転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第523話 辺境の剣客、授けの儀を受ける (3)

その出会いは唐突であった。

修行で訪れた暗黒大陸中部の森、デイレン連山の麓、鬼人族の暮らす集落忍びの里。

自身の知らぬ法術という技術、忍びの者が使う独特の体術。呪いに蝕まれ自我を失った霊獣“霊亀”との戦い、忍びの里の上忍・下忍と呼ばれる戦士たちとの戦い、最後に残った御屋形様との決戦。

御屋形様が自身を依り代に命を賭して呼び出した存在、“鬼神”。

 

今の自分では決して届かぬ遥かな高み、神と言う存在の片鱗を感じた。

曲がりなりにも勝利を収める事が出来たのは、“鬼神”が地上人に合わせて力を制御していた為か、それともある種の制約ありきの召喚であった為か。彼我の実力差は歴然、自身が生き残れたのは奇跡以外の何ものでもなかった。

いつかその頂きに手を届かせて見せる。己の中に誓った思い、それが不意の形で叶えられる機会を給わった。

 

“久しいな、武勇者ジミー。お前の戦いは天界から見させてもらっていたよ。随分と楽しそうな事をしていたじゃないか、いい退屈しのぎになったぜ”

ただ目の前に立っているというだけなのに、その威圧に膝が震える。向こうは凄むでもなく、ただ自然に佇んでいるだけなのだろうことは見て取れる。むしろ友好的ですらあるにも拘らずこの体たらく。

ジミーは思う、“俺は弱い、俺の強さなど目の前の存在からしたらキャタピラーと大差ない程度でしかない”のだと。

 

“ククククッ、いいね~、その目。自分の力に酔いしれる馬鹿とも彼我の実力差に怯える臆病者とも違う。明確に力の差が分かっているにも拘らずなおも必死に勝利への道を模索する。

飽くなき闘争への滾り、勝利に対する執着、人族はそうでなくっちゃいけねえよな。所詮俺たちは戦う事しか能のない戦闘馬鹿、強い弱いじゃない、そこに必要なのはただ一つ、己の意思。

やろうじゃないか、人間。ここは天界、時間はたっぷりある。人の可能性、十分堪能させろ!!”

 

「あぁ、流石は神だ、懐が広い。

俺はジミー、ジミー・ドラゴンロード。

地上をはいずる者として、剣に生きる者として。武勇者ジミー、推して参る!!」

 

弾ける閃光、一匹の修羅が遥かなる頂に挑む。

周囲を取り囲む超常なる者たちは、嬉し気に、興味深げに、彼らの戦いに目を向ける。

授けの儀を受ける為に領都グルセリアの大聖堂を訪れたジミーは、天使の計らいにより今後問題を起こすであろう称号の対処の為、天界に呼ばれるという幸運に恵まれた。

だがそこに待っていたのは天界に住まう神々との手合わせというこの先の人生で経験できないであろう至高の時間であった。

無論自身はただの地上人である、神々の本気を引き出すなど出来ようはずもない事は重々承知している。だがその片鱗に触れる事でもどれ程の経験になると言うのか。

ジミーはこの素晴らしい時間が永遠に続く事を心から願わざるを得ないのであった。

 

—――――――――

 

「“ブフッ、はい、はい、そうですか、わかりました。ではこちらは特異点の確認を済ませてから帰還いたします。失礼いたします”

ケビン、ジミー君のステータスが確定したわよ。今**#@様から連絡が入ってデータが送られて来たの」

「あっ、そうなんですか。なんか時間が掛かりそうなことを言っていた割に直ぐに済んだんですね。まぁ問題なく終わったんなら良かったです」

 

あなた様の言葉に、俺はホッと胸を撫で下ろす。ジミーの授けの儀で起きたひと騒動、今後ジミーのステータスの事で起こり得る最悪の事態の対処として、あなた様をはじめとした天界の方々が動いてくれた事には感謝しかない。

 

「それはそうと、さっきはなんで噴き出していたんですか?ジミーの称号については無事に処理できたんですよね?」

「えぇ、称号はケビンやエミリーちゃんと同じ様に表題を付けてその中に隠す事になったわ。問題は加護の方だったんだけど、さっきも言ったけどジミー君に加護を与えたいって言う武闘派の神々が集まっちゃってね、急遽ジミー君本人による実技審査が行われたのよ。

