転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第768話 転生勇者、学園長からの呼び出しを受ける (二回目)

王都学園は王都貴族社会の縮図と呼ばれる事がある。それは王都学園に通う貴族家出身者が伯爵家以上の高位貴族家の者であり、それ以外の生徒は授けの儀において上位職と呼ばれる有益な職業を授かった者たちに限られていることが大きい。

貴族家同士の力関係は学園内での生徒間の交友関係に反映され、各家同士の繋がりによる派閥が形成されるのは当然の事。ある意味社交界の予行練習の場が王都学園であると言っても過言ではないのである。

 

「ごきげんよう、お聞きになりました? バルデン侯爵様のお話」

「えぇ、マルス侯爵様にはどうあがいても勝てないからとアルデンティア第四王子殿下の派閥に参加なさったとか。バルデン侯爵様も必死といったところではなくて?

その上ベイル伯爵様ご子息ラグラ様を養子として迎え入れられ、権力基盤を固められようとなさったとか。確かに手法としては悪くありませんけど、王家と縁戚関係にあるマルス侯爵様に対抗なさるには手札として弱く感じますわ」

 

「そうですわよね、これまで王都中央貴族を牽引なさっておられたからこそ権威を示されていたバルデン侯爵様も、野心を隠せなかったという事なのでしょうか?

あら、噂をすればミルキー様。今までは多くの取り巻きに囲まれていらっしゃったのに、今ではお寂しい事」

「フフフ、そのような事を仰ってはミルキー様に失礼でしてよ? 今やアルデンティア第四王子殿下派閥の筆頭を務めていらっしゃるバルデン侯爵家の御令嬢であらせられるのですから。ああして取り巻きの方も付いていらっしゃるのですから、お力は健在という事なのではなくて?」

 

社交界は噂話により盛り上がるもの、それは縮図と呼ばれる王都学園でも変わらない。バルデン侯爵家の動向とミルキー嬢への関心は、良きにつけ悪しきにつけ王都学園で最も熱い関心事となっていたのであった。

 

「ごきげんよう、ジェイク先輩、エミリー先輩。お二人揃ってどちらに?」

昼休み、渡り廊下を歩いているところに掛けられた声に振り向けば、金髪碧眼ドリルヘアのパーフェクトお嬢様が。

 

「やぁ、ミルキー嬢にエイコー嬢。何か家の事で大変だったみたいだね、話はジミーから聞いたよ。

それと婚約おめでとう、これは一応政略結婚という事になるのかな? 俺たちは辺境の田舎者だからそう言った事はさっぱりなんだけど、ラグラは性根が真っ直ぐないい奴だからミルキー嬢に不義理な真似はしないと思うよ。だから幸せになれるのかと聞かれると俺みたいな若輩には何とも言えないんだけどね、少なくとも寄り添う努力はしてくれるはずだから安心して欲しい。

それとこれは前にエイコー嬢にも言ったけど、俺はアルデンティア第四王子殿下の派閥に入っているって扱いだから、これからは同じ派閥って事で宜しく。気軽に声を掛けてきてくれていいからね、その方が他の派閥の人たちからの風除けになるし」

 

そう言い悪戯そうに笑う俺に同じく笑みを返すミルキー嬢。

でもジミーから話を聞いた時は驚いたよな~。同じ学園生徒とは思えない程の大立ち回り、一学園生徒が周囲を説得して独自の派閥を立ち上げちゃうんだもん。元々アルデンティア第四王子殿下が話を進めていたとしてもそれを確固とした集まりにまとめ上げたのはミルキー嬢の実力、俺やジミーみたいに個人の武力を鍛えるってのも一つの強さだけど、人と人との間を取り持って集団を作り上げるっていうのも社会で生き抜くための強さ。

そうした意味でミルキー嬢は俺たちと違った方向での強者なんだよな~。

俺は目の前のパーフェクトお嬢様に感心しつつ、その場を後にしようとしました。

 

「ねぇミルキーちゃん、そのグルグルの髪型ってどうやってるの? やっぱりお付きのメイドさんがセットしたりするの? 雨なんかで湿気が強い日とかって崩れたりしないの?」

エミリーさん!? それ聞いちゃうの? って言うかグイグイ行き過ぎじゃね?

そりゃ同じアルデンティア第四王子殿下派閥とは言ったけど、相手は侯爵家の御令嬢だからね? お気になさったらどうするのさ!!

