転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第501話 魔都総合武術大会、一日目 (2)

“ガキン、ガキン、ガキン、ガキン、ガキン”

“グホッ、ドザッ”

 

“““““ウォ~~~~~~~~!!”””””

試合は進む、コロシアムの観客は勝負が決まるごとに歓声を上げ、勝者を祝福する。

 

「兄弟子、あのヘンリーさんみたいな剣士、中々強かったな。あれなら大福チャレンジをやらせてもいい線まで行くんじゃないか?」

「あぁ、急な状況に対する対応力も申し分ない。あれは研鑽と経験から来る勘みたいな感じだったな。

ねぇ副ギルド長、この暗黒大陸にはあれくらいの剣士がゴロゴロいるんですか?

いや、未知の大陸って言われるくらいだし、少なくともあれくらいじゃないと通用しないのか?」

 

「イヤイヤイヤ、お前ら何言ってるんだ?今勝ち上がった剣士は武勇者ダレリアン、ここ暗黒大陸でも指折りの剣客だぞ?

狂えるフェンリルやシーサーペントの群れを単騎で倒した猛者だぞ?

そんな奴がゴロゴロいるって、どんな魔境だよ」

 

副ギルド長の言葉に顔を見合わせ首を捻るケビンと白雲。

 

「ごめんなさい、失礼な事聞いてるかもしれないけど、魔王軍四天王の方々と今の武勇者だとどっちが強いとかって分かります?」

「ん?それは当然魔王軍四天王の方々だろう。まぁ比べる方向性が若干異なるとは思うが、あの方々はそれぞれが単純戦力としても飛び抜けていらっしゃるからな。

そうだな、ダレリアンであればそれでも副官クラスの強さはあるかもしれないが」

 

「「あ~、メルルーシェさんね、納得」」

副ギルド長の言葉にウンウン頷いて納得を示すケビンと白雲。その様子に副ギルド長ウインダムが口を開く。

 

「なんだ、ケビンたちはメルルーシェの事を知ってるのか?そう言えばさっきもゼノビア様やメルルーシェの名前を出してたよな」

「えぇ、以前お二人がオーランド王国に偵察に来られた際に、ウチの村に立ち寄られまして。丁度村祭りをしていたところだったんで、そこで手合わせを。

お二人とも御強かったですよ?無論勝ちましたが」

 

そう言いドヤ顔を決めるケビンに何を言ってるのか分からないといった顔の副ギルド長。

 

「えっと、それってのはメルルーシェがケビンに負けたって事か?

まぁレビアンヌ森林地帯の魔力災害を半日足らずで解決して来ちまう奴なら当然なのか?」

「いえ、メルルーシェさんに勝ったのはそこの白ですね。俺がやったのはゼノビアさんです。なんか“魔王軍四天王の後継者は君だ”みたいなことを言われて勧誘されちゃいましたよ、無論全力でお断りしましたけど」

 

「はぁ!?いや、へっ?はぁ~!?」

何やら大混乱に陥る副ギルド長、そう言えば何かゼノビアさんの事を尊敬している様な話しぶりだったもんな、そんな御方に俺が勧誘されたなんて話をしたらこうなるか。

よし、この話はあまり他所ではしない事にしよう。自慢しているみたいでよろしくないし。

 

「ケビンさん、開会式にいたデカいのが出て来ましたよ」

ブー太郎の声に視線を闘技舞台に移せば、身の丈四メートルはあろうかという巨漢が姿を現した。

流石大きい事はいい事だの暗黒大陸、魔物も人もデカイデカイ。今回の出場選手たちも二メートル近い偉丈夫がゴロゴロいたもんな~。あんな中に俺が紛れたら完全に子供よ?

 

「あれは巨人族のドーバンだな。今大会の優勝候補の一人、巨人族は龍人族と双璧をなす暗黒大陸の最強部族だな、互いに最強を名乗ってるので実際どっちが強いのかは分からないけどな」

 

あぁ、元祖と本家みたいな奴ですね。実際それ程大差がなかったりするっていうあれですね。

しかし巨人族か~、何がどうなったらあんな大きな種族が生まれるんだか。

 

「一説には巨人族はトロールの血を引いているんじゃないかって話がある。トロールの特徴である驚異的な回復力や大きな身体を持つ事がその証拠と言われているが、その真偽はハッキリしていない。

いずれにしろ暗黒大陸で生き残っていく為の力は十分有しているって訳だ」

 

う~わ、なんかスゲー。そう言えばゼノビアさんも角のあるホーンラビット族は先祖に血の近い高位の者とか言ってたし、本当に魔物の遺伝的性質を引き継いでいる?

なんか太古にそんな実験を行った連中がいたんじゃないかっていう疑いがですね~。もしくは上の方々が何かしたとか、魔物に対抗するために職業とスキルなんて物をお与えになったくらいだし、人族が生き残るために多様性として様々な種族を作られていても不思議じゃない?

