転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第453話 辺境男爵、授けの儀に臨席する

「それでは皆様、ゆっくり目をお開けください。

これにて授けの儀、滞りなく執り行われました。皆様方におかれましては常に女神様を身近に感じ、日々を健やかに過ごされますようお祈り申し上げます。

本日はおめでとうございます」

 

メルビン司祭様の御言葉に、瞼を開き姿勢を崩すジェイク君とエミリーちゃん。二人とも何か柔らかな表情をしたまま立ち上がります。

やはりメルビン司祭様のお貴族様用の祝詞は精神安定作用やら身体を癒す作用があるのだろうか?

 

そんな二人の様子に嬉し気な表情を向ける保護者二名。それは子供の成長を喜ぶ一人の父親としてのもの。

ホーンラビット伯爵閣下はミランダ夫人と再婚して素直で可愛い娘が出来たと大喜び、目茶苦茶溺愛してたからな~。娘大好きパパさんとしては、晴れ着の一つでも贈りたい気分なんだろうな~。

片やトーマスさんはマルセル村が貧困にあえいでる時代を知ってるからな。トーマスさん達が引っ越してきた当時は既にドレイク村長統治の時代になっていたんで寒さや飢えで人が亡くなるって事は何とか回避していたみたいだけど、それでも貧しい辺境の寒村には違いなかった筈。

そんな中で一から畑を耕し生活出来る様にするまでに、どれ程の苦労があった事か。ジェイク君はマルセル村の極貧生活の中で育て上げた大切な宝、そんな我が子が無事に授けの儀を迎える。

小学校の卒業式で号泣する父親の気分なんだろうな~。

真新しい制服姿で合唱する子供の姿、感動ものだよね。(涙)

 

シスター様に促され、“鑑定の儀式”を受ける為に別室へと向かうジェイク君とエミリーちゃん。俺達付き添いは大聖堂待機です。

エミリーちゃん、ジェイク君に「ジェイク君はどんな職業を授かるんだろうね?楽しみだね。王都の中央学園に行ったら、一緒に王都巡りをしようね♪」(ニッコリ)って微笑み掛けてるけど、アレって絶対ジェイク君の職業が<勇者>だってことを知ってる顔じゃん。本部長様辺りから教えて貰ってるじゃん。

ジェイク君、「あぁ、俺もエミリーと一緒の学園生活が送れるように祈ってるよ。大丈夫、きっと何とかなるさ、今まであれだけ頑張って来たんだからな」とか言って元気な笑顔を向けてエミリーちゃんを励ましてるけど、君、エミリーちゃんの掌で踊らされてるだけだから。

エミリーちゃん、分かっててやってるから。

俺は仲良く青春の一コマのような会話をしながら扉の向こうに消えて行く若者二人の後ろ姿を見送りながら、先程まで側にいたあなた様との会話を思い出すのでした。

 

なお、あなた様の神気は黒鴉先生に吸い取っていただきました。ホーンラビット伯爵閣下やメルビン司祭様が「なんだ、この神聖な気配は!?」とか言い出したら不味いっすからね。ミルガルの教会での失敗は繰り返さないのであります。(敬礼)

 

―――――――――

 

“まぁそんな訳で、今エミリーちゃんは天界の**#@様の所で保護されてるわ。こっちの調査が終わり次第地上に戻される手筈ね。

原因もはっきりしたし、これからはこうした事が起こらない様に何らかの対策が施されると思うわよ?関係部署の人間は大変だと思うけど。

 

で、折角勇者が側にいるんだしその調査も行おうって感じ?いずれ誰かが調査に派遣される事にはなってたしね”

 

そう言うやいつもの如く空中に大きなステータス画面を表示するあなた様。

 

名前 ジェイク

年齢 十二歳

種族 普人族

職業 勇者(堅牢)

スキル

鑑定 魔力支配 身体支配 聖剣術 収納 挑発 堅牢堅固 不撓不屈 自己回復

魔法適性

火 土 風 光

 

称号

スライムの王の弟子 理不尽の弟子 神々の同情

 

加護

堅守楯神(けんしゅたてがみ)の加護 筋肉神の加護 回復神の加護 剣神の加護 魔法神の加護

 

「へ~、俺ってこれ迄“魔法の勇者様”とか“剣の勇者様”って周りの人間が勝手にそう呼んでただけだと思ってたけど、勇者の職業にもちゃんと区分があったんですね」

 

“へっ、イヤイヤイヤ、無いからね、そんな話聞いた事ないから。

これって初めて観測された事象?このステータス結果は**#@様に送っておくわね。

でも<勇者(堅牢)>って。普通なら盾持ちで壁役を行う者に付く様な区分じゃないの?勇者の職業でも付いたりするのね。

スキル構成なんかはまさに壁役なんだけど、盾スキルは持ってないし、一体どうなってるのよ。

それに既に加護がこんなに、称号の<神々の同情>って”

 

