「皆、よく集まってくれた。話は既に聞いていると思うが今度の武術学園との交流会にはこの俺、三年生バルド・シュティンガーを代表として、二年生のクルドア・バルーセン、一年生のラグラ・ベイル、ジェイク・クロー、ジミー・ドラゴンロードのメンバーで参加する事となった。
互いに顔を知らない者もいるだろうからな、顔合わせを兼ねて剣を合わせようという話だ」
放課後の武術訓練場、バルド先輩に呼び出された俺とジミーは、そこで今度の学園交流会のメンバーとの顔合わせをする事となった。
「二学年のクルドア・バルーセンだ。家名で分かる通りあのバルーセン公爵家の者だな。
まぁよろしく頼む」
最初に自己紹介をしたのは二年生のクルドア先輩。バルーセン公爵家という身分であるにもかかわらず威張り散らすでもなく、落ち着いている?
俺が思っていた王都のお貴族様って以前マルセル村に来た鑑定士の子爵様や視察官の伯爵様だったんだけど、今のところそんなザ・お貴族様って感じの人物は見た事ないんだよな。しいて言えばアルデンティア第四王子殿下?でも第四王子殿下は王族だし、御身分が違い過ぎるし。
アリスさんと話をしている時のアルデンティア第四王子殿下は別にえばってる訳でもないしな~。
イメージの中のお貴族様像ってのは所詮幻想ってことなんだろうか?よくわからん。
「ラグラ・ベイル、よろしく頼む」
一言名前を告げ礼をするラグラ君。確か元第一騎士団騎士団長の息子さんだったかな?元が付いた事で第四王子の側近としては後ろ盾が弱くなったと言うかなんと言うか。
こっちも粗暴さはなく剣に対して真摯に向き合っているって感じ。
代々騎士の家系って言う話だし、受け継がれる騎士道精神って奴でもあるんだろうか?
「ジェイク・クローです。よろしくお願いします」
まぁ俺も何か言う事があるって訳でもないんだけどね。ここは一年生らしく礼儀を弁えていればいいかなと。
「ジミー・ドラゴンロードだ。よろしく頼む」
ジミ~~~~!!
そこはもう少し語尾をだな。簡潔なのはいいけどぶっきらぼう過ぎ、“お願いします”くらい付けようよ~!!
「よし、全員自己紹介は終わったな。改めて三年のバルド・シュティンガーだ。武術学園との交流会は今回で二回目だな、去年は武術学園に赴いて向こうの代表と模擬戦を行った。
要は一対一で剣を交え互いの技量を知ろうってだけの話だ、そんなに気負う事もない。勝ち負けなど気にせず、普段授業で行う模擬戦同様全力で相手をしてくれればそれでいい。
何か聞きたい事はあるか?」
そう言い俺たちを見回すバルド先輩。手を挙げたのはラグラ君であった。
「少し聞きたいんですがなぜこの場に二年生のクルドア・バルーセン先輩が?確かバルーセン公爵家の次男は闇属性魔導士の職を授かったと聞いていたんですが」
ラグラ君の質問に驚きの表情になる俺とジミー。
この世界において職業の力は大きい。同じ魔法適性を持っていても魔法職の者とそうでない者では大きな開きが出るように、<剣術>スキルも戦闘職の者とそうでない者とではかなりの違いが出ると聞く。
器用貧乏な<勇者>よりも純粋な戦闘職である<剣聖>や<剣豪>の方が<剣術>という一点においては上と言われる所以である。
これは同じ魔法を使うのでも特化型魔導士の方が威力が高いという話に近いものがあるだろう。
「あぁ、それか。それは単にクルドアが強いからだな。こいつ、職業が闇属性魔導士のくせに聖騎士や剣豪の同級生を軒並み倒しやがる。選択授業も何故か武術系を選択するって徹底ぶりだ。
俺も手合わせをした事があるが、中々のものだぞ?」
バルド先輩の言葉に驚きを示すラグラ君。そんな彼の態度に肩を竦めるクルドア先輩。
「別に特別な事じゃない、魔導士が接近戦に弱いと言われたことが気に入らなかっただけだ。幸い俺は剣術スキルも持っていたからな、徹底的に鍛え上げたんだよ。
魔法は家で散々学んだからな、学園でくらい好きにさせてもらっているってだけだ」
そう言いそっぽを向くクルドア先輩。イヤイヤイヤ、気に入らないってだけで魔導士が剣術で武術系上級職業持ちを倒すってどんだけだよ。クルドア先輩、半端ないです。
