転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第751話 春、それは変化の時 (3)

“コトッ”

カウンターテーブルに差し出された透明なグラス、薄蜂蜜色の液体が注がれたそれは、魔道具の明かりに照らされて美しい輝きを見せる。

グラスを手に取った女性はどこか疲れた表情を浮かべながらも、口に運びコクリと喉を鳴らす。

 

“コトッ”

「・・・これは?」

テーブルに差し出された一品に女性が口を開く。

 

「赤魚の煮付けでございます。醤油、甘木汁、シュガールの粉を合わせた煮汁にショウガを入れ火にかけて煮立ったところに赤魚の切り身を入れて煮込みます。

落し蓋をしてよく味が染みるまで煮込んだところで米酒と魔力水を混ぜたものを回し掛け、再びよく煮込みます。

確りと味の染みた脂ののった赤魚は味わいもよくご飯のお供に・・・失礼しました、ご飯をお出ししていませんでしたね」

 

“カタッ”

俺はカウンター越しに言葉を返すと、茶碗にてんこ盛りにしたご飯をお膳に載せ、マッシュのお味噌汁と共にカウンターテーブルの上に。

 

「そうそう、やっぱり煮魚には炊き立てのご飯とお味噌汁、魚木からとった出汁がお味噌汁の旨味をって違うから!!

甘いカクテルに煮魚って、マスター疲れてる?」

「ハハハハハハ、そうですね、やはり今回ばかりは色々と」

 

俺はそう言うと棚からグラスジョッキを三個取り出し、バッカス酒店製造のビールを注ぎ入れるとあなた様とトライデントの前に差し出すのでした。

 

“ゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッ、プハ~~~~”

あ~、うま。なんかこう、サラリーマンが仕事帰りに居酒屋によってその日の憂さを晴らすようにビールを一気飲みする気持ちが分かるわ~。

アレだね、心の中のモヤモヤをビールと共に飲み干したいって事なんだろうね。在りし日の記憶には“のど越し生”なんて言葉があったけど、一杯目の爽快感は堪んないものがあるよね。

 

俺が口に付いた泡を拭いながらそんな事を考えてると、あなた様から「お代わり!!」の声とともにジョッキがドン。

気持ちいいくらいの飲みっぷりでございます。

 

「流石のケビンも雇用魔物がドラゴン種に進化した事は堪えたって事なのかしら?」

赤魚の煮付けを箸で突きご飯を頬張るあなた様、ご飯時のビールは鉄板ですものね、そりゃ美味しいでしょう。

俺もどうかしてたよな~、光属性魔力マシマシカクテル(ジャイアントフォレストビーの蜂蜜・甘太郎の甘木汁バージョン)をお出しするんだったらお洒落にフルーツでも添えればいいものを。やっぱりそれなりにキテたんだろうな~。

 

「そうですね~、前に大福がドラゴンモードを習得して夜空を舞った時は大興奮して大騒ぎしたんですけど今回ばかりは。

シャロンは精霊女王ですけど<ダークドラゴン種>って但し書きが付いちゃってますし、緑と黄色、キャロルとマッシュに関しては種族が完全に<龍>ですからね。

不幸中の幸いなのは、緑と黄色のステータスは<飛行>が加わった変化ぐらいしかなかったって事でしょうか。スキル欄に<ドラゴンブレス>の記載がなかったって事は、あれって種族特性として観測されているって事なんですかね?」

 

“トクトクトクトクトク、コトッ”

ビールのお代わりをお出しするとすぐに口を付けられるあなた様。煮魚の甘さと油をビールで洗い流すんですか、流石呑み助、心得ておられる。

 

「そうね、ドラゴンと言えばブレスですものね、シャロンちゃんのステータスにも<ドラゴンブレス>の記載はなかったしそういう事なんじゃない?

それにしてもダークドラゴンって、数万年前に全てのドラゴンに戦いを挑んだ暴竜が確かダークドラゴンだったって記憶してるわ。当時はその後処理に駆り出されて大変だったって、以前**#@様が仰ってたのを聞いた事があるわ。その亡骸は確か現在のローレライ大砂漠地帯のどこかに埋まってるんじゃなかったかしら? 別にあのドラゴンは闇属性魔力を振り撒くような存在じゃなかったから天上界が個別処理したって事じゃなかったはずだし。

あの種族表記を見た時はシャロンちゃんはダークドラゴンの亡骸がドラゴンゾンビ化したものかって思ったけど、以前ケビンに聞いた話やスケルトンドラゴンだった時の大きさからしてそれはないのよね。

やっぱり魔王デビルトレントの亡骸を食べ続けたことでダークドラゴン化したって考えるのが自然よね」

 

