転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第589話 天上のOL(総合職)、時間外業務を行う

いつもの職場、いつもの執務室。うず高く積まれた書類の数々に目を通し、決裁のサインを記していく。

女神様の怒りに触れ行われた天界内の一斉実態調査も終わり、それに伴った人事処分も下された。

中には現在の職場を追われ再就職センターに通う羽目になった者たちもいるとか、何をやったらそんな話に繋がるんだと思わなくもないが、以前の上司の事を考えるとあながち否定しきれない事がもどかしい。

 

そんな怒涛の混乱を終えようやく本来の業務である随時回収型闇属性魔力回収装置作製プロジェクトに戻る事が出来たのだが、肝心のチームメンバーがですね。

先の大混乱で処分された者たちの穴埋めに同僚たちが引き抜かれて行き、気が付けばワンオペ。まぁワンオペは前の上司の時は常態化していたんで慣れっこと言えば慣れっこなんですけれども、折角改善された職場環境が~!!

次々と舞い込む仕事、溜まる業務、決裁書類の処理だけでも一苦労。**#@様(本部長様)には本当に申し訳ないと頭を下げられちゃいましたけど、**#@様(本部長様)の方がより大変な仕事を熟してらっしゃるという事は分かりますけど、私が欲しいのは慰めの言葉じゃないの、即戦力になる人材なの〜!!

 

#@&&(御方様)が来た時はこれで勝てると思ったのに、研修期間二週間って、そんなの仕事の流れを教えたら終わりじゃない!!

この世に救いはないのかと何度思った事か、女神様は御元気でいらっしゃいますけどもね!!

 

そうして久し振りに取れた時間でやって来たのが居酒屋ケビン。ここってばケビンのスキル<自己領域>で作り出された亜空間世界なのよね。

要するにダンジョンや聖転進化した所謂聖獣とかが作る聖域と一緒、空間隔離されているから天界もやたらと手出しが出来ないって場所なのよね。

ここの様子を確認するには上位者権限が必要だし、本当にケビンってば何者って感じ。

既に普人族は卒業しちゃったみたいなんだけどね。<人+>って、単身種族って。

これってある意味迫害対象よね、そんな状態で結婚までして、ケビンってば本当に周りの人間に恵まれてるのね。

 

目の前には世界樹の材木から作られた立派な扉、私が貰ったものなんだから自分の家に置いておきたかったんだけど、**#@様(本部長様)が大変良い笑顔で「リクリエーションルームに置いてくださいね」と仰られるもので、何故か職場に置かれる羽目に。

私だけのマイベストプレイスが~~~!!

 

でもこの扉、天界人は許可がないと出入りできないみたいで、今のところ使えるのは私と**#@様(本部長様)と#@&&(御方様)の三人。

他の者は入ろうとしても弾かれちゃうみたいで、ただ先に進むだけの扉になっちゃうみたい。これ、ちょっとした神器よね、ケビンってばマジで人間?

 

“ちわ~っす、居酒屋ケビンで~す。本日も開店いたしま~す”

女神様に対する純粋な祈りと共に届けられる開店の知らせ、なんでこんなに軽い挨拶があれ程の敬虔な祈りと共にやって来るのよ、ボルグ教国の聖女でも出来ないわよ、こんな真似。

 

私は待ちに待ったとばかりに席を立ち、リクリエーションルームの<居酒屋ケビン>と書かれた扉の取っ手に手を掛けるのでした。

 

―――――――――――

 

“はぁ~、まぁやってしまったものは仕方がないし、地上人の生活には基本不干渉だし?それじゃ悪いんだけど呼んでくれる?”

カウンターテーブルに項垂れながら声を掛けてくるあなた様、そんなに嫌なら知らなかった事にすればいいのにね?

職務に忠実なあなた様には些細な問題も見逃せない使命感のようなものがあるのでしょう。えっ、違う?放置しておいて後から問題が大きくなるのが嫌だから?

