転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第623話 学園交流会(魔法学園)

学園交流会午前の部、武術学園との交流会は無事?終了した。

例年の学園交流会であれば武術学園・魔法学園と日にちを変えそれぞれの学園に王都学園の人間が訪れる形で行われるのだが、今年に限っては三大学園の生徒保護者からの要望、お貴族様方の横槍により王都闘技場を借りての開催という事になりまして。

この時期の王都闘技場は王都武術大会の準備の真っ最中、先週は予選会が行われてましたし来週は本選ですし?

そんな中幾らお貴族様の横槍があったからって貸し出しちゃ駄目じゃん。侯爵家からの圧力?そ、それは断りにくいよね、うん。

でもマジ勘弁してくださいって事で、両者の担当者同士の意見すり合わせの末、一日だけ借りれる事になったんだそうでございます。(学園長情報)

 

で、午前中は武術学園との交流会、午後は魔法学園との交流会となり、現在はお昼休憩の真っ最中。俺たち代表生徒たちは控室でお弁当をいただいているところなんですが、何故か俺だけ正座で反省させられておりまして。

理由は明白、俺と武術学園のヤバい人との試合についてですね。

 

観覧席の生徒保護者の皆様方ドン引き、教員生徒揃って顔を引き攣らせるっていうね。でも終わりに武術学園の代表生徒たちと挨拶を交わした時、向こうの生徒さん方全員から“よくやった”ってお褒めの言葉を貰ったんだけどな~。問題のヤバい人は凄く良い姿勢で「ありがとうございました!!」って言ってたんだけど。

 

「「「「遅い、時間が掛かり過ぎ、昼食の暇が無くなる」」」」

マルセル村関係者のお言葉は至極当然、大変反省しております。

 

「「「「「イヤイヤイヤ、ちょっと待とう、反省すべき点はそこじゃないからね?」」」」」

何故か先輩方やラグラ君がツッコミを入れて来ますが、一体何が悪かったというんだろうか?

俺がジミーたちに顔を向けるも、皆して首を捻っておられます。

 

「「「「「駄目だこいつら、何とかしないと」」」」」

王都民とマルセル村関係者との認識の違い、まだまだ勉強しなければいけない事は多そうです。

 

そんな感じで俺たちが昼の休憩時間を楽しんでいる中、胸の前で掌を握ったり開いたりしながら一人ぶつぶつと何かを呟いている御方がですね。

 

「そうか、これって学園ダンジョンでゴブリンさんを倒す時と一緒なんだ。

ラグラ様、分かりました!!これって私の<ライトボール>と一緒なんですよ!!」

ガバッと顔を上げるやラグラ君に抱き付かんばかりの勢いで近付き、上目遣いで報告するアリスさん。

 

「見ていてくださいね。<ヒール>」

アリスさんが光属性回復魔法の<ヒール>を短縮詠唱で発動させます。するとアリスさんの右の掌が淡く光り、数秒留まったかと思うとそのまま消えていくのでした。

 

「えっと、アリス、今のは普通の<ヒール>とどこが違うんだ?俺には普段の<ヒール>と同じ様に見えるんだが・・・」

一見普通に<ヒール>を発動しただけのように見えるアリスさんの魔法、でも。

 

「ねぇ、フィリー。アリスさんに“魔纏い”って教えたりした?」

「いえ、それはまだ。それにマルセル村方式はちょっと危険なので、教えるのならケビンさんから許可の出ている“ヨシの茎方式”で行おうと思っていたんですが。

先程アリスが再現したのは以前ケイトさんのご学友がマルセル村に修行に来ていた際に、ジミー君が三人娘に教えた“魔纏い”の習得方法とほぼ同じかと。アリスは以前学園ダンジョン探索の授業の際、拳に<ライトボール>を纏わせて殴りつけるという事をしていたそうですから、既に“魔纏い”の習得は時間の問題だったのかもしれません」

 

フィリーの言葉に感嘆の声を上げる俺とエミリー、そして何故か口と腹筋を押さえて肩を震わせるジミーとロナウド。二人とも一体どうしたん?

