転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第386話 村人転生者、偉い人たちとお話しする (2)

“クワクワー!!”

““““クワックワックワー!!””””

元気よく鳴き声を上げるコッコ。

 

“タンタンタンタンタンタン”

地面に設置された丸太の上を飛び跳ね、自らの身体能力を遺憾(いかん)なく発揮する彼ら。

 

「コッコ部隊、集合!!」

““““クワックワックワ~!!””””

 

“シュタッシュタッシュタッ”

ケビンの掛け声に一斉に集まるコッコたちの姿に、驚きの表情を浮かべるロナウド。

 

「ケビン殿、これは一体・・・」

「ん?あぁ、なんかコッコたちが身体を動かす設備が欲しいって言うから作ってやったら、こんな感じになった。こいつら思いのほか頭がいいのね、餌を与えてればちゃんと言う事を聞くみたい。

最初はそこまででもなかったんだけど、餌に癒し草とかスライムのこま切れを混ぜたり、飲み水を魔力水にしたのが良かったのかな?

そうそう、餌とは別にマール貝の貝殻を砕いたものを与える様にしたら、卵を産む回数が増えたんだよね。ロナウドから聞いた話だと次の卵を産むまでに三週間から四週間程掛かるって事だったけど、砕いた貝殻を与える様にしたら二週間くらいで産む様になったんだよね。

でもこれ、どれが効いてるのかよく分からないから、後でどんな飼育の仕方をしてるのか纏めておくんで、自領に帰ったら実験してみてくれる?

それと頭が良くなった原因は謎、多分だけど魔力を多く含んだ餌を与えたのが良かったのかも。

ウチのビッグワームやスライムもそれで馬鹿みたいに頭が良くなったからね。やっぱり魔物は魔力なんだよ、魔力による変化が大きいのが魔物なんじゃないのかな」

 

俺の言葉に口をポカンと開けたまま固まるロナウド。まぁそうだよね、自身もコッコの飼育には深く関わって来たんだろうし、卵の産卵期間が短くなったって話を聞いたりこちらの言葉に応えて整列してるコッコを見れば、唖然とするのも無理はないかと思います。

何かスキル自然児が自然人に変化してから、今まで以上に魔物との意思疎通がし易くなったんだよな~。最近じゃ天気の細かい変化も分かるし、気象予報士並?因みにこの先三日間は晴れです。風も穏やかな秋晴れが続くでしょう。

 

「ケビン殿、コッコを触らせていただいても?」

「どうぞどうぞ」

俺の言葉に手前にいたコッコの身体を触り始めるロナウド。初めビクッとしたコッコも次第に気持ち良さげになり、“クルルルル~”という鳴き声を上げ出します。

 

「うん、健康状態は良好ですね。肉質もいい。そうか、鷹の目コッコはただ広い環境を与えればいいのではなく、彼らの生息域に近しい環境、山の環境に近付けることが重要だったんですね。

それと魔力水ですか、その発想はなかった。ケビン殿、勉強になります」

 

そう言い頭を下げるロナウド。・・・君完全にコッコ農家だよ、その目は生産者のそれだよ。

聞けばコッコ飼育はテレンザ侯爵様が主導して始められた事業であるとか。その研究の為御屋敷でも数体の鷹の目コッコを飼育しているとの事。

勇者病<仮性>患者として周囲との隔たりを感じていたロナウド少年の遊び相手が、その鷹の目コッコであったらしい。

道理でコッコの扱いに長けている訳だね、ロナウド君、コッコがお友達だったんだね。

でもお屋敷のコッコは人に慣れ過ぎた為か、庭先でへそ天状態で寝てたりするとか。飼育実験の観察対象にならないと仰られておりました。

 

・・・いたな~、うちにもそんな奴。いつの間にかホーンラビットのパニック行動を克服した団子先生という御方が。

今じゃ一周回って仙人に進化されちゃったもんな~、あれは予想外だったわ。ただ雲を眺めてボーっとしてるだけと思ってたら自然と一体化って、団子先生、恐るべし。

 

