転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第627話 三大学園交流会、それぞれの反応 (2)

王都学園・王都武術学園・王都魔法学園の交流会は大きなケガ人を出す事なく無事に終了した。

王都魔法学園との交流会の後、会場である王都闘技場に王都警備を主とする王宮第三騎士団が雪崩れ込んで来たり学園長を含む先生方が事情聴取をされたりと大きな騒ぎにはなったものの、俺たち王都学園生徒はビーン・ネイチャーマン先生の引率の下、直ぐに王都学園へと戻る事が出来た。

ネイチャーマン先生曰く、「後の面倒事は学園長をはじめとしたこの交流会の担当教諭陣が対処します。皆さんは寮や各家に帰られてゆっくり休んでください。とても良い交流試合でした、本日はお疲れ様でした」との事。

マルセル村にいた時もそうだが、こうした周りの人たちの裏方的な支えがあって今の自分たちがある。改めて自分達はまだ子供であり、頼れる大人たちに見守られているんだと感じる一幕であった

 

「おはよう、ジェイク聞いたぞ、なんか凄いやらかしたんだってな」

王都学園に戻り代表生徒の先輩方と別れた俺たちは、今日のところは寮に帰って大人しくしておこうという事になり、その日は直ぐに解散となった。

寮では授業の終わった同級生や先輩方から交流会の様子を聞かれたので、ありのままの様子を話したら何故かドン引きされてしまった。

ジミーの話の時は盛り上がっていたのになぜ?同級生のみんな、なんで急に俺の呼び名が“ジェイクさん”になったの?これまで通りジェイクでいいのよ?先輩方、目をそらされると悲しいです。

 

そんなこんなで一夜明けて授業のある講堂に向かえば、水を打ったように静かになるっていうね。・・・なにこれ、ちょっと怖いんですけど?

そんな中周囲の空気をぶち壊すかの様に話し掛けてきたのは、ジミーのダンジョン攻略パーティーのメンバー、アルジミール。

 

「おはよう、アルジミール。今日ってなんかあったの?講堂が急に静まり返ったんですけど、凄い緊張感が漂っていてちょっと怖いんだけど?」

「あぁ、これ?多分昨日の三大学園交流会を見に行った親に“勇者ジェイクには関わるな”的な事でも言われたんじゃない?

お前、ブチ切れて王都闘技場に集まった観客全員焼き殺そうとしたらしいじゃん。昨日の王都上空の大爆発、あれってジェイクの仕業だろう?授業中だったけど、こっちでも大騒ぎになってたから。

その犯人がお前で尚且つ親からそんな事を言われて、ビビるなって方が無理だから。

平民連中は昨日のうちに寮で直接話を聞いたとかで、お貴族様方に捕まって大変だったんだぞ?勇者ジェイクの話は本当なのかって。

一部作り話じみた内容だと思っていたらそれが全くの事実って分かって、顔を青くしてたぞ。凄いいいもの見せてもらった」

 

そう言い腕組みをし満足気に頷くアルジミール。こいつ性格悪、物おじしないところは流石ジミーのところのパーティーメンバーだけど。

 

「いや、ちょっと待とう。いくらなんでも俺は観客全員を焼き殺そうだなんて「あっ、先生が来た。この話はまた後でな」・・・」

ちょっと~~~~~、いい訳くらいさせて、周囲の怯える様な目が辛いの、俺の周りにぽっかり穴が開いてるの~~~~!!

俺の心の叫びもむなしく始まる授業。

 

「おう、今日は静かだな、感心感心。授業の前に少し連絡だ。基礎魔法学のガイアス・タスマイヤー先生だが、暫くの間お休みとなる。理由は魔法学園との交流会に於いて生徒同士の対人戦を勝手に決め、王都を危険に晒した責任を取る形での謹慎だな。

王都闘技場は魔法戦闘に対する備えがないからな、施設が壊れなかった事が奇跡みたいなものだ。もし大きな破損が起きていたら学園長のクビくらいじゃ済まなかっただろうさ、ヘルザー宰相閣下がかなりお怒りだったそうだからな。

お陰で私がその分の穴埋めをする事になってしまった。何だってこの私が基礎魔法学の教鞭を振るわないといけないんだ、こんな事はネイチャーマンの奴にやらせればいいだろうが!!

それをあの男「私には魔法適性がありませんので学園生徒の皆様を教え導くなどとてもとても。私に出来る事は生活魔法の有用性をお伝えする事くらいですので」とかぬかしやがって。

私の仕掛けたトラップを悉く解除し尚且つこっちにトラップを仕掛け返す奴がなにをほざきやがる、あ奴にとって基礎魔法学を教える事など朝飯前だろうが~~~~!!」

 

・・・本日の授業は分析魔法学概論、教壇に立たれるのは昨日のやらかしで謹慎処分を食らったタスマイヤー先生に代わり基礎魔法学も受け持つ事になったことに憤慨するシルビーナ先生。

って言うかシルビーナ先生、未だにネイチャーマン先生とトラップ合戦してたのね。そんな事ばっかりしてるから面倒事を押し付けられたんじゃないんでしょうか?

