転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第66話 村人転生者、森を散策する (2)

いや~、やっちまったやっちまった。こんな大森林の奥地で魔力枯渇なんて自殺行為以外の何物でもないじゃん。テンション上がりまくってついね。

だって憧れの魔道具よ?魔力枯渇の必須アイテムよ?マルコお爺さんの所で研究して今年いっぱいにでも形に出来れば御の字って思ってた一品よ?我慢するなんて無理無理無理。思わず大賢者様万歳って叫んじゃいましたもん。

ここが大物魔獣が入り込まない秘密の花園で本当に良かった、今ならその辺のカマキリにだって負ける自信があります。

 

でもいいわ~、しっかり筋肉使ってますっていうこの感覚。これまでどれだけ魔力に頼って生活してきたのかが良く分かります。

こんな生活してたらちょっと魔力を乱されるだけで機能不全に陥ること間違いなし、それって結構簡単に出来そうだしね。

今までも魔力枯渇対策に魔力過多症治療薬服用による訓練は続けて来たけど、やっぱりお薬だし?副作用とか常用性とかあったら怖いじゃん?

天才調薬師様が作り上げたお薬でそんな心配は無いとは思いたいけど、俺って使い方完全に間違ってるしね?

その点このアイテムなら単なる現象としての魔力枯渇、身体への負担も少ないと思いたい。

 

魔力枯渇状態自体が人体に負担を掛けるという可能性もあったんですけどね、なんとこの不安を払拭してくれる様な文献を発見したんですよ~。

それこそドレイク村長代理からホーンラビット牧場建設のお代としていただいた、マイケル・マルセル村長候補所有であった「魔法の書」の魔法修行の項にこういった記載がございました。

 

<魔法の修行において多くの者が体験する魔力枯渇、身体は重く頭は痛く意識が断たれる現象であり、多くの者が恐れ怯えた事であろう。だが一流の魔法使いと呼ばれる者たちは皆この魔力枯渇を克服し乗り越えて来た者たちなのだ。

もし諸君が本気で魔法の道を極めんとするならば、魔力枯渇を恐れてはならない。かつてエルフの魔術すらも身に付けようとした大魔法使いが残した言葉がある。

“魔力枯渇を恐れるな、我が強大な魔力を身に付け今日大魔法使いと呼ばれる様になったのは、全て若かりし頃に無謀にも魔力枯渇を繰り返しながら魔法の習得に努め、繊細な魔法の運用を身に付けたからである。努力は決して裏切らない、全ては結果として返って来る”

大成の道に近道はない、弛まぬ努力こそが道を切り開くのだから。>

 

皆さんやっておられたんですね、魔力枯渇をものともしない魔法修行。ぶっ倒れてからが本番だ~ってどこのスポコン漫画って思うでしょ?でもジェイク君なんかそこから木刀で殴り掛かったもんな~、本物は違うよな~。あの時彼六歳だよ?勝てないわ~。

 

先達の教えは偉大です、結論から言えば魔力枯渇でも人は死にません。頭が痛くなって気を失うのが精々です。ですんで(わたくし)、先ずはその状況でも倒れない様に何度も疑似的に魔力枯渇寸前の状態を繰り返していたって訳です。

 

初めの頃はきつかったですよ、それこそ魔力枯渇をしたのなんて四歳の頃以来でしたから。でもまぁ人間慣れると言いますか何と言いますか、それほど頭痛もなく歩いたりする分には問題なくなって来てはいたんですけどね。魔力枯渇度合いの調整がなかなか難しくてですね~。

お薬を飲み過ぎれば流石に俺でもひっくり返っちゃいますから(多分)。四粒飲んでから徐々に魔力を減らすのがそれなりに面倒でして。

その点この魔道具は魔力のみを吸い取るシステムなのか必要以上の負担が掛らないって言うね。

流石は大賢者様の作品、細部にまで拘り抜いた逸品です事。

 

「では大賢者シルビア様、この腕輪はありがたく頂戴いたします。これで懸案だった魔力枯渇状態での修行にも目処が立ちました」

 

“あ、あぁ、それはもう君のものだから好きに使ってくれて構わないんだけど、普通そんな使い方する?って言うか一体どんな事態を想定してそんな修行を行っているの?さっきの話だと大魔法使いを目指しているって訳じゃないんでしょ?”

