転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第347話 村人転生者、高位存在にご説明申し上げる

そこは巨大な樹木が佇む場所であった。

周囲を巨樹に囲まれた深い深い森の奥、まるでその場だけ切り開かれたかの様なぽっかりと空いた草原に聳え立つ一本の巨木。

周囲の物とは比べ物にならない太く巨大な樹木は、その身を風に任せざわざわと揺らめく。

 

そんなある種神聖な気配すら漂う巨樹の下、地面に絨毯を敷きテーブルセットを並べる小柄な青年が一人。

 

「メイプリー様、御神木様、紬、お茶の準備が出来ました。お茶請けにはドラゴンの塒産ヒカリゴケの光属性魔力マシマシマシマシウォーター茹でをご用意いたしました」

 

青年の言葉に急ぎ席に座る白髪の美女、その後ろから悠然とやって来る優し気な笑みを浮かべた女神と偉丈夫の男性。

 

「さて、今回のゴタゴタはこれでひとまず終了です。まだ人間の間ではごちゃごちゃあるんでしょうが、大まかな部分はお終い。

皆様、御協力ありがとうございました」

そう言い深々と頭を下げる青年に、女神は首を横に振り言葉を掛ける。

 

“いえ、世話になったのは私の方です。

幾ら人の営みには不干渉とは言え、国の存亡に関わる事態に手をこまねいていたのは私の方。ただ一方的な暴力で来る分には精霊たちに命じて対処すればいいのですが、今回の様な搦め手にはどう対処してよいのか分からなかった。

正直ビーンが来てくれなければどうなっていた事か。本当に感謝しています、ありがとう”

 

そう言い頭を下げる女神に「いえいえ、お気になさらずに」と軽く返す青年。

 

「まぁ感謝の言葉はいただきます。それでちょっと色々やり過ぎた感があって、ご報告しなければいけない方々がですね~。

メイプリー様、こちらにお呼びしたい方々がおられるんですが、よろしいですかね?」

青年の問い掛けに頷きで応える女神。

 

「では早速、<召喚:あなた様:本部長様>」

地面が光る。草原に出現する巨大な魔法陣、それは神々しい迄の光を放ち周囲を清浄な気配に染め上げる。

その中心からゆっくりと姿を現す光り輝く二柱の高位存在、大きな翼を開き、その者達は地上世界に顕現する。

 

「ご紹介いたします。天界の御方々、中級天使のあなた様と上級天使の本部長様です」

想定を遥かに超えた高位存在の出現に、その場に佇む女神、もとい聖霊樹メイプリーは、急ぎ膝を突き頭を垂れるのであった。

 

「なぁケビンよ、これって我も跪いた方がよいのか?

我はそう言った礼儀作法に疎くてな、こうした場合どう対処をしてよいモノやらよく分からんのだが」

「別にいいんじゃないんですか?相手がそれを望んでいる訳でもないですし。

って言うか紬さん、せめて登場シーンくらいちゃんと見ようか?

今の結構な見せ場だったのよ?背中の翼をお広げになって、いかにも天使様の登場ですと言った演出までしてくださったのよ?

何で紬はそうも食欲に忠実なのかな?一応精霊女王っていう大層な種族なんだから、もう少し頑張ってみない?

だ~、分かったからそんな上目使いでこっちを見ない。

これ食べていいですか?って切なそうな顔で聞かないの。君は何処の欠食児童だ。

こっちは適当にやってるから先に食べてなさい。お代わりも出すから他の人の分を恨めしそうに見るんじゃないですよ?」

“キュキュキュイ~♪”

 

・・・ケビンの従業員たちは何処までも自由なのであった。

 

 

「ようこそお越しくださいました、天上のいと尊き御方様方。

このケビン、感激で胸が一杯でございます。

はい、恒例の挨拶はこの辺で。

お呼び立てしたのは他でもありません。そちらでもどうせ大騒ぎになってるかと思いましてね?原因といたしましては呼び出される前に事情説明をと思いまして」

そう言い深々と礼をする俺氏、報連相は大事ですからね。

基本連絡と相談が抜けるんですが。

 

「はい、とても良い心掛けです。端的に言って天界は大騒ぎですね。折角修正したステータスシステムがまたもやシステムエラーを起こすぐらいには盛り上がりを見せています。

ですのでケビン君のステータス表示が修正されるのは今しばらくお待ちください」

そう言いニッコリ微笑まれる本部長様、でも目が全然笑ってないんすけど、超恐い。

 

