いや~、参った参った。
御神木様の結界領域で溜まりに溜まった従業員人事、<昇進>(進化)の手続きを行ったんですけどね。もうね、どうしてこうなったって感じ。
ゴールデンハニーベアに進化したクマ親子はまだいい、あなた様曰くベアー種は基本蜂蜜が好きな為、ゴールデンハニーベアに進化を果たす個体はそこそこいるらしい。
ゴールデンハニーベア同士から生まれる個体もおり、数は少ないものの種族として確立しているとの事。
兎仙人・・・。あの後団子には御神木様の枝製の杖を進呈しておきました。だって~、あの泰然とした雰囲気はまさに仙人そのものだったんだもん。
でも普段は邪魔になりそうだから今度シルビアさんに頼んで団子専用の収納の腕輪でも作って貰おう、昇進祝いという事で。
ブー太郎は落ち込むグランゾートちゃんを必死に慰め、今度大森林の探索に向かうという事で折り合いを付けたようです。それと基本召喚したままにすることを確約させられてました。
聖霊剣グランゾートはスキル<聖剣召喚>で登場しただけあり、本来は必要な時に召喚し、使い終わったら送還するといった使い方をする聖武具なんだとか。“強過ぎる力はいらぬ諍いを呼ぶ”と言う鍛冶の神様の御心使いなんでしょう。
でもグランゾートちゃんの場合、“送還されたら一生召喚してもらえないんじゃないか”っていう心配がですね。
だってブー太郎、魔力纏いが出来るから御神木様の枝製の木剣があれば基本敵なしだし、なんだったら最強生物が乗っても砕けない垢すり用の石柱から作った石製の大剣もありますし。
この垢すり石の大剣、何が凄いってアダマンタイト製の大剣と打ち合っても刃毀れ一つしないっていうね。ドワーフの匠涙目、もう伝説の武器と言ってもいいんじゃないんだろうか、量産可能だけど。
グランゾートちゃんの前で軽く打ち合いを披露したら超落ち込んでたな~。“どうせ私なんてただの行き遅れなんだ、要らない子なんだ、うわ~~~ん”とか言って泣く泣く。
ブー太郎が急ぎダンマスの所から剣のお手入れ用高級オイルを購入して来て、布で塗り付けながら“う~ん、この素晴らしい輝き、流石聖剣。この気品溢れる煌めきと美しさは石剣や木剣にはないものだよね。こんな神聖な聖剣を扱う事が出来るなんて、おいらは幸せ者だな~”とか言って慰めてました。
・・・ブー太郎、強く生きろ。
太郎と良狼はな~、デカくなり過ぎ。完全に見上げるサイズだし。魔物的にはアリなんだろうけど、村のお手伝いさんとしてはちょっと問題がね。
そこで思い出したのがゴミ屋敷のドラゴンがやっていた縮小化の魔法。確か最強生物も出来たんだよね、これ。
でも確か十日が限界って言ってたんでその辺の事を最強生物経由で確認して貰ったところ、元のサイズからの縮小率によって疲労感が違うらしい。半分のサイズダウンくらいなら全く疲労も感じないとか、太郎達ほどのサイズからの縮小なら大型犬ほどの大きさであれば二か月から三か月くらいなら余裕かな?
いずれグラスウルフ部隊の皆さんにも必要になる技術だという事で、お二方には最強生物の所に研修に行って貰う事といたしました。
ビビりまくって超嫌がってましたが強制です、お前たち伝説のフェンリルだろう諦めなさい。良狼、“俺レッサーですから”とか言ってるんじゃない、とっとと行け!
