転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第621話 学園交流会(武術学園)

時は過ぎる。王都武術大会の予選会を無事に通過した俺とジミーは、本選に向け訓練を・・・とはいかずその前に行われる学園交流会の為の訓練に参加し日々を過ごす事に。

まぁ訓練と言っても、放課後代表に選ばれた者たちと集まって模擬戦を行ったり魔法訓練を行ったり。ジミーはもっぱら武術学園との交流会に参加する代表生徒の指導、模擬戦を交えた的確な指導は好評で、バルド先輩やクルドア先輩ばかりでなく、あのラグラ君ですら積極的に話を聞くほどに。

やはり初日に力の差を確りと分からせたことと大剣聖様に勝利したという実績が、説得力の後ろ支えになっているんだろうか。

何故か俺には指導じゃなく実戦訓練しかしてくれないんだけど。「ジェイクの打たれ強さって最高♪」とか言いながらニチャ~って笑うんですけど。その表情ってマルセル村で訓練している時のボビー師匠やヘンリー師匠、白雲さんと同じなんですけど?

活きのいいサンドバッグジェイク、今日も前を向いて生きてます。

 

魔法訓練場ではリリアーナ先輩の指導の下、魔法の訓練ですね。基本とされる初級ボール魔法を使っての緩急の付け方や変化の付け方、実戦の場に於いての運用方法など。

俺やエミリーやフィリーが普段無意識に行っている事を言葉にして解説してくれるって感じで、結構勉強になります。

「中級魔法・上級魔法と言っても所詮威力や規模が違うだけで、実戦の場においては初級魔法の運用が全てなのよ。魔力は有限、自身の魔力量を把握し如何に効率よく運用していくのかが、魔法職における戦いの肝ね」とはリリアーナ先輩の言葉。

 

「実戦の場において魔力が尽きました戦えませんじゃお話にならない、魔力枯渇で気絶するなんて論外」

リリアーナ先輩の話は常に現場での魔法職の在り方を模索する含蓄に富んだもので、聞いていて凄くためになります。

まぁ普通は“魔力枯渇になってからが本番だ~”なんて脳筋な事はやりませんからね、マルセル村出身者がおかしいだけで。

 

そう言えば魔法訓練場の端でカーベル君とアリスさんが魔力枯渇寸前まで魔法を打ちまくってから筋トレを始めてるんですけど、あれってフィリーの指示なの?めっちゃフラフラになってるんだけど。

魔力量増強と持久力強化に適した訓練法だと、魔力枯渇寸前のギリギリを攻めるのがコツだと。

・・・あれって俺たちがケビンお兄ちゃんにやられた魔力枯渇訓練そのものじゃん。フィリーって鬼だわ、容赦ないわ、魔法研究部の先輩方ドン引きしてるじゃん。

 

そんな感じで放課後の訓練を行い学園交流会当日までの毎日を過ごしたのでございます。

 

―――――――

 

「いいか、相手は武術学園の生徒、職業的には上級職である王都学園生徒には劣るかもしれん。だが世の中そんなに単純ではないという事はこの場にいるクルドアが証明している。

武術系上級職の者を正面からぶちのめす<魔導士>がいるんだ、<聖騎士>をぶっ飛ばす<剣士>がいたっておかしくはない。

相手を舐めるな、油断するな、いつも通り全力で事に当たれ」

「「「「はい、分かりました、バルド先輩」」」」

 

戦いは何も職業だけで決まるものではない、その事は俺たちの師である“下町の剣聖”ボビー師匠が教えてくれた。

ボビー師匠の職業って一般的な戦闘職である<剣士>なんだよな~。

職業<剣聖>の者と互角に渡り合う<剣士>、未だ多くの者の憧れとして語り継がれる伝説の白金級冒険者。王都に来て改めてボビー師匠の偉大さを実感する事が出来ました。

 

ここは王都の名所“王都闘技場”、王都武術大会を来週に控え準備が忙しいだろうに、お貴族様の横槍で特別にお借りする事に。

会場観客席には学園生徒同士の試合だというのに多くの見物客が、あちらは王都三大学園に通われる生徒さんのご家族の皆様であるとか。

こんなの慣れない生徒さんにとってはプレッシャー以外の何ものでもないと思うんだけど?

