり!!”って俺はどこぞの居酒屋の店員か?

‟はい喜んで~!!”とでも言えばいいのか?

神託スキルもないのにどうやったのって聞いたら称号と神具のコンボですって。

例の授けの儀で招かれないのにお伺いしちゃった奴の応用ですって。

嫌だこの御方、変な所で優秀。

お招きされちゃうバグは本部長様が女神様に上申なさって直ぐにパッチが入ったらしいんだけど、称号による誤認はシステムの根幹にかかわる大きな問題だったらしく、これまで問題なく運用出来ていたって事でそのままになったらしいです。

大規模なシステム変更は大変だからな~、それこそ‟ノアの箱舟やっちゃう?”ってくらいやらないと上手く行かないだろうし。

まぁそれでもあちらも忙しいみたいでしょっちゅう掛けてくる訳じゃないんでいいんですが。

ですんでついでとばかりにお茶の木の苗の事を相談したら苗は無理だけどお茶の実だったら大丈夫とのお返事をいただきました。

苗の輸入は検閲がうるさいけどお茶の実は絞ってオイルを取る事で美容用品として流通しているとか。観葉植物としても楽しまれているらしいです。

だったらその苗をと思わなくもないけど、個人輸出でも下界にあちらで育てた植物を降ろす事は禁止されているとか。

過去にリンゴの苗木を植えて大騒動に発展した事が原因らしいです。

種だけなら影響はほぼないとの事、あちら原産の植物ではないと言う事もポイントみたいです。

 

「それじゃ行きますか。隊長さん方はどうします?」

俺の言葉にパイルダーオンする隊長さんと背中に引っ付き虫する隊員さん方。

・・・飛んで行く気ゼロですね、了解です。

いざ行かん、女王様との謁見に。

俺は魔力を身体の中に引っ込めると、全体の気配を薄くして上空高く飛び上がるのでした。

気配を完全に消す?そんなのは素人がやる事。その場にぽっかりと異質な空間が出来て逆に不自然、玄人は自然に溶け込み自然と一体になる。

路傍の石に至る道は険しいのだよ、ワハハハハハ。

俺は自分のテンションを無理やり引き上げ、大森林中層部に向かい駆け抜けるのでした。

 

―――――――――

 

喧騒漂うエルセルの街、街全体の粛正が行われたのは半年前、あれから街の治安は大々的に改善された。

街を守る衛兵の規律は厳しくなり、住民に対し高圧的な態度で接する事はなくなった。

冒険者ギルドに屯していた破落戸の様な者達は姿を消し、人数は少なくなったものの真剣に冒険者を志す若者が多くみられる様になった。

裏路地と呼ばれる場所の怪しい酒場は取り壊され、今では住民が普通に買い物の出来る商店街へと変貌した。

住民の憩いの場としての酒場などは問題の無い店だけが残され、男達の娯楽の場としての花街は、新しい監察官の指導の下ミルガルや領都から誘致された別の娼館が運営するに至った。

多くの商会が姿を消し、街全体の流れは縮小されてしまったものの、これは致し方の無い事。エルセルは新たな体制の下、地方衛星都市として再生を果たしたのだから。

 

そんなエルセルの一角、住民たちの信仰の拠り所である大聖堂。この場所もまた腐敗と不正、犯罪の温床であった。

詐欺、犯罪者の隠れ蓑、人身売買。到底教会とは思えないような犯罪が、平然とまかり通っていた、そんな場所であった。

 

「こんにちはシスターケティー、エルセルの街もすっかり落ち着いた様ですね」

声を掛けた相手、それはかつてミルガルの街でお会いし、ここエルセルの教会に主任として派遣されたシスターケティーであった。

 

「こんにちはケビン君。本日はどう言ったご用件ですか?

シスターアマンダは監督官様に教会運営のご報告に向かっていて留守にされているの、ご用件は私が伺うわ」

新しい監督官様はマルセル村でお会いした事のあるストール・ポイゾン様だったか。田舎でのんびりしたかったと嘆いていた御方、有能な方だから今後のエルセルの街は安泰だろう。

そのうちドレイク・アルバート男爵様に上申してミランダ夫人特製の胃薬を送って貰おう。お身体に気を付けて頑張っていただかねば。

 

「いえ、今日は女神様にお祈りに。シスターケティーも御存じだと思いますが、我が村の村長代理ドレイク・ブラウン様がアルバート男爵家の爵位をお継ぎになられて、これまでの功績を持ってマルセル村を所領地とするお貴族様になられまして。