 

「いや、すまん、ちょっと思い出し笑いをな。

そう言えばこないだからアルデンティア第四王子殿下が復学なされたな。王子殿下はアリス嬢の事をいたく気にされているご様子、アリス嬢が新たな“光る拳”を手に入れたと知ったらさぞお喜びになられるだろう。

アリス嬢と共に学園ダンジョンに向かいその成果をご確認なさるやもしれん。そして再び捧げられるドロップアイテム・・・」

「ブフォッ、ジミーお前わざとだろう!!ふざけるなよな、俺は午後から魔法学園との交流会があるんだぞ!!

突然思い出してしまったらどうするんだ!!」

 

ジミーの言葉に俯いたまま肩を震わせるフィリー、思わず吹き出してジミーに掴みかかるロナウドと、口元をニヤケさせながら「俺の出番は終わった、今度はロナウドが頑張ってくれ」と励ましの言葉を送るジミー。

何このカオス。

俺とエミリーは学園ダンジョン探索の授業で一体何が起きたんだと首を捻りながら、ジミーたちの様子を眺めるのでした。

 

“パンッパンッ”

「はい皆さん、注目。それではこれより午後の部、王都魔法学園との交流会に向かいます。

代表生徒の方たちはタスマイヤー先生と共に闘技場舞台の方へ向かってください。武術学園との交流会代表の生徒の皆さんはお疲れ様でした。皆さんは私と一緒に観客席に向かいます」

「うむ、では代表生徒は私と共に来るように。王都学園の誇りを汚す事なくその力を十分に発揮せよ」

 

声を掛けて来たのは生活魔法講師のネイチャーマン先生と基礎魔法学教諭のタスマイヤー先生、ネイチャーマン先生は今日の授業がないという事で生徒の引率の為に駆り出されたらしい。

大人って大変みたいです。

 

「ジェイク、それじゃ頑張れよ」

「あぁ、リリアーナ先輩の話じゃ的当てみたいだし、精々観客をがっかりさせない程度にやってくるよ」

俺はジミーにそう言葉を返すと、肩を竦めてから闘技舞台へと向かうのでした。

 

「それではこれより王都学園と王都魔法学園との交流会を開始する」

舞台上に上げられた俺たちは、午前中に武術学園の生徒と顔合わせをした時みたいに互いに向き合いながら整列しています。

 

「尚、これから行うのは例年のような的に向かって魔法を披露する様なお遊びではない、実戦を想定した模擬戦である。

互いにこれまでの研鑽の成果を十分に活かし、堂々と戦う様に」

「「「「「・・・・・はぁ~~~~~!?」」」」」

 

タスマイヤー先生の言葉に一斉に顔を向ける俺たち、対して動揺する事なく口元をニヤケさせる魔法学園の代表生徒たち。

 

“バッ”

そんな中、大きく手を挙げ声を発したのはリリアーナ先輩でした。

 

「タスマイヤー先生にお聞きします。果たしてそれは必要な事なのでしょうか?

ご存じのように魔法は大変危険でありその破壊力は絶大、初級魔法のボール魔法ですらゴブリンを一撃で倒す事が出来るし、中級魔法のランス魔法に至ってはケガどころの騒ぎではすみません。

剣術と違い受け流す等の難しい魔法において、対人戦による模擬戦は不必要と考えますが」

 

リリアーナ先輩の言葉は至極もっとも、常にハイポーションや霊薬、身代わり人形を用意し命捨てますとばかりに実戦形式の戦闘訓練を行うようなマルセル村が異常なのであって、そうしたアイテムなしに対人戦をしろというのは頭がイカレているとしか思えない。

 

「おやおや、これはこれは流石は温室育ちの王都学園の生徒さん。案山子相手にご立派な魔法は打てても実戦では物の役に立ちませんか。

まぁその点我が魔法学園は常に実戦を意識し、魔物蔓延る世で戦える魔法職の育成に力を入れていますからね。

恐ろしいというのなら別にこの提案を拒否していただいても構いませんよ?これはあくまで提案なのですから」

 

声のする方に目を向ければ、タスマイヤー先生の後ろから現れたいかにも魔法使いといった服装の人物。

 

「あぁ、申し遅れました。私は魔法学園で教鞭をとっております、テッド・ブラウニーと申します。以後お見知りおきを」

そう言いニコリと笑顔を向けるブラウニー先生。その張り付いた様な作り笑顔、とっても気持ち悪いです。

 

「ふん、そういう訳だ。この提案は本日交流会をご覧にいらしているご来賓の皆様方にも賛同いただいている事でな、私も我が学園の生徒が魔法で劣っているとは考えていない。

いい機会だ、皆の力を大いに知らしめるといい」

どこか自分に酔ったような雰囲気で言葉を発するタスマイヤー先生、これはあれだね、ブラウニー先生にいいように持ち上げられちゃってるって奴だね。

これって俺たちが勝っても負けても面倒な事になるって奴じゃん、ふざけるな?