「あ~、まぁクルドアは色々あったからな。
例の一年戦争、第二回アスターナ戦役で貴族軍が大敗した事があっただろう?その時の総大将がクルドアの祖父セオドア・フォン・バルーセン閣下、クルドアはそれ以来社交界で色々とな。
“将兵を戦わせて背後でコソコソするしかない闇属性魔導士”とか随分な言われ様だったよ。
王都学園に来ても風当たりは決してよくはなかったからな、強くならざるを得ないという事情もあったんだろうさ。
以前は貴族派筆頭と呼ばれたバルーセン公爵家が今や国王派の重要な立場に立っている、その事を面白く思わない連中もいるって事だ」
バルド先輩の言葉に怒るでもなく当たり前といった顔をするクルドア先輩。う~わ、貴族社会って怖。めっちゃドロドロやん、掌返しクルックルやん。
そんな場所に身を置きつつ実力で周囲を黙らせたクルドア先輩ってスゲー。
そんなこんなで各自の自己紹介も終わり、模擬戦を行って互いの実力を確認した俺たちなのでありました。
結果?無論ジミーの圧勝ですが何か?二位は俺ですね、ジミーの奴本気出すんだもん、ニチャ~って笑うのは止めろ、ニチャ~って笑うのは。
ラグラ君ドン引き、クルドア先輩は乾いた笑いを浮かべておられました。
バルド先輩?次は俺だ!!とか言って順番待ちしてましたよ?
バルド先輩、本物のバトルジャンキーですね、勇者病<真性>って奴ですね。
こうして俺たちは交流会当日まで放課後に集まり模擬戦を行う事が決定したのでした。
あっ、バルド先輩、何日か所用で出れない日があると思いますんで、よろしくお願いします。
――――――――――
「そういう訳で現在大剣聖クルーガル・ウォーレン様がマルセル村に逗留されていまして、今度行われる王都武術大会の来賓の件もありどうしたものかと相談に来たんですよ」
“カチャッ”
差し出されたティーカップから漂うスッキリとした香り、これはミント系のハーブティーかな?
気温が上がり暑さが気になりだしたこの季節には何とも嬉しい心遣い、俺は給仕をしてくれたメイドさんに軽く礼をするとティーカップを口に運ぶ。
「ハァ~~、この頃王都で姿が見えないと思ったらそんな所に。大剣聖クルーガル・ウォーレン様は昔から自由人と言うか思い立ったら即実行といった御方だからね、おそらくは王都学園でジミー君と手合わせをした事が切っ掛けとなったんじゃないかな?
“下町の剣聖ボビー”と“大剣聖クルーガル・ウォーレン”との決闘の話は有名だからね、私も若い頃聞いた事があるくらいだから。
どんな職業であっても努力次第でその頂きに手を伸ばす事が出来る、市井の者にとって“下町の剣聖ボビー”は憧れだったからね」
そう言いどこか懐かしむ様な表情をするベルツシュタイン伯爵閣下。
「でも武術大会を放置して会いに行っちゃうかな~」
大きなため息とともにガックリと項垂れるベルツシュタイン伯爵閣下、そんな閣下に俺は一つの提案を申し上げる。
「それでどうしましょう?連れて来る事自体は簡単ですけど、問題は輸送手段でして」
俺の言葉に顔を上げ目を向けるベルツシュタイン伯爵閣下。
「因みにどういう方法を考えているのかな?」
「そうですね、ロープで縛り付けてワイバーンに乗って「却下で!!王都が大騒ぎになっちゃうから」・・・。眠らせてコッソリ運んで目が覚めたら王都でしたって感じですかね。
でもそうなると運び込む御屋敷が。大剣聖様ともなると色々と柵もあるでしょうし」
「あ~、そうだよね。確かついこないだまではベイル伯爵家に逗留していたはず、貴族の面子としても他所の家に送り届ける訳にはいかないよね。
よし、分かった。馬車と本人を運んできてくれればその辺はこっちでどうにかするよ。
例の魔力枯渇状態で気を失わせるか、睡眠香だったっけ?ホーンラビットを眠らせる薬で眠らせるかして貰えれば後の対処は引き受けようじゃないか」
そう言い肩を竦めるベルツシュタイン伯爵閣下。流石王都諜報組織“影”の総帥、そこに痺れる憧れる。
「それではいつ頃お連れすればいいですかね?こちらもそれに合わせて動きますんで」
