転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第404話 村人転生者、お祭りの準備をする (二回目)

枯草の広がる草原、多くの馬と多くの村人が集う中、その講習会は行われていた。

 

「え~、皆さんの覇気耐性訓練並びに乗馬訓練はかなり上達したと聞いています。これも皆さんが集中し、真剣に訓練に励んでくれている証拠、主催者側としては大変喜ばしく思っております。

さて本日は、今回の祭りの盛り上げ役となるバルカン帝国の各種最新兵器についてご説明いたします」

講師役のアルバート子爵家騎士団所属騎士ケビン・ドラゴンロードは、集まった村人や同僚の騎士、アルバート子爵家の方々を見回した後、草原に向け手をサッと振り標的となる壁を出現させるのだった。

 

「ご覧いただきますのは今回の祭りで登場するであろう兵器の数々となります。先ずはこちら、石火矢と呼ばれる兵器です。

これはこの砲身に爆薬と弾丸が一緒になったこちらの弾を設置し撃ち出すというものです。最大の特徴はこの弾が入った箱を使う事で連続して撃ち出す事が出来るという点です。

とは言っても爆薬を使っていますので、あまり何度も撃ち続けていると熱により砲身が歪んだりして命中率が下がります。実際の運用では暫くの間を開ける必要があると思われますが」

 

そう言い石火矢を標的の壁に向け構えるケビン。

「結構うるさいので驚かないでくださいね」

一言注意を促してから引き金を引く。

“ダーンッ!!”

草原に響く射撃音、村人たちは突然の轟音にビクッと身を震わせ、馬たちはぴくぴくと耳を動かす。

 

「はい、結構驚かれたと思います。あの壁まで大分離れていますけど、確り壁に食い込んでいるのが見て取れると思います。

魔法レンガの壁や丸太くらいであれば破壊出来るくらいの攻撃力があります。

次にこちら、この小樽に入ってるのが最新式の爆薬になります。

運用方法としては火をつけて敵陣に投げ込む、侵攻してくる敵の足元に設置しておいて爆破する等の使われ方をしていました。

では実際に使ってみましょう。先程よりも大きな音がしますので気を付けてください」

 

ケビンはそう言うや小樽の端の起爆符を作動させ、「うりゃ」という掛け声と共に標的の壁に投げ付けた。小樽は放物線を描き標的に向かい飛んで行き・・・。

“ドゴ~~ン”

それは轟音と共に壁もろとも弾け飛ぶのであった。

 

「はい、中々の威力ですね。爆薬は小樽一つでも簡単な建物破壊や、村を囲う柵くらいでしたら吹き飛ばす事が出来ます。

次に大樽ですね。これは地面に設置して敵の侵攻部隊を吹き飛ばしたり、崖などに設置して渓谷ごと破壊したりと言った使われ方をされている様です。

ランドール侯爵領戦役でランドール侯爵領領都スターリン北門前の草原に設置されていた物がこれに当たります。

アルバート子爵様や騎士団の方々は実際に目にしているのでその危険性をご理解していただけているとは思いますが、この兵器は大変危険です。

ですのであらかじめ草原に設置させていただいた物の爆破をご覧いただきたいと思います。

蒼雲さん、お願いします」

 

ケビンの合図に村人側に控えていた鬼人族の蒼雲が一歩前に出て、懐より数枚の紙束を取り出す。

 

「それじゃ行くぞ?“我願う、呪符の煌めき。爆炎!”」

“チュドーーーーーーーン”

““““ヒヒ~~~~~ン!!””””

大地から天高く立ち昇る火柱、村人たちは唯々唖然とし、馬たちは驚きに後退りする。その爆発音は大気を揺らし、衝撃波が身体と心を激しく揺さぶる。

 

「え~、かなり驚かれたかと思います。実際の戦闘では大型の投擲機が使用され、先程の大樽爆薬が空から飛来します。

アスターナ男爵領の戦場では、この大樽爆薬により数万の将兵が吹き飛ばされ命を落としました。本当に恐ろしい兵器ですね」

 

ケビンの解説に顔を青ざめさせガタガタと身を震わせる村人たち。自分たちは何時から勘違いしていたのか、<魔力纏い>を身に付け、<覇気>を身に付け、ケビンの「戦場に行きますが戦闘はしませんよ?」との言葉に物見遊山な気持ちになっていた。

だが戦場に行くという事は殺し合いの場に赴く事、人の殺意を受け続けるという事。自分たちが嘗て受けて来た人が持つ害意や殺意といったものの記憶が、一気にフラッシュバックする。

怖い、怖い、怖い、死にたくない、死にたくない、死にたくない。

人というものは本当に恐ろしい、歯が浮き、奥歯がガタガタと音を立てる。

 