アマネ様もエルフ族は元々草原と森の浅い地域に住む耳長の種族って言ってたしね。もっとも最初の頃は今みたいな美形揃いじゃなかったみたいだけど。

人族の多様性⇒種族変化⇒種族“人”になった俺。うん、普通の事だったんだね、そういう事にしておこう。

 

「“お~~っと、開始早々ドーバン選手が動いた~!!巨大な棍棒を使っての打ち下ろし、これは当たったらひとたまりもないぞ~!

他の選手はなす術もなく・・・いや、ドーバン選手が棍棒を引き上げるのを見計らって一斉に取り付いた~。

ジャイアントボアに取り付くアイアンアントのごとく、一気に仕留めに行ったぞ~。これはさしものドーバン選手も堪らず・・・いや、ドーバン選手、棍棒を手放し前方に転がり出したぞ~!!”」

「“ドーバン選手、的確な判断です。取り付いた相手を一々構うのではなく、自らの身体を前転させる事で振り払いと攻撃を同時に行っています。

吹き飛ばされた選手たちはひとたまりもないでしょう”」

 

スゲ~、まるで神話の一コマ、ゴリアテ対ダビデ軍団じゃん。

しかもこっちのゴリアテは油断なんか一切してないもんだから動く動く、投擲なんか喰らわないって感じだし、こりゃ打つ手なしじゃん。

 

「勝者、ドーバン選手」

“““““ウォ~~~~~~~~~~~!!”””””

 

死屍累々、闘技舞台の上はぶっ飛ばされた対戦者が呻き声を上げてるし。

でもこの人達も凄いよな、最後まで決してひるまずに向かって行ってたし。その心意気、扶桑国の(つわもの)のごとし。

扶桑国にしろ暗黒大陸にしろ、めっちゃ修羅なんですけど。こんな所に武者修行に来てるジミーがどう変わったのか、超恐いんですけど。

そう言えば太郎が<業務連絡>でデッカイ亀を吹き飛ばしてたって言ってたよな~。

亀か~、エクアドルラかな?・・・大量の嫁さんなんか作ってないよね!?色んな意味でコワインデスケド。

 

「兄弟子、いよいよだ。次はジミーの番だぞ」

白の声に闘技舞台に目を向ける。そこには五人の男性選手と一人の女性選手。

 

「副ギルド長、ずっと疑問に思ってたんですが、各ブロックで参加人数に開きがあるのってどうしてですかね?

確か一ブロック十二人出場するって聞いてたんですが、きっちり十二人いたのって第四ブロックくらいでしたよね。他は大体二人から三人くらい少なかった様な。この第七ブロックなんて半分の六人しかいないんですけど」

「あぁ、それは予選会で倒されちまったからじゃねえか?

予選通過は一回につき最大四人だが、四人選出しないといけないって訳じゃない。大技で全員を伸しちまったりした場合は、最後に立っていた一人が予選通過になるなんて事はよくあるんだよ。

あの動きからすると、露出の多い姉ちゃんとジミーは予選で他の連中を全部倒しちまったって口なんじゃねえか?」

 

言われてみれば男性四人がやや塊で動いていて、ジミーと女性選手が我関せずといったように見受けられる。

 

「“第七ブロックの選手の入場です。この試合、ケチュア選手とジミー選手は共に予選会を単独通過した強者、どの様な戦いを見せてくれるのでしょうか!?”」

 

「あら、あなたも単独通過だったの?可愛らしい顔をして中々やるじゃない。

フフフ、お姉さん、強い男の子は好きよ?

でも勝負は勝負、じっくり楽しませて頂戴ね♪」

「ハハハ、恐ろしいですね。でもどうでしょう、あちらさんは明らかに手を組んでいらっしゃるみたいですし」

 

そう言いジミーが向けた視線の先、そこにはまるでパーティーを組んで行動するかのような動きを見せる四人の男たち。

 

「あ~、時々いるのよね、ああいう輩。明日の準々決勝にどうしても進みたいからって、力を合わせるって奴?

まぁ作戦としては悪くないと思うわよ?買収行為も別に好きにすればいいって感じだし?

