転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第747話 マルセル村の春祭り、若者たちの旅立ち (2)

“えっ、何でこんな所に暗殺者ギルド総帥白炎様がいますの~~~~!!”

それは宿前の村の健康広場、マルセル村の春祭り会場での事。村門脇の闘技場で行われた余興の出し物である舞台「魔王カオスと呪われた英雄 ~愛、それは叫び~」は大盛況のうちに幕を閉じ、祭りは場所を移し村人全員が揃っての宴席に移行。

というかあの演目の「~愛、それは叫び~」ってこういう意味でしたの!? 叫び声を上げたのって(わたくし)だったのですけれど!!

いま思い出しただけでも恥ずかしいやら悔しいやら憎らしいやら、穴があったら入りたいですわ~~!!

 

そんな春祭り会場ではジェイクがジミーに怒られ正座させられてますが。何でこんな事をしたのかと問い詰めるジミーに対し、「マルセル村女衆に逆らえなかったからです」と答えるジェイク。

どうも今回の舞台の騒ぎは村ぐるみで行われていたらしく、ジミーのお母様であるメアリーさんも全面協力していたんだとか。

 

「メアリーさん、マリア母さん、ミランダさん、デイマリア様、その他マルセル村女衆に詰め寄られて俺が逆らえるとでも? エミリーもノリノリで参加してるのよ? 月影さんに負けたのだって観客席のクルンさんとラビアンヌさんに呼び掛けに行く為だったんだよ?

まぁあの二人はそんなことしなくても直ぐに闘技場に降りたから余計な事だったのかもしれないけど」

 

ジェイクの告白に怒るに怒れなくなるジミー、なんかいいきみですわ。

 

「それにジミーってば黙ってたらそのまま王都に戻っただろう? そうしたら間違いなくクルンさんとラビアンヌさんは後から追い掛けてきたじゃん? ケビンお兄ちゃん曰く、「いつまでも答えを先延ばしにしているジミーが悪い」って事らしいよ?」

「・・・分かった、俺が態度をはっきりさせなかったところを皆して背中を押してくれた、結果的にはそういう解釈もできる状況だったからこれ以上は言わん」

 

ジェイク君の説明(言い訳)に一定の理解を示すジミー。

 

「分かってもらえたようで嬉しいよ。それじゃ俺も「だが、こんな友情や信頼を打ち壊すような真似をしたジェイクをただで許す訳にはいかん、お前は宴席が終わるまで正座、分かったな!!」・・・はい、大変申し訳ございませんでした」

そう言いガックリと項垂れるジェイク。ジェイク、ドンマイですわ。

 

そんなちょっとした裁きのあと起きたのがラビアンヌの告白劇、何ですのあのハーレークインロマンスみたいな展開は、格好はメイド服と村の青年といった装い、場所は異世界の片田舎にもかかわらずカウンターバーで語り合う男女の姿が幻視できましたわよ?

というかお相手の目茶苦茶格好いい男性、その整った面立ちと鋭い眼差し、ファングッズを集めたのは遠い昔の思い出、王都の闇、暗殺者ギルド総帥、“悪鬼白炎”様ではないですの、何でそのような御方が暢気にマルセル村の春祭りで女性に告白されてますの!?

 

「あの、ジェイク、あちらの男性、はじめてお目に掛りますけどどういった方ですの?」

「ウゥ~、足が痺れる。えっ、あぁ、白雲さん? そうか、ラビアナ様は鬼人族って種族は目にした事がないかもしれませんね。

エイジアン大陸の東にある島国“扶桑国”に暮らす民族で額から角が生えているのが特徴の人たちなんですよ。白雲さんと蒼雲さんの親子はマルセル村でお茶農家を営んでおられるんです。

目茶苦茶強いですよ、俺やジミーでも敵いませんから」

 

それはそうですわ、相手は暗殺者ギルドの総帥、魔王討伐の際のお助けキャラ、白炎様がいるのといないのとでは勝率が全然違ってきますもの。

金さえ払えば仕事は熟す、たとえそれがどのような困難な事であろうとも。そのハードボイルドな姿勢と涼しげな容貌で女性ファンだけでなく男性ファンの心も鷲掴みにした大人気キャラ。

そのお隣には可愛らしい狸耳を付けた女性が、秋の収穫祭には二人して結婚のお披露目って、そんなこと聞かされたら前世の私だったら白炎様ロスで仕事休んでましたわ!!