そう言えばこないだジミーが「どうやら最近第五王女が<罠解除>のスキルに目覚めたらしい」とか言ってたけど、それでいいのか王族。

まぁもしもの為に有効なスキルではあるんだけれども。

思わず“俺もスキル習得のために臨時教務棟に通おうかな”とか考える俺なのでした。

 

――――――――――

 

放課後、エミリーと一緒にネイチャーマン先生の執務室に向かった俺とアルジミールとライオネス。なんかこの二人、トラップ屋敷と化している臨時教務棟の話をしたら面白そうと言って付いてきちゃいまして。

ジミーはバルド先輩に手合わせを頼まれてるとか、ロナウドはその付き合いですね。なんやかんや言ってあの二人は馬が合う様でいつも一緒にいます。

フィリーはカーベル君とアリスさんの特訓、最近は大分いい感じになって来たとかで、そろそろ本格的な魔力枯渇筋トレを始めるとかなんとか。

フィリーってば結構面倒見がいいよね、傍から見たら鬼教官そのものだけど。

 

「なぁジェイク、俺、見ちゃいけないものを見ている気がするんだけど。あれって幻覚じゃないよな?」

「アル、安心してください、私にも見えていますから。オーランド王国第五王女フレアリーズ・ウル・オーランド殿下、可憐で大人しく、草花をこよなく愛する御方と聞き及んでいたのですが」

 

目の前の光景に我が目を疑うアルジミールとライオネス。そこには自衛隊の戦闘服のような格好に制服のジャケットを羽織り、顔にゴーグルをつけ10フィート棒を持ったフレアリーズ第五王女殿下のお姿。その隣には同様の格好をしたお付きのヘレン先輩もおられます。

 

「あら、<勇者>ジェイクと<聖女>エミリー、それにアルジミール君にライオネス君ではありませんか。本日はどうしてここに?」

「イヤイヤイヤ、どうしてここにじゃありませんから、フレアリーズ殿下こそ何をなさっておられるのですか。そんなキョトンとしたお顔で首を(かし)げられても、その格好じゃ全て台無しですから~~~!!」

 

堪らずツッコミを入れるアルジミールと、その言葉にウンウン頷きを示すヘレン先輩にライオネス。うん、いいツッコミです。天然ボケのフレアリーズ第五王女殿下とツッコミのアルジミール、悪くないかもしれない。

 

「何をなさってと言われましても、ネイチャーマン先生の教務室を訪ねようとしているだけですけれども。そこに至るための罠が中々に強敵でして、罠の配置や種類が来るたびに変わっていますの。

しかも規則性がないので油断していると私でも罠に掛かってしまいます。聞けばシルビーナ先生が気まぐれで毎日罠の変更をしているとか、「もしかしたら私も罠解除スキルに目覚めているかもしれませんね」とネイチャーマン先生が笑って仰っていたくらいに頻繁らしいですから。

私とヘレンもようやく罠解除スキルに目覚めましたし、目標は五分以内にネイチャーマン先生の教務室に到着する事ですかね」

 

そう言いニコリと微笑まれるフレアリーズ第五王女殿下に、「そうじゃない、そういう事じゃない」といってこめかみを揉むアルジミール。

そうじゃない、そこは一度殿下の話に乗っかってから“って違うからね”とか言ってツッコミに転じないと。まだまだ修行が足りないぞ、アルジミール。

 

「おや、皆さんお揃いでどうなさったのですか?」

そこに声を掛けて来たのは、臨時教務棟の玄関口扉を開け顔を見せたネイチャーマン先生でした。

 

「あぁ、ネイチャーマン先生。ちょうど先生の教務室にお伺いしようと思っていたところだったんです」

「そうだったんですか、それならシルビーナ先生のトラップを解除しておけばよかったですね。私も大分慣れましたので最近ではトラップに掛からなくなったんですよ、これもシルビーナ先生のお陰でしょうか」

 

そう言いにこやかに会話されるお二人。

 

「って違いますよネイチャーマン先生、そもそも教務棟にトラップが仕掛けられている事自体がおかしいんですから。生徒が訪ねる事もあるですよ?危険じゃないですか!!」

そんな二人にド正論を繰り出すアルジミール、君こそ勇者だ。でも残念、ネイチャーマン先生は結構ズレているんだよ、こないだ教務室に伺ってその事が良く分かった俺です。

 

「あぁ、その事ですか。流石に私もそう思いまして学園長に相談したんですよ、そうしたらシルビーナ先生が妥協案を出しましてね、生徒が怪我をしない様な罠に変更する事で話を付けたみたいなんですよ。

天井から水が降ってきたり小麦粉まみれにされたり髪型が鳥の巣のようになったりと、いたずらの限りを受ける事にはなりますが」

 

ネイチャーマン先生の言葉に俯いて小声でぶつぶつと“アフロは嫌、アフロは嫌、アフロは嫌”と呟かれるヘレン先輩。そうか~、ヘレン先輩アフロ経験者か~。確かに貴族女性にアレはきついわな。