 

「えっ、えぇ。(わたくし)の場合くせ毛と言いますかウェーブが強くて、何もせずとも髪が巻いてしまいますの。ですので全体を纏めて巻き髪の方向を合わせる事でこうした髪型になりますわ。

これは(わたくし)のお母様と同じですわね、お姉様はお父様に似たのか優雅なウェーブ髪ですの。幼少の頃はそんなお姉様が羨ましくも思いましたけれど、今では気に入っておりますの」

そう言い自らのドリルヘアをいじる仕草をするミルキー嬢、そんな姿にエミリーは堪らず抱き付いて「ミルキーちゃん可愛い~~!!」とか仰っております。

 

困惑顔を浮かべるミルキー嬢、このような対応はこれまで経験したことがないのでしょう。でも諦めてください、エミリーはゴリ、ゲフンゲフン、<剛腕無双>のスキル持ち。その(かいな)から逃れる術はありません。

 

「エミリー、早く行かないと、学園長に怒られるよ? 

ごめんね二人共、ちょっと学園長執務室に呼ばれていてね。おそらく次の学園交流会の件についてだとは思うんだけど、俺とエミリーは<勇者>と<聖女>の職業持ちだから、そうした行事はどうしてもね」

そう言いエミリーを引きはがし、学園長執務室に引っ張っていく俺。エミリーは未練たらたらで「あ~ん、もう少しミルキーちゃんと戯れたいのに~!!」とか仰っておられます。

ミルキー嬢、残念ながらあなたはエミリーにロックオンされてしまったようです。俺は憐れな子羊と化した後輩に同情しつつ、“エミリーちゃんチャレンジは勘弁してあげてください”と心の底から祈らずにはいられないのでした。

 

―――――――――――――

 

「集まってくれてありがとう。言わなくとも分かっているとは思うが、王都学園・武術学園・魔法学園の交流会の時期になるのでね、昨年同様君たちに協力してもらいたいと声を掛けさせてもらったんだよ」

学園長執務室に向かった俺とエミリーは、既に集まっていた見知った顔に挨拶をしてから学園長の話を聞く事となった。

 

「基本的な学園交流会のやり方は例年のものに戻す事となったよ、昨年は色々と問題が生じたんでね。

武術学園との交流会は引率のケベック先生と一緒に武術学園に赴き行うものとする、その際エミリー嬢には治療班の人員として参加してもらう事になっている、よろしく頼むよ。

魔法学園との交流会は魔法学園の魔法訓練場にて試技を行う形になる。魔法学園側としては昨年同様の対戦方式を望んでいたようだがそこは断らせてもらったよ。

生徒の安全面で保証が出来かねるというのが一番の理由でね、“我々では<勇者>ジェイクを止めることが出来ない”と言ったらすぐに納得してくれたよ。

まぁそういう事だから本来治療班など必要ないんだが、魔法学園側がどうしても<聖女>アリスに会いたいと駄々をこねてね。申し訳ないが向かって貰えるだろうか?」

 

学園長の言葉に「はい、大丈夫です。万が一という事もありますから」と笑顔で答えるアリスさん。何かアリスさん、二年生になってから落ち着いたというか、頼りになるというか。フィリーの話だと魔法訓練場で後輩たちに指導も行ってるって話だし、すっかり先輩って感じになってるよな~。

俺の場合、後輩って・・・エイコー嬢は勧誘しに来ただけだし。よし、武術訓練場で何か聞かれたらちゃんと親身になって指導しよう。

ジミーは相変わらずチャレンジャーが尽きないんだよね、こないだも“武術訓練場の帝王”って呼ばれてたからな~。俺とジミーの一体何が違うんだろう?

 

「では武術学園との交流会のメンバーを発表する。三年生、クルドア・バルーセン君。クルドア君にはリーダーを務めてもらう、よろしく頼む。

二年生、ジミー・ドラゴンロード君、ジェイク・クロー君、ラグラ・ベイル君、ライオネス・ベルーガ君。

ライオネス君は初参加となるが、その腕前は十分であるとケベック先生から推薦を受けている。

ジミー君とジェイク君は一年生がいない事を不思議がっているようだが、君たちの世代が特別なだけだからね? 入学そうそう大剣聖クルーガル・ウォーレン卿から勝利を掴むような生徒は普通いないから、他の学園はそうでもないけど、王都学園からは二年生・三年生が代表になることが通例だったんだよ」

 

学園長先生の説明にそれはそうかと納得する俺たち、いくら家庭教師に訓練を受けたり特別な職業に