転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第644話 転生勇者、友人に懇願される

「お願い、付き合って!!」

告白、それは男ならば一度は受けてみたいと思う夢のイベント。

王都学園という物語の世界のような施設、可愛らしい制服を着込んだ女子生徒、スタイリッシュなブレザーを羽織った男子生徒。

青い空に浮かぶ白い雲、降り注ぐ日差しの中向かったのは教務棟の外れにある臨時教務棟の脇の林。

 

“お話があります。放課後、臨時教務棟脇の林に来てください”

ロッカーに差し込まれる様に入っていた手紙、高鳴る鼓動、様々な思いが駆け巡る。

 

「マジで俺一人じゃどうしていいのか分からないの、そこでジェイクと黒蜜のお力をお借りしたく」

「ってアルジミールじゃねぇか、紛らわしい事をしてるんじゃねーよ!!

このドキドキを如何したらいいんだよ、男の純情をもてあそぶんじゃねーーー!!」

 

手紙の入った封筒を思いっきり地面に叩きつけた俺は悪くないと思います。って言うかジミー、エミリー、フィリー、お前ら知ってて黙ってただろう!!俺がどうしたらいいのか分からなくて相談した時、「手紙を出すってとても勇気がいる事だと思うの。断るにしてもちゃんと相手に向き合って言葉を掛けるべきだと思うの」だなんてもっともな事を言って、こうなる事が分かっていて言葉を向けやがったな~~!!

 

木立を抜ける風に若者たちの笑い声が木霊する。

悩み、苦しみ、それでも前を向き歩いて行く、それが青春。

 

「ウガ~~~~、こっぱずかしいわ、いっそのこと殺せ~~~!!」

林の中に響く若者の心の叫び、これもまた青春の一コマ。

地面に両手両膝を突き項垂れるジェイクと、草むらに隠れつつゲラゲラ笑うジミーたちの姿に、“えっと、俺の頼み事はどうなるの?”と不安げにオロオロするアルジミールなのでありました。

 

「で、こんな所に呼び出して一体どうしたんだ、アルジミール」

のそりと草むらから姿を現した長身の男子生徒、「あ~、笑った笑った、やっぱりジェイクは最高だ」と呟きながら目じりの涙を拭うジミーは、呼び出しの相手であるアルジミールに声を掛ける。

 

「あ、あぁ。俺がフレアリーズ第五王女殿下に王宮へのお誘いを受けた事はお前たちも知っているだろう?その具体的な日程が今度の闇の日に決まってな。

手土産等はライオネスと相談して準備したんだが、相手はあのフレアリーズ第五王女殿下だろう?話題の中心がスライムの事になる事は確定的なんだよ。以前ネイチャーマン先生の執務室を訪ねた際もスライムとより仲良くなるにはどうしたらいいのかと聞いていたくらいだからな。

そこでジェイクだ。ジェイクのスライム黒蜜はフレアリーズ第五王女殿下の大のお気に入りだからな、ジェイクに黒蜜を連れてきてもらえればフレアリーズ第五王女殿下も喜ばれるんじゃないかと思ったんだよ。

 

ただこんな話、他の者が聞いているかもしれない場所じゃ出来ないだろう?俺が<勇者>であるジェイクに呼び出しを行っているところを見られるのも、スロバニア王国からの留学生という立場上問題がな。

ここは貴族子女の通う王都学園、どんな噂を立てられるかなんて分かったもんじゃないからな」

 

アルジミールの説明に納得といった表情を浮かべる、マルセル村若者軍団一同。そんな中ただ一人、ジェイクだけは「他に方法がなかったのかよ~!!」と心からの叫びを上げる。

 

「そうだ、ネイチャーマン先生の話ではジミーもスライムを飼ってるんだろう?頼むよ、ジミーもスライムを連れて王宮のフレアリーズ第五王女殿下のところに行ってくれないか?」

そう言い頭を下げるアルジミール。

 

「王宮か、俺とジェイクの他にエミリーとフィリー、それとメイドのディアを同行させてもいいというのなら構わないぞ?そんな場所、今後一生行けないだろうからな」

「ハハハ、まぁそうだよな。俺も祖国スロバニア王国の王城には行った事がないからな。ましてやオーランド王国の王宮に招かれる事になるだなんて思いもしなかったよ」

 