いや~、何かすみませんね~。

俺は「ここだと狭いので場所を変えます」と告げると店の外の広場に出て、<業務連絡>で従業員たちに連絡を取るのでした。

 

「それじゃ始めますね、<出張>」

あなた様と最強生物(気配は小さくして貰っています)、トライデントが見守る中、魔法陣と共に次々と現れる従魔たち、総勢二十四体。内一体は付き添いのブー太郎です。

 

“またなんか一杯いるわね。出来ればショックが軽いものから行きたいんだけど?”

「だったらこの兎たちですかね、何と言っても癒し担当ですから。癒し隊の皆さん、こっちに来てください」

 

俺の呼び掛けにおずおずと前に出る三体のホーンラビットたち。そりゃ彼女達からすれば目の前の天使は怖いだろうな~、存在値がそれこそ天と地だし。

 

“えっ、可愛い、何これ、物凄くナデナデしたくなるんですけど!?モフモフの天使ちゃん、この子たちは女神様の御使いか何かなの?”

そう言いボタンたちをモフろうと手を伸ばすあなた様。

 

「はい、そこまで。踊り子さん方には触れないでくださいね」

“クッ、分かってるわよ、ケビンのけちんぼ!!

それじゃ鑑定させてもらうわね、<管理者権限:鑑定:モニター表示>”

 

“ブオンッ”

中空に現れる鑑定表示画面、俺は映し出された鑑定結果に目を向ける。

 

<鑑定>

名前:ボタン

種族:プリティーホーンラビット

年齢:四歳

スキル

魔力制御 魔力操作 魔力感知 魔力隠蔽 気配察知 気配遮断 空間感知 魅了 魅惑 癒し

魔法適性

称号

可愛いの探究者 理不尽の従業員 進化せし者

 

「お~、ボタン凄いな。確り修行の成果が出てるじゃないか。

マリーゴールドとスミレもステータスは一緒なんだな、お前たちはいつも一緒だったしな」

そう言い三体を撫でまわす俺。何という肌触り、この至高のモフモフはステータスでは表現できませんな~。

 

“あ~、ケビンだけズルいわよ、私にもモフモフを、癒しを~。

って言うか<魅了>や<魅惑>のスキルを持ってるのに<癒し>ってなに?この系統のスキルってあまり一緒に発現しないわよね?

やっぱりケビンの所の従魔って変わってるわ”

そう言いながらしっかりスミレを確保するあなた様、目元がにやけておられるんですけど?

 

“次はそっちのビッグクローね、まぁビッグクローには違いないんでしょうけど、ケビンの従魔だし、一応鑑定させてもらうわね”

 

<鑑定>

名前:オババ

種族:ナイトビッグクロークイーン

年齢:八十四歳

スキル

魔力制御 魔力操作 魔力感知 魔力隠蔽 気配察知 気配遮断 空間支配 魅了 闇鴉

魔法適性

風 闇

称号

魔の森の長 理不尽の従業員 進化せし者 夜の女王

 

“あまり聞かない種族ね、それと闇鴉ってスキルもちょっとピンとこないかしら。<鑑定:ナイトビッグクロークイーン:闇鴉>”

 

<鑑定>

<ナイトビッグクロークイーン>

詳細:夜間行動に特化したビッグクロー種。昼間の強さは通常のビッグクロークイーンと変わらない。スキル<闇鴉>を持ち、闇に溶け込みその行動を察知する事は出来ない。素早さ、力の強さ共に昼間の十倍に跳ね上がる。

 

<闇鴉>

闇に溶け込み闇に紛れる。その者は闇、その姿その気配その魔力特定する事叶わず。闇の中では自身の能力を十倍にはね上げる。

 

「“・・・・」”

 

「うん、いるいる、ビッグクロークイーンの十倍か~、普通普通」

“そ、そうね、ビッグクロークイーンの十倍くらいだったらマルセル村じゃ普通よね。ちょっと強い程度の従魔、よし、問題なし”

 

意識の切り替えは何事においても大事である。俺はあなた様に次の鑑定を促すのだった。

 

<鑑定>

名前:一狼

年齢:六歳

種族:レッサーフェンリル

スキル

咆哮 集団行動 魔力支配 身体支配 

魔法適性

称号

理不尽の従業員 進化せし者

 

“レッサーフェンリル・・・そうか~、進化しちゃったのか~。それはそうよね、前に一体進化してたもの、その後を追ったってことよね、納得納得って納得できるか~~~!!

