転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第566話 転生勇者、王都の話を聞く

王都に到着した⇒

モルガン商会王都支店に挨拶に向かった⇒

モルガン商会長に出迎えられた⇒

応接室に案内されたらケビンお兄ちゃんがいた⇐今ここ

 

何やってるのさケビンお兄ちゃん!!

マルセル村を出発して一月余り、街道をエミリーの乗る馬車を警護しながら辿り着いた王都では、何故か故郷で別れを惜しんだはずの村のお兄ちゃん、ケビンお兄ちゃんが待っていたのでした。

 

いや、そりゃ知ってるよ?ケビンお兄ちゃんが意味の分からない方法で空を飛べるって事は、でもなんだろう、こう違うと言うかなんと言うか、得も言われぬこうじゃない感がですね!!

 

「やぁ、みんな、驚かせてごめんね?それとグルゴさんとギースさん、若者軍団を無事に王都まで送り届けて下さりありがとうございます。

それと俺が何で王都にいるかと言えばグルゴさんとギースさんの御迎えですね。

そろそろ畑の準備やら冬眠明けのホーンラビットたちの角落としもあるしね、マルセル村は忙しいんですよ。

 

ロイドの兄貴に話を聞いたんだけど、王都中央学園は既に卒業式が終わって新入生の学園寮への入寮手続きも始まってるんだってさ。

みんなの制服やら教科書・ノート・生活雑貨等々は、既に学園の寮へ届けて下さっているそうです。

流石モルガン商会、卒がない。みんなもモルガン商会長様によくお礼を言う様に」

 

「「「「モルガン商会長様、どうもありがとうございます」」」」

ケビンお兄ちゃんの言葉にモルガン商会長に対し一斉に頭を下げる俺たち。対してモルガン商会長が目茶苦茶慌てています。

 

「エミリーお嬢様、それに皆様、どうぞお顔をお上げください。エミリーお嬢様に頭を下げさせたとあってはホーンラビット伯爵閣下に申し訳が立ちません。

どうかこのセルジオ・モルガンを助けると思って、ここは一つ」

 

“パンパン”

そんなモルガン商会長をよそに手を打ち鳴らし周りの注目を引くケビンお兄ちゃん。

 

「はい、みんなこっち向いて~。モルガン商会長、大変申し訳ない。これもエミリーお嬢様をはじめとした若者たちの教育の機会と思い許していただきたい。

さて、みんなは何故モルガン商会長があれ程慌てた態度を取ったのか分かるかな?

ここがグロリア辺境伯領だったらもう少しゆったりとした態度でモルガン商会長自らが諫めてくれたかもしれないけどね。

 

みんなも知っての通りオーランド王国はオーランド王家を中心とした王政貴族社会です。そこには明確な身分制度があり貴族と平民との間には隔絶した身分の開きがあります。

例えば王都商業ギルドを取り仕切るアパガード商会の商会長であっても貴族である男爵位を持つ俺やグルゴさん、ギースさんに対しては礼節をもって接さなければならない。財産や借財の有無によって商人が貴族をないがしろにすることは、明確な国家反逆行為として処罰の対象となる。

よく商人が貴族に借金を踏み倒されたとか不利な契約を強要されたといった話が出る根底には、こうした身分制度を悪用した横暴があるんですね~。

 

ちょっと話が逸れたね。つまり何が言いたいのかと言えば、エミリーちゃんはホーンラビット伯爵家の、ジミーはドラゴンロード男爵家の、ジェイク君はクロウ騎士爵家の身分を背負っているってこと。

良いにしろ悪いにしろ、そうした身分制度に縛られているってことを忘れないでください。

フィリーちゃんとディアさんはその辺がよく分かってると思うから、三人の事よろしくお願いね。

 

王都中央学園って場所はね、基本的に身分は関係ないって事になってるけど、それって完全な建前だから。普通に考えて王族や侯爵家の子息に下位の者である伯爵家やそれ以下の下級貴族家の者が対等に口をきいていい訳がない。ましてや平民であれば不敬罪で物理的に首を切られかねない。

でもそれじゃ学園に多くの才能ある上級職や希少職を授かった平民を入学させる意味がない。権力者がその力を以って有用な職業の者たちを徴発する事は女神様より禁止されている、それを行えばどんな事になるのか、それは天使の粛清により滅ぼされた国々が教えてくれている。

 

学園とはそうした才あるものと権力者の子息を引き合わせる場、故に身分の垣根を越えた交流が必要と謳っている。

これから学園に入れば様々な身分の者たちが近寄ってくるはず、主にジェイク君とエミリーちゃんにね。

だから本当に気を付けてね、身分制度は面倒臭いよね~」

 

そう言いおどけてみせるケビンお兄ちゃん。そんなケビンお兄ちゃんの話に苦笑いを浮かべるモルガン商会長。モルガン商会長も相当苦労されているんだろうな、心中お察しいたします。

 

それで何でケビンお兄ちゃんが王都にいるのかと言えば、どうも定期的にモルガン商会王都支店に顔を出して俺たちの様子を聞きに来る為なんだとか。

 