うちだと慣れない筆頭は俺なんですけどね。

大貴族代表バルド先輩、クルドア先輩。元騎士団長の息子にしてアルデンティア第四王子殿下の側近ラグラ君。魔都総合武術大会優勝者ジミー。

ただの田舎者ジェイク。

うん、考えない事にしよう、何か悲しくなってきた。

 

「それではこれより王都学園と王都武術学園との交流試合を始める。両学園の代表者たちは舞台中央へ」

声を上げたのは王都学園の武術担当教諭。今日は交流試合の審判も務められるそうです。

 

舞台中央に整列した俺たち、目の前には武術学園の生徒代表が整列し、気合十分といった顔でこちらを睨んできます。

でも中にはこちらを見ないで、視線を<聖女>アリスに向ける者も。

もしかしなくても君って俺の対戦相手だったりするのかな?「クックックッ、ここで王都学園の奴らをぶっ飛ばして、王都学園に入った暁には<聖女>アリスを俺のものに」ってなんか物騒な事を呟いてるんですけど?心の声が外に漏れちゃってるんですけど?アリスさん、ドン引きなさってるんですけど。

確かに冒険者には“力こそ全て、弱い奴らは強い俺に付いて来い”って風潮があるけどもさ、君冒険者じゃないじゃん、武術学園の生徒さんじゃん。

 

俺は別の代表生徒さんに目を向け、目の前の生徒を指差しながら口パクで“こいつって普通なの?”と問い掛けます。

 

“パクパクパクパクパク”

“おかしいのはこいつだけ、一緒にするな”と、了解です。

目の前の人物は武術学園でもちょっとアレな御方だったようです。

 

「第一試合、王都学園ラグラ・ベイル、武術学園エイム・ブリッジ」

それぞれの代表選手が舞台から降り、名前を呼ばれた者が改めて舞台上に上がります。広い石造りの闘技舞台、舞台上から転落した場合失格となる事は王都武術大会のルールと同じです。

 

「両者、開始位置へ。はじめ!!」

 

掛け声と共に模擬剣を構える両者、今回の交流会では公平性を期する為互いに模擬剣を使用する事となっています。但しショートソードロングソード等の形状選択については事前申請を行う事で許可されており、望めば槍での参加もOKとの事でした。

 

「「イヤッ!!」」

“ガキンッ、ガキンガキンガキンガキンガキンッ”

 

互いに剣身を打ち付け合う両者、これは剣というものが“切る”というよりも“叩き切る”事を前提として作られている武器である事に起因する動きであり、魔物との戦闘を主にするこの世界の剣士としては当然の動き。強靭な肉体を持つ魔物を一刀のもとに切り伏せるなどと言った事は勇者物語に出てくるような夢物語であり、一般の剣士が真似をしようものならまず間違いなく死ぬ。

先ずは敵を確実に倒す、複数の魔物との戦闘を基準にしたその考えはとても現実的であり、その剣理は至極もっともなものである。

 

まぁボビー師匠の教える“切る”事を前提とした剣術は、ここオーランド王国ではどちらかと言えば異端の部類と言えるんだけどね。ボビー流は基本打ち合わない、避けて躱して受け流す。打ち合ってたら刃こぼれするし、最悪剣が折れる。

切る事を主体としたボビー流の剣は、ゾイル工房の目茶苦茶切れ味のいい剣を至高としてるもんな~。ゾイルさんもうちの剣はもろいって言ってたし。

そう言った意味では前世の日本刀による剣術の考え方に近いのかもね、俺は詳しく知らないんだけど。

 

「<ダブルスラッシュ>」

「<キャッスルウォール>」

 

武術学園側の武技<ダブルスラッシュ>に、ロングソードを盾にして聖騎士の職業スキル<キャッスルウォール>で対抗。

 

「クッ、<重撃>」

「<シールドバッシュ>」

“ドゴンッ、グホッ、ドサッ”

 

上手い、相手方が<キャッスルウォール>に対抗すべく上段に構え<重撃>を繰り出したところに、内に入っての<シールドバッシュ>。それも動きを最小にする為剣の柄を以って盾の代わりとしたところは流石の一言。

これは自身のスキルをよく研究し熟知している証拠。

武術担当教諭の言う「スキルに向き合う」が実践できているってことですね。

 

「勝者、王都学園ラグラ・ベイル!!」

審判より挙げられた手、勝利者のラグラ君に観客席から歓声と拍手が送られます。

 

「やったねラグラ君、先ずは王都学園の一勝だ」

「フンッ、俺は自分に出来る事を淡々と熟したに過ぎない。聖騎士とは守る者、その剣は守る者の為に。

ジェイクも自身の在り様を見失わない事だ」

 

ウッ、ラグラ君カッケー、しかもイケメン。何コイツ、物語の主人公じゃね?