「しかしよろしかったのですか?話し合いの場を抜け出して我々だけ実験農場の方に来てしまって。今も父上たちは今後の事について頭を悩まされていると思うのですが」

「いいのいいの、俺の意見は全て伝えたし、それを実行するかどうかは偉い人次第。下の者は上の決定に従うのみってね。

まぁ俺の場合嫌だったら逃げ出すんだけどね。それよりもコッコですよコッコ、首の輪コッコと斑点コッコの飼育場を作らないといけませんっての。

ロナウド様、こいつらの事を詳しく教えてください」

 

俺はアルバート子爵閣下の下で行われたプレゼンの事は記憶の端にどかして、コッコ飼育場の建設に全力を注ぐのでした。

 

――――――――――

 

「ケビン君、放置も駄目、交渉も駄目となると全面的な戦闘という事になるんだが」

静まり返った来賓の間、その静寂を破ったのは屋敷の主ドレイク・アルバート子爵であった。

 

「そうですね、なんやかんや言っても最後はその選択肢に行き着くかと。バルカン帝国の侵攻が確定的となった今となっては、ダイソン公国はただバルカン帝国の代理として存在しているのではなく、帝国の最前線基地とみなされているでしょうから。

時間はあまり残されていない、そうなれば王家としてもこのまま手をこまねく事は出来ない。ですがこれまでの様に数に物を言わせた戦闘は悪手、ならばどうするか。

少数精鋭を送り込み単発的に敵の中枢を攻める、要は魔王討伐方式を取るのではないかと。

 

冒険者ギルドは基本国家間の戦争には不干渉です。冒険者に無理強いする事も出来ない。人同士の戦闘は騎士が、魔物との戦闘は冒険者がと言われる所以です。

ですがこれはあくまで組織としての話、魔物討伐に騎士団が派遣される様に、領地間のいざこざや国家間の戦闘行為に冒険者が参加する事を禁止するといったものではない。

それに今回の話に限ってはかなり微妙な線でしてね、国土を占拠する賊の排除という名目がある。

高位冒険者の招聘も不可能ではない。

冒険者とは個々の戦闘力に物を言わせた集団、もしかすればその試みは成功するやもしれません」

 

ケビンはそこで話を止めると、テーブルに収納の腕輪からティーセットを取り出し、ポットに茶筒からお茶の葉を入れる。生活魔法で熱湯を作り出しポットに注ぎ入れ待つこと暫し、ティーカップの上に茶漉しを乗せて、茶葉が混ざらない様に気を付けながらお茶を注ぎ入れて行く。

見た目鮮やかな黄緑色をしたお茶からは若葉の爽やかな香りが広がり、緊張した心を落ち着けてくれる。

 

“コトッ”

差し出されたカップを口に運ぶ。混乱していた心がゆっくりと落ち着きを取り戻し、物事を冷静に考えられる様になっていく。

 

「さて、ここで一度私たちの立ち位置を考えてみましょう。グロリア辺境伯家を含む北西部貴族は現在貴族連合を作り一致団結してこの国難を乗り越えようとしている。それは何故か、グロリア辺境伯家は先のランドール侯爵家との動乱で王家との間に大きな溝が生まれてしまった。現在自治領となっているのがその証拠です。

ランドール侯爵家もまた王家に見限られる形になり立場が危うい。長男様は王都の別邸で病死されたとか、本当に貴族は恐ろしい。共に王家に反意のある家と見なされている以上、結束して身を守らなければならない。

 

テレンザ侯爵家はどうかと言えば、同じ南西部地域の侯爵家であったダイソン侯爵家が独立を宣言した以上立場は非常に危うい。その立地からダイソン侯爵家とテレンザ侯爵家は近しい間柄であったはず、国内貴族が両家を同一視してもおかしくない。

この戦争で王家が勝利を収めた場合、国内における西部地域の貴族は非常に弱い立場に落とされる事でしょう。

バルカン帝国との戦闘において最前線送りにされるのは勿論、中央からの援助など期待出来ようはずもない。多くの将兵や家族を失った南部東部貴族からは何かと難癖を付けられる事は必定、王家の勝利は必ずしも我々の勝利とはならないのです。