「本当は王都中央学園に様子を見に行きたいところなんだけど、あそこは高位貴族子息が集まる学園でね、正式な許可のない者は出入りできないし、この許可も宰相閣下くらいの権力者じゃないと発行できないらしいんだよね。

他の高位貴族家は王都に別邸を持ってるからそこから通うか、定期的に別邸に顔を出して状況報告を行ってるんだってさ。でもホーンラビット伯爵家は王都屋敷なんかないしね、グロリア辺境伯家王都屋敷にあまり出入りするのもよろしくない。北西部貴族連合と王家との力関係は微妙だからね。

結果的にモルガン商会王都支店に頼ることになると、そんでその窓口がこちらロイドの兄貴って訳。

 

ロイドの兄貴は凄いんだよ?この一年で王都の観光名所から女性を連れて行くと喜ばれそうなお店まで調べ尽くしてるんだから。

俺も嫁さんたちを連れて行くならどこがいいか相談してたって訳だね」

 

その言葉にエミリー・フィリー・ディアの三人から強烈なプレッシャーが。三人とも落ち着け、ロイドさんが目茶苦茶ビビってるから。

 

「えっ、嫁さんたちってワイルドウッド男爵様はご結婚なさっていたのですか?それは知らぬ事とは言えお祝いの言葉も掛けず申し訳ありません。

それでどちらの御令嬢と縁を結ばれたのでしょうか」

 

「・・・聞いた?これが一流の商人だからね。ちょっとした会話の端々からも必要な情報を集め透かさず言葉を掛ける。

この王都で生き残る商人に無能はいないから、みんなも商人と言葉を交わす時は本当に気を付けてね、言質を取られてとんでもない契約を交わさせられるなんてざらだから。

 

失礼した、モルガン商会長、祝いの言葉感謝する。それと私の妻の件だったな。一人はマルセル村の女性でアナスタシアという。

彼女とは長い付き合いでね、何も知らぬ私に様々な事を教えてくれた恩人のような女性だ。

もう一人はモルガン商会長も知っているケイト、フロンティア男爵家のケイト嬢だよ。ケイトが領都学園在学中は何かと気に掛けてくれたようだね、とても感謝していたよ」

 

「おぉ、あのケイト嬢と、これは目出度い。ケイト嬢には畑のお肉ビッグワーム干し肉や角無しホーンラビット干し肉といったマルセル村の特産品を広く学園内で宣伝していただいたのですよ。

お陰で我が商会にもこれまで付き合いのなかった貴族家からの問い合わせが多くございました。ケイト嬢には感謝してもしきれないくらいでございます」

ケビンお兄ちゃんのお嫁さんがケイトさんと聞き、我が事の様に喜ぶモルガン商会長。ケイトさん、領都学園では結構多くの人から愛されていたんですね。ケイトさんといったら無口でケビンお兄ちゃんの後をついて回っていたって印象しかなかったから意外だったけど。

 

「それともう一人はホーンラビット伯爵閣下の御令嬢、パトリシアになる。爵位的に問題の多い婚姻ではあったが、パトリシアの政治的な立場と本人たっての希望もあり成立したのだよ。

まぁ、驚く気持ちはよく分かる、私も未だにどうしてこうなったと言った気持ちが拭えないでいるからな。

だが妻となった以上より良い夫婦関係を築いていきたいと思っている」

 

「そうでございますか。ワイルドウッド男爵様のご覚悟、同じ男として尊敬いたします。では何か祝いの品を送らせて」

「いや、モルガン商会長には常日頃世話になっている。改めての気遣いは無用、今後ともホーンラビット伯爵家と円満な関係を結んで貰えればそれに勝る喜びはない。

それよりも今回は我が領の若者たちの為に随分と骨を折ってくれたようだ、感謝する。その支払いをと言いたいところだが、それではモルガン商会長の顔を潰す事となろう」

 

“ドンッ、ドンッ、ドンッ”

そう言いケビンお兄ちゃんが収納の腕輪から取り出したのは陶器で出来た大きな甕が三つ。

 

「これは大森林で採れたキラービー蜂蜜になる。この販売をモルガン商会に一任しよう。買取価格は言い値で構わん、貴族や豪商に上手く売って存分に稼いでほしい。

下手に深読みするなよ?本心からそう思っての行為と受け取ってもらえると助かる。

互いの関係をより親密にするには互いに利益があることが一番だからな、これからもホーンラビット伯爵家との付き合いをよろしく頼む」

 

ケビンお兄ちゃんはそう言うと、唖然とするモルガン商会長に向け満面の笑みを向けるのでした。

 

――――――――――――――

 

「ワイルドウッド男爵様、本日は大変貴重なお時間をありがとうございました。

エミリーお嬢様、ジェイク殿、ジミー殿、フィリー嬢、ディア嬢。王都中央学園での生活で何かお困りごとがございましたらいつでもモルガン商会王都支店をお訪ねください。

我々モルガン商会の者一同、全力で御助力させていただきます」

 

モルガン商会王都支店の店舗前で従業員総出のお見送りを受けた俺たち。キラービー蜂蜜の大甕三つって、いったい幾らの値段になるんだか。そりゃモルガン商会長が下にも置かぬ態度になるのも仕方がありません。

