転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第583話 転生勇者、選択授業を見学する

「ジェイク、どの授業を受講するのか決めたか?」

「う~ん、正直悩んでる。選択授業の内容としては魔法系と戦士系に分かれてるだろう?時間帯的に被るものが多いんだよな~。

それと空きコマというか、一年間で取らなければならない単位からすると受けなくてもいい授業ってのもあるんだよね。その辺は自分たちで判断しろって事なんだろうけど、こうした時間の使い方なんかも実践的に学べって事なんだと思うんだよ。

貴族家の生徒たちなんかはこうした空きコマを利用して社交やら勧誘やらを行うんだろうし、その名目として部活を利用したりもするんだろうしさ」

 

学園の履修科目の説明会が終わった後、一度男子寮の自室に戻った俺たち。俺は机の上に広げた各選択科目の内容に目を通しながらさてどうしたものかと腕組みをする。

 

「それと幾つか単位取得に関係のない特別講座みたいのも入ってるだろう?例えばこの“壊れた武具の修理方法講座”とか“大理石で作る女神様像講座”とか“便利な生活魔法活用術講座”とか。

“壊れた武具の修理方法講座”は凄く気になるんだけど、同じ時間に“現役騎士団員が教える魔纏いの習得と応用講座”ってのが入ってるんだよね。“便利な生活魔法活用術講座”の時間帯には“王宮料理人が教える男性の心を掴む料理術講座”がはいっていて、エミリーが一緒に受けようって凄い圧を掛けてくるんだよ」

 

「あぁ、そういえばそんな事を言ってたな。でもこの講義は週に二回あるんだから、もう一つの時間に受ければいいんじゃないのか?」

「そっちは実戦魔法学と実戦戦闘学が被ってる。これ、どっちかを取らないといけないから、実質的に上の学年の人たち向けの時間みたい。どうしても授業に参加したかったらエミリーを説得するしかないけど・・・」

 

「「無理だな、目茶苦茶楽しみにしてたし」」

思わず揃って苦笑いを浮かべる俺たち。そう言えばフィリーも一緒になって猛プッシュしてたんだよな~、ジミーの胃袋を掴んでみせるとかなんとか。

 

「まぁ今年取れなくても来年受講する事が出来そうだからいいんだけどね。単位に関係のない趣味の講座扱いだから、学年制限もないし」

必須科目はその学年で取らなければならないものであり、選択科目にも魔法系と戦士系に分かれる教科は受講する学年が決定してる。魔法や戦闘には積み重ねが必要という事なんだろう、入学したての一年と様々な事を学んだ三年を混ぜても授業としては成り立たないしね。

魔道具作製学や調薬学といった授業は学年に関係なく取れるっぽい。この辺は趣味と実益を兼ねた授業と言ったところなのだろうか。

 

「それでジェイクは戦士系と魔法系、どっちにするんだ?」

「うん、やっぱりパーティー編成を考えたら戦士系がいいと思うんだよな。フィリーとエミリーは魔法系だろう?エミリーを魔法系と言っていいのかは難しい所だけど、光属性魔法特化だし。

だったら俺は戦士系で自分なりの形を模索する方がいいのかなって。力の調整の勉強にもなるしね」

 

「そうだな、力の調整は大事だ。俺は魔法適性がないから戦士系一択なんだが、必須科目に基礎魔法学ってのがあるんだけど、これってどうしたらいいんだ?座学だけ確りやればいいのか?」

「さぁ?疑似魔法ボールでも投げたら?ジミー得意じゃん。あれなら調整も余裕じゃね?」

 

俺の言葉に「あぁ、その手があったか。流石に法術はまずいだろうからな」と答えるジミー。

そう、ジミーの奴、魔法適性がないのに魔法を撃てちゃうんだよね。ケビンお兄ちゃん曰く魔法適性が無くても使える魔法的なものってのは結構あるらしく、呪術、符術、魔術、法術がそれにあたるらしい。

 

呪術ってのはフィリーをゴブリンに変えちゃってたヤバい奴、基本的に闇属性魔力を主体とした魔法技術なんだとか。

 

符術は鬼人族の蒼雲さんが使う特別な魔法で、呪符というお札に様々な作用を封じ込めて使うものらしい。前世の漫画に出て来た陰陽師のアレだね、急急如律令とか言って式神出したり火炎放射を行ったり。魔道具というよりも魔法に近いモノらしい、俺も一枚欲しいです。

 

魔術はエルフ族に伝わる魔法とは別系統の魔法技術、魔力の法則を理解し応用するものらしいんだけど、俺もよく分かってないんだよな。魔道具職人のマルコおじいさんが使うのは“魔方陣”って言う女神様がお与えになった図形で、魔術に使うのは“魔法陣”って言う丸の中に三角形とか星形とかを描くものだとかなんとか。

前世のゲームでよく見たのが魔術で、電子回路図みたいなのが魔道具職人の技術って事なのかな?