王都学園って主人公クラスのイケメンがゴロゴロいるんだよな~、やっぱり王都って凄いんだな~。

俺は目の前に突き付けられた現実に軽くショックを受けながらも、次の試合に臨むクルドア先輩の応援に意識を切り替えるのでした。

 

「つぎ、第二試合。王都学園クルドア・バルーセン、武術学園カービン・アンダーソン」

舞台に立つクルドア先輩は、二本のショートソードを両手に持ち相手を見据える。

 

「なんだ、その短い武器は。そんなもので俺の大剣に勝てると思ってるのか?もしかして馬鹿にしてるって奴か?」

片や対戦相手のアンダーソンさんは自身がバカにされていると怒りをあらわにしておられます。

これはアレですね、王都学園と言うネームバリューに対する嫉妬心の発露ですね。

 

「気にするな、言葉ではなく剣で語ろう」

「クッ、気に食わねえ。何もかも気に食わねえ」

 

「両者、開始位置へ。はじめ!!」

 

掛けられた開始の合図、動き出したのは同時であった。

 

「一撃で決めてやらー!!」

“ブンッ”

正面から横に身を躱すように動いた黒い影。

 

「逃がすかよ!!」

“ブォン”

振るわれた大剣、そして。

 

「残念、<偽影(ぎえい)>だ。<双牙連撃(そうがれんげき)>」

“ドガドガドガドガッ”

 

アンダーソンさんのすぐ脇から回転するコマのように双剣による連撃を加えるクルドア先輩。自身の闇属性魔導士という特性を利用し、<幻影>ならぬ魔力の気配を込めた影を飛ばし一瞬の隙を作る闇属性魔導士ならではの剣術、上手い!!

 

“グホッ、ドサッ”

「勝者、王都学園クルドア・バルーセン!!」

 

“““““おぉ~~~~~~”””””

観客席から上がるどよめき、魔導士でも工夫次第で剣士として渡り合えるという証明に、観客席から拍手が送られる。

舞台の上ではアリスさんが<聖女>の役割を果たすべく、倒れたアンダーソンさんに<ヒール>を施しています。

 

「さて、次は俺だな。正直今回の主役は<勇者>であるジェイクと大剣聖を下したジミーだ。俺は気負う事なく戦いを楽しませてもらうよ」

そう言い大剣を持って舞台に上がるバルド先輩。

 

「よう、バルド、去年振りだな。元気してたか?」

「おう、ダミアン、ってお前今回大将じゃないんだな?俺はてっきりお前が大将だと思っていたんだが」

 

「あぁ、ウチの一年生に強いのがいてな。ウチは強い者が正義みたいな風潮があるだろう?大将はあの言動がヤバい奴だよ。

アイツ、<剣豪>の職を授かったのに言動や素行が相応しくないって事で王都学園を落とされてウチに回って来たんだと。傍で聞いてても頭沸いてるとしか思えないからな、王都学園の判断は正しいと思うぞ?

ただウチだとあの馬鹿を矯正出来る程の強者がいなくてな、調子に乗りまくって困ってたんだよ。

 

で、おたくの<勇者>様はどうなんだ?見た感じあまりパッとしないみたいだが」

そう言いジェイクに顔を向けるダミアン。

 

「あぁ、普通に強いぞ?俺なんかいつも負けてるからな。ただウチにはさらに強い化け物がいるからな。お前も噂は聞いてるだろう?大剣聖様に勝った生徒の話」

「あぁ、あれって作り話か誇張された話って奴だろう?いくら何でも入学したての一年生が模擬戦とはいえ大剣聖様に勝つなんて・・・マジなのか?」

 

“コクリッ”

無言で頷くバルドに顔を引き攣らせるダミアン。

 

「お互い一年生には苦労するな」

「まぁ、これも三年生の務めって奴だ。今は戦いを楽しもうじゃないか」

互いに顔を見合わせニヤリと笑う両者。

 

「第三試合。王都学園バルド・シュティンガー、武術学園ダミアン」

審判の声に大剣を構え戦いに備える二人の剣士。

 

「両者、開始位置へ。はじめ!!」

 

““ハァーーーーーーッ、ガギーーンッ””

戦いが始まる。互いの意地とプライドを賭けて。

学園の面子や先輩としての矜持などを抜きにして、ただ純粋に今を楽しむために。




本日一話目です。
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