「いや、アルジミールは侯爵家子息だろう?だったら王城に呼ばれたりするんじゃないのか?」

「あぁ、それは歳の近い王子殿下や王女殿下がいた場合な?ご学友候補や側近候補として交流の為に招待される事はままあるな。

ウチだと上の兄が第三王子と同い年でな、ご学友をやらされてるよ。幸い側近は別の者が行っているからいいが、同学年に公爵家のお花畑子息がいてな。いつも振り回されまくってると愚痴っていたよ」

 

そう言いどこか遠くを見つめるアルジミール。高位貴族家子息も大変なんだなと同情の気持ちを抱くマルセル村若者軍団一同なのでありました。

 

――――――――

 

「なぁアルジミール。今更なんだけど王宮にこんなに大勢で押し掛けたりして大丈夫なのか?」

 

約束の闇の日、制服姿の俺たちマルセル村若者軍団は、王都学園正門前に二台の馬車で迎えに来たアルジミールに声を掛ける。

 

「あぁ、その辺は大丈夫だ。ちゃんとヘレン先輩を通じて王宮側に確認を取ってある。ヘレン先輩が凄くいい笑顔で了承して下さったから問題ないはずだ」

アルジミールの言葉に合わせ悪そうな笑みを浮かべるライオネス。うん、問題なさそうですね。

そう言えばこの前ネイチャーマン先生の教務室で「フフフ、これぞフレアリーズ殿下の実力、第四王女殿下ざまぁ!!」とか言って高笑いしていたし、王宮内も色々あるんだろうな~。面倒な事にならないといいけど、無理なんだろうな~。

 

「それじゃ行こうか。悪いけどジェイクとエミリー嬢は俺たちと同じ馬車に乗ってもらえるか?俺が王都学園で社交に努めている証明になるんで助かる」

「「「「あぁ~、<勇者>と<聖女>の知名度を利用するのね。流石アルジミール、悪知恵が回る」」」」

 

「外交手段って言って、その悪ガキを見る様な目は止めてね?こういう事は交渉ごとの一手段なの、必要な事なの!!」

使えるモノは友でも使う、自らの権威付けに余念がないアルジミールに感心する俺たちなのでありました。

 

“ガチャガチャガチャガチャ”

馬車は揺れる、王都の石畳を踏みしめながら、一路王城を目指して。

 

「うわ~、凄いよジェイク君、本当に王城に来ちゃったよ」

そこはいつか来た王城前広場の先、門兵たちが訪れた多くの者たちを誰何する場所、王城正門。

 

「そうだな、こうやって改めて見上げると、王城の正門って大きいよな」

堅牢にして重厚、ただそこにあるというだけで威厳と威圧を与える巨大な門。

 

「王城の門は機械式で人力では開かない仕組みになっていると聞いている。王都街門もそうだが、ほとんど壁が開閉しているようなものだからな、いくら<身体強化>のスキルがあっても人の身で押し開けるのは不可能だろうさ」

 

“ガチャッ”

馬車の扉が開かれ、門兵が言葉を掛けてくる。

 

「失礼いたします。スロバニア王国からの留学生でいらっしゃるアルジミール・マルローニ侯爵令息でいらっしゃいますでしょうか?」

「あぁ、俺がアルジミール・マルローニだ。隣は側近のライオネス・ベルーガ、前の二人は王都学園の学友<勇者>ジェイク・クロー、<聖女>エミリー・ホーンラビット嬢となる。後方の馬車は共に学友の<剣天>ジミー・ドラゴンロード、<賢者>フィリー・ソード、それとエミリー嬢付きのメイドとなる。

本日はフレアリーズ第五王女殿下のお招きでお伺いした、これが招待状となる」

 

懐から取り出した招待状を門兵に差し出すアルジミール。門兵はその招待状を確りと確認した後、恭しくアルジミールに差し返す。

 

「確認が取れました。王宮内では案内の者が付きますので、その指示に従いお進みください。ご協力感謝いたします」

 

“ガチャガチャガチャガチャ”

馬車は進む、王城正門を抜け王宮を目指して。

 

「なんか俺緊張して来ちゃった。手汗が凄いんだけどどうしよう?」

「私も。緊張のし過ぎでへまをしないか凄く怖いんだけど。なんか失礼なことをしたら処刑されちゃうのかな?」

 

「ハハハ、いや、流石に直ぐ処刑とかはないと思うぞ?