ケビンお兄ちゃん、よくこんなの分かるよな。

 

そんで法術はジミー曰く己の魂と精神に訴えかけて魔法現象を起こすものらしい。これに関してはちんぷんかんぷん、正直全く理解できなかった。

なんでも所謂魔法を先に覚えてしまうと身体が魔法に反応してしまい上手く行かないんだとか。ジミーは生活魔法しか出来なかったことが逆に下地となって習得に至ったらしい。

何でも良し悪しって事なんだろうか。

で、実際法術って奴を見せてもらったんだけど、身体の前で手を組み合わせて「火遁」とか「水遁」とか言いながら炎弾を飛ばしたり水砲を撃ったり。

・・・忍者じゃん、それもコミックNINJA。これにはケビンお兄ちゃんの仮性心が天元突破、「弟子入りさせてください、ジミー師匠!!」とか言って土下座してたもんな。

ジミーの奴、「絶対に教えない!!」とか言って断ってたけど。

まぁケビンお兄ちゃんの場合<魔力支配>で似たようなことを再現しちゃうから必要ないんだけどね。<ファイヤーボール>を鳥の形に変えて「火遁、火の鳥!!」とかやってたもんな~。(遠い目)

 

「いずれにしても選択授業は見てから決めようか、合う合わないってのもあるしね」

「そうだな、それよりも腹が減ったから学食に行こう。今日からは昼ご飯は寮じゃなく学食って話だったからな。

あまりぐずぐずしてるとエミリーに怒られそうだ」

 

ウッ、それはまずい。俺は急ぎ席を立ち上がると、ベッドに脱ぎ捨てたジャケットを羽織りエミリーたちとの待ち合わせ場所へと向かうのだった。

 

―――――――――

 

「それではこれより基礎魔法学の授業を始める。私がこれから一年皆に基礎魔法学を教える事になるガイアス・タスマイヤーである。皆の多くはタスマイヤーの家名に聞き覚えがあるかもしれないが、代々多くの王宮魔導士を輩出してきた家といえばわかるだろう。

アルデンティア第四王子殿下とは昨年王宮でお会いして以来ですかな?その後どれ程の進歩を遂げられたのか、非常に楽しみにしておりますぞ」

 

結局昨日は選択授業について具体的なところは決まらなかった。

(“王宮料理人が教える男性の心を掴む料理術講座”は決定事項だったけど!!)

そういう訳で今週いっぱいは選択授業の時間は各授業を覗いて回る事に。まぁ学園の雰囲気を知るという意味では意味のあることなのかもしれないけどね。

それとこの学園、何故かサロンとか庭園のあるカフェテラスなんかがあったりする。グロリア辺境伯領の領都学園にはそんな施設はなかったよね?

流石は高貴なるお家柄の令息令嬢がお通いになられる青田買い会場、メインは勉学じゃなく社交って事なんですね、分かります。

 

「では本日はそれぞれの現在の実力を見せてもらいたい。平民の者の中には普段魔法に触れて来なかった者もいるだろうが、既に基礎魔法学の教本である“魔法の書”は配られているはずだ。

王都学園に選ばれた以上自ら学ぶ姿勢を見せるは当たり前の事、当然目は通しているものとして話を進めさせてもらう。

では名前を呼ばれた者から一人ずつ魔法を撃ってもらおう」

 

う~わ、この先生、教える気皆無だよ。知ってて当然って選民主義思想が全身から(ほとばし)ってるじゃん。フィリーちゃん呆れかえってるし、ジミーに至っては瞑想の時間に入っちゃってるし。

でもこの基礎魔法学は必修科目、さぼる訳には行かないんだよな~。それとこの魔法の実演、要するに各自の自己紹介って側面もあるんだよね。

授業形式が前世の小中高みたいに各クラスって形じゃないから自己紹介なんてないし、誰が誰だかなんて分からないしね。

高校生デビューならぬ王都学園デビュー?年齢的には中学生なんだけど、俺も含めてみんなデカいから高校生にしか見えないって言うね。

ジミーとフィリーに至っては完全に事務職員なんだよね。眼鏡装備が似合い過ぎ、授業の為に魔法訓練場に来た時、違った意味で周りの目を引いたもん。事務職員が何しに来たの?って感じで。

 

「ではアルデンティア第四王子殿下、皆の者に手本を御見せください」

「ハハハ、ガイアス先生、ここは王宮の訓練場ではないのですから、一生徒として扱ってもらわなければ困ります。

折角授業を通じ皆の者との仲を深めようというのに、先生が私の事を特別扱いしてはどうしても溝が開いてしまうではないですか。

ガイアス先生が敬意を払って下さるお気持ちは分かりますが、学園では王子ではなくアルデンティアと御呼びください」

 