それにお茶農家って、暗殺者ギルド総帥がお茶農家って。

 

「確かケビンお兄ちゃんのところで騎士の仕事をしてるんじゃなかったかな? 他所の街に行くにも騎士の身分の方が面倒がなくていいとかって理由で。ランドール侯爵家とのいざこざの後ケビンお兄ちゃんが連れてきたんですよ、その後はホーンラビットの白玉の下でラビット格闘術の修行をして、晴れて免許皆伝になったって言ってたはずです」

 

ホーンラビットの下で修行? ラビット格闘術? ごめんなさい、情報量が多過ぎてついて行けないみたいですわ。

 

「あ~、クルンとラビアンヌ、お楽しみのところ悪いがちょっとこっちに来てくれるか」

 

宴席会場の外れ、石畳で作られた舞台の上から声を掛けたのはジミーの兄ケビン・ワイルドウッド男爵。呼ばれた二人は宴席を抜け、石畳の舞台の上に上がります。

 

「あ~、クルンとラビアンヌにはまず謝っておく、あのような形で君たちに弟ジミーへの思いを伝えさせたこと、大変申し訳なかった。この通り謝罪する」

そう言い深々と頭を下げるワイルドウッド男爵に慌てる二人。二人からすれば突然マルセル村にやってきたにもかかわらず、住むところや食べるものの面倒もみてくれた上に修行までつけてくれていたのだから、感謝こそすれ謝られるいわれはないだろう。

 

「いや、これはこれまで二人の面倒を見た事とは関係ない、人としてやってはいけない事、男女の気持ちを弄んだことには違いないんだからな。

ジミーお前にも謝る、本当に申し訳なかった。

それとラビアナお嬢様、このような騒ぎに巻き込んでしまった事、マルセル村の者を代表し深くお詫びいたします、大変申し訳ありませんでした」

「「「「「大変申し訳ございませんでした」」」」」

 

ワイルドウッド男爵の言葉に続く様にいつの間にか立ち上がっていたマルセル村の村人たちが一斉に頭を下げます。その中にはホーンラビット伯爵家の方々も。それはこの一芝居が本当に村ぐるみで行われていた事を示しています。

・・・ジェイク、マジでドンマイですわ。

 

「分かりました、ケビン・ワイルドウッド男爵様の謝罪、確かに受け取りました。私も心に色々と抱えていた身、私付きメイドのコリアンダが皆様に何か相談した結果なのでしょう事は理解しています。

これ以上の謝罪は不要、互いの関係が深まったという事といたしましょう」

「慈悲深いお言葉、感謝いたします。今後ともラビアナ・バルーセン公爵令嬢との関係がより良い形で続く事を、ホーンラビット伯爵家の臣下として強く望むものであります」

 

ワイルドウッド男爵はそう言うと、ケジメは終わりとばかりに舞台上の二人に目を向けるのでした。

 

―――――――――――

 

いや~、今年の舞台も盛り上がったわ~。企画脚本は月影、残月、十六夜、コリアンダさんが担当、愛の試練で有名な“呪われた王子様”の物語をアレンジしたんだとか。

それってアレだよね、ゴブリン姉妹の呪いにも使われた真実の愛がどうとかいう。流石十六夜、ゴブリン姉妹の呪いの実行役だもんな~、その辺は詳しいよな~。

 

で、ジミーに拘束を掛けたのは大福先生ですね、漆黒の騎士の鎧はジェイク君のところの黒蜜がやっている変身を参考にしたそうで、ノリノリで引き受けてくださいました。

そんで乙女の皆様方の愛の告白でジミーの拘束が解かれ、後は若い者同士でって流れだったんですけどね。ラビアナお嬢様、周りからやいのやいの言われて気持ちも定まっていないところで告白させられそうだったんで大福先生に伝えてジミーを解放、何かジミーも自力で脱出しようと頑張ってたんで丁度良かったみたい。

やっぱりこういうのはね、周りから言われてするもんじゃないし? 二人にとっては色々考える切っ掛けになったみたいなんで結果オーライって事で。

 

で、残念ながら落選されたラビアンヌ嬢、慰め要員として白雲を隣に座らせておいたんだけど、白雲の奴、正論でフルボッコにしちゃうっていうね。

あれはね~、酷かったわ~、めっちゃ面白かったことは認めるけど。

そんでボコボコにしたところでラビアンヌ嬢を全肯定、新興宗教の手口ですね、入信まっしぐらですね。

と思いきや“俺には可愛い彼女がいるんだぜ、今度結婚するんだ”発言。

ただでさえボロボロになっている女性をフルボッコにした後スッと手を差し伸べてからの背負い投げ、これにはマルセル村の皆さん大興奮ですわ。

ラビアンヌちゃん、逆切れして大告白に移行するし、これ、後でもだえ苦しむ奴じゃね? まともに白雲の顔を見れないだろう。

まぁラクーン獣人のルインの返しが素晴らしかったんだけどね。一見ラビアンヌ嬢を受け入れているように見せかけて確り序列を決定してるし、暗黒大陸に追い返す算段も付けちゃってるし。

そのまま暗黒大陸から帰ってこなくてもよし、帰ってきたらお茶農家の労働力としてこき使います宣言、村人全員ドン引きしてたからね?