「ケ、ケビン君、これはちょっと・・・」

鬼神ヘンリーが浴びせる殺気は本物であり、それに耐えうる訓練を積んだ村人たちは確かに精神的な強さを身に付けたのだろう。だがそれでも彼らは辺境の村人、鬼神ヘンリーや剣鬼ボビーのように常に戦場に身を置いて来た様な猛者ではない、人の害意や悪意から“オーランド王国の最果て”に逃げ延びた弱者、明確な死に対してはあまりにも脆い。

アルバート子爵は隣で顔を青くし身を震わせる妻たちを抱き締めると、“やり過ぎではないか”と抗議の言葉を掛ける。

 

「え~、そうですね、やり過ぎという言葉は否定しません。ですが何が起こるのか分からないのが戦場です、常に俺が付いていれば守る事は出来ますが、時にはその場を離れなければならない事もある。

最低限どんな危険があるのかという事は知っておかなければならないし、事前に知っていれば恐怖で動けないといった事も防げるんです。

それに皆さんにはこれらの危険が不意打ちで襲って来ても対処出来るようになっていただくつもりですんで」

 

「「「「はぁ~~~!?」」」」

ケビンの言葉に空いた口が塞がらなくなる村人一同。今の破壊を不意打ちで受けて対処出来る様にする?この男は一体何を言っているのかと。

 

「う~ん、それじゃ簡単な実例から」

ケビンはそう言うと、再び手を振り地面から壁を出現させる。

 

「えっとエミリーちゃん、ちょっとこの壁をぶん殴ってくれる?強さはそうだな、ジェイク君を腹パンする時くらいの強さで」

ケビンの指名に、エミリーはキョトンと首を捻るも、言われた通り「えい」という可愛らしい掛け声と共に壁をぶん殴る。

 

“ズドーーーーン”

「「「「・・・・」」」」

跡形もなく吹き飛ぶ壁、その前ではエミリーがただ茫然と佇む。

ジェイクは自身の腹部を摩りながら、“だよな~、だって俺、いつの間にか<物理攻撃耐性(極)>のスキルが生えてたもんな~”と一人納得といった様子でウンウン頷く。

 

「今度は俺の事をぶん殴ってみて貰える?どこからでもいいし、全力でやってもらって構わないから」

ケビンの言葉に最初戸惑いを見せるエミリーだったが、にこやかな笑顔で「大丈夫大丈夫、大福の突進に比べたら余裕余裕♪」と答えるケビンに、「うん!!」と返事をして構えを取る。

 

「セヤッ!!」

先程とは違い気合の入ったエミリーは全身から覇気と魔力を(ほとばし)らせ、「ハッ!!」という掛け声と共に拳を振るうのだった。

 

“ズゴーーーーン!!”

人の身体と拳がぶつかり合ったとは思えないほどの衝突音が草原に響く。

その破壊音に思わず目を瞑ってしまう村人たち。

だが・・・。

 

「いや~、スゲーの、エミリーちゃんいい物持ってるわ~。想像以上、お兄ちゃんビックリしちゃった」

それは脇腹下方から抉るように撃ち込まれた右拳を受けながらも平然と会話する、“マルセル村の理不尽”の姿であった。

 

「ケビンお兄ちゃんスゲー、その技術を是非俺に!!」

ケビンの有り得ないタフネスさに、すかさず師事を仰ぐジェイク。(死活問題)

ケビンはそんなジェイクの様子に苦笑いを浮かべつつ、村人全員に顔を向ける。

 

「基本は<魔力纏い>の精度、如何に無駄なく高密度の膜を張り続ける事が出来るか。更に言えば内包する魔力を循環させることで衝撃にも耐える事が出来る様になります。これがまず一つ。

もう一つは<覇魔混合>、これの何が凄いって魔力だろうが覇気だろうが数段階上の別物にしちゃうって点。<覇魔混合>をした状態でファイヤーボールを撃ち出した日には完全に攻城兵器だから、本当に気を付けてくださいね?

で、<覇魔混合>をした状態でそれを身体に纏っておけば、石火矢だろうが大樽の爆破だろうが痛くも痒くもありません。

頭に直接あたっても小石がぶつかったくらいの感じ、目に当たってもゴミが入ったかなってくらいにしか衝撃が来ません」

「「「「・・・・・」」」」

 

ケビンのとんでもない説明に、思考が停止し身体の固まる村人たち。

そんな中鬼神ヘンリーと剣鬼ボビーだけは然もあらんと言った風に首を縦に振る。

マルセル村の守護獣大福との激闘を繰り広げる彼らにとって、石火矢も大樽の爆薬爆破も大した脅威に思えなかったのである。

“あんなの大福の突進に比べたら小虫?”というのが彼らの素直な感想であったのだ。

 

「え~、最後に今回の祭りの最大の兵器、“精霊砲”についてですね。

これはちょっと現物を用意出来なかったんで、精霊砲を再現したものをご覧いただきたいと思います。

ただこの兵器は広域破壊兵器なんで、無暗に撃つと結構な土地がえらい事になっちゃうんで結界で範囲指定を行わせて頂きますね。

<結界:広域範囲指定>」

瞬間草原に展開される大結界に、驚き目を見開くマルセル村の村人たち。

 