まさに札束往復びんた、有無を言わさぬ物量攻撃、ケビンお兄ちゃん半端ないっす。

 

「グルゴさん、この後ってグロリア辺境伯家王都屋敷に向かうんですよね?その前に一カ所寄って欲しい場所があるんですけどいいですか?」

馬車の横を歩くケビンお兄ちゃんから掛けられた言葉に、「あまり時間が掛からないのなら」と応えるグルゴさん。

 

「それじゃ案内するからついて来て~」

俺たちは並足で進む馬の前をスタスタと走るケビンお兄ちゃんについて行く形で、王都の街並みを抜けて行くのでした。

 

「はい到着、皆さん付いて来て下さい」

そこは王都の街並みの外れにある一軒の商会店舗。扉を開け、声を掛け中に入って行くケビンお兄ちゃんに続き、俺たちも馬を降り、店の中に歩を進めます。

 

「こんにちはケビンさん、今日はどうなさって・・・いらっしゃいませ。ようこそおいで下さいました。私はぬいぐるみ工房モフモフマミー四代目店主ポーラ・キムーラと申します。

本日はどの様なお品をお探しでしょうか」

 

店内には所狭しと様々なぬいぐるみが陳列されており、どれも作りの確りした“えっ、この完成度って、世界観的に大丈夫なの?”と思ってしまうような素晴らしい品々でした。

女の子は可愛いものが大好き、エミリーとフィリー、ディアまでもが一緒になってキャーキャー騒いでいます。ジミーはワイルドベアのぬいぐるみを持ち上げ「ほう、細部の作りまで忠実に再現しつつ可愛らしさも表現している。このワイルドベアからはただ可愛いというだけでなく確かな存在感を感じる。素晴らしい出来だ」とどこぞの評論家のような呟きを。

これにはグルゴさんやギースさんも驚いたようで、「子供たちの土産はこのぬいぐるみにするか」と何やら物色を始めたようです。

あっ、ドラゴンのぬいぐるみ、これちょっと欲しいかも。

 

「ポーラさん、すみません。こちらワイルドウッド男爵様がお仕えするホーンラビット伯爵家の御令嬢エミリーお嬢様と側近の方々です。

今度王都中央学園に御入学される事となりまして、折角ですのでご案内させて頂きました。モフモフマミーの作品は土産物店“ポンポコ山のお店屋さん”でも扱っていますけど、ここまでの品ぞろえはないじゃないですか。

お嬢様には是非モフモフマミーのぬいぐるみたちの素晴らしさを実感していただきたかったんですよ」

 

そう言えばケビンお兄ちゃんが作ったお店にもやたらリアルで格好いいグラスウルフのぬいぐるみがあったわ。エミリーはラクーンのぬいぐるみ(大)を買って喜んでたけど。

あのぬいぐるみたちって王都から仕入れてたのね、ケビンお兄ちゃんってやることがえぐいです。

 

「それとですね、フィリーちゃんとディアさん、それとジェイク君、こっちに来てくれる?」

俺はケビンお兄ちゃんに呼ばれポーラさんの所に向かいます。

 

「悪いんだけどコッコと狐さん、それと黒蜜を出してくれる?

ポーラさんは見ての通り様々な魔物のぬいぐるみを作っているけど実物を見る機会が少なくてね。是非君たちの従魔を見せてあげて欲しいんだよ」

 

「あぁ、はい、分かりました。出て来い黒蜜」

俺がそう言うと袖口からニュルリと身体を伸ばし、掌の上で鏡餅のような水饅頭体型に変化する黒蜜。黒蜜さん、王都までの移動中は俺の身体に張り付いてあったか下着の代わりになってくれていました。

因みにこれってスライミーには出来ない黒蜜の特技、なんか宿に泊まってる時も黒蜜から熱心な指導を受けていたみたいですが、未だ習得に至っていません。

 

「<オープン:プリン>、リック、出て来て」

フィリーの言葉に光となって従魔の指輪から出てきた鷹の目コッコのプリンと、姿を現した狐精霊のリック。

同様にディアの従魔のバスター(鷹の目コッコ)とエディー(狐精霊)も姿を見せました。

 

「どうです、可愛らしいでしょう?ポーラさんの創作の一助になればと紹介させて頂きました」

そんなケビンお兄ちゃんの声に目を輝かせて膝を突くポーラさん。

 

「みんな、悪いけど暫くポーラさんと戯れていてくれる?報酬は魔力マシマシ蜂蜜ウォーターとビッグワーム改干し肉で」

““クワックワックワッ!!””

““キャウンキャウン♪””

“ポヨンポヨンポヨン♪”

 

嬉しげにポーラさんと戯れる従魔たち。ポーラさんは相好を崩し過ぎて人にはお見せ出来ない表情になられておられます。

それにしても人の従魔を物で釣るケビンお兄ちゃん。従魔って一体と思わざるを得ない俺たちなのでありました。

 




本日二話目です。
いってらっしゃい。
by@aozora
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