当のラビアンヌ嬢はまだその事に気が付いてないみたいだけど。やっぱお嬢様だったんだろうね、大事に育てられちゃったからこういった駆け引きには弱いんだろうな~。

 

俺は村の健康広場脇に作った武舞台の上にクルンとラビアンヌを呼び出して謝罪、舞台の上からですがジミーとラビアナお嬢様にマルセル村を代表して謝罪を行いました。

村中総出で悪乗りしましたからね、ミッシェルちゃんの名演技が見れたのでお兄ちゃんは大満足です。

幸いラビアナお嬢様は謝罪を受け入れてくれたのでよかったですが、これ、下手しなくても大騒ぎですから、公爵令嬢を揶揄うのは命知らずの所業ですから。

いや~、冷静になられる前に丸く収めることが出来て良かった良かった。

 

「さて、わざわざ舞台の上に上がってきてもらったのには訳がある。暗黒大陸、魔国で起きているある事態に対処して貰いたいという思いがあっての事だ。

二人は昨年の魔都総合武術大会の優勝者・準優勝者だから知っていると思うが、魔国内ではジミーに会いに行きたいという女性が多くいるようだな。魔国としてはこちら側に配慮し魔都総合武術大会の上位二名になることを中央大陸に渡る条件としているが、ジミーの事を諦め切れない女性は本年度の魔都総合武術大会の優勝・準優勝を狙って来るだろう。

そこで二人にはそうした女性を蹴散らして貰いたい、報酬として新たな力を授けよう」

 

俺はそう言うと目の前で<覇魔混合>を披露します。こう見えても熟練ですから中々のものだと思いますよ?

 

「強さを求め、己の信念を貫く者たちよ。返答は如何に」

「是非も無し、邪魔者は排除する、ジミーに近付きたかったら私の屍を超えていくがいい」

「フフフフ、この私がそんなお花畑を許すとでも? 当然ご協力いたします」

 

クルンは己の信念の為に、ラビアンヌは仄暗い笑みを浮かべて。

うん、暗黒大陸の女性って分かり易くていいわ~。

 

「ジミー、白雲、そういう訳だからこの二人には一度暗黒大陸に帰ってもらうから。取り敢えず今年の魔都総合武術大会は二人に頑張ってもらって来年の分は俺がガッツリO・HA・NA・SHIして来るから大丈夫だと思うけど、卒業したら最初に向かう土地は暗黒大陸にしてもらえる? 悪いんだけど」

 

俺の言葉に獰猛な笑みを浮かべるジミーと乾いた笑いを漏らす白雲。白雲君、女性は怖いよ~。父ヘンリーも母メアリーに追い込まれて結婚を決めたって言ってたし、俺なんか外堀をガッツリ埋められて逃げられなくなってたからね?

まぁ俺の場合この三人がいなかったら一生独身だったかもしれないからいいんですけどね、結構幸せですし。

 

「それじゃそういう事「まぁまぁケビンよ、せっかく舞台に上がったんじゃから祭りを楽しんではいかがかの?」・・・え~、それじゃ二人共、すこし端に避けていてくれる? 二人に教える力、<覇魔混合>がどういったものか具体的な例で示すから。

おらクソ爺ども、とっとと掛かってこんかい!!」

俺の挑発に嬉々として舞台に上がる修羅の方々、俺はあえて無手で対応します。

 

“クイックイッ”

指先で手前に呼ぶように挑発すると、一斉に木剣で襲い掛かってくる阿呆ども。

 

“ドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガ”

嬉々として打ち込んでくる木剣を避けるでもなく只管受け続ける俺に、呆気にとられるクルンとラビアンヌ。

 

「まぁこんな感じで打たれ強くもなれます。この領域に達するのは結構難しいとは思うけど、できないことじゃないから。それとね」

“ボボボボボボボッ、ボボボボボッ”

「「「「「グワ~~~~~~」」」」」

瞬時に吹き飛ばされ場外に落とされる男たち、そんな瞬間の逆転劇に言葉を失う二人。

 

「どんな技でもそうだけど身に着けることと使いこなす事では話が違うから。しっかり教えるからちゃんと使いこなせるようになってね」

 

俺の言葉にコクコクと頷くクルンとラビアンヌ。こうしてマルセル村の春祭りはつつがなく「あぁ、やっぱりケビンは最高だな。さぁ、続きと行こう」・・・。

ゾンビのように次々と起き上がってくる修羅の方々、まぁそりゃそうですよね、だって皆さん<覇魔混合>使えますし、条件一緒ですし。

 

「“我は棒、打ち付ける武器にして受け流す盾。始まりにして終わり、初歩にして奥義、一歩にして終着点。我は棒なり”、覇気、魔力、魂魄、<三種混合>」

 

「「「「「吹き飛べ理不尽!!」」」」」

「お前らがな、ラビット格闘術絶技<百花繚乱>」

襲い掛かる修羅、立ち向かう俺氏。マルセル村の春祭り(バカ騒ぎ)は、阿呆どもの気が済むまで盛り上がり続けるのでした。

縛りがないって楽だわ~。




本日一話目です。
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