転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第505話 魔都総合武術大会、二日目 (3)

「「ウォーーーーーーーーーー!!」」

“ガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキン”

 

魔都総合コロシアムの中央、闘技舞台の上では二人の男が互いの得物をぶつけ合う。

 

「クッ、重い、それに思いの外流麗な動き。まさか龍人族の戦士がそれ程の剣技を持っているとはな、予想外にも程があるぞ」

武勇者シルフィードは準決勝の相手である龍人族バンドリアの想像以上の実力に、おもわず悪態を吐く。

 

「ハンッ、俺だって馬鹿じゃねえよ、魔都総合武術大会の準決勝に残る程の者相手に素手で勝てると思うほど自惚れちゃいねえさ。

まぁ俺たちは基本余程の事がなけりゃ武器なんか握らねえがな、剣も槍も俺たち龍人族の膂力(りょりょく)に耐え切れず、直ぐに壊れちまうしな。

だがこいつは違う。龍硬石、俺たち龍人族の先祖でもあるドラゴンの力を以ってしても壊れないと言われている鉱物よ。

ただあまりの硬さに加工する手段が限られていてな、龍硬石同士を打ち付けて少しずつ形を整える以外の方法がねぇ。何年、何十年と時間を掛けて作られた逸品よ。

里の者でも限られた者しか所持を許されていないって代物だ。

お前の剣にだって引けを取るもんじゃねえんだよ」

 

“ガギンガギンガギンガギン”

 

「クッ、<重撃><ダブルスラッシュ><大切斬>」

シルフィードの連撃、剣技三連はこれまで多くの強敵を葬って来た必殺の攻撃であった。だが・・・。

 

「ハハハハハハ、いいぞいいぞ、中々歯ごたえがあるじゃねえか。

流石はSランク討伐者、“山落としのシルフィード”。

暴れ狂う巨大アイアンタートルの単騎討伐の話は俺でも知ってるぜ。

確か<終撃“重断”>だったか?

これは祭りだ、いっちょ派手に行こうじゃねえか」

「・・・お前、死ぬぞ?

いや、この場にそんな事を気にする奴はいないか。俺たちはお互い強い奴と戦いたいだけの戦闘狂、己の欲求には逆らえない。

だったらその望み、叶えてやろう」

“ウォ~~~~~~~~~~~~~!!”

 

シルフィードの全身から覇気が溢れる。その力は火属性魔力と混じり合い、深紅の輝きを放つ。

 

「行くぞ、これが俺の全てだ。<終撃“重断”>!!」

“バッ”

それは撃ち出された弾丸、瞬時にバンドリアに迫ったシルフィードは深紅に輝く大剣を全身の力を込めて打ち下ろす。

 

“ドッゴーーーーーーーーーーーン!!!!”

大質量の物同士が衝突したような、途轍もない轟音。発生した衝撃波がコロシアムの観客を襲い、多くの者がそのまま意識を失う。

そしてかろうじて正気を保っていた者たちは目撃する事となる。

 

「グホッ、これが“大亀殺し”、とんでもねえわ。だが武器を持った俺を倒すにはちょっと足りなかったのかもな。

ありがとうよ、シルフィード、お陰でまた少し強くなれた気がするぜ」

 

そこには両手で龍硬石の石剣を構えた形で膝を曲げるバンドリアの姿、シルフィードは大技の後の技後硬直を起こし身動き一つできない。

 

「楽しかったぜシルフィード、またいつかな」

“ドゴンッ”

振り抜かれた石剣、身体をくの字に曲げたシルフィードはそのまま闘技舞台上を吹き飛ばされて行く。

 

“ドンッ、ドシャッ”

「勝者、バンドリア選手!!」

 

互いの力を出し切った戦いに、コロシアムは更なる熱狂に包まれるのであった。

 

―――――――

 

「く~、やっぱ格好いいわ、バンドリア選手。あの少し上から目線の態度も最高、「これは祭りだ、いっちょ派手に行こうじゃねえか」、カ~ッ堪らん!!

相手の大技を受け切ってからの一撃、文句なしの優勝!!

いや~、いいもの見たわ~♪」

 

「おいおい兄弟子、興奮するのは分かるが少し落ち着け、まだあと二試合残ってるからな?ジミーの試合が終わってないからな?