我が村からも今回のグロリア辺境伯様の出兵に騎兵団の一員として参加しているんですよ。

その中にうちの父も入っているものですから、女神様に父の無事をお願いしようかと。

それとこちら森で採れた蜂蜜です。例の奴ですのでくれぐれもご内密に」

 

「そうですか、それはご心配でしょう。マルセル村の皆様のご無事を私共も祈らせて頂きます。それと森の恵みをありがとうございます。シスターアマンダを始め教会関係者で頂かせてもらいます。

それと例のカクテル、最高でした。シスターアマンダがケビン君に礼を伝えて欲しいと仰っていましたよ」

そう言いニコリと微笑まれるシスターケティー、円滑な人間関係には飲みにケーションも大切です。

俺は“シスターアマンダによろしくお伝えください”と伝言を頼むと、女神様像の元に祈りを捧げる為に向かうのでした。

 

‟あなた様、お待たせいたしました。酒屋のケビンで~す”

‟ケビン様、早く礼拝堂を作ってよ、日々の残業の唯一の喜びがあのカクテルなんだから~!!”

 

う~わ、あなた様の過剰労働、未だ続いている様です。

 

‟え~っとその件はもうしばらく掛かりそうですが、近いうちに畑の小屋に祭壇をこさえますんで、それまでお待ちいただければと。

礼拝堂建設の許可自体はドレイク村長に貰ってるんですけどね、あれから色々ありまして、ドレイク村長が男爵様になっちゃったもので村の中をやたらに弄れないと言いますか、それなりの都市計画が必要と言いますか。

ド辺境なんで行き成り住民が増える事も無いでしょうけど、今までみたいに好き勝手とはいかないものでして。

まぁ完成予定の礼拝堂は村人の憩いの場にする予定ですからご期待ください。

それと例のお茶の実の件ですが”

 

‟あぁ、あれね。本部長様が譲ってくださったわよ?でもケビン君、**#@様に対して仇名を付けるだなんて大胆と言うか怖いもの知らずと言うか。

ご本人が気に入っておられるようだから良いんだけど、最初**#@様からケビン君に対しては本部長と伝えてくださいって言われた時は目が点になったわよ。

それとこの茶の実は本部長様の一押しの茶園から譲って貰ったものをご自身で増やされた物なんですって、大事にしなさいよね”

 

そう言い腕輪収納の中に送られた籠に入ったお茶の実。

 

‟・・・あの、確かそちらの世界の植物はまずいんじゃなかったのでしょうか?”

‟う~ん、大丈夫なんじゃない?元々扶桑国の植物だし。それと本部長様が丈夫に育つ様に加護を与えたとか言ってたから、ちゃんと全部芽吹くはずよ。

**#@様は植物の環境管理がご専門だから”

 

・・・これって普通にヤバい奴じゃね?

よし、村に帰ったら速攻茶畑を作っちゃおう。ドレイク村長が帰って来た頃には既成事実の出来上がり、蒼雲さんの事もなし崩し的にって事で。

 

‟あなた様、どうもありがとうございました。こちら今回の分のカクテルでございます。こちらに伺う前にお届けした最強生物にも大変好評な品ですので、本部長様はじめ皆様方で是非ご笑納ください。

それとあなた様には別にこちらを。魔境で仕留めた亀の肝焼きです。

村の大人が精力剤が欲しいって言うんで作ってみたんですけど、ウチの魔物に食べさせたら元気が出過ぎちゃいまして。これって普通の人間には危険かなと。

あなた様ほどの高位存在でしたら疲労回復効果程度でしょうが、晩酌のお供としてお楽しみいただければと思いまして”

 

“コトッ、コトッ、コトッ、カタンッ”

女神像の前に並べられた甕と肝焼きののった大皿、その悉くが置いた瞬間に姿を消す。

どれだけ楽しみにしていたんだ、高位存在。

 

“いや~、お通しですか、マスター。何かすみませんね~。

では早速一口。&@%¥♭!!

えっ、これって、エクアドルラじゃない!亡くなる寸前の老人も走り出すって言われてる高級素材、こっちでも高額取引されてるのよ?

狩猟頭数制限が掛けられてるのよ?よく手に入ったわね。って言うか本当に良いの?下界でも王侯貴族が(こぞ)って欲しがる逸品よ?”

マジかよ、絶対世に出せんわ。

 

“あっ、はい。貰ってやって下さい”

あなた様に言われて改めて気付く、魔境素材、駄目、絶対。

収納の腕輪の中で秘かに眠る魔境の素材たちに、“よし、こいつらは大福たちのおやつにしよう”と隠蔽を決意するケビンなのでありました。




本日二話目です。
いってらっしゃい。
by@aozora
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