「ハッ、これは申し訳ない。王子殿下の高潔なる御心、深く胸に刻みましてございます。ではお言葉に従いましてアルデンティア殿下と」

そう言い一礼をするガイアス先生。アルデンティア殿下は満足そうに微笑むと前に足を踏み出されます。

って言うか敬称は必要なんですね。この辺の言葉遊びは庶民の俺には厳しいものがあるな~。ある意味勉強になります。

 

「“大いなる神よ、我が手に集いて眼前の敵を貫け、ファイヤーランス”」

翳された右手、口にする詠唱は火属性魔法の中級魔法<ファイヤーランス>。

 

“バシューーーーー、ズド~ン”

威力はそこそこ、でも魔力伝達が甘いと言うか、活かしきれていないと言うか。おそらく<魔力制御>と<魔力操作>のスキルにまだ目覚めていないのかな?魔法研究部のリリアーナ先輩の話では<賢者>の職を授かった者なんかは初めから<魔力制御>と<魔力操作>に目覚めているらしいんだけど、他の魔法職の者は持っていない者も多いとか。魔法適性があるだけの別の職業の者はまず持っていないとか言ってたよな。

まぁ俺はマルセル村での訓練で職業を授かる前に目覚めていたんだけどね。今じゃ統合されて<魔力支配>になっております。これ、人には言えないけど。

 

「「「「おお~、流石はアルデンティア殿下、既に中級魔法をここまで見事に扱われるとは。我々とは持って生まれたモノが違い過ぎる」」」」

 

・・・えっと、何故か称賛の声が上がりまくってるんですけど?これってどう判断したらいいの?

 

「次、ラグラ・ベイル」

名前を呼ばれ次々に前に出て魔法を撃つ生徒たち。授けの儀を受けてから初めて魔法に触れたであろう平民出身の者たちが拙い様子で各種ボール魔法を撃つ中、お貴族様方はスタイリッシュに然も当然といった様子で高威力?の魔法を撃たれて行きます。

 

「なぁジミー、これってどう考えたらいいと思う?」

「あぁ、あのガイアスって教諭の考えはおそらく二つ。一つは各自の顔と名前を憶えさせること、俺たちは入学したてで誰が誰だか分からないからな。

もう一つは平民出身者に貴族の優位性を知らしめること。いくら有用な職業を授かったからといって、有用な職業を授かった上に魔法訓練を確り行って来た貴族に敵うはずはないからな。

どちらが上なのかって事を無意識に刷り込む事で、調子に乗ってる生意気な平民を抑えつける。その思想は別にして上手いやり方だと思うぞ」

 

ですよね~、流石は貴族、汚い、めっちゃ汚い。

 

「次、ロナウド・テレンザ」

ガイアス先生、なんかロナウドの事睨んでません?まぁダイソン公国との戦争を無理やり終わらせた三英雄の一人ですし?選民思想のガイアス先生からしたら裏切り者と見られても仕方が無いのかな?

あっ、アルデンティア殿下がクズでも見るような視線を送っていらっしゃる。でもそのお顔は王家の人間としては少々まずいのでは?感情を隠すのも王族の仕事ですよ、第四王子殿下!!

 

ゆっくりと伸ばされた左手、その口からは世界に訴えかける魔法の詠唱が紡がれる。

「“大いなる神よ”」

 

「ねぇエミリー、確かロナウドの職業って水属性の特化型魔導士だったよね?」

「うん、確か<水属性魔導士>って言ってたよ。魔法適性が水しかなかったとか言ってたかな?」

 

見据えるは眼前の標的、起こすは破壊の奇跡。

「“我が手に集いて眼前の敵を撃ち滅ぼせ”」

 

「ねぇフィリー、確か魔法って複数属性の持ち主より特化型の方が威力が高かったんだよね」

「そうですね。それと丁寧に詠唱を行った方がより強力な魔法が撃てます。例えば<無詠唱>を行える者はその魔法に対する理解度が他の魔法使いよりも高いので、同じ詠唱でもその意味合いが全く異なるといった感じでしょうか」

 

撃ち出されるはロナウドの思い、アスターナの戦場で生き残った領兵や家族を救おうとした、称号<万軍を救いし者>を授かるきっかけとなった絶対の魔法。

「“ウォーターボール”」

 

作り出された水球、それは圧縮され、濃度を増し、目標に向けただ一直線に。

“ズドンッ、ドッバーーーーーーーーーン”

 

崩壊する標的、周囲を巻き込み弾け飛ぶ水球、その場に残る巨大なクレーター。

降り注ぐ瓦礫と水滴に、ただ茫然とするその場の面々。

 

「ガイアス先生、これでよろしいですか?」

「・・・・・・」

口を開け呆然とするガイアス先生とアルデンティア殿下。そんな彼らの視線を一身に受けながら、ロナウドは然も当然といった表情でその場を下がるのであった。

 

って言うかこっちくんな、仲間と思われたらどうするんだ~~~!!

俺たちは目の前で起きたロナウドのやらかしに、“自重って大事”という真理を改めて心に刻みつけるのでした。




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