要は神々と手合わせをして自身と一番相性のいい神の加護を得ようと言う話なんだけど」

 

「あぁ、それは恐らくジミーがこんな絶好の機会は二度とないと思ってお願いしたって奴ですね。アイツ回復ポーションはたっぷり持ってるし、天界であったならいくら無茶をしても死なないかもしれないって言う淡い期待もあったんじゃないんでしょうか」

俺の言葉に「おそらくはそんな所よね」と苦笑するあなた様。

 

「剣神様・拳神様・闘神様・武神様・鬼神様、天界でも名だたる戦闘狂が良くもまぁ集まったものよ。はじめは神々の間で力比べを行って勝利したものが加護を与えるなんて事にもなりかけたんだけど、他に愛神様が加護申請を出していた事や神々の衝突は後の業務に支障を出しかねないと管理神様からストップが掛かった事で、ジミー君本人に決めて貰う事になっていたのよ。

それにしても普通に指名するんじゃなくて手合わせをしてから決めるって、ジミー君もケビンの弟なだけあって度胸があると言うか大胆と言うか。

いくら地上において優秀であっても地上人と天上人には隔絶した力の差がある、ましてや相手はその地上人たちを見守り管理を行う神々、その刃が届くはずもない。

でも剣を交える事、神々の力の片鱗でも感じる事が出来れば、それはジミー君にとって大きな財産になるわ。

 

問題はそんな加護申請にかこつけて“祝福”やら“寵愛”やらを贈ったお馬鹿さんがいたことね。

ケビンには話した事があるかもしれないけど、<勇者>や<聖女>は世界に影響を与える為に特別に選ばれた職業であり、加護や祝福、寵愛といった所謂“神々の見守り”を複数所有する事が出来るの。

但しこれは選ばれた職業だからであって、一般的な者は加護は一つだけというルールがあるの。世界のバランスを守る事と、加護の乱発を防ぐための措置ね。

これは祝福や寵愛も同じ、加護・祝福・寵愛はどれか一つを与えたら他の者は与えられない事になっているのよ。

その為授けの儀が終了していない場合は申請中となっているの。

でもそこに盲点があった、複数の申請が無ければその加護はすんなり付与される、同様に祝福や寵愛も。

これまで加護と祝福と寵愛が同時に申請されたことが無かったために気が付く事の出来なかったシステム上の穴、確定されてない場合加護と祝福と寵愛は重複される事が出来たみたい。

これ、このまま気が付かなかったら<勇者>や<聖女>以外で初の複数加護持ちが誕生するところだったのよ。

 

この事実に気が付いた管理神様がジミー君の所に集まっていた神々の所に怒鳴り込んで来てね、連帯責任で全員反省部屋送りにされちゃったのよ。

それでジミー君の加護は管理神様が授けられることに決定したの。

ジミー君、整理整頓が上手くなると思うわよ?おまけで収納系スキル<ポケット>が貰えるみたいだし、お財布を無くさずに済む様になるから良かったんじゃないかしら」

 

憐れジミー、神々のお茶目で武術系の加護を取り逃した模様です。

 

「それでこれが確定したジミー君のステータスね。詳細も一緒に表示しておくわね」

 

名前 ジミー・ドラゴンロード

年齢 十二歳

種族 普人族

職業 剣天

スキル

魔力支配 身体支配 剣理 明鏡止水 鎧袖一触 生活魔法 法術 自己回復 魔物の友 ポケット

魔法適性

なし

 

称号

剣と共に生きし者(*)

 

加護

管理神の加護

 

職業詳細

<剣天>

剣の道の頂、天に至る職業。己を捨て、只管に剣に打ち込む者こそがその頂きに至る事が出来るであろう。(ゆる)まず、(たゆ)まず、己の信念のままに突き進め。

 

スキル詳細

<剣理>

剣の理を解せし者、天を切り、地を切り、空を切る。頂を求め振るわれた剣に切れぬものなし。

 

<明鏡止水>

常に冷静沈着な行動が可能となる。観察・分析力に補正大。精神攻撃耐性、魅了耐性、精神支配耐性が付く。

 