何で十六体もレッサーフェンリルが増えちゃってるのよ、馬鹿なの?ケビンなの?意味が分からないわよ!!”

 

とうとう頭を抱えられてしまったあなた様。うん、あなた様は頑張った、その勇姿、俺は忘れません。

 

“ま、まぁいいわ。って言うか小さくない?大きさがやや大きめのグラスウルフくらいなんですけど?魔法で小さくなってるの?凄いわね。

 

それじゃ次に行くわよってあなた達は人族・・・じゃないのね。隣にブー太郎がいるって事は保護者なのかしら?

そんなに怯えなくてもいいわよ、何かしようって訳じゃないから。少し<鑑定>させてもらうだけだから。

それじゃまず鬼人族みたいなあなたからね”

 

<鑑定>

名前:ダリア

種族:オーガクイーン(亜種)

年齢:六歳

スキル

金剛無双 無音行動 索敵 気配察知 魔力感知 魔力察知 魔力耐性 魔力隠蔽 魔力操作 魔力制御 魔力障壁

魔法適性

なし

称号

作られし者 理不尽の従業員 進化せし者

 

<鑑定>

名前:ジャスパー

種族:ワーウルフキング(亜種)

年齢:六歳

疾風迅雷 剛腕剛脚 堅牢鉄壁 無音行動 索敵 気配察知 魔力感知 魔力察知 魔力耐性 魔力隠蔽 魔力操作 魔力制御 魔力障壁

魔法適性

なし

称号

作られし者 理不尽の従業員 進化せし者

 

“うん、二人共中々に優秀ね。外の世界だったらネームド魔物として周囲一帯を支配できるくらいには凄いわよ?

ケビンの所じゃ普通扱いになっちゃうんだろうけど。と言うか称号の作られし者って、ケビン、あなたまた何かやらかしたの?”

 

「だ~、なんでもかんでも俺のせいにしないでくださいよ。この二人は例のキメラの生き残りですっての。その後頑張って進化して、不安定なキメラじゃなく確固とした種族を手に入れたんですから褒めてあげてください」

 

俺の言葉に改めて二人に目をやり、“そう、あなたたち本当に凄いわね”と慈愛の籠った眼差しを向けるあなた様。

人工キメラとハイヒューマン計画、あの犠牲はすさまじかったらしいからな~。そんな絶望的状況に遭わされたにも拘らず前を向いて頑張ってる二人には、称賛の言葉しかありません。

 

“これは一人の天上人として、あなた方の未来が素晴らしいものになることを祈りましょう。苦難にめげずよく頑張りました。

それじゃそちらの被り物をしている女の子も”

 

「あぁ、彼女は関係者ではありますがちょっと状況が違いますね。

後でアーカイブを見て確認して貰えれば分かりますが、あの大森林深層の秘密基地の地下施設にドラゴンゾンビがいたじゃないですか。

この子はそのドラゴンゾンビだった存在です。

腐肉は全部緑と黄色と大福が食べちゃってスケルトンドラゴンになってたんですけど、みんなと一緒に飲んだり食べたりしたいって言うんで、御神木様に協力してもらって進化と一緒に精霊にしてみました。

要するに紬と一緒ですね」

 

“ブッ、はぁ!?ケビン、あなた一体何やってくれちゃってるのよ、それって精霊女王をもう一体作り出したって事?”