大きくため息をついて肩を落とすあなた様。今回ばかりは心労、お察しいたします。

 

「一応種族の説明も見てみる? データで残ってるから」

そう言い居酒屋ケビンの中にモニターを出現させるあなた様。

 

<地龍>

大地に根差し、大地を司る龍。五穀豊穣の守護者。

 

<呪龍>

呪いの全てを自在に操ることが出来る存在。神聖な大地を汚す事も呪われた大地を浄化する事も呪いを操るという意味では同一。

 

<精霊女王(ダークドラゴン種)>

ダークドラゴンを基とした精霊、精霊の頂点。

 

「・・・なんか地域で祀られててもおかしくない存在ですね。緑と黄色は単純に五穀豊穣の神様として、キャロルとマッシュは祟り神的な感じで、シャロンはドラゴン精霊ですから、自然信仰的な感じ?

確かエルドラ王国でしたっけ? ドラゴンを信仰している国がありましたよね。塒の中が散らかりまくったゴミ屋敷ドラゴンでしたけど、フィヨルド山脈の最強生物の話では山の麓にドラゴン神殿というものがあって大事にされているとか。この五体もそんな感じになるんですかね」

俺の言葉に「聖転進化した魔物はそういった扱いを受ける者がいるわね」と言葉を繋ぐあなた様。

 

「ケビンも知ってる聖霊樹や世界樹は信仰の対象になってるわ、エイジアン大陸東方ではナインフォックスが祀られている地域があったわね。

知性を持ち強力な力を持つ魔物は得てして信仰されることが多いわ、逆らうより共存し利用する、生き残るための人族の知恵といったところかしらね」

なるほど、人は強力な力を恐れ敬い奉る、在りし日の記憶にある神社にはそういった神様も多く存在したけど、リアル神様がいるこの世界でもそうした人の心理は一緒って事なのでしょう。

 

「それよりもそろそろ覚悟はいいかしら?」

「はぁ? 一体何の事でしょうか?」

俺は背中に掻く冷たい汗もそのままに、微笑みを張り付けたまま言葉を返します。

あなた様はそんな俺の表情に、ニタ~っと擬音が聞こえそうな悪い笑みを浮かべながらお言葉を述べられるのでした。

 

「<管理者権限:ステータスオープン:モニター表示>」

途端先程まで緑たち進化した魔物の種族説明が映し出されていたモニターの表示が変わり・・・。

 

名前 ケビン・ワイルドウッド

年齢 十六歳

種族 人(*)(New)

職業 田舎者(辺境)

スキル

棒 自然人 田舎暮らし(*) 自己診断

魔法適性 無し

 

称号 

辺境の勇者病仮性患者(*)

 

加護

創造神の加護

 

<スキル詳細>

<田舎暮らし>

・田舎暮らし(魔法)・・・魔力支配 影魔法 全属性魔法 生活魔法 重力魔法 儀式魔法 幻影魔法 神聖魔法 

・田舎暮らし(戦闘)・・・刀術 体術 斧術 弓術 槍術 盾術 索敵 身体支配 空走術 ラビット格闘術(奥伝) 空間把握 龍の全身鎧 浮遊 覇王の威圧 根性 ナイフ召喚 大声 引率⇒統率(New) 夜間自己再生 天想顕現(New) 血界術(New) 暴れん坊(New)

・田舎暮らし(生産)・・・調薬術 鍛冶 錬金術 魔道具作成 農業全般 ポーション生成 糸生成 糸操作 ダンジョン生成 宝箱生成 ダンジョン魔物生成 醸し職人(New)

・田舎暮らし(生活)・・・解体 調理 清掃 建築 生存術 魔物の雇用主 送り(びと) 食いしん坊 模倣 召喚術 結界術 友達生成 自己領域 ポケット収納 聖域生成 広域浄土化 蜂蜜取り名人 仙術 霊体化 名付け ちょい悪 闇隠れ 超思考

 