「<影空間:広域範囲指定>っと、これで草原の植物とキャタピラーは確保完了。そんじゃ残月、一発よろしく~」

「畏まりました、マスター。精霊砲発射準備、三、二、一、発射」

いつの間にかケビンの隣に立つ執事服の女性、その姿に驚いていると女性は右手を前方に伸ばし、数字を唱え始める。そして・・・。

 

“バシューーーーーーーーーーー”

それは大地と空を染め上げる閃光、物語に謳われる大賢者の広域魔法の如く、全てが光の渦に包まれる。

 

“ドガガガガガガガガガガガガガガガガーーーーーーーーーン”

激しく揺れる大地、立っている事も出来ず地面に膝を突く村人たち。

激しい爆発音と共に、大地が天空高く弾け飛ぶ。上空高く舞い上がった土煙は、空を灰色の雲で染め上げる。

 

「えっと、こんな感じでしょうか。実際問題結界で防げる程度の攻撃なんで然程問題はないんですが、如何せん範囲が広いのと、被害規模がですね~。本番では一度この攻撃を受けていただきます。攻撃を受けるといっても結界で防ぐので何の問題も無いんですが、砂埃がね~。その辺は何か考えておきます。

以上が今回の祭りでダイソン公国側が使って来るであろう兵器の説明ですね、実際大した事はないんですけど、音と光の演出が凄いんで驚いちゃうかもしれないですよね」

そう言いにこやかな笑顔を向ける理不尽に、「「「「イヤイヤイヤ、大問題だから、結界内に大穴が出来てるから、こんなの死んじゃうから~~!!」」」」と盛大なツッコミを入れる村人一同なのでありました。

 

――――――――

 

「ディア、お帰りなさい。無事に銀級冒険者になれたみたいね、おめでとう」

「「ディア、おめでとう」」

 

「フィリー、エミリー、ジェイク、ありがとう。それと思ったより時間が掛かっちゃってごめんなさい」

そう言い頭を下げるディアに、「頭を上げて、謝罪はいらないから」と顔を上げるよう促すジェイクたち。

 

「話はケビンお兄ちゃんから聞いてるよ、本当に大変だったんだね。

俺もマリアお母さんから女性冒険者の苦労話は何度か聞かされたから、ディアがどれくらい大変だったのかは想像出来るよ。

でも銀級冒険者昇格試験の最中に襲い掛かって来るって、領都の冒険者って馬鹿なの?意味解んないんだけど」

そう言いこめかみを揉むジェイクにハハハと乾いた笑いを返すディア。

 

「実際馬鹿な冒険者が多かったですよ?原因は例の戦争なんですが。

アスターナ男爵領の戦場で大量の将兵が戦死した事はみんな知ってると思いますが、その影響で各地で兵士の大量募集が行われたんです。

戦争の影響による不景気で仕事が減って来ている冒険者がこの話に飛び付いた、すると冒険者不足が発生して各地域で多くの依頼が滞る様になる。

銀級以上の高位冒険者は領地間の移動制限がありませんから、仕事を求め各地に散っていく。結果としてグロリア辺境伯領から冒険者が減ってしまっているのが現状なんです。

そうなると台頭してくるのが移動制限の掛かってる銅級以下の冒険者たち、これまで彼らを抑えていた高位冒険者が減った訳ですから調子に乗っちゃってるんでしょうね、結構バカやって領兵に捕縛されてましたよ?」

 

ディアの話に途端頭を抱える若者軍団(居残り組)、“戦争って本当に碌でもない”と心底呆れる彼ら。

 

「それよりもマルセル村ですよ、私とボビー師匠がいない間にとんでもない事になっちゃってるじゃないですか。戦争参加の話はケビンさんが領都に来た際に聞きましたが、「戦場には行くけど戦争はしないよ?」とかいう訳の分からない事を言ってたんでどうするんだろうって思ってたら、“攻撃されてもへっちゃらになっちゃえばいい”って意味解らないですよ。

それに石火矢や爆薬の攻撃よりも強力なエミリーちゃんの拳って、その攻撃を耐え続けるジェイク君って・・・。

ジェイク君、ボビー師匠からの伝言です。「解決は出来んが話くらいなら聞く」との事です。

お力になれず、すみません」

 

そう言い頭を下げるディアと申し訳なさそうな顔になるフィリー。

そんな中「ジェイク君は大丈夫だよね、だってジェイク君は強いんだもん。私なんかジェイク君の足元にも及ばないんだよ?ね~、ジェイク君♪」と言ってにこやかな笑顔で下から覗き込むエミリーに、「そ、そりゃそうさ、俺は最強なんだぞ~」と言って乾いた笑いを浮かべるジェイク。

そんな二人のやり取りに、“ジェイク君、強く生きて”と女神様に祈らずにはいられないフィリーとディアなのでありました。

 




本日二話目です。
いってらっしゃい。
by@aozora
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