転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第40話 村人転生者、四箇村を巡る 三村目スルベ村

ケイトの魔力過多症の治療、それは今の所ミランダさんの作った魔力過多症治療薬と俺の渡したヒカリゴケジャケットで対処している。

従来であれば薬を飲む事で症状を抑え、十二歳の授けの儀を待つと言うのが一般的な治療の流れなのだが、この魔力過多症治療薬と言う物がべらぼうに高い。流石お貴族様御用達のお薬、こんなの一般市民じゃ買えませんから。

ですんで平民からこの魔力過多症の患者が出た場合、地域のご領主様がその子供を引き取って治療に当たったり、有力お貴族様が引き取ったりなさるそうである。

 

“えっ?この時代のお貴族様ってそんなにお優しいの?今までの話しと違い過ぎない?”って思うでしょ?そんなに上手い話がある訳無いじゃないですか、要は青田買い、囲い込みでございます。

魔力過多症のお子様は総じて魔法使いの職に目覚める、これ常識。しかも豊富な魔力量、仕込み方次第では優秀な魔法使いを手にする事が出来る。平民のご両親にしてみても自分たちの子供が大企業に就職が決まった様なもの、嬉しくない訳がない。

 

そこは無理やり貴族の養子にされるんじゃないのか?無い無い無い、どこの馬の骨とも分からない平民を気位の高いお貴族様が自らの一族に加える訳が無いじゃないですか、その辺の線引きは明確に決まっております。平民がお貴族様にクラスチェンジを果たすというサクセスストーリーもございますが、その場合でも大概は騎士爵。地域によっては冒険者爵って妙なものを与えて冒険者を囲い込むところもあるそうですが、それくらい。

これは最近知ったんですけど、この騎士爵、正確には貴族ではなかったりします。所謂“準貴族”って奴ですね。(村長代理情報)

でも私達平民にとっては“偉い人”と言う括りで一緒なんですが。

で、引き取られた彼らは治療と共に英才教育を施され、“授けの儀”の後に晴れてそれぞれの権力者が保有する団体に所属して行くって訳です。ある意味人生勝ち組ですね。

 

だもんですからこの国では魔力過多症の治療薬の最低価格が明確に定められちゃったりしています。だってお貴族様にとっては頼って来て貰えないとまずいじゃないですか、俺が作ったお薬をお渡ししたのだって実はとってもグレーな行為、場合によってはお縄に付いちゃうって奴です。まぁこんな辺境に取り締まりなんてまず来ませんが。

 

ですんで現在はミランダさんが調薬したお薬をザルバさんが村長代理に借金するという形で購入しております。

要はドレイク村長代理がザルバさんって言う忠実な部下を手に入れたって話ですね。

ただですね、ケイト君、魔力量がですね~。なんと彼、あの丸薬が三粒も必要って言うね。将来は王宮魔法使いコース決定?凄いぞケイト君。で、現状ザルバさんの借金が雪だるま式に膨れ上がって行くと言う事に。

 

そこで登場したのがヒカリゴケジャケットなんですわ。ジャケットで魔力を消費する事でお薬の摂取量を一粒に抑えることに成功、借金の抑制に一役買う事となっております。

でもこれ眩しいのよ、無駄に煌めいてるのよ、夜になれば妖怪ネオンライトなのよ。

村人の中では“ケビン君の<仮性>がうつっちゃったのね、可哀想に。”って言う声がですね~。違うからね?これ病気の治療だから、違う病気に侵された訳じゃないから。

なんか風評被害がですね~。ですんで新たな魔力消費手段を模索中なんですが、その第一候補“魔道具の作製”が難航中でして。

そりゃそうですって、だって憧れの魔道具作製ですよ?そうそう簡単に行く訳が無いわな。最近はマルコ爺さんの所とベネットお婆さんの所に通い詰めているって感じです。

 

「ケビン君、天候も良いしお出掛けしようか」

そんなこんなで慌ただしい毎日を送る(わたくし)の下に、ドレイク村長代理からの突然のお誘い(強制)。

だから毎回言いますけど、あらかじめ連絡をですね。俺が忙しそうだったんで遠慮していた?ケイト君の容態がある程度安定しているみたいだからこのタイミングで声を掛けた?そろそろ出掛けないと向こう側の春の作付けに間に合わなくなる?