「えっとはい、了解いたしました。

それで今回の件についてご説明申し上げる前に一つ」

俺はそこで言葉を切ると懐から一枚の鑑定書とポーション瓶を取り出し本部長様に差し出しました。

 

「これは今回の呪病の解術に使用した光属性魔力マシマシ蜂蜜ウォーター(キラービーバージョン)を鑑定したものです。

ご覧になっていただければ分かると思うんですけど、これって不味くないですか?」

 

俺の言葉に鑑定書に目を向けるあなた様と本部長様、そしてお二人して頭を抱えられておられます。

 

「一応この話は例の儀式の前日にパトリシアお嬢様より聞いていたので、儀式にかこつけて王都リーフェリア内の物については全て回収しておきましたが、鑑定結果の用紙については何とも。

今回配ったのは王都と国境の街ベイランド、そちらについては手の出しようがなかったんでどうなってるのかまでは」

 

「分かりました、少々お待ちください。

なるほど、そう言う事ですか。なぜこのような事になったのかが分かりました。

基本アイテムというものはその製作者が命名しそれが観測されて初めて鑑定結果として表示されます。またそうした事がない場合システムにより状況や状態から命名及び詳細が明記されます。

これも鑑定を行う者の傾向により多少表記に違いがあるらしく、食材を中心に鑑定を行う者の場合そのアイテムの味や可食部位についての記載が表示されると言った事が知られています。

そして今回のアイテムの場合製作者であるケビン君は“光属性魔力マシマシウォーター”として認識していますから記載としてはそうなるはずでした。ですがならなかった。

その理由としては、以前ミルガルの教会でケビン君が$$%&との邂逅を果たした際に示した光属性魔力水が聖水と同じ効果を発揮すると言う現象に起因します。

 

この事実が広く知れ渡ると地上世界に要らぬ混乱が生じるという事は説明されたかと思います。

そこで$$%&はシステムに光属性魔力ウォーターの記述不可申請を出していたんです。これによりケビン君の作り出したアイテムから製法を類推出来なくするようにした、我々が出来る僅かばかりの抵抗と言った所でしょうか。

 

ですがそこに問題が生じた、“光属性魔力マシマシウォーター”の名前が使えないとなると別の名前が必要です。カクテル名としてはケビン君が付けられた“蜂蜜ウォーター天使の微笑み”と言うものがありますが、こちらはカクテル名として観測されてしまった様ですね。

詳細は“悩めるあなたの憂いを晴らす最高の一杯”となっています。こちらは蜂蜜の聖水割りでも同様の名前で表記されるようです。

そして今回は調合薬の一つとして使用された。

システムとしては名前を付けなければならず、過去の観測データから詳細を作り出さなければならない。

私たち高位存在の存在値は地上の者よりも遥かに大きい、$$%&がケビン君に対して光属性魔力マシマシ蜂蜜カクテルを要求し続けた事が影響してしまった様ですね」

 

・・・なんじゃそりゃ~!!

思わず頭を抱える俺氏、これって俺のせい?違うよね?

 

「それでこの鑑定内容の変更は」

「上に帰れば何とか。ただ少々時間が。先ほども言いましたが現在システムの調整を行っていますので」

 

本部長様のお言葉に思わず空を見上げる俺氏、零れるため息が中空に消えて行きます。

 

「本部長様、少々試したい事があるのですがよろしいでしょうか?えっとメイプリー様と御神木様、あなた様に紬も協力してくれる?」

俺の言葉に訝しむも了承の意を示して下さる皆様方。

ここは今までの研鑽が試されるとき、俺は自身の<仮性心>に呼び掛け、己を別の存在へと変えて行く。

 

“バサッ”

収納の腕輪から取り出した蜂蜜色のローブを羽織り、白い仮面を付ける。その身から漂う神々しい気配に、その場の天上人が驚きに目を見開く。

 

「“いと尊き天上の御方様方、お初にお目に掛かります。私の名はビーン、ビーン・メイプル”」

それは魂に直接語り掛ける天上の調べ、ビーンはそのまま話を続ける。

 

“コトッ”