あ~、ジェイク君、神々に同情されるレベルだったんだ~。

堅守楯神(けんしゅたてがみ)の加護 筋肉神の加護 回復神の加護>、・・・腹筋だね。

そっか~、ジェイク君、神話級の腹筋を手に入れたのか~、スゲー。(遠い目)

 

“一つ一つ見て行くわよ”

あなた様がそうおっしゃると新しいモニターが開かれ、その詳細が表示されました。

 

<勇者(堅牢)>

その者、堅牢にして堅固、強靭な肉体を持つ絶対の防壁。あらゆる攻撃に耐えうる可能性を秘めた者に与えられる職業。

 

<鑑定>

勇者特典。通常の詳細人物鑑定の様な細かな鑑定が可能。熟練度に関わらず、あらゆる鑑定を行う事が出来る。

 

<魔力支配>

魔力操作 魔力制御 魔力回復 魔力障壁 魔力視 魔力耐性 魔力枯渇耐性 魔力感知 魔力状態異常耐性 魔力隠蔽 無詠唱 を統合

 

<身体支配>

気配操作 気配察知 身体強化 無音行動 回復力強化 防御力強化 思考加速 縮地 俊足 立体機動 空中歩行 三半規管強化 を統合

 

<聖剣術>

神々が作り出せし聖剣の如き剣技。聖剣を持たずともその技を再現可能。

剣術の上位互換。

 

<収納>

生物以外収納可能、時間停止機能付き。収納容量は魔力量次第。

 

<挑発>

相手を挑発し、敵愾心を煽る。挑発された相手は標的を強制的にスキル発動者に変更させられる。

 

<堅牢堅固>

丈夫、只管丈夫。ただ硬いだけじゃなく柔軟に衝撃を分散、壊れない!!

 

<不撓不屈>

諦めない不屈の魂は奇跡を引き寄せる。そのアダマンタイトより堅牢な精神は、あらゆる困難を乗り越える事だろう。

 

<自己回復>

どの様な傷害を負おうとも、例え内臓を破壊され様とも、回復して見せる。熱い魂は命を諦めたりはしない!!

 

・・・ジェイク君、その生きる事に真っ直ぐな姿勢、尊敬に値するよ。

エミリーちゃんの拳はジェイク君の魂に確り刻まれてるんだね。

ジェイク君、前に言ってたもんね、「豊かな老後を掴み取る」って。

スキルにジェイク君の覚悟と思いの深さを感じたよ。涙なしには見れないよ。

そりゃ神々も同情するよね、システムさんが称号にしちゃうってものだよね。

あっ、あなた様が益々分からないって顔をなさってる。あなた様ってジェイク君のアーカイブは見た事ないんだろうな~。

 

「あなた様、ジェイク君のアーカイブをご覧になって下さい。おそらく例のシステム的に分離された“掲示板”にジェイク君の修行の日々が出て来ると思うんで。

もしくは堅守楯神《けんしゅたてがみ》様、筋肉神様、回復神様辺りにご確認いただければより分かり易いと思います。

俺の口からはちょっと」

俺からの言葉に首を傾げながらも“分かったわ、天界に戻ったら確認してみるわね”というあなた様。

これって女性には分かりにくいんだろうな。先程の三柱の神々は多分男性神だね、恐妻家の。

後でお酒とお摘みを奉納しておこう。

 

“それとこれは**#@様から送られて来たエミリーちゃんのステータスね。“ケビンには迷惑を掛けました。エミリーちゃんにはケビンの事は内緒にしておきました”って伝えて欲しいとの伝言よ。

確かに伝えたわよ”

そう言い今度はエミリーちゃんのステータス画面を開くあなた様。

多分聖女であるエミリーちゃんの事も気に掛けておいて欲しいという本部長様の御心使いなんだろうな~。

あの御方は本当に人が出来ていらっしゃるから。

 

名前 エミリー・ホーンラビット

年齢 十二歳

種族 普人族

職業 聖女(武)

スキル

祈願 棒聖 剛腕無双 魔力支配 身体支配 鎧袖一触 絶対貫通 手加減(極) 聖拳術

魔法適性

 

称号

一途なる者(*)

 

加護

拳神の加護 武神の加護 愛神の加護

 

「・・・すみません、あなた様。これって、聖女のステータスですよね?」

 

“・・・そうね、聖女のステータス。聖女のステータスよね!?

武術家とか拳闘士のステータスじゃないわよね!?”