俺たちはジミーの応援に来たんだから、ちゃんと声援くらい送れ」

 

大会関係者観覧席、冒険者ギルド副ギルド長ウインダムが用意したその特別席でやいのやいの騒ぐマルセル村一行。そんな彼らの様子を後ろの補助席に座りながら眺めていたウインダムは思う、“こいつら自由過ぎだ”と。

 

「イヤイヤイヤ、ちょっと待とう。確かにさっきのバンドリアとシルフィードの試合は見ごたえもあったし素晴らしかったと思う、だがそれよりもジミーだろう。

相手は伝説の獣化を果たした獣人、しかもあり得ない程濃厚な闇属性魔力を纏った正真正銘の化け物だぞ?ギルドランクで言えばSランク確定の厄災に勝利したジミーに対して、お前ら反応薄くないか?」

 

ウインダムの言葉は至極真っ当なものであった。突如現れた厄災級の化け物、たとえそれが武術大会の参加選手であると分かっていても、恐れを抱かずにはいられない絶対的な恐怖。

そんな相手を単身打ち破ったジミーは称賛されてしかるべきである。

だがその身内であるはずの者たちは、まるでそれが当然の事であるかのように楽し気に談笑し合っていた。

その光景は異様であり異常、ウインダムの常識では理解し切れない状況であった。

 

「あぁ、まぁジミーは頑張ったと思いますよ?でもジミーだし、あれくらいの相手ならね。それにあいつ、この大会を楽しむためなのか、力の使い方を制限してるみたいだし。

それを言ったら他の選手たちもそうなんですけどね、さっきのバンドリア選手とシルフィード選手の戦いも、本来ならシルフィード選手の大技は見れなかったんだと思いますよ?あれは完全に実戦向けの技、隙が多い分使いどころが難しいっていうのもあるんでしょうが、確実に獲物を仕留める為の威力重視の技でしたから。

でもバンドリア選手はあえてそれを要求した、相手の最大火力を受け切ることで自身の強さを証明しようとした。

それでこそお祭り、勝敗だけにこだわる人には分からないでしょうが、自ら強敵を探して彷徨い歩く武勇者には響くものがあったんでしょう。

 

対してジミーの対戦相手はね~。ちょっと勝敗に拘り過ぎ?動きが直線的過ぎるというか余裕が無さ過ぎるというか、あれじゃいくら強力な力を手に入れたからってジミーには勝てませんよ。

あれだったら獣化する前の方がまだ強かったくらいです。力に振り回されているというか、主人になりきれてない。おそらくですが魔道具か何かによって引き出されたか、魔道具自体の力か。

道具は使いこなしてこそなんですが、ちょっと残念でしたね~」

 

だが返ってきた言葉は冷静な分析による解説、ウインダムは改めてケビンの見識に戦慄する。

 

「それにあの程度の相手なら、ウチの従業員の方がよっぽど強いですからね。あっ、従業員っていうのは俺が契約している魔物たちの事なんですけどね。

特に大福と緑と黄色と白玉はな~、遊びと称して戦闘を強要して来るからな~。

なぁブー太郎、今度代わりに「無理です、死んじゃいます。上司とのじゃれ合いに付き合えるのはケビンさんくらいです!!」・・・そうですか、残念。

まぁそんな感じであれくらいなら特に問題ないかと。

でも強いと思いますよ?ブルーノ選手があの力を十全に使えるようになれば、十分魔境でも通用すると思いますし。

ただな~、あそこは化け物がゴロゴロいるからな~。あまりお勧めはしませんけどね」

 

そう言い肩を竦めるケビンに、こめかみを揉むウインダム。

言葉は通じるのに話が通じない、ケビンの言葉を心が拒絶する、自身の常識があり得ない事態だと警鐘を鳴らす。

 

「よし、よく分からないという事が分かった。ケビンたちものどが渇いただろう、何か飲み物を貰ってこよう」

「あぁ、それならブー太郎、一緒に行って来てくれるか?それとトライデントも頼む」

 

「了解っす」

“コクリッ”

 

ケビンの言葉に席を立つブー太郎と、突然姿を現す黒いフードを被った人物。

 

「!?よし、気にしない気にしない。護衛の中にはこんな感じの奴もいる、よくあるよくある」

ウインダムは何かを自身に言い聞かせる様に言葉を呟くと、ブー太郎たちとともに関係者用の軽食コーナーへと向かうのでした。

 

――――――――

 

「“さて、準決勝第二試合は武勇者ダレリアン選手と武勇者ジミー選手の戦いだ~。ダレリアン選手は魔都でも名の知れた武勇者であり、狂えるフェンリルの討伐やシーサーペントの群れを単騎討伐した話などが知られている実力者。片やジミー選手は昨年武勇者登録をしたばかりの新人ながら、これまでの戦いで確かな実力を示しております。

