転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第380話 村人転生者、従業員人事を行う (4)

“フゥ~”

テーブル脇の椅子に腰を下ろし、大きく息を吐く女性。

変則的であったとは言え上司に報告を行う事で責任の置き所を変える事が出来たのは事実、後は調査をし、その内容を報告書にまとめて提出するだけ。

やる事は普段の業務と何ら変わらないと自分に言い聞かせ、テーブルの冷めた聖茶をクイッと飲み干す。

 

“時は有限です、どんどん見て行きましょう。

黒鴉は後にします、もっと衝撃の少なそうな子から行きましょう”

 

「あっ、それなら熊親子なんか如何です?見た目からしても可愛らしいですし」

青年ケビンの提案に$$%&は‟そうね、そうしましょう”と答えると、金色の毛並みを持つ可愛らしい熊たちの下に向かうのだった。

 

“<管理者権限、鑑定、モニター表示>”

 

<鑑定>

名前:クマ子

年齢:七歳

種族:ゴールデンハニーベア

スキル

金剛無双 剛体柔体 ハニーハント 魔力操作 魔力感知 魔力隠蔽 無音行動 気配遮断

称号

森の蜂蜜屋店員 進化せし者

 

 

名前:クマ吉

年齢:二歳

種族:ゴールデンハニーベア

スキル

金剛無双 剛体柔体 ハニーハント 魔力操作 魔力感知 魔力隠蔽 無音行動 気配遮断

称号

森の蜂蜜屋店員 進化せし者

 

“うん、普通ね。ゴールデンハニーベアは珍しくはあるけどいない訳じゃないの。ベアー種は割と蜂蜜好きなのよ、それが高じると種族変化が起きるみたい。でもその見た目に反してワイルドベアの何倍も強いわよ?

<金剛無双>と<剛体柔体>は共に身体強化系スキル、<ハニーハント>は蜂蜜を探す事に特化した探索スキルね。

<魔力操作>、<魔力感知>、<魔力隠蔽>、<無音行動>、<気配遮断>。

ケビン、こんな可愛いクマさんに何を教えてるのよ、暗殺者にでもするつもりなの?”

 

$$%&の言葉に「いやだって、大森林で生き残るには必要な技術ですから」と答える青年ケビン。$$%&はケビンにジト目を向けるも、“まぁ、それもそうね”と次の進化魔物の<鑑定>に手を付ける。

 

<鑑定>

名前:団子

年齢:四歳

種族:兎仙人

スキル

森羅万象 身体支配 空間支配 魔力操作 魔力感知

魔法適性

称号

可愛いの伝道師 理不尽の友 頂に至りし者 進化せし者

 

“・・・よし、頑張れ私。初めて見る種族ね、仙人と呼ばれる人たちがエイジアン大陸の東方地域にいるって話は聞いた事があるけど、魔物の種族としては初じゃないかしら。それと森羅万象も初めて見るスキルね。

<鑑定:兎仙人:森羅万象>”

 

種族詳細

<兎仙人>

自然と共にあり、自然と一体化した者が至りし境地。自然を理解し自然を操る事が出来る。スキル<森羅万象>を獲得せし者。

 

スキル詳細

<森羅万象>

この世の事象を操る。天候を操り、大地に干渉し、動植物の成長を促す。

 

「・・・団子、いや、団子先生!!俺の身長を、俺の成長をどうにか出来ませんか!?」

“キュキュッ、キュイッキュ”

 

突然土下座し懇願するケビンに対し、困った様な顔をして首を横に振る団子。

「そんな、そこを何とか!」

縋りつくケビンに$$%&は呆れ顔になり言葉を掛ける。

 

“ケビン、あなたね。そこの団子とか言うホーンラビット、今は兎仙人って言った方がいいのかしら?天候を操るって、物凄いスキルの持ち主なのよ?

そんな相手に自身の身長を伸ばしてくれって・・・。

しかも縋りつくって、一体団子になんて言われたのよ?”

 

「・・・存在値が大き過ぎて干渉しきれないって言われちゃいました。後で骨が丈夫になるホーンラビットの角を使った丸薬を作るからそれで勘弁してくれって。

くっ、鑑定め。変に期待させるような説明文を載せやがって!!」

落ち込みながら心底悔しがるケビンの様子に、スキル<森羅万象>に(おのの)いていた自分が馬鹿馬鹿しくなる$$%&。

 

“まぁ、言うほど背も小さくないし大丈夫よ。それに小回りが利いた方が何かと便利な事も多いし。

愛されキャラって事で・・・諦めて?”