あまりぐずぐず愚痴を言っていたんで影空間に強制収容、ひとっ飛び送り届けたのはいい思い出です。
送り届けたと言えばこの時例の<憑依一体>状態で最強生物の所に向かったんですけどね、超速いの。御神木様の所から最強生物の塒まで一分掛かってないんじゃないかな?どうもこの状態だと黒鴉の能力も使えるらしくって、<精霊化>によって周囲の物体に干渉されない感じになってるみたいです。
どういう事かと言えば、どれ程のスピードで移動しようともソニックブームを起こさない、映像の投射の様に音も無く移動可能なんですね~。
天魔神鳥、半端ね~。
でも最強生物が何かめっちゃ警戒してたんだよな。太郎と良狼が超絶進化しちゃったからだろうか?月夜の晩の太郎なら何とか最強生物に傷くらい付けれるのか?だったら凄いぞ。
これならジミーの警護もばっちり、最強生物のお墨付きですからね、いざって時は確りカバーしてくれるでしょう。
そんで黒鴉先生なんですけどね、直刀から太刀にモデルチェンジされちゃいました。何でも以前から太刀のあの反りの入ったボディーラインに憧れていたんだとか、“居合い抜き”ってのがやってみたかったとの事。
扶桑国では二百五十年ほど前から太刀が主流になっていて、直刀の“突き刺す”と言った攻撃技法から曲刀の“引き切る”と言った剣技に移り変わっているんだとか。
黒鴉先生、なんやかんや言って魔剣人生を楽しんでおられた様です。
<武具化>は変幻自在とのことだったので、以前の“魔剣黒鴉”の形になれるかと言ったら瞬時に変わってくれました。なので帯刀用ベルトの関係もあるので普段は以前の姿になって貰って、太刀モードは新しい帯刀用ベルトを作ってからという事にしてもらいました。
今度のは腰下げ用ですね、何と言っても居合い抜き専用ですから。
そんであなた様なんですが、物凄い疲れた顔をなさっておられたので光属性魔力マシマシマシマシ蜂蜜カクテル(キラービーバージョン)と光属性魔力マシマシマシマシメープルカクテル(甘太郎の甘木汁バージョン)をそれぞれ壺で進呈、御摘みにエクアドルラのサイコロステーキをお渡ししておきました。
まぁ後は報告書にまとめて本部長様に丸投げするだけですから、大丈夫大丈夫。
<送還>されるときにこちらを恨みがましい目で見られておられましたが、気にしてはいけません。
――――――――――
「ってな事がありましてね、いや~大変だったんですよ」
季節はすっかり秋の装い、木々の葉の色も変わり、もうすぐやって来るだろう冬の訪れを予感させる。
マルセル村の畑での収穫作業も終わりを迎え、村の備蓄倉庫には収穫した根菜類や日持ちするパンプクなどの果菜類が山のように積み上げられている。
傷み易い葉物野菜は村役場で時間停止機能付きマジックバッグに収納、現在マルセル村には大型倉庫サイズの収納容量を誇る大型時間停止機能付きマジックバッグが三つあり(内二つは俺の貸し出し。買取の資金が足りないとのことだったので、レンタル契約を結ばさせていただきました)、村人全員が来年の初夏まで普通に生活できる分くらいの食糧は余裕で賄えるとか。
この他にも小麦専用の倉庫などもあり、マルセル村はちょっとした地方都市の台所を担う事が出来るくらいの食糧備蓄量を誇っているのである。
そんな村の中央広場では今年も盛大に秋の収穫祭が執り行われていた。お祭りで飲まれるエールは、マルコおじいさん率いるエール作製班が研究に研究を重ねて作り出した逸品だとか。
そのメンバーにはいつの間にか鬼人族の蒼雲さんも参加しており、“酒は人種や国境を超える”という事実をまざまざと見せ付けてくれる結果となっていた。
飲みニケーションは社会人の基本、今度領都に行ったら大量に樽ワインを購入しておこう。
ランドール侯爵家のお城からかっぱらってきたワインがあるんじゃないのか?もうほとんどないんだよ、村の連中が旨い旨いって言って飲んじゃうんだよ、俺の事頼めばうまいワインを出すワインサーバーかなんかと勘違いしてるんだよ!!
だもんで俺からのワイン供給は終了、今回の収穫祭からはエルセルの酒屋から購入してもらっております。
ワインが高い?それが通常価格じゃ!
あまり旨くない?前のは然るやんごとなき御方の所のワインだったの!ちょっと人には言えない様な出所なの、だから物欲しそうな目で見ない!!
俺は村の駄目な大人たちからの視線をフル無視し、テーブルの料理に舌鼓を打つのでした。
「ケビン!あなたそんな楽しそうな催し何で呼んでくれなかったのよ!前から言ってたでしょう、従魔たちが進化するときは立ち会わせて欲しいって。しかも聖転進化?そんなものこの先一生見れないじゃない!!
あ~、悔しい~!!」
俺の隣では同様に料理を小皿によそって口に運ぶシルビアさん。
「イヤイヤイヤ、あれ無理ですって。シルビアさんとイザベルさん、前にキャロルとマッシュを進化させた時昇天しかかってたじゃないですか。聖転進化の光ってあれの比じゃないですから、網膜が焼き切れて視神経が白色の映像で固定化されちゃいますから。おそらく大半の人間は意識を失いますからね?
完全に集団鎮圧攻撃、地方都市くらいなら壊滅しますよ、あれ。
お二人も強制的に天に召されちゃうんじゃないんですか?神気も溢れまくってたみたいですし」
俺の言葉に表情の固まる賢者師弟。でも聖転進化の発光現象は肉体や核のない霊体にはきついだろうな~。存在から消し飛ぶレベルだと思います。
「そ、そうなんだ。凄く残念だけど、本当に残念だけど、諦めるしかないわね。
でも進化した従魔は見せてくれるんでしょう?」
「えぇ、それは問題ないです。ただ太郎はジミーのお供って仕事がありますんで、最強生物の所での研修が済み次第暗黒大陸に行っちゃいますけどね。
そう言えばシルビアさんたちに最強生物を紹介した事なかったですよね、今度一緒に「「いえ、私達にはまだ早いかと」」・・・そうですか?まぁ会いたくなったらいつでも言ってください。
良かったら塒清掃のお手伝いでも「「いえ、私達にはまだ早いかと」」・・・大丈夫だと思うんですけど、残念です」
シルビアさんたちは揃って首を横に振られてしまいました。
普段はぐいぐい来るのに妙に遠慮深い所があるんだよな~。
“流石にまだ死にたくないし”ってもう死んでるじゃん。存在ごと消されたくない?ドラゴンブレスはそれほど恐ろしいと。
でも剣の勇者は三日三晩戦ったらしいですよ?