「“御方様方にご覧いただきたい物はこちらになります。

これは私が調合せし呪病回復薬、<天使の微笑み>。

我々地上の者たちを見守って下さる天使様が微笑み掛けて下さる様に、との思いを込めて作製した品。

精霊使いビーン・メイプル渾身の作です。どうぞ手に取り、そして味わっていただきたい”」

ビーンはそれぞれの前にポーション瓶を取り出し並べて行く。

その場の者たちはそのポーション瓶を手に取りしげしげと眺めた後クイッと口にする。

 

「うむ、これは良い味わいだ。我には蜂蜜の味というものはよく分からないが、身体中に活力が漲っていく」

“そうですね、これは私も“美味しい”と感じる事が出来ます。

聖茶とは違った味わいです”

 

「そうですね、これは美味しい。仕事の後にいただきたい一本ですね」

“う~、私はカクテルの方がいいです。これはこれで美味しいんですけど、あちらの味を思い出してしまって”

 

それぞれが感想を言い全てを飲み干す。

“キュキュキュ~”

紬、お代わりはもう少し待ちなさい、今大事な所だから。

 

「“ありがとうございます。皆様にお喜びいただけたこと、ビーン・メイプル、生涯の誉れでございます。

では皆様方、この呪病回復薬<天使の微笑み>をご承認くださいますでしょうか?”」

 

「うむ、承認しよう」

“私も承認いたします、これは素晴らしい”

「そうですね、呪病回復薬<天使の微笑み>、素晴らしいお薬です」

“承認でもなんでもしますんで、カクテルの補充を~”

“キュキュキュ~”

 

「“皆様の御承認、ビーン・メイプル、心より感謝いたします”」

そう言い深々と頭を下げる精霊使いビーン・メイプル。

 

「はい、お疲れ様でした。本部長様、このポーション瓶を鑑定してみて貰えます?上手く行ってればおもしろい結果が見られると思いますんで」

俺はそう言うと収納の腕輪から追加のポーション瓶を幾つか取り出します。

ついでにあなた様の前には光属性魔力マシマシマシマシウォーターカクテル(キラービーバージョン)の入った甕を進呈。柄杓とコップを上げますんで手酌でどうぞ。

紬はこっちのポーション瓶にしなさいね、酔っぱらったら大変だから。

 

「はっ?これは一体どう言う事ですか?<管理者権限:鑑定詳細表示>」

 

“ブオンッ”

中空に浮かび上がる鑑定結果表示、そこに示された結果に俺はニヤリと笑う。

 

<鑑定>

名前:天使の微笑み

詳細:地上世界に生きる者たちを見守る天使が微笑み掛けてくれるように。人々の願いが奇跡を引き寄せる。身体に巣食う闇属性魔力を追い出し、呪いからの解放、魔力の回復、体力の回復効果がみられる。

製作者:精霊使いビーン・メイプル

 

「ケビン君、これは一体どう言う事なんですか?先ほど見せていただいた鑑定書と内容が違っていますが」

「あぁ、これは<鑑定>というスキルの性質ですね。

俺は以前から<鑑定>はどう言った物であるのか不思議でならなかったんです。自身も知らない本当の名前が判明したり、かと思えば結婚して家名が変化したり。<鑑定>の結果って、結構曖昧なんじゃないかって。

それでマルセル村の村人を使って実験したんですよ、大勢の村人の前で結婚を発表して貰って今まで偽名としていたものをこれからは本名として生きて行くと宣言して貰う。

村人たちにはその事を祝福して貰う。

するとどうなるのか、宣言した偽名がちゃんと本名として登録されるんです。

この実験で“鑑定結果に反映するには本人と周囲がその名前を真実だと承認する事が必要である”って事が分かったんです。

 

で今回やった事は製作者である俺が自身を精霊使いビーン・メイプルと承認し、その制作物を“天使の微笑み”であると宣言した。

要するに仕事上の名前と作った物の命名です。

そしてそれを皆さんに確認して貰い承認して貰った。

先程本部長様も仰っていたじゃないですか、“私たち高位存在の存在値は地上の者よりも遥かに大きい”って、つまり地上人よりも遥かに高位存在である皆さんが揃って承認した物であればシステムも認めざるを得ない。

いや~、上手く行って良かった良かった」

 

システムの穴を突く様なケビンの所業。

天界の天上人$$%&と**#@はこの悪魔の様な思考の地上人に戦慄しつつ、“これどうしよう”と再び頭を抱えるのでした。




本日一話目です。
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