 

“グホッ!!”

()りげにとどめを差す$$%&なのでありました。

 

“それで次はそちらのオークね。・・・何度見てもオークに見えないわ。オークの美的感覚は分からないけど、人族的には格好いい部類なんじゃないかしら?私達もその辺は少しなら理解出来るし。

あなた、人里に降りる時は気を付けなさいね?”

 

“ウゲッ、マジっすか。この後ケビンさんと一緒に紬の所に行こうと思ってたのにな~。ケビンさん、俺が困ってると隣でニヤニヤして助けてくれそうにないからな~”

 

“ブフォ、はぁ~!?あなた念話が出来るの?

えっ、あなたって本当にオークなの?思考もはっきりとしてるし、理性的って言うか知性的?意味解らない。

取り敢えず<鑑定>するわね”

 

<鑑定>

名前:ブー太郎

年齢:七歳

種族:ハイオークヒーロー

スキル

剣聖 魔力支配 身体支配 農耕 不屈の魂 聖剣召喚

魔法適性

無し

称号

理不尽に見出されし者 森の蜂蜜屋店長 壁を越えし者 オークの勇者

 

「「「はぁ!?イヤイヤイヤ、はぁ!?」」」

中空に大きく表示されたステータス画面に、目を見開く三者。

 

「ブー太郎、お前勇者だって。魔王討伐でも行く?暗黒大陸にいるらしいよ?」

“ブゴッ、フゴブヒフゴ!?”

余りの事態に念話を忘れるブー太郎。だが言いたい事はそのあからさまに嫌そうな顔から十分に伝わって来る。

 

“過去にゴブリンヒーローとかオークヒーローとか言う種族は観測された事があるわ。それぞれがとても強い個体ってばかりじゃなくて、周辺の同族を鼓舞し、人族に大きな被害を与えたと記録されてるの。

確か普人族に“オークの魔王”と呼ばれた個体がこのオークヒーローだったはずよ?様々な種族を従えていたって事で観測対象になってたから覚えてるわ。

でもハイオークって種族は初めてじゃないかしら。私が知る限りでは聞いた事はないわね。調べれば過去にいたかもしれないけど、ここ三千年はいないと思うわよ”

 

「・・・なぁブー太郎、この聖剣召喚ってのをやってみて貰えないかな?凄い興味あるんだけど」

そう言い目を爛々と輝かせるケビン。

聖剣、その言葉の響きは勇者病<仮性>重症患者のケビンにとって、ご褒美以外の何ものでもない。

 

“あっ、はい、分かりました。<いでよ、我が半身。聖剣召喚>”

ブー太郎がスキルを発動したと同時に、大地に幾重にも展開する魔法陣。

 

“心穏やかなる者よ、勇気ある者よ。

これは鍛冶の神たる我が福音。この世に何時現れるとも知らぬ真の勇者に向けての贈り物。

この力が世の安寧の為に使われる事を望まん”

 

人々の心に響く神の願い、魔法陣よりゆっくりと現れたのは一振りの大剣。

“我が名は聖霊剣グランゾート。勇者よ、共に戦おうぞ”

聖霊剣グランゾート、鍛冶の神が打ち上げし一振り。勇者はその煌めく聖剣を手に・・・。

 

“あっ、俺そう言うのいいんで。どっちかというと新しい鍬が欲しいかな?って言うかケビンさん、鍬作って下さいよ、鍬。なんか最近体力付いたからか前の鍬がしっくりこないんすよ。

御神木様が持ち手の柄用に枝をくれるって言うんで、それで一つ作製を“ちょっと~!!”ブヒッ!?”

 

仰々しい雰囲気の中登場した聖剣を完全スルーして鍬の作製依頼を始めるブー太郎に、待ったを掛ける“聖霊剣グランゾート”。

自己主張の為か鞘に収まっている筈の刀身が、今にも飛び出さんばかりにガチャガチャ音を鳴らす。

 

“ゆ、勇者よ、何故ですか、何故我でなく鍬を望むのですか!?

我は勇者と共に在る為に生まれし者、我は、我は・・・”

 

“い、いや、そうは言われてもおいら農民だし?森のお店屋さんの店長だし?大体世界に旅立つ気なんてサラサラないし?