<鎧袖一触>

敵を難なく打ち負かす。武人の至る一つの境地。身体能力、耐久能力に補正大。

 

<生活魔法>

通常生活魔法・複合生活魔法・特殊生活魔法を使用する事が出来る。

習得は学習による。

 

<法術>

法理による魔力操作が出来る。通常の魔法とは理論体系が異なる。

 

<自己回復>

自然治癒による回復能力。自己免疫能力も格段に強くなる。

 

<魔物の友>

交渉により魔物を使役する事が出来る。命令権はないが、意思疎通がし易くなる。命令権がない為使役制限はない。

 

<ポケット>

出し入れ口がポケット程のサイズの収納空間を作り出す事が出来る。空間の広さは使用者の魔力量に依存する。時間停止保存機能が付いている。

 

称号詳細

<剣と共に生きし者>

スライムの王の弟子 理不尽の弟子 剣術の修羅 草原の救世主 龍人族を凌駕せし者 霊獣を討伐せし者 鬼神を討ち倒せし者 魔国総合武術大会優勝者 元魔王軍四天王 神々の注目 鬼神の祝福を受けし者 愛神の寵愛を受けし者 神々に挑みし者

 

「「「・・・勇者様?」」」

イヤイヤイヤ、ジミーヤバくね?特に<剣理>、聖霊剣グランゾートじゃん、修行次第じゃ空間切っちゃう奴じゃん。

それと<生活魔法>、これって俺が持ってるアレだよね?特殊生活魔法なんか結構ヤバ目のものがあるんだけど?基本魔力量依存の魔法だから習得できるかどうかは別だけど。

 

「あれ?あなた様、ジミーのスキルから<鬼人化>が消えてるんですけど」

「あぁ、あれは<鬼神の祝福>に紐付かれたスキルだったみたい。管理神様の御叱りで<鬼神の祝福>と<愛神の寵愛>がなくなったから、それに紐付いた<鬼人化>と<性豪無双>がスキルから消えたみたいよ?

・・・ジミー君が<無双>したらそれだけでマルセル村の少子化問題が解決しそうよね」

 

「ブホッ、何ですかそのヤバいスキルは。ジミーの巨大ハーレムが誕生するところだったって事ですか?“愛神の寵愛”ってヤベー。

管理神様、Good Job!!」

「でもジミー君の場合愛神様の加護や寵愛が無くても女性が群がって来そうなんですけどね、素で愛神様をメロメロにしちゃったくらいだし」

 

そうだった、ジミーは素でヤバい奴だったんだ。暗黒大陸で“視線でサキュバスを孕ませる男”って呼ばれてたんだったわ。

 

「ブフッ、何そのとんでもない二つ名は。男性を食い物にするサキュバスからそんな事言われてたの?ジミー君ってこれから学園に行くのよね?大丈夫?」

「そうですね、ケイトに渡していた“目立たなくなるグッズ”をジミー用にも用意しておこうかと。実力で目立つのはしょうがないとしても、容姿云々はどうにかなると思いますんで。少なくとも無駄にキラキラしてる雰囲気は鳴りを潜めるんじゃないかと」

 

「そうね、そうしてあげた方が無難よね。

さて、ジミー君の方はこれでいいとして、ケビンのステータスを確認しておきましょうか」

「イヤイヤ、俺なんか大した事ないですって、こないだからそんなに経ってないですし、変化なんて「大人しくする」・・・はい」

 

あなた様からの強烈なプレッシャーに急ぎ姿勢を正す俺氏。だってあなた様マジなんだもん。

 

「<管理者権限:ステータスオープン:モニター表示>」

“ブオンッ”

中空に映し出される巨大ステータス画面。俺は渋々ながらその表示内容に目を向けます。

 

名前 ケビン・ワイルドウッド

年齢 十五歳

種族 人(+)

職業 田舎者(辺境)

スキル

棒 自然人 田舎暮らし(*) 自己診断

魔法適性 無し

 

称号 

辺境の勇者病仮性患者(*)

 

加護

創造神の加護(*)

 