 

「それですか、大賢者様はダンジョンというものをご存じでしょうか?僕はまだ見た事が無いんですが以前魔道具職人の方から魔石の話を聞いた時に初めてダンジョンの事を聞きまして。多くの魔物と多くの罠、人々の欲望を刺激するドロップアイテムと呼ばれる物や宝箱と言ったものがある場所だとか。

冒険者の中にはこのダンジョンを主な活動場所にする方も多いとか。広く魔石の鉱山と認識されている場所と伺いました。

 

僕はその話を聞いて思ったんです、“そんな不思議な場所なら魔力枯渇を起こす罠があっても不思議じゃない”って。だったら魔力枯渇を起こすかそれに近い状態異常を引き起こす魔物がいてもおかしくない、リッチキングとか言う魔物が使うという即死魔法ってもしかしたら強制魔力枯渇の事なんじゃないんだろうかって。

そこまで行かなくとも状態異常として魔力枯渇って有効だと思うんですよ、自然現象ですから抵抗のしようもありませんし。

そんなあからさまな弱点に気が付いちゃったら怖くていられないじゃないですか。だから思ったんです、魔力枯渇で倒れない様にしようって。

 

残念ながら僕には魔法適性が無かったから大きな魔力消費の手段が無かったんですよ。仕方がないので色々知識を集めまして、魔力過多症の治療薬に行き着いたんです。

あれってヒカリゴケの特性を利用して身体の内部から余剰魔力を吸い取るっていう薬なんですけど、この魔力を吸い取るって効果が使えないかと思ったんです。

頑張りましたよ、本当に。材料集めから作製まで、そこまでやって漸く修行が出来たって訳です。

 

世の中には魔力を吸い取る呪われた魔道具って呼ばれる便利な道具もあるらしいんですが、残念ながら辺境の村にそんな便利グッズはなかったんです。王都なんかに行けば魔法を封じる道具なんかもあるって聞いたんですけど、それもちょっと違うんですよね。その点この腕輪は最高ですって、僕、頑張りますよ♪」

俺がニコニコしながら語り終えると何故かドン引きをした顔を向ける大賢者様、俺何か変な事を言ったのだろうか?

 

“イヤイヤ普通そんな事考えないからね?予め魔力枯渇をしない様にするアイテムなりなんなりを揃えるから。リッチの即死魔法だってあらかじめ準備があればレジスト出来るからね?魔力量の多い大賢者と呼ばれる人たちなんかは圧倒的魔力量で対抗出来たし”

 

「えっとそれではシルビア様も?」

 

“えぇ、リッチは何度か討伐した事があるわ。即死魔法もレジスト出来たし、基本効かなかったから平気だったわよ?”

 

魔力豊富な大賢者には効かない、しかもレジスト出来る。やっぱり魔力枯渇かそれに類する闇魔法の一種じゃないですか、嫌だ~。魔力枯渇超恐いじゃないですか。冒険者、駄目、絶対ですって。

“この腕輪を使って対策を取るぞ”と固く心に誓う、ケビン少年なのでありました。

 

 

“それで少年は・・・って名前を聞いてなかったわね、なんて呼んだらいいかしら?”

 

「あ、ケビンって言います、大賢者シルビア・マリーゴールド様」

 

“シルビーでいいわよ、親しい仲間はそう呼んでいたし。もう死んでるのにいつまでも大賢者ってのもね?花園のシルビー、そう呼んで頂戴。それでケビンはこれからどうするの?大森林のこんな場所に目的もなく訪れたって事はないんでしょう?”