本当に申し訳ないけど、他の所有者を当たっていただけると・・・”

 

若干引き気味になりながらも、自分の意見を伝えるブー太郎。それは森に生き、森に住まうものの矜持。

 

“鍛冶の神より生み出されて幾星霜、遂に私の出番が来たと思ったのに。聖霊剣グランゾートとして華々しくデビューするはずだったのに。この日の為に何度も何度も練習して来たのに・・・。

ふえ~~~~~ん”

 

「あ~あ、ブー太郎、グランゾートちゃん泣かしちゃった、グランゾートちゃん可哀想~」

“そうよね~、あそこまで求められてあれは無いわよね~。

聖剣として生み出され、ずっと待ち望んだ主が言うに事欠いて<お前はいらないから鍬が欲しい>って、ないわ~、ありえないわ~”

 

“フゴッ、ブヒフゴ!!”

ニヤニヤしながら突っ込みを入れるケビンと$$%&。

そして‟どうせ私なんて失敗作なのよ、ただよく切れるだけの剣なんて今どき需要なんかないのよ。付加価値の無い私は物置の隅で虚しく錆びて行くだけなのよ~!”とか言いながら泣き続ける“聖霊剣グランゾート”。

 

“ブホッ、フギフゴ~!!”

“助けてください、ケビンさ~ん!!”と訴えるブー太郎を尻目に、「さて、それじゃ<鑑定>の続きを始めましょうか」と$$%&に先を促すケビンなのでありました。

 

<鑑定>

名前:良狼

年齢:六歳

種族:レッサーフェンリル

スキル

咆哮 統率 魔力支配 身体支配 

魔法適性

称号

統率者 理不尽の従業員 進化せし者

 

“あぁ、この個体はフェンリルじゃなくてレッサーフェンリルだったのね。聖転進化したものだと思ってビビっちゃったじゃない。

レッサーフェンリルっていうのは聖転進化したフェンリルと他のウルフ種との間に生まれた子供の事を言うのよ。一般的にフェンリル種と言われている個体は全てこのレッサーフェンリルの事を差すのよ。

フェンリルは約七千年前に登場した聖転進化を果たしたウルフ種の個体で、ウルフ種の頂点と呼ばれているの。

人族の伝承では狩猟の神として崇められてたりしたはずよ?

その後フェンリルとして聖転進化を果たした個体はいないから、実質レッサーフェンリルがウルフ種の進化の頂点になるわね。

本当、脅かさないでよね~”

 

そう言いホッと胸を撫で下ろす$$%&。その横で「それって十分ヤバくね?」と呟いたケビンの言葉は、彼女の耳には届いていないのであろう。

 

<鑑定>

名前:太郎

年齢:六歳

種族:ナイトフェンリル

スキル

咆哮 魔力支配 身体支配 影魔法 月夜の夢

魔法適性

火 闇

称号

付き従いし者 進化せし者 夜の支配者

 

“<鑑定:ナイトフェンリル:月夜の夢>”

 

種族詳細

<ナイトフェンリル>

詳細:夜間行動に特化したフェンリル種。日中の強さはレッサーフェンリルと変わらない。夜間、特に月夜の晩はたとえ消し炭になろうとも瞬時に再生を果たす程の再生能力を示す。スキル<月夜の夢>を持ちし者。

 

スキル詳細

<月夜の夢>

それは夢幻、月夜の晩に現れる悪夢。その者を止める事叶わず。

無限再生、闇夜幻霧、金剛無双の能力を示す。

 

「・・・要は夜限定の無敵フェンリルって事ですかね」

“そうね、うん、夜限定、問題なし。後は上が判断するでしょう。

それじゃ肝心の黒鴉を見て行きましょうか”

 

種族詳細

<天魔神鳥>

詳細:天上の光と地上の闇を併せ持つ神性存在。その翼は天上世界にも届き得る超常なる者。神の声を聴き、人の声を届け得る聖魔併せ持つもの。

 

スキル詳細

<重力支配>

引かれ合うもの、反発し合うもの、その全ては彼の者の支配下に置かれる。

 

<天魔混合>

神力と魔力を併せ持つ者のみが使いうる力、混ざり合い融合する事で更なる力を示す。

 

<暴食(魔力)>

その者は全てを喰らい尽くす。但し魔力に限る。(神力も可)

 

<精霊化>

精霊、それは力の集合体。意志ある力は世界の法則を凌駕する。

 

<武具化>

様々な武器や防具に姿を変える事が出来る。変幻自在。

 

<憑依一体>

一人より二人、他者と一体となる事でその力は何倍にも大きくなる。

 

“・・・うん、これも上に報告するだけでいいでしょう。私みたいなのが一々考えても仕方がないわね”

「イヤイヤイヤ、なに思考放棄に走ってるんですか、もっと頑張りましょうよ」

 

‟そんなの無理よ、完全に魔物のそれじゃないじゃない、どこぞの国で崇められてるドラゴン種と変わらないじゃない、私お家に帰って寝る~!!”