いくら第五王女殿下のお付きとは言えその本気モードの格好はどうかと思ったけど、既に心が折られてたんですね、納得です。

対してアルジミールとライオネスは顔を引き攣らせておられます。さぁ、君たちも経験するんだ、トラップワンダーランドを。

 

「でもそうですね、何か御用がおありなのでしたら裏口から教務室に向かいますか。皆さんこちらへどうぞ」

 

そう言い俺たちを案内するネイチャーマン先生、向かった先は建物の裏手、丁度二階教務室の窓が見える場所。その場に着くや軽く手を振るい、空中を上り始めるネイチャーマン先生。

 

「「イヤイヤイヤ、何で宙を浮いてるんですか、意味が分からないんですけど」」

途端ツッコミを入れるアルジミールとライオネス、いいぞ、その調子だ。

 

「えっと、フレアリーズ殿下とヘレン嬢は分かりますよね?それとジェイク君とエミリー嬢も」

ネイチャーマン先生の問い掛けに頷きで返す俺たち、そんな俺たちに驚きの目を向けるアルジミールとライオネス。

 

「あぁ、アルジミール君とライオネス君は分からなかったみたいですね。では分かり易く色を付けてみましょう」

ネイチャーマン先生がそういったとたん目の前に炎が広がり、その場に炎で出来た階段が姿を現すのでした。

 

「これは<魔力操作><魔力制御>と生活魔法の応用です。先程は単に純粋な魔力で階段を作っていただけですね。ただの魔力故に見えづらい、魔力障壁でも似たような事が出来ますが、あちらだと何故か確り見えるんですよね」

そう言い今度は魔力障壁を階段状に出現させるネイチャーマン先生。

 

「それでは執務室へどうぞ、炎の階段といっても熱くはないですから安心してください」

ネイチャーマン先生はそう言うと、二階教務室の窓を開け中に入っていくのでした。

 

“コトッ、コトッ、コトッ、コトッ、コトッ、コトッ”

「それで本日はどうなさったのですか?」

 

テーブルに人数分のティーカップを並べ、言葉を向けるネイチャーマン先生。

 

「えっと、俺とエミリーはトラップに挑戦しに来たと言いますか、今日の授業でシルビーナ先生が臨時教務棟のトラップの話をしていたので興味をそそられまして」

「「俺たちは面白そうだからついて来ました」」

 

俺たちの言葉に苦笑いを浮かべるネイチャーマン先生。「まぁ私はいない事もありますが、いつでもいらしてください」と温かいお言葉をいただく事が出来ました。

 

「私はスライムの事をお聞きしたかったものですから。以前教えていただいたように“魔力水”を作り与えるようにしたところ、私のスライムちゃんが凄く喜びまして。スライムちゃんとより仲良くなるためにはどうしたらよいかとご相談に。

それとモフモフマミーのスライムのぬいぐるみをですね、出来ればネイチャーマン先生経由で購入していただけないかと。私が直接訪ねるには色々と手続きが煩雑にございまして」

そう言い申し訳なさそうな顔をなさるフレアリーズ第五王女殿下。

 

「そうですね、先ずスライムの件ですが、個体別にお名前を付けられるといいかもしれません。もしくは全体に何か一つの名前を与えるとかでしょうか。

これはお世話になっていますケビン・ワイルドウッド男爵様にお伺いした話なのですが、ワイルドウッド男爵様は幼少の頃より大福という名前を付けたスライムを飼われているんだそうです。互いに意思の疎通ができるほど大変頭のよいスライムだとか、この大福の事はそちらのジェイク君やエミリー嬢もよく知っていると思います。なんでも故郷のマルセル村では子供たちの安全な修行相手として可愛がられているのだとか。

他にも弟さんのジミー君は三体のスライムにスライミーという名前を付けて可愛がられているんだとか。そうそう、ジェイク君もスライムを連れているんですよね?」

 

突然話を振られ驚く俺、まぁ常に一緒ですけど。最近は筋トレ用に重量マシマシシャツになって貰ってます。前世のマンガで読んだ修行方法ですね。

男の子なら一度は憧れるパワーリスト、実際のトレーニング効果は怪しいらしいけど、やりたくなるのが男の子。

 

「黒蜜、おいで」

俺の言葉に服の中からニュインと現れて、右手の掌の上で水饅頭体型になる黒蜜。そんな黒蜜の姿に「かわいい~~♡」と言って相好を崩されるフレアリーズ第五王女殿下。

 

「ご覧のように名前を付ける事で互いの間に深い絆が生まれます。上手くすればテイムできるようになるかもしれません。あとはフレアリーズ殿下とスライムとの関係次第、頑張ってください。

それとぬいぐるみ工房モフモフマミーの件ですが・・・」

「あぁ、それだったら俺が何とか出来るかもしれません」

 

口を開いたのはアルジミール。えっと、君は一体何を言ってるのかな?

 

「俺、一応フレアリーズ第五王女殿下の婚約者候補なんで」

「「「「「・・・・・・はぁ~!?婚約者候補!?」」」」」

驚きに声を上げる一同(フレアリーズ第五王女殿下を含む)、俺は本日最大の驚きに、口を開けたままポカンとするしかないのでした。




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