 

“バッ”

俺たちが内心ため息を吐く中、手を挙げたのはロナウドであった。

 

「一つ聞きたい。対人戦という事であれば勝ち負けの決まりがあると思うのだが?」

「あぁ、それですか。基本的には午前中に王都学園と武術学園とで行われた模擬戦に準じます。負けを認めたら負け、舞台下に出たら負け、倒れたら負け。その他あからさまに危険な状態にあった場合、審判の裁定により勝敗を決定すると言ったところでしょうか」

 

ブラウニー先生の説明に分かったと言い下がるロナウド。

 

「ではこれより第一試合を開始する。王都学園フィリー・ソード、魔法学園キャッシー・ローランド」

名前を呼ばれ一歩前に出るフィリーと魔法学園のキャッシー。残りの生徒は急ぎ舞台下に降りて行きます。

 

「両者、開始位置へ。はじめ!!」

 

““サッ””

互いに向き合い魔法杖を構えるフィリーとキャッシー。長杖と短杖、得物は違えど繰り出される魔法に違いはない。

 

「フフフ、魔法はね、職業じゃないの、如何に研鑽を積んだかなのよ。

<ファイヤーボール><ファイヤーボール><ファイヤーボール><ファイヤーボール><ファイヤーボール>」

“バシュバシュバシュバシュバシューーーーーッ”

 

<短縮詠唱>により連続で繰り出される<ファイヤーボール>、それは確かな技術に裏打ちされたキャッシーの得意技。

 

「はい、その意見には同意します。でもこのやり方は気に入らない」

“パコンパコンパコンパコンパコンッ”

自身に向かう<ファイヤーボール>を長杖により全て弾き飛ばすフィリー、そして。

 

“グワーーーーーーーーッ”

それら全てが舞台下で戦いの様子を張り付いた笑顔で眺めていたブラウニー先生の下に。

うん、魔法戦だもんね、流れ弾に注意しないといけないよね。

 

「中々やるわね、でもその余裕がどこまで持つかしら。

<ファイヤーボール><ファイヤーボール><ファイヤーボール><ファイヤーボール><ファイヤーボール><ウインドボール><ファイヤーボール><ウインドボール><ファイヤーボール>」

“バシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュッ”

 

怒涛の如く撃ち出されるボール魔法、合間に別属性の<ウインドボール>を挟む当たり、魔法による対人戦を熟知していることが窺える。

だが。

 

“パコパコパコパコパコパコパコパコパコッ”

その悉くを弾き飛ばすフィリー、そして弾かれたボール魔法の向かった先にいたブラウニー先生は急ぎ魔力障壁を展開する。

 

「フッ、甘い」

“ドガドガドガドガ、ギャー、ガハッ、グワッ、ガヘッ、グホッ”

 

「最初の数発は見せ球、残りは角度を変えて魔力障壁の外から当たるように調整しました」(ニヤリ)

 

フィリーの行う絶対的な技量の差から来るとんでもない所業に、唯々言葉を失うキャッシー。フィリーはそんなキャッシーに向かい笑顔のまま宣言する。

 

「今度は私の技をご覧ください。<ファイヤーボール×10:全方位>」

“ブワッ”

突如フィリーの周りに現われる十個のファイヤーボール、次の瞬間それらはまるで意思があるかのように飛び出し、キャッシーを全ての角度から取り囲むや襲い掛かるのでした。

 

“ドドドドドドドドドドッ”

“キャーーーーーーーーー!!”

“ドサッ、バタンッ”

 

「勝者、王都学園フィリー・ソード」

“ワァーーーーーーーーーーーー!!”

 

上がる歓声、急ぎ舞台に上がり治療を開始するエミリー。

 

「威力は極力抑えましたんで大丈夫とは思いますが、よく休むようにしてください。それでは私はこれで」

そう言いキャッシーに背を向け舞台を降りるフィリーに、俺たちは惜しみない拍手を送るのでした。




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