 

ではバルカン帝国に与すればいいのか?これも悪手と言わざるを得ないでしょう。バルカン帝国の指揮官が求めるのは自身の有能さを示す為の生贄。

より多くの血を求め、下った者からは搾り取る。オーランド王国は自分たちが移り住むための新天地、嘗ての支配者は要らないのです」

 

ケビンの言葉、それは自分たちが既に追い詰められているという事実。

 

「ではどうすればいいのか、ここから先は私が考え付いた最も被害の少ないであろう終結の形。これが受け入れられるかどうかは皆さん次第。

どうしますか?聞けば後には引けなくなりますが?」

 

ケビンはそう言うと部屋の扉脇に控えるメイドに目を向ける。

そこにいるのは王家から派遣された諜報員、“影”の耳目、ガーネットとリンダ。

 

「はぁ~、どうしてこんな事になってるんですかね~。私はただの辺境の村長だったはずなんですけどね」

「ドレイク村長、それを言ったら俺の方こそですよ。毎回言いますけど、俺はただの村人ですよ?お肉が食べたい一心で、ビッグワームの肉質改善やら角無しホーンラビット牧場やらの提案を行いましたけど、旨いご飯が食べれてのんびり出来ればそれで十分って人間ですからね?

弟のジミーみたいに“強い奴らに会いに行く”とか言って旅立ったりしませんからね?」

 

「ハハハ、そうだね~。ケビン君は基本そんな子だったよね~。ジミー君は今頃どうしてるんだろうね~」

「なんかどこかの部族と交戦中らしいです。護衛に就けてる太郎によれば嬉々として戦闘に参加してるらしいです」

 

「・・・ヘンリーさんに似たのかね」

「母メアリーも結構怖いですよ、両方じゃないんですか?」

 

「「ハハハハハハ」」

乾いた笑いを浮かべるアルバート子爵と騎士ケビンに、テレンザ侯爵が言葉を掛ける。

 

「ケビン殿、貴殿の考察、逐一最も。私も中央との確執は常に感じていたし、ダイソン侯爵が独立を宣言した時も、驚きよりついに我慢出来なくなったかという思いの方が強かったくらいだ。

そして我がテレンザ侯爵家が私の思う以上に危うい立場にあるという事も理解出来た。

それはここにおられるマケドニアル殿も同じ気持ちであろう」

「うむ、どうやら我々は事態を甘く見ていたきらいがあった様だ。我はこの内戦は後しばらく、二年から三年続いた後、和睦に向かうものと予測しておった。

ヨークシャー森林国侵攻がなくなった今、ダイソン公国の利用価値は低い。だがオーランド王国に対する布石にはなる為最低限の援助は続くものと考えていたからではあるが、帝国内部の政争の道具という視点までは思いが至らなんだ。

ここでケビンの話を聞こうが聞くまいが中央や王家における我らの立場が改善する事はなかろう、多少警戒が強まるであろうが、それこそ今更であろう?」

 

そう言いニヤリと笑みを浮かべるマケドニアル卿。その目は“覚悟は決まった、話を聞かせろ”と言外に伝えるもの。

 

「ではお話しいたします。リンダさん、パトリシアお嬢様を連れて来てもらえますか?お嬢様も関係する事ですので。

それとローラさんもこちらに。

今回の件ではロナウド様、パトリシアお嬢様、ローラさんの三人が重要な役割を果たす事になります」

 

そんなケビンの言葉に“こいつ一体どんな悪巧みを考え付いたんだ?”と顔を引き攣らせるアルバート子爵とマケドニアル卿。

 

“コンコンコン”

「“失礼します。パトリシアお嬢様をお連れしました”」

「あっ、入って貰ってください」

 

ケビンの言葉に扉が開く。

そしてそこには一体何を言われるのかと警戒心を強める、パトリシア・アルバート嬢の姿があるのだった。




本日二話目です。
いってらっしゃい。
by@aozora
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