エミリーちゃんのステータス画面を見ながら“意味が分からない”と頭を抱えられるあなた様。

でもほら、スキルには聖女らしいものもあるじゃないですか、<祈願>とか。<祈願>、そう言えばムエタイの選手は試合前に神々に祈りを捧げていた様な。戦国武将も戦前(いくさまえ)には神々に勝利を<祈願>していた様な・・・。

 

“確認してみましょう。大丈夫、きっとあるはずよ、聖女を聖女たらしめる何かが”

うわ~、あなた様が藁にも縋る思いで確認し始めちゃったよ。

自身の常識が揺さぶられまくってるんだろうな~。高位存在を混乱に陥らせるエミリーちゃん、恐るべし。

 

<聖女(武)>

聖女とは、ただ安全なる場所にて癒しを施す者にあらず。自らを高め、あらゆる場所に赴いてこその聖女。

武に生きるもまた聖女のあるべき道なり。

 

<祈願>

その祈りと願いは、多くの人々を癒したまう。広域治癒、広域解呪を行う事が出来る。<祈り>の上位互換スキル。

 

<棒聖>

突けば槍、薙げば大剣、叩けばメイス。棒術を極めし者の至る次の段階。

 

<剛腕無双>

その比類なき剛腕に、向かうところ敵なし。あらゆるものを薙ぎ払う拳士たらん。

 

<鎧袖一触>

敵を難なく打ち負かす。武人の至る一つの境地。身体能力、耐久能力に補正大。

 

<絶対貫通>

あらゆる障害を貫く絶対の一撃。例えそれが物理攻撃無効のものであろうとも必ずダメージを(もたら)す。

 

<手加減(極)>

自在に手加減を加える事が出来る。どの様な強力な攻撃であろうとも、相手を死なさず仕留める事が可能。

 

<聖拳術>

それは癒しの拳。それは慈悲の拳。武とは、救いの道と知れ。

回復効果、浄化、癒し効果に極大補正。

 

・・・武人じゃん。拳の道を究めちゃってるじゃん。

あれ?エミリーちゃんって確かに父ヘンリーに体術を習ってはいたけど、そこまで拳の道に生きてるって訳じゃなかったよね?

俺や白雲の方が武術には真摯だったよね?

これが才能?拳神に認められるって、こういう事なの?そこに聖女補正で倍の倍って奴?

 

チートだわ~、そんなん俺ら一般人がやる気なくすって~。聖女様や勇者様が歴史に名を残す訳です、ドラゴンと渡り合うって無理じゃんとか思ってたけど、ジェイク君やエミリーちゃんのステータスならイケる気がするもん。

流石は神に選ばれし職業候補者たち、持ってるものが違い過ぎましたってあなた様、どうなさったんです?

こんなの私が知ってる聖女じゃない?個性ですよ個性、世の中が画一的になってしまったら変化も発展もないじゃないですか。女神様は人々の繁栄と文化の発展をお望みなんでしょ?だったらこういう事もありますって~。

俺の説明に渋々納得なさるあなた様。

そうは言っても事実は事実、受け入れざるをえませんっての。

 

でもな~、今頃あちらでも大混乱に陥ってるんだろうな~。取り敢えずあなた様には皆様の分の光属性魔力マシマシマシカクテル(ジャイアントフォレストビー蜂蜜甘木汁バージョン)をお持ち帰りいただこう。

 

“ドンッ、ドンッ、ドンッ”

俺は収納の腕輪からカクテルの入った一斗缶サイズの大きな徳利(土属性生活魔法で作製)を取り出し、「皆様でお楽しみください」と言づけてあなた様に差し出すのでした。

 

「それであなた様、エミリーちゃんの称号<一途なる者(*)>の(*)って何なんですかね?

これってもしかして俺の称号:辺境の勇者病仮性患者(*)と同じ感じなんですかね?」

 

“あっ、本当だわ。でも多分そうなんじゃないかしら。前にも言った事があるけど、称号はあくまで付箋、目印だから多少の変更は直ぐに出来るのよ”

 

<一途なる者>

スライムの王の弟子 理不尽の弟子 愛拳の調教者 一途なる思い 女性神たちの応援

 

「“・・・・・」”

そっか~、ジェイク君、調教されちゃってるのか~。

あなた様、真似しないでくださいね?お相手の方が気の毒ですから。

 

“しないわよ!!”

何故か俺の思考に速攻でお返事をなさるあなた様。心当たりがおありに“ないから、本当だからね!!”・・・そういう事にしておきましょう。

 

“それじゃ私も戻るわ。エミリーちゃんの件は完全な事故だから、**#@様も十分言い聞かせてくれているとは思うけど、ケビンも気にして様子を見ておいてくれると助かるわ”

そう言い光の粒子となって天上世界へと戻られるあなた様。

去り際に“居酒屋ケビンの開店、本気でお願いね”と一言残していく姿に、“神聖なる高位存在って一体・・・”と思いつつ自分の座っていた長椅子に戻る俺氏。

あなた様が顕現された残り香(神気)を黒鴉先生に吸収して貰う事も忘れません。

 

止まっている時間の中、不意に出現したエミリーちゃんは周囲をキョロキョロ見回し、自身がもといた大聖堂に戻って来た事を確認すると急ぎ祈りの姿勢を取ります。

 

「それでは皆様、ゆっくり目をお開けください」

動き出した時間、掛けられたメルビン司祭様の御言葉、何事もなかったかのように振る舞うエミリーちゃん。

エミリーちゃん、向こうで一体どんな事を言われて来たんですかね。

その何も知りませんといった表情、事情を知らなかったら俺でも騙されちゃうんだろうな~。

急に思い出された在りし日の記憶にある言葉、“全ての女は女優である”。至言だと思います。

 




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