「う~ん、あまり早くてもまたどこかに逃げ出しそうだし、予選会が終わったあたりでいいんじゃないかな?ベイル伯爵家にはその旨連絡を入れておくから」
「分かりました。そうなると来週の中過ぎですね、その際はこちらにお連れしますんで、よろしくお願いします」
そう言い深い礼をする俺に、ハハハと乾いた笑いで返すベルツシュタイン伯爵閣下なのでありました。
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「皆態々集まってくれてありがとう。話はタスマイヤー先生から聞いていると思うけど、再来週の学園交流会の件ね。
みんなには王都学園代表として参加してもらう事となるわ、今日は自己紹介を兼ねた顔合わせね」
バルド先輩たちとの顔合わせを行った翌日の放課後、俺とロナウドとエミリーとフィリーは魔法学園との交流会メンバーと顔合わせをする為、リリアーナ先輩の呼び出しで魔法訓練場へ集まっていた。
「まずは私から。三年生のリリアーナよ、魔法研究部の部長をしているわ。魔術学園との交流会は去年一昨年と参加しているから大体の様子は分かっているつもりよ。
要は的当て、準備された的にいかに魔法を当てるのか、その見た目や勢いなんかを自慢し合うってだけね。
でも今年は王都闘技場を使うって話なのよね、そう考えると例年通りかどうか分からないのよ。だからみんなも単に魔法を披露するって言うよりもダンジョンの深層探索に向かうくらいのつもりでいてくれれば助かるわ」
リリアーナ先輩の言葉に一抹の不安を覚える俺たち。そう言えば学園長が見学希望者が多かったとか言っていたんだよな~。そうなると余計な演出を考えるような輩が・・・。
どうか普通に魔法の披露会でありますように!!
「二年生のナバル・パイロンだ。<勇者>ジェイク、お前の話はバルド様から聞いている。剣の実力はバルド様以上だとか、そうなると“剣の勇者様”と同じ方向性という事か。
まぁ剣の勇者様は相棒として賢者を連れていたというしな、そこそこの実力さえ示せば観客も納得するだろう。
まぁ気負い過ぎずに頑張るんだな」
ナバル先輩、偉ぶらないな~。あのバルド先輩と親しいようだし、そんな御方が貴族風を吹かせるなんて事もないか。
「ロナウド・テレンザだ。俺は所謂客寄せだな。学園長によれば例の三英雄の話が独り歩きした結果らしい。
水属性の特化型魔導士だから大した事は出来んがよろしく頼む」
ロナウドの自己紹介に“あぁ、そういう”と納得の顔になるリリアーナ先輩とナバル先輩。ロナウドは魔法研究会に所属している訳でもないからな、二人には実力が分からないのになぜ?と映っているのだろう。
「ジェイク・クローです。俺も所謂客寄せですね。どうも<勇者>の職業を授かった者がどの程度なのかが見たいようです。
皆さんの期待をあまり裏切らない程度に頑張ります」
まぁ俺が張り切ってもね~。皆さんには申し訳ないけど小技に走らせてもらいます。
「フィリー・ソードです。何か私の枠はカーベル・ハンセン様になるはずだったみたいなんですけど、本人たっての希望により私に変わったそうです。経緯はどうであれ、託されたからには頑張りたいと思います」
そう言い両手でメガネ位置を直すフィリー。その際にレンズがキランと光るのは最早おなじみの
何でもカーベル君、師匠を差し置いて自分が代表になるなど烏滸がましいと言ったんだとか。アリス嬢と共にすっかりフィリーの弟子になってるんだけど、それってアルデンティア第四王子殿下の側近的に大丈夫なんだろうか?他人事ながらちょっと心配です。
「えっと、<聖女>のエミリー・ホーンラビットです。魔法学園側から<聖女>も連れて来て欲しいとの要望で参加する事になりました。
でもお互いに魔法を披露するだけなら私っていらないですよね、いったいどうしたらいいんでしょうか?」
そう言いコテンと首を捻るエミリー。
・・・言いたい、前世の記憶にある名セリフが凄く言いたい!!
俺は沸き立つ厨二心をグッと堪え、エミリーに力なく微笑みかけるのでした。
本日一話目です。