メルルーシェ様はジミー選手の事を何かご存じでしょうか?”」

 

「“はい、ジミー選手は昨年エイジアン大陸から武者修行に訪れた剣士ですね。その活躍は幾つかの有力氏族の族長から感謝の言葉が届くほどのもので、準決勝第一試合で決勝進出を決めたバンドリア選手とも浅からぬ因縁があるとか。

魔都ではまだあまり知られていませんが、その実力は侮りがたいものがあると思います。

高い実力を持つ武勇者同士の戦い、これは見ごたえのある試合となるのではないでしょうか”」

 

闘技舞台の上に立つ二人の男性、ダレリアンとジミーは互いに観察し、彼我の力の差を探り合う。

 

「はじめ!!」

審判により告げられる試合開始の合図、最初に動いたのはジミーであった。

 

“フンッ、カンカンカンカンカンカン、スパンッ、カンカンカンカン”

鋭い踏み込みからの激しい打ち合い、息を吐く暇さえ与えぬ攻防に、観客たちも思わず息を止める。

 

“カンカンッ、タンッ”

振り抜かれた木刀、ダレリアンとジミーの間に距離が開き、互いに隙を伺いながら位置取りをする。

 

「ふむ、中々良い判断だ。若いし決断力もある、自ら踏み込む度胸もある。将来有望と言ったところかな?」

「お褒めいただきありがとうございます。今回は武勇者の先輩であるダレリアンさんの胸を借りるつもりで、全力で当たらさせていただきたいと思います」

 

“バッ、シュタンシュタンッ、カンカンカンカン、シュタンッ、カンカンカンカン”

 

「ハハハハ、とんでもない新人が現れたものだ、この私が防戦一方だとは。だが私も武勇者、強者との戦いは望むところ。

君の全力を正面から叩き潰してやろうじゃないか」

 

“タッタッタッタッ、シュタンシュタン、ドゴンッ、カンカンカンカン、ドガンッ、シュタンシュタン、カンカンカンカン”

 

走る、跳ぶ、叩き付ける。激しい打ち合いの中、隙を見せれば決めに掛かる。それが誘いであろうとも、その罠ごと打ち破る。

究極の集中と激しい躍動、次第にそれは速度を増し、異次元の戦闘へと姿を変える。

 

「“速い、速い、速過ぎる!ダレリアン選手とジミー選手の余りにも素早い動きに、私ではその姿を捉える事が出来ません!!

メルルーシェ様、彼らの攻防はどうなっていますか?”」

「“そうですね、私の目にはいまだ実力は拮抗しているかのように映ります。ダレリアン選手が切り崩しに掛かればジミー選手がそれを潰し、ジミー選手が主導権を握ればすぐにダレリアン選手が奪い返す。

そうして次第に速度が上がって行っているといったところでしょうか。

ですがそろそろ動きがあってもおかしくないかと、いくらなんでも息つく暇もない打ち合いには無理がありますから”」

 

メルルーシェの言葉は正しかった。ほぼ無酸素状態で打ち合っていた両者、先に音を上げたのはジミーであった。

 

“ドガンッ、グホッ”

剣を打ち込まれ舞台の上を転がるジミー、その姿に目をやりながら何やら考えるそぶりを見せるダレリアン。

 

「ほう、これは凄い。君、覇気で全身を覆っているね?それも無駄のない形で。腹部に切り付けたはずの剣に、ミスリルの鎖帷子(くさりかたびら)にでも切り付けたかのような感覚があったよ。ワイバーンの皮膚でももっと容易く切れるよ?本当にとんでもないね」

 

「いえいえ、俺なんかまだまだですよ。ダレリアンさんこそ息継ぎもせずよくそこまで動けるものだと感心していたんです。

でも分かりました、ダレリアンさんは息継ぎをしないんじゃなく必要ないんですね。息を吸うのは声を出す為、会話さえ気にしなければずっと呼吸をしなくても平気な身体。スキルではなく種族特性、アンデッド系種族の方と剣を交えたのは初めてですが、こんな感じになるんですね。

凄く勉強になります」

 

予期せぬジミーの発言に目を見開く観客たち。

武勇者ダレリアンがアンデッド種族である。それはあまりにも突飛な発言、その様な事はこれまで一度として言われた事が無かったからであった。

だが・・・。

 

「クックックックックッ、アッハッハッハッハッ、凄い凄い、よくそこに気が付いたね、普通相手の呼吸なんかに目が行かないよ?」

高笑いを上げ興奮するダレリアンの姿が、ジミーの指摘が真実であることを如実に物語るのであった。




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