エミリーはホーンラビット伯爵家の御令嬢だろう?ホーンラビット伯爵家騎士団がたった五騎で王都騎士団を陥落させた話は有名だからな、そんなホーンラビット伯爵家の御令嬢を行き成り害するような馬鹿は流石にいないだろう。

さっきの門兵の態度もそうだが、今日<勇者>ジェイクと<聖女>エミリーがフレアリーズ第五王女殿下の下を訪れる事はヘレン先輩経由で王家に伝わっている。二人の訪れは王家にとっても喜ばしい事、ゾルバ国王陛下がそんな二人を害するとは思えないしな」

 

「「うわ~、アルジミール君策士。俺たちを使って自身の評価をグングン上げてるし」」

「え~い、何とでも言え。俺にはスロバニア王国の外交の使者としての役割もあるの、俺の評価が上がる事は翻ってスロバニア王国の国益に繋がるの。マルローニ侯爵家の者として、最低限の仕事はしないといけないの!!

それでも主な理由はスライムだから。ジェイク、マジでお願いします」

 

侯爵家の者と言いつつ速攻頭を下げれるこの態度、アルジミール恐るべし。俺たちはその後もなんやかんやとおしゃべりをしつつ、王城の中を進んで行くのでした。

 

「「「アルジミール・マルローニ様、王都学園のご学友の皆様、本日はようこそおいで下さいました」」」

 

馬車が止まり下車を促された先では、王宮のメイド様方が笑顔で出迎えを行ってくださるのでした。

 

「ジェイク君、お腹を押さえてどうしたのかな?何か気になる事でもあったのかな?」

「ん?何もないよエミリー。ほら、お城のメイド様方がご挨拶をしてくれているからちゃんと並ぼうか。挨拶の際に背中を向けるのは失礼に当たると思うよ?」

 

“壁に耳あり、目の前にエミリー”、油断、駄目、絶対なのであります。

 

「出迎えご苦労、私がアルジミール・マルローニという。本日はよろしく頼む。こちらは皆私の学友たちだ、大勢で押し掛けるのも失礼かと思ったのだが、皆王都学園でフレアリーズ第五王女殿下と親しくしている者たち、フレアリーズ殿下も大変お喜びであった為同行を願った。

私共々よろしくお願いしたい」

「「「はい、畏まりました。ご案内いたします」」」

 

アルジミールの口上、メイド様方は何故かその言葉に誇らしげな顔をして案内を始めます。

 

「なぁ、アルジミール。何であのメイド様方はアルジミールの言葉に嬉しそうになってるんだ?

何か俺たちを案内する態度が勝利者の凱旋みたいに見えるんだが」

「あぁ、おそらくだが彼女達はフレアリーズ第五王女殿下付きのメイドなんだろうな。

ジェイクたちも知っている通りフレアリーズ第五王女殿下は大のスライム好きだ。王都学園では“スライム愛でる姫君”とか呼ばれてるんだったか、おそらく王宮内でも奇異の目で見られていたんだろうな。

そんなフレアリーズ殿下が王家が注目する<勇者>ジェイクと<聖女>エミリーを学友として王宮に招いた。王都学園という施設まで作って上級職の者と高位貴族子弟の関係構築を行おうとしている王家として、最上級職業の二人との関係を築けた功績は大きい。その事は二人をお茶会に招いたアルデンティア第四王子殿下の事を考えてくれれば分かると思う。

つまり王宮内で腫物扱いされていたフレアリーズ第五王女殿下が大金星を挙げたって事だ。お付きのメイドとしては誇らしい事だろうさ」

 

「え~っと、つまりはどういう事?」

「今王宮で注目されてるのはフレアリーズ第五王女殿下と<勇者>ジェイク、<聖女>エミリーの関係が深まったという事。そしてその仲立ちを行ったスロバニア王国からの留学生である俺の評価も確り上がったって奴だな」

 

「「「「うわ~、黒い、黒いぞアルジミール。流石は侯爵家令息、大変勉強になります!!」」」」

「ワッハッハッハッ、褒めろ褒めろ」

 

「申し訳ございません、アルジミール様、ご学友様方。王宮内ではお声を下げていただければと存じます」

「「「「「すみませんでした」」」」」

 

メイドさんに注意され、王宮という場所にテンションが上がりはしゃいでいた事を反省する俺たち。そんな中、ライオネスが「クックックックッ、こうして実績を積んで行けばフレアリーズ第五王女殿下とアルジミール様との仲は確実なものに。本国の阿呆婚約者候補共、ざまぁ」と呟いていた事は、アルジミールの耳には届いていないのでした。

 

・・・俺、確り聞こえちゃった。高位貴族のドロドロ、怖い。




本日二話目です。
行ってらっしゃい。
by@aozora
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