転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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本日一話目です。


第397話 村人転生者、友達を造る

それは奇妙な光景であった。こちらに向かい胸に手を当て美しい姿勢で頭を垂れる執事服姿の男装の令嬢。その立ち位置が棺の中であるとか、何で男装?しかも執事ってとか疑問は尽きない。

が、今は取り敢えずの状況確認が必要であろう。俺は目の前の人物に向かい声を掛ける。

 

「生活支援機構N401といったか、俺のことをマスターと言ったがそれはどういうことか?」

「はい、言葉の通り私がお仕えする主人、マスターという意味でとらえていただけたのなら幸いです、マスター」

 

「次に魔力波動によるマスターの存在を確認とは?」

「はい、人の魔力の波動はそれぞれに違いがあり、個人認証を行う際の有効な手段となっています。生活支援機構N401の起動シークエンスにおいて、マスターの魔力による承認が行われ、マスターが生活支援機構N401の生活支援対象として登録されました。

生活支援機構N401は魔力結晶に書き込まれた生活支援プログラムの正式名称となります。

今回マスターにより生体ユニット並びに各種外装の提供、膨大な魔力エネルギー体の供給が行われ、生活支援機構N401としての本来の機能を開始したといった状況になります」

 

うん、意味が分からん。要約すれば生活支援機構N401とはあの魔力結晶体に書き込まれていた制御魔術式、その本来の目的が対象者、マスターの生活支援という事なんだろう。

で、本来スキル<友達生成>で作り出される存在、仮に“友達”としておくが、その“友達”は主要目的など設定されておらず、生み出した俺との関係性で天使にも悪魔にも化け物にもなり得るって言うかなりヤバ目のスキルであった筈。

まぁそうは言ってもほとんど知能の発達していない人工知能みたいに成長して、たかが知れた存在となるはずであったのだろう。

 

それじゃ今回なんでこんな事になってるかと言えば、答えは一つ。

“友達”の中核となっている魔力結晶体に既に“友達”の制御プログラムが組まれていたから。

こんなん分かるか~!!その燕尾執事服は百歩譲って紬の攻撃糸反物からって事でいいかもしれないけどもさ、干物騎士の全身鎧はどこ行っちゃったのさ、もしかして燕尾執事服と融合しちゃったとか?その服アダマンタイト繊維で出来ちゃってるとか?

 

「N401に確認する。今回外装装備として全身鎧があったと思うが、それはどうなったのか」

「はい、提供いただきました装備として格納しております。

状態確認の為戦闘支援に移行します」

 

“ブォッ”

N401の全身を黒い炎が包み込む。その黒い炎が晴れた時、そこには濃紺の全身鎧に身を包んだ女性騎士が立っているのであった。

 

・・・いい、変身って、鎧騎士に変身って。く~、こいつ分かってる、そうだよね、変身はロマンだよね。

なんか知れないけど執事さんが出来ちゃったし、普段は月影に丸投げでいいかな?そんで騎士モードの時は戦闘狂共のお相手をして貰うという方向性で。

 

「N401、戦闘支援状態での戦闘プログラムは元々生活支援機構N401に搭載されていたものか?」

「いいえ、生体ユニットに記録されていたものと外装ユニットに付随していた記憶回路からのものとなります。外装ユニットには魔術式記録支援システムが搭載されていたものと思われます」

 

流石は呪われた騎士、その装備もガッツリ呪いの品だったという訳ですか。そんでもって復活の度に過去の記録から攻撃方法を最適化して行っていたと、スゲーな干物騎士。まぁそれでも最強生物には届かなかったみたいですが、干物騎士を作り上げた呪術師の執念には恐ろしいものを感じます。

 

「なるほど、では戦闘経験から更なる上達が望めるという認識で間違いないか?」

「はい、生活支援機構としての基本機能にマスターの生活を支える為の最適化学習プログラムが組まれています。外装ユニットの学習プログラムは些か無駄が多かったため、記録だけを残し改修させて頂きました」