まぁそうですけどね、農繁期が始まったら悠長にワームプールなんて作ってる場合じゃないですから、少なくとも実験用施設を作って効果を確かめない事には普及に繋がりませんから。

 

と言う訳で俺はご老人お二人にしばらく村を留守にする事を告げ、村長代理にドナドナされる事となりました。

因みにケイト君は紬と団子のお世話係、最近は紬のキャタピラー繊維(攻撃糸用)を回収してベネットお婆さんにお届けするのが彼のお仕事になっております。こうやって少しずつ村に馴染んで行くんですね、大変良い事です。ですんで彼に“暗くなっても安心ね♪”と言って生暖かい視線を向けながら干し芋を与えるのは止めてください。彼、全く分かっていませんから。

 

ちびっ子たちですか?遂にジミーが緑から三振を取ったようですよ?でもうちの主砲は大福ですから。まだまだ壁は厚いぞ~、頑張れ若人。

ジェイク君?相変わらず“あいつら強過ぎ~”って叫んでますが何か?

マルセル村は平和だな~。

 

 

「ねぇ、村長代理、これから向かうスルベ村とマルガス村ってどんな所なんです?」

前回の反省を生かして乾燥野菜と出荷用デチューン版ビッグワーム肉を予め積み込んだ荷馬車に乗り込み、一路スルベ村に向かう俺たち。行程としては一度ゴルド村に寄ってホルン村長の所でレンガを積み込み、それから両村に向かうって感じです。

 

これも前回の反省、何もマルセル村からレンガを運ぶ必要は無いですからね、レンガって重いですし。ホルン村長には前回お邪魔した際に話を通してあるそうです。

流石ドレイク村長代理、そう言う所は卒がない。その段取りの良さをなぜ俺には向けてくれないのかがとっても謎、一度よくO・HA・NA・SHIする必要があるのかもしれません。朝のチャンバラの対戦相手、楽しみにしておきます。

 

「スルベ村とマルガス村はちょっと複雑な村でね、元々この辺にはゴルド村、ヨーク村、スルベ村の三箇村しかなかったんだ。ある時スルベ村で村長の座を巡る跡目争いが起きてね、その時に敗れた相手が開拓開墾したのがマルガス村だと聞いているよ。我がマルセル村はこの辺では一番新しい村って事になるかな、何と言っても大森林に一番近い村だからね」

 

「ふ~ん、でもうちの村の開村よりも前の話って言うのなら問題ない様に思うんですけど、それのどこが問題なんですか?」

 

「う~ん、こればかりはケビン君にも分からないかな~。こうした村同士の確執って言うのは理屈じゃないんだ。村を追い出されたって言う初代村長の恨み辛みは、形を変え代々受け継がれて行くものなんだよ。

無駄に対抗心を燃やしたり、相手を見下したり。何か悪い事が起きると相手の村が悪者にされていい事が起きれば自分たちの功績にする。形は違えどやっている事は“よそ者”の排斥と何ら変わらないと私は思うんだけどね。

マルセル村も以前はそうだった、辺境の村はどこも似たり寄ったりなんだよ」

 

「うわ、マジっすか。ドレイク村長代理、村長をやっててくれて本当にありがとうございます。俺、ヨーク村に生まれていたらとっくに逃げ出していた自信がありますもん、この辺だったらゴルド村かマルセル村以外住めそうにないじゃないですか。辺境怖過ぎです」

 

「ハハハ、そんな事は無いけどね。私も冒険者時代や行商人時代に色々な場所に赴いたけど、ゴルド村のホルン村長のような方もそれなりにいるんだよ?ヨーク村のケイジ村長の様な人物の方が少ないくらいだから。

あそこは夫人がしっかり者だから成り立っているけど、ケイジ村長が陣頭指揮をとってたらとっくの昔に崩壊して村自体が無くなっていただろうからね。ああいった人物が蔓延(はびこ)れるほど世の中は甘くないんだよ」