 

「そうでした、僕、養蜂用に蜂のスカウトに来たんですよ。誰か村に来てくれる様な蜂の知り合いなんていませんかね?」

 

“そうね心当たりはってある訳ないでしょうが、いくら幽霊だって昆虫や魔物に知り合いなんていないからね?そんなの貴族のボンボンが趣味で昆虫の観察しているか養蜂家の人くらいだから。あの人たちだって飼育はしていても知り合いとかじゃないから”

 

「えっ、そうなんですか?こんな魔法なんて不思議な力がある世界だから花園の主ならそれくらいしてるんだとばかり。だって昆虫はこの結界を自由に行き来できるんですよね?その昆虫に意識を移したり感覚共有なんかが出来れば森の様子も分かるし、いい暇潰しになると思いません?

それにさっきの話だと大型の魔獣は来れないみたいだけど、小型の魔物や動物は来れるみたいじゃないですか。現にB子さんも入って来てますし。

そんな魔物や動物なら、昆虫よりも感覚共有は容易なんじゃないんですか?確か魔法やスキルにそんな感じのものがあった様な気がしましたけど」

 

“あ、そう言われればそうだったわ。テイムスキルならテイムした魔物と感覚を共有出来るし、闇属性魔法にもその辺の小動物を捕まえて使役する魔法があったわ。ていうか冒険者時代散々使ってたじゃない。何で気が付かないかな~私、あ~、どれだけの月日を無駄にしたんだ私は~!!”

 

何か行き成り頭を抱えて悶える地縛霊、心霊体験的にこれってかなりレアかも。

「ちょっとシルビーさん、試しにその辺のフォレストビーに魔法を使って感覚共有してみて貰えません?花園の主からの使役なら抵抗もされないと思うんで」

 

“そうね、試してみるわ”

 

そう言い魔法を行使するシルビーさん。やっぱり魔法使えるじゃん、実体もないし何も出来ないなんて大嘘じゃん。油断してたらサクッとあの世行きじゃん、怖いわ大森林。

 

”お。おぉ?こんな感じなのね、これはいいわ。私既に肉体がない分限界値がほとんどないみたい。この花園にいる全てのフォレストビーと感覚共有してるのに全く違和感なく情報共有出来るみたい。

それで村に引っ越ししてもいいフォレストビーだったわよね、ちょうど巣分け間際の個体がいるみたいよ。この子に付いて行けば案内してくれるらしいわ”

 

シルビーさんがそう言うと、花畑の中から一匹のフォレストビーがこちらに近寄って来ました。これって凄くない?ちょっとした提案だったんだけど、森の花園の支配者が誕生しちゃったって感じ?まぁ実害はなさそうなんでいいんですけど。

 

それじゃ早速ご案内をってダメじゃん、俺まだ魔力枯渇中じゃん。

俺は急ぎ腰に巻いたポーチから小瓶を一つ。これは前回アナ婆さんの下で悔しい思いをした事を反省して用意した一品、ベネットお婆さんに攻撃糸製の布で作って貰った丈夫なポーチでございます。

中には包帯にポーション、スタミナポーション、ローポーションの他魔力回復グッズである蜂蜜きな粉飴が入っているんですね~。

デカ蜂さんの所の蜂蜜、一壺金貨三百枚を超えるだけあって、魔力が豊富でして。きな粉と練り合わせて飴にしたら便利な魔力回復グッズにですね~。ゲーム的な言い方だとMPポーション飴って感じ?でも俺魔力回復薬なんて聞いた事ないんだけど、王都とかにはあるんだろうか。ミランダさんも魔法使いの専門薬は作った事がないとか言ってたからな~。おそらくあるんだろうけど軍事機密扱いなんじゃないかな~。

・・・黙っておこう。

 




本日二話目です。
新入学の学生さん方は部活決まりました?
体育会系の方はもう練習に参加されてるんでしょうかね。
朝練頑張ってください。
いってらっしゃい。
by@aozora
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