 

なる程って目茶苦茶凄くない?賢者師弟、目を爛々とさせちゃってるんですけど?気持ちは分かるけどちょっと落ち着こう。

 

「状況は理解した。生活支援機構N401を私ケビン・ドラゴンロードに仕える従業員として認めよう。以降“残月”と名乗る様に」

「承認。生活支援機構N401、生体ユニット名:残月として登録いたしました。素晴らしいお名前をありがとうございます」

残月はそう言うと、再び胸に手を当て綺麗な礼をするのであった。

 

 

俺は一度影空間から外に出て実験農場脇の屋敷へと向かった。

まぁこうしたことはきちんと報告しておかないと後々面倒になる。特に月影は最近メイド長という立場が板について来たからか、その手の事にはうるさい。

「ご主人様にはドラゴンロード家の主人として頑張って貰わなければ」

月影さんの最近のブームはお貴族様のメイド役の様で、魔王様魔王様と言わなくなったので良かったです。

でも時々「真の姿は隠してこそ。シャドームーンは心得ております」とかなんとか言ってるのがちょっと怖い。真の姿って何?おらっちの真の姿は農民ですから、その全て分かっておりますからっていう慈愛の籠った眼差しは止めて?嫌な予感しかしないから。

それと十六夜たちに使用人の嗜みとか言って特殊訓練積ませてない?こないだリンダさんが遠い目をしながら「今まで“影”の養成訓練って思い出したくもない地獄だと思ってたんですけど、とんでもない勘違いだったんですね」って言ってたのって何?

新月と満月、目が怖いんだけど?(さら)がドン引き・・・(さら)の目も怖いんだけど?

まぁ、その、皆さん程々でお願いします。

 

「月影、ちょっといいか?」

「はい、ご主人様の御用でしたら最優先ですので、何なりと」

そう言い綺麗な礼をする月影。

・・・やべっ、月影と残月ってキャラ被りしそう。月影がへそ曲げないといいんだけどな~。

 

「その、なんだ。前に話したが俺のスキル<友達生成>のスキル検証実験を行ってな、新しく執事が生み出された」

「・・・ご主人様、聖茶とクッキーをご用意いたしましょうか?」

 

真顔でツッコミを入れる月影、なんか凄い心に来ます。

 

「いや、聖茶は結構だ。どんな存在が生み出されるか分からないといった危険性があったんでな、影空間で賢者師弟立会いの下行った。月影を誘わなかったのは悪かったが危険回避の為と理解して欲しい。

それでだ、生み出された執事、名を残月と言うんだが、暫く月影の所で面倒を見て貰いたい。

まだ能力の検証等は行っていないが、人物として特に問題のある行動は見られなかった。頼めるか?」

「はい、ご主人様のお望みとあらば。私達ドラゴンロード家使用人一同、ケビン様に絶対の忠誠を誓っておりますので」

 

「イヤイヤイヤ、そこまで気合いを入れなくてもいいから、普通にお仕事として・・・」

「絶対の忠誠を誓っておりますので」(ニッコリ)

「はい・・・よろしくお願いします」

 

在りし日の記憶に“笑うという行為は本来攻撃的なものであり、獣が牙をむき出しにする行動が原点”という話があった。笑う馬と言ってテレビで一世を風靡した映像が実は攻撃行動の表れだったといった話もあったような。

攻撃的な笑顔・・・月影さん、その有無を言わさぬ微笑み超恐いです。

 

それはともかくまずは顔合わせ、俺は月影を伴い影空間へと戻るのでした。

 

――――――――

 

「ご主人様、これはまた何とも趣深い趣味と言いますか・・・」

「違うからね、あの執事服は俺が用意したとかじゃないからね!!」

 

ご主人様がまたまた人型の魔物を造られてしまったらしい。

キャロルにマッシュ、紬さんに至っては自身の眷属として何人かの人型精霊を従えておられる様子。その全てが女性体、英雄色を好むと言いますが、ご主人様もそうした傾向があるのでしょうか?

でも未だアナスタシア奥様やケイト奥様には手を出されていないとか、そうした面で我慢されている欲求がこうした形で・・・いえ、失礼な事を言いました、男性の年相応の欲求は止められないといった事なのでしょう。

青春は素晴らしい物です。

 

しかしまた素晴らしい物をお持ちな・・・、これってアナスタシア奥様にどうお伝えしたら。

この件に関してはケビン様から直接お伝えしていただくという事で。

人の口から耳に入るよりも直接伝えられた方が怒りは早く収まるとも言いますし、ご主人様、頑張って。

 

「シルビアさん、イザベルさん、お待たせしました。それで残月について何か分かりました?」

「あぁ、ケビン、早かったわね。やはり残月の元となった呪い人形、核となった魔力結晶に刻まれた生活支援機構N401の影響が強く出ている様ね。

ケビンのスキル<友達生成>はそれらに組み込まれた機能を上手く融合させる力があるみたい。

それで分かった事なんだけど、呪い人形の基となったご遺体の持ち主が放浪の大聖女と呼ばれた人物だったのよ。今から約五百年ほど前に活躍した人物で、教会組織や国に縛られず各地を転々としては人々を癒し疫病を解決に導いたと言われているわ。私も生前王宮図書館でその資料を読んだことがあったけど、本当に尊敬できる人物だったみたい。

でもそういう目立つ人物って国家としては邪魔じゃない?教会組織が何度も内に引き込もうとしたらしいんだけど、首を縦に振らなくてね。

病死と言う事になっているけど真相は闇の中って奴ね。

で、呪い人形っていうものは死者を操り生前の力を利用するといったものでね、ケビンは知らなかったみたいだけど、この呪い人形には治癒魔法や各種魔法を扱う事の出来る力があったって訳。

まぁそうは言っても生者の半分以下の力になっちゃうんだけどね。

そこで造り出されたのが生者を使った呪い人形、本人の力を十全以上に使う事の出来る究極の呪い。前に聞いた干物騎士がそうね。

話がズレたわね、元に戻すわ。

 

それでその放浪の大聖女の力がそっくりそのまま、いいえ、より以上の形で残月に受け継がれているの。

ケビンが<友達生成>の時に各種魔力液を与えたのと、生活支援機構N401による最適化の影響なんじゃないかってのが私達の見解。

簡単に言えば前衛も後衛も出来る騎士って感じ?少し簡単な魔法の指導をしたらすぐに習得しちゃったし、学習機構が凄まじいのよ。

育て方によっては無敵の執事になるんじゃないかしら?」

 

流石は賢者師弟、この短時間でそこまで調べるとは。

 

「残月に質問だ。もしかしたら精霊砲も再現出来るんじゃないのか?」

「はい、マスター。精霊砲の機構自体はさほど難しくありません。術者の魔力を増幅させる魔力回路の構築の問題だけで外部ユニットを使わずとも撃つ事は可能です。

現在は生体ユニットの魔力を使う事が出来ますので、術者なしでも射撃可能となっています」

 

うん、知ってた。だよね~、そうなっちゃうよね。騎士の剣技と大聖女の治療魔法、精霊砲と言う広範囲攻撃手段を持つ男装の執事。

何この属性てんこ盛り感。しかも演算能力付きって、どこのラスボス?

これってあなた様に報告しないとまずいのかな~。

少なくともアルバート子爵様には伝えないとまずいよね、ある程度ぼかしたうえでいざという時の備えとでも言っておこう。

 

俺は賢者師弟から変身剣士の話を聞いて、「ぜひ私にも変身の魔道具を!!」と食い気味にお願いしている月影を脇目に、今後の報告に頭を悩ませるのでした。

月影さん、あなたも同志ですか。シャドームーンの魔王幹部風がいい?

く~、ロマンが分かってる御方です事。




本日一話目です。
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