事態について行けず全てを上司に丸投げしようとする$$%&、だがそんな彼女をケビンの一言が押し(とど)める。

 

「でも詳細が分からなかったら結局確認して来いって事になりません?

俺この鑑定の説明文を見ても何となくしか分からないんですけど?

確か本部長様が御神木様に聖域結界内の閲覧許可を貰っていましたから、試してみて詳細は観測結果をご覧くださいって事にしちゃえばいいんじゃないんですか?」

 

“ウッ、確かに。ケビン、ありがとう。二度手間になる所だったわ。

それじゃ確認が必要そうな、<天魔混合>と<憑依一体>、それと<武具化>だけ見ちゃいましょうか”

 

そう言い二人が目を向けた先には、“もう終わった?”と言った感じのキョトンとした表情の巨大な白鴉。

 

「黒鴉、お待たせ。そう言えば黒鴉にはご飯あげてなかったけど大丈夫だった?お腹空いてない?」

“カーッ、クァクァカーッ”

 

「確り食い溜めしてたから大丈夫なんだ。ってもしかして<暴食>って食い溜め可能なの?“カーッ”

そうなんだ、ちょっと想像してたのと違った。意外に便利なスキルだったのね。

それじゃまず<天魔混合>ってスキルを使って貰える?何となくで使えると思うから」

 

ケビンの言葉に目の前の空間の一点を凝視する黒鴉。するとその空間が歪み、光とも闇ともつかぬ何かのエネルギーが凝縮し始める。

 

「・・・あなた様、これってヤバくないですか?俺の中の何かが‟止めさせろ”って全力で警鐘を鳴らしてるんですけど」

“そ、そうね。危なそうって事が分かっただけで十分じゃないかしら?

黒鴉、もういいわ、それ消しちゃって”

 

“クカッ”

黒鴉の一鳴きで瞬時に姿を消すエネルギーの塊。それは黒鴉の<暴食(魔力)>の力によるもの。

 

「それじゃ次は<憑依一体>で。“クワックワ”

えっ?俺が前に出るの?それでこの後どうしたら・・・」

ケビンは黒鴉の指示で数歩前に近付いた。それを見届けた黒鴉は、大きく翼を広げ、ケビン目掛けてダイブする。

 

「えっ!?ちょっと待って、黒鴉“ブワンッ”」

黒鴉の嘴がケビンの身体を貫かんとした次の瞬間、まるで突風の如くその姿が掻き消える。

 

“バサッ”

その者は白色(はくしょく)黒色(こくしょく)の翼を広げその場に佇む。手には鉤爪の付いた小手、嘴の付いたハーフマスクを付けた鎧武者姿の者。

 

「あぁ、なるほど、そう言うことか。<憑依一体>は武装変身みたいなものなんだ。そんで武装を解いても一体化を継続可能、俺の力に黒鴉の力が乗っかってるって感じなのかな?

慣れれば更に強力な力も使えると、スゲーなこりゃ。

あなた様、こんな感じみたいです」

 

“スーーッ”

腰だめから引き抜かれた太刀は美しく煌めき、見る者の心を掴んで離さない。それは正に神刀の輝き。

ケビンの掛ける言葉に口をパクパクさせ、指を差したまま固まる$$%&。

 

“あ、いや、あっ、ケビン、あなたどれだけ強化されちゃってるのよ!!

天界に戦いを挑むなんて真似は止めてよね、私じゃ今のあなたを止めれる自信無いから。これ冗談じゃないから、本気で頼むわよ!?”

 

天上人に届き得るどころか天上人に比肩する力を手に入れし地上人の出現、その驚愕の事実に天界のOL(総合職)は全身を震わせ、“有休プラス危険手当の要求、これ絶対!!”と心の中で叫び声を上げるのでした。

 




本日二話目です。
いってらっしゃい。
by@aozora
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