ここは暗黒大陸、自分の持つ全てを出して戦うってのは礼儀だしね」

「そうですね、人脈も財力も力の内って考えは嫌いじゃないです。方向性が違うだけでそれを用意出来るだけの力があるっていう事には違いないんですから。

純粋な武技だけで生き残れるほどこの暗黒大陸は甘くない」

 

そう言いニヤリと笑うジミー。そんなジミーに「あなた、若いのによく分かってるわね~。お姉さん、気合い入れないといけないかしら?」と軽く返事をするケチュア選手。

 

「はじめ!!」

審判が開始の合図を叫ぶ。ジミーは瞬間脱兎のごとく走り出し、四人組のパーティー目掛け切り掛かる。

だがそれは読んでいたとばかりに、男達は陣形を取り対処する。

 

「気を付けろ、この男は速さに特化している。一瞬の隙が敗北に繋がると思え!!」

「「「ハッ、ザギラ様!!」」」

 

激しい打ち合いによる攻防、だがその牙城は決して崩れる事はない。

 

「交代、決して一人で撃ち合おうとは思うな。体力を削り討ち果たす」

「「「応!!」」」

 

ジミーは思う、見事な連携だと。少しでも崩れそうな隙が生まれれば、透かさず別の者が対処に当たる。

 

“この四人組、パーティーの力としてはかなり上位のものではないのか?これは学びの多い戦いになるな”

ジミーは口元に笑みを浮かべ、一人一人の動きに注意を向ける。

 

「あ~ん、もう。お姉さんを置いてきぼりにするなんてひどいじゃない。

若い男の子はせっかちさんなんだから。

でもいいわ、私も仲間に入れさせてもらうわね♪」

“ビシュン、カキンッ”

 

ケチュアにより振るわれた剣、それは的確に敵を捉え、目標を背後から切り付ける。だがそれは寸でのところで()()()()()()によって防がれる。

 

「ハハハハ、そうなるんじゃないかと思ってましたよ。流石暗黒大陸、油断も隙もあったものじゃないですよね」

「フフフ、ごめんなさいね。お姉さん、買収されちゃったの。

だって~、優勝賞金の半額を渡されちゃったらね~。今回の大会には龍人族のバンドリアや巨人族のドーバンなんて化け物も出場してるし?

アイツら切れると見境ないし?

何事も引き際って大事じゃない?

だからこれもお仕事なの、恨みっこなしでお願いね♪」

 

“ガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキン”

前後を挟まれる形で防戦一方になるジミー、だがその表情は愉悦に歪む。

 

「恨むだなんてとんでもない、寧ろ感謝したいくらいです。

だからお願いします、お前らの本気、俺に喰らわせろ」

“ゴウンッ”

 

弾けるように広がる強大な覇気、それはまるでSランク魔獣が放つ本気の威圧。

 

「クッ、怯むな!!我らの役目はザギラ様を明日の準々決勝に送る事。

女!!お前も力を貸せー!!」

「アハハハ、なによこれ、お腹がジンジンしちゃう。

こんなの、全力で相手をするに決まってるじゃない!!

<剛腕剛脚><天下布武>、“我が前に敵なし、我が後言うに及ばず。天下無双!!”

坊や、お姉さんの全力、受け止めて~~~♡」

 

「“何と何と、ケチュア選手の肉体がゴリゴリでバキバキでバッツンバッツンな筋肉ダルマに変化したぞ~~~!!

ケチュア選手のあの煽情的な服装は、この為の必要装備だった模様です!!”」

 

“ズド~~ン、ドガドガドガドガドガドガドガドガッ”

 

「“速い、速過ぎる。ケチュア選手の肉体が残像を残し幾つにもブレて見えます!これでは受け止めるジミー選手もひとたまりもありません!!”」

 

「アハハハ、凄い凄い、全然潰れな~い♡

こんなに硬いの初めて~♡」

「ハハハ、それはどうも。速さに力、お姉さんは凄いんですね。

ではこんなのはどうです?“鬼打ち”」

“ズゴーーーーーン”

 

それは受けからの返し技、木刀の柄による全身を使った打ち込み。それは的確に胸骨を捉え、敵を後方へと吹き飛ばす。

 

“ドガンッ、グホッ”

「アハハハ、身体が全くいう事をきかない、どうなっちゃってるのこれ?

ごめんね、どうやらお姉さんここまでみたい。また遊びましょうね、坊や、グホッ」

 

「「「今だ!!」」」

“シュタンシュタンシュタンッ”

“ドガドガドガッ”

瞬間の攻防、同時に襲い掛かる三人の男たちに対し、まるで分身でもしたかのように一瞬にしてその身体を打ち払うジミー。

 

「「「グァ~~~~、“ドシャッ”」」」

 

「さて、残るのはあんただけだな。随分と慕われていたみたいだし、楽しませてくれるんだろう?」

「嘗めるな小僧。これまでの策は明日万全の状態で勝負に挑むための布石、この大会の勝利をより確実にするための補助的なものよ。

大義無き力に屈する程、我が思いは軽くない!!」

“ブォッ”

 

膨れ上がる覇気。

 

「そうだよな、そうじゃなきゃ暗黒大陸じゃないよな。

叶えたい思いがあるのなら全てを薙ぎ払い突き進め、それがこの国の在り様だ!!」

“ブォッ”

 

思いと思いは力となってぶつかり合う。

 

「「いざ、勝負!!」」

“““““ウォ~~~~~~~~~~~!!”””””

興奮する観客、戦いの行方は、二人の漢たちに委ねられるのだった。

 




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