スキル詳細

<田舎暮らし>

・田舎暮らし(魔法)・・・魔力支配、影魔法、全属性魔法、生活魔法、重力魔法、儀式魔法、幻影魔法

・田舎暮らし(戦闘)・・・刀術、体術、斧術、弓術、槍術、盾術、索敵、身体支配、空走術、ラビット格闘術(奥伝)、空間把握、龍の全身鎧、浮遊、覇王の威圧、根性、ナイフ召喚、大声、引率、夜間自己再生

・田舎暮らし(生産)・・・調薬術、鍛冶、錬金術、魔道具作成、農業全般、ポーション生成、糸生成、糸操作

・田舎暮らし(生活)・・・解体、調理、清掃、建築、生存術、魔物の雇用主、送り(びと)、食いしん坊、模倣、召喚術、結界術、友達生成、自己領域、ポケット収納、聖域生成、広域浄土化、蜂蜜取り名人、仙術、霊体化、名付け

 

称号詳細

<辺境の勇者病仮性患者>

魔物の親友 食のチャレンジャー 通貨を創りし者 新薬を創りし者 生活魔法を創りし者 魔力を理解せし者 小さな賢者 大森林の住人 導く者 進化を促せし者 呪いを解きし者 厄災の討伐者 発明家 魔物を飼育せし者 辺境の隠者 森の聖者 闇に潜む者 交渉人 魂の救済者 干し肉の勇者 風神速脚 鉄壁の門番 魔境を訪れし者 恐怖を乗り越えし者 ダンジョンマスターの友 ダンジョンの盟友 天然の魔王 影の英雄 魔境の深淵に至りし者 特殊進化魔物を造りし者 聖域を造りし者 召喚術を創りし者 堕天を食い止めし者 ドラゴン亜種との契約者 精霊女王との契約者 神聖樹との契約者 神性存在を誕生させし者 ダンジョンとの契約者 伝説級装備の製作者 聖人 救世主 傍観者 聖霊樹に名を付けし者 万軍の防壁 兎仙人の友 勇者を導きし者 フェンリル種との契約者 天魔神鳥との契約者 天界に届きし者 大特異点 女神の注目 増殖の魔王討伐者 冥府の使者 世界樹に名を付けし者 理不尽 混沌の魔王 疑似神気を作り出せし者(New) 寄生の魔王討伐者(New) 統治の魔王を救いし者(New) 不可逆を覆せし亜神(New) 天界の監査役(New) 女神の感謝(New) 

 

「「「・・・・・」」」

 

「やっぱり称号が増えてるわね。でもこれってシステム称号だけだから、以前のような天使や補助神様方が張り付けてる切り抜きアーカイブとは違うから」

「ハハハハハ、もういいです、好きにしてください。どうせ称号は見えないですから」

 

「まぁ、そうね。なんか無視しちゃいけない様な称号もあるけど、所詮は付箋だし、気にしない方が健全よね。

それよりも変化してるステータスなんだけど」

 

種族詳細

<人(+)>

「人」なんだよ、「人」には違いないんだよ。でも何これ、意味が分かんない。いじめなの?嫌がらせなの?

取り敢えず(+)ってしといたけど、君っておかしいからね?

byシステム

 

加護詳細

<創造神の加護(*)> 

すまん、女神様がどうしても感謝の意を示したいと仰られてな。ケビンがこれまで食文化発展に大きく寄与してくれた事、心から感謝している。

これからはケビンの加護神ではなくなるが、食に対する挑戦は続けて欲しい。

ケビンの活躍を見守らせてもらう。

by食料神

 

この度は天上人たちが大変ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。それに地上界に厄災が広がる危険を未然に防いでくれた事、堕天してしまった天上人を救ってくれた事に心からの感謝を。

私からの加護は<豊穣>と<無病息災>。ケビンにはこの世界を十分に楽しんでもらいたい、私の世界()を好きになってくれてありがとう。

おまけで自己領域の<勝手口>を十個まで増やせるようにしておきました。自由に活用してください。

by創造神

 

「伝言板!?って言うかシステム~~~~!!」

ステータス画面の詳細表示を見ながら固まる天上の高位存在たち。

時の流れの止まった大聖堂には、俺の心からの叫びが響き渡るのでした。




本日一話目です。
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