称号詳細

<辺境の勇者病仮性患者>

魔物の親友 食のチャレンジャー 通貨を創りし者 新薬を創りし者 生活魔法を創りし者 魔力を理解せし者 小さな賢者 大森林の住人 導く者 進化を促せし者 呪いを解きし者 厄災の討伐者 発明家 魔物を飼育せし者 辺境の隠者 森の聖者 闇に潜む者 交渉人 魂の救済者 干し肉の勇者 風神速脚 鉄壁の門番 魔境を訪れし者 恐怖を乗り越えし者 ダンジョンマスターの友 ダンジョンの盟友 天然の魔王 影の英雄 魔境の深淵に至りし者 特殊進化魔物を造りし者 聖域を造りし者 召喚術を創りし者 堕天を食い止めし者 ドラゴン亜種との契約者 精霊女王との契約者 神聖樹との契約者 神性存在を誕生させし者 ダンジョンとの契約者 伝説級装備の製作者 聖人 救世主 傍観者 聖霊樹に名を付けし者 万軍の防壁 兎仙人の友 勇者を導きし者 フェンリル種との契約者 天魔神鳥との契約者 天界に届きし者 大特異点 女神の注目 増殖の魔王討伐者 冥府の使者 世界樹に名を付けし者 理不尽 混沌の魔王 疑似神気を作り出せし者 寄生の魔王討伐者 統治の魔王を救いし者 不可逆を覆せし亜神 天界の監査役 女神の感謝 ダンジョンを従わせし者 魔王カオス 人造天使を従えし者 禁足地の主 勇者を救済せし者 変身ヒーロー 上級天使を土下座させし者 神聖器の契約者 破滅級厄災の処理業者(New) 呪物コレクター(特級)(New) 古の聖女を救いし者(New) 超越者(*)(New) 女神のお気に入り(New) 龍種を従えし者(New)

 

「あなた様、称号ってどうにかなりません? 流石に多過ぎて。誰もこんなもの見てないですよね?」

「諦めなさい、称号ってものはそういうものなんだから。消える事もあるみたいだし、放置一択ね。まぁケビンの場合注目度が高いから消えないでしょうけど。

でも称号に(*)が付いてるって、何なのかしら?<鑑定:超越者>」

 

<鑑定>

<超越者>

詳細:神聖魔法を神気を使わずに人の身で再現って、阿呆なの? 死にたいの? 因みにスキルは魔力運用法の一種だから、どんなスキルでも厳密には魔力が使われてるから。魔力なし・覇気なし・神気なしで戦うには魔力枯渇空間で魔力枯渇にしてからやり合うしかないね。

って事でお前の反則負け~、ざまぁ♪

byシステム

 

「・・・ケビン、システムに自我が芽生えちゃってるんですけど? これどうするのよ」

「どうするもこうするも、俺にどうにか出来る訳ないじゃないですか。本部長様に報告してシステムチェックでもしてくださいよ、俺、たかが地上人ですから」

 

ステータス画面を見ながら互いにこめかみを揉んだり眉根をほぐしたり、だから嫌なんだよ、ステータスチェックって。

 

「それじゃ上からいくわね」

 

<種族詳細>

<人(*)>

あのさ、前にも言ったけどお前何なの? 龍種を四体、ドラゴンに連なるものを二体従えるって。覇王なの? 龍王なの? 魔王なの? あっ、ごめん、魔王だったね。種族のところを魔王に変えておく? いつでも出来るよ?

これだけやらかしておいてどの口が『人』って言うのかな? 種族『ケビン』でよくね?

私情を挟むのはよくないから『人』にしておくけど、(+++)とか付けても駄目じゃん、無駄じゃん。自称『人』じゃん、詐欺じゃん。

ですのでもうこの件には触れません、明確に人を辞めたら変更します。

byシステム

 

「システム、怒ってるわね。完全に見放されちゃってるわよ?」

「・・・そんな事言われましても。でも(+++)が消えたんで結果ヨシって事で」

 

「ハァ~、まぁ前向きなのはケビンの取り柄だからいいけど」

 

<スキル詳細>

<統率>

集団を率いる。情報伝達がスムーズにいき、説得力が高まる。人を惹き付ける。

 

<天想顕現>

最大三十六万倍に引き伸ばされた時間感覚空間で活動できる。活動時間は使用魔力量に依存する。

 

<血界術>

血を操る、使い方は使用者次第。

 

<暴れん坊>

暴れる程に痛覚が鈍くなり、身体が強化される。判断能力が低下する。

 

<醸し職人>

発酵腐敗の管理に補正アリ。発酵食品の成功率が高まる。

 

何気に<醸し職人>が素晴らしい。これって匠のお陰だよね、玄米があるからヌカも取れるし、漬物でも作ろうかな?

 

「これだけの状況の割にはステータス的に酷くなかったわね。称号の<女神様のお気に入り>は、諦めてとしか言えないけど。

そういえば**#@様が女神様から“ケビンの内定について意見を聞きたい”とか言われてたらしいんだけど、あなた何か知らない?」

グホッ、女神様、あの時の事忘れてなかったのかよ!?

俺は仕方なくあなた様にお宮参りに礼拝堂を訪れた時の事をお話しするのでした。

あなた様大爆笑、「本部長様には目茶苦茶忙しい部署に配属して貰えるように進言しておくから、楽しみにしてるわ、後輩♪」とありがたいお言葉を向けて下さったのでした。(涙)

 




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