 

あなた様が声を(思念を)荒らげますが、そんな事言われてもおらっち鑑定なんか出来ませんので何とも。

俺が肩を竦めて分かりませんポーズを取っていると、あなた様はイラッとなさった表情で鑑定を始められるのでした。

 

<鑑定>

名前:シャロン

種族:精霊王女(スケルトンドラゴン種)

年齢:不明

スキル

重力操作 眷属生成 魔力支配 魔力増幅 飛行 空間収納 精霊領域生成

魔法適性

土 闇

称号

オークの勇者のペット 理不尽の従業員 進化せし者

 

「“・・・・」”

 

「ブー太郎、女の子がペットって・・・」

“ブー太郎って見た目によらず鬼畜?ごめん、(けだもの)だったんだわ”

 

「だ~、何でこっちに飛び火?俺別に悪い事してないっすよ?元々シャロンはスケルトンドラゴンっすからね?

って言うかこの称号って自動で改変されないんですか?今の状況でペットって、事案以外の何ものでもないんですけど!?」

 

哀れブー太郎、鬼畜ロリコン野郎に認定です。だってさっきからシャロンがブー太郎にべったり抱き付いてるし?上目遣いで“パパどうしたの?”とか聞いてるし?

ブー太郎、持ってるわ~。“決して期待を裏切らない男、それがブー太郎、いよ、鬼畜ロリコン野郎!!”

 

「うわ~、ケビンさん、わざわざ<業務連絡>でなんてこと伝えて来るんですか!!グラスウルフ隊、そのニヨニヨした表情を向けるのは止めろ!!」

 

夜の山岳部の一時(ひととき)、従魔たちの楽しげな声が静かな星空に広がって行くのでした。

 

 

 

 

「ところであなた様、トライデントって<鑑定>した事ないですよね?

いいんですか?本部長様から何か言われたりとか・・・」

“ウグッ、折角気にしないでいたことを。

だってトライデントよ、絶対ヤバい鑑定結果が出るじゃない、精神に優しくないじゃない”

 

“ジト~~~~~~~~”

あなた様に向けられた多くの者たちからの視線、それは言外に“いいのか?本当にそれでいいのか?”と訴え掛ける。

 

“わ、分かったわよ。<鑑定:トライデント>”

 

<鑑定>

名前:トライデント

種族:エンジェルリビングドール

年齢:0歳

スキル

従者の誓い 空間支配 身体支配 魔力支配 解析演算 模倣学習 神聖魔法 空間収納 天使化

魔法適性

全属性

称号

理不尽に作られし者 模倣されし天使 理不尽の従業員

 

「“・・・・」”

 

「さ~て、みんな急に悪かったね、この埋め合わせは今度するから。ブー太郎たち、グラスウルフ隊、癒し隊の皆、オババ、お疲れ様でした。<送還>。

それじゃ中に戻って飲み直しましょうか。トライデント、フィヨルドの旦那に強めのカクテルをお願い」

「畏まりましたマスター」

 

“オイオイ、ケビン、$$%&殿が固まったままなんだが良いのか?

完全に燃え尽きた目をしてるのだが”

「大丈夫です、あなた様は数々の修羅場を潜り抜けた歴戦の戦士、必ずや復活なさってお戻りになられるはずです。

時には一人でいたい事もあります、しばらく夜風に当たらせてあげましょう。

私たちはお邪魔をしないよう退散あるのみです」

 

俺はそう言うと最強生物に部屋に戻るように促した。

ふと見上げた空には満天の星々、そんな夜空にスッと流れる一条の光。

俺は在りし日のあなた様の姿を思い出し、そっと涙するのだった。

 

 

“って人のこと殺すんじゃないわよ!!ケビン、今夜は飲むわよ、逃がさないんですからね!!”

 

その後荒れに荒れたあなた様が光属性魔力液を飲み、騒ぐだけ騒いで三十分で潰れたことはお約束という事で。(合掌)




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