それはドラゴン種が行う力試しだと、本気なら人種なんか一瞬だと、ですよね~。
シルビアさんの言葉に、最近頻繁に会うようになって若干緩みかかっていた気持ちを引き締める。天災は人がどうこう出来る様なものではない、一定の距離感は必要なのだ。
賢者師弟はその事を身をもって知っているのだろう。
先人の教え、俺は本当にいい人たちに出会えたのだと女神様に感謝する。
「ケビン、あなた本当に分かってる?あなたがそう言う真面目な顔をしているときって、頭の中で詩を浮かべて浸っている時だってジェイク君が言ってたわよ?
あなた本当にいい加減にした方がいいわよ?」
ウグッ、シルビアさんの鋭いツッコミ。最近ジミーだけじゃなくてジェイク君やエミリーちゃんも容赦ないツッコミを入れて来るんだよな~。俺ってそんなに分かり易いんだろうか。
「それで契約魔物が進化したって事は、魔物の雇用主の関係上あなたのステータスも変化したんでしょう?
その辺、ちゃんと確認したんでしょうね?」
そういいワインの入ったコップをクイッと飲み干すシルビアさん。イザベルさんは全部話せと言った表情で、俺たちの周りに隠蔽の結界を展開し始めます。
流石賢者様、「大勢の人のいる前じゃちょっと・・・」という俺の言い訳を速攻潰しに来るし。
「はぁ、いや、確認しないといけないって事は分かっているんですけどね。どうせ碌でもない事になってるんで放置と言いますか、まだ見てないです」
俺は“ハァ~”と大きなため息を吐くと、スキル<自己診断>を発動するのでした。
<自己診断>
名前 ケビン・ドラゴンロード
年齢 十四歳
種族 普人族?
職業 田舎者(辺境)
スキル
棒 自然児⇒自然人(New) 田舎暮らし(*) 自己診断
魔法適性 無し
称号
辺境の勇者病仮性患者(*)
加護
食料神の加護
スキル詳細
<田舎暮らし>
・田舎暮らし(魔法)・・・魔力支配(+魔力融合、+魔力食い)(New)、影魔法、全属性魔法、生活魔法、重力魔法、儀式魔法、幻影魔法
・田舎暮らし(戦闘)・・・刀術、体術、斧術、弓術、槍術、盾術、索敵、身体支配、空走術、ラビット格闘術(中伝)、空間把握、龍の全身鎧、浮遊、覇王の威圧、根性(New)、ナイフ召喚(New)、大声(New)、引率(New)、夜間自己再生(New)
・田舎暮らし(生産)・・・調薬術、鍛冶、錬金術、魔道具作成、農業全般(+畑作)(New)、ポーション生成、糸生成、糸操作
・田舎暮らし(生活)・・・解体、調理、清掃、建築、生存術、魔物の雇用主、送り
称号詳細
<辺境の勇者病仮性患者>
魔物の親友 食のチャレンジャー 通貨を創りし者 新薬を創りし者 生活魔法を創りし者 魔力を理解せし者 小さな賢者 大森林の住人 導く者 進化を促せし者 呪いを解きし者 厄災の討伐者 発明家 魔物を飼育せし者 辺境の隠者 森の聖者 闇に潜む者 交渉人 魂の救済者 干し肉の勇者 風神速脚 鉄壁の門番 魔境を訪れし者 恐怖を乗り越えし者 ダンジョンマスターの友 ダンジョンの盟友 天然の魔王 影の英雄 魔境の深淵に至りし者 特殊進化魔物を造りし者 聖域を造りし者 召喚術を創りし者 堕天を食い止めし者 ドラゴン亜種との契約者 精霊女王との契約者 神聖樹との契約者 神性存在を誕生させし者 ダンジョンとの契約者 伝説級装備の製作者 聖人 救世主 傍観者 聖霊樹に名を付けし者 万軍の防壁(New) 兎仙人の友(New) 勇者を導きし者(New) フェンリル種との契約者(New) 天魔神鳥との契約者(New) 天界に届きし者(New) 大特異点(New) 女神の注目(New)
「・・・ごめんなさい、ちょっと時間をください」
俺は収納の腕輪から聖茶の茶葉を取り出すと、ポットに入れ光属性魔力マシマシマシマシウォーターを注ぎ入れる。
“チョロチョロチョロ”
湯呑みから温かな湯気が立ち上る。周囲には爽やかな若葉の香りが漂う。
“ズズズズズズズッ”
「“ハァ~”、スッキリとした味わい、心が落ち着きます。
それじゃ今から書き出しますんで、しばらくお待ちください」
俺は収納の腕輪から筆記具を取り出すと、自己診断のステータス結果を書き記して行くのでした。
本日一話目です。