 

グフォ、ドレイク村長代理、嫌な現実を突き付ける。餓死者多数、村人脱走、村崩壊。村長一家は逃げ出すか領主様に捕まって極刑。ラノベの様な辺境の村の悪徳村長なんて現実には存在しないって訳ですね、そんな余裕もありませんから。仮に裕福な村ならその甘い汁を求めてお役人様がやって来ると、どの道詰んでるじゃん。

美味しい汁を吸うには努力が必要ってケイジ村長には無理っぽい、やっぱ早い所農業重要地区入りを果たす必要がありそうです、でないとヨーク村が無くなっちゃいますから。(物理的に)

 

人生いろいろ、村も色々。生まれる地は誰にも選べないとは言え、ちょっと住む地域がズレるだけで大違い。俺は初めて会った時のやせ細り人生に絶望したケイト君の姿を思い出し、ふとそんな事を考えるのでした。

 

 

途中ゴルド村に立ち寄り(あらかじ)め用意して貰っていたブロックレンガ百個を荷馬車に積み込むと、俺たちはすぐにスルベ村に向かいます。レンガの積み込みをしている俺を見てホルン村長が“やはり剛力系のスキルに目覚めているんじゃないのかな?これは授けの儀が楽しみだ”とか仰っていましたが、単なる魔力纏いでございます。スキルの事は分かりません。

 

で、スルベ村ですが、まぁ何もないと言いますか、しいて言えばヨーク村よりもマシって所でしょうか。少なくとも崩壊寸前の建物や修復しないと駄目だろうって言う様な家屋は目に付きませんから。それだけでも“ここの村長はまとも”って思えるくらいヨーク村のケイジ村長は酷かったからな~。

それでこの村の村長のお宅の前に到着したんですが。

 

「やぁ、ドレイク村長。ホルン村長から話は聞いているよ。ウチの村にビッグワーム農法とやらを伝えに来てくれたんだろう?この冬の寒い中、遠い所わざわざありがとう。早速我が村に向かう事にしよう」

 

「何を馬鹿な事を言っているんだ、ドレイク村長は我が村にその農法を伝えに来てくれたのだ。“我が村に”だ。最果ての田舎者は引っ込んでいてもらおうか。さぁ、ドレイク村長、中に入って温かいお茶でも飲もうではないか」

 

・・・うん、違う意味で馬鹿がいる。ねぇドレイク村長代理、帰っちゃ駄目?駄目ですか、そうですか、分かりました。

なんかこう巻き込まれたくないと言うか、ちゃちゃっと教えて速攻で帰りたくなってしまう今日この頃です。

あ、スルベ村村長の奥様ですか、寒い中外ではなんですから中へどうぞと、はい、ありがとうございます。俺たちは未だ村長宅前で口喧嘩をする中年二人を横目に、お屋敷の中へと入って行くのでした。

 

あ~、偽癒し草の煮出し茶が旨い。家の外からは中年の口喧嘩の声が聞こえて来ますが気にしてはいけません。でもマルガス村の村長、よく俺たちが来ることが分かりましたね。大体今頃に来るって言うのはホルン村長に聞いていたと、正確に何時とは分からないから七日前くらいから毎日見に来ていたと。マルガス村の村長は暇人なの?

マルガス村まではそれほど遠くないんだ、大人の足なら一時間半くらいなんだ、へ~。微妙な距離なんですね、そりゃ喧嘩も絶えないか。

所で村の皆さんは食料の方はどうなってます?ギリギリ何とか?マルガス村の方に川があるんですか、そこで魚が釣れると、でも喧嘩の原因にもなると、やってられませんな~。

 

「「ハァ~」」

話を聞くだけで疲れてしまい深いため息を吐く、俺とドレイク村長代理なのでありました。




本日二話目です。
今日あたり桜も満開?桜って暖かくなると一気に咲きますからね。
桜が散る頃になるとスギ花粉も大分楽になって来るんですけど、早く終わらないかなと毎年思います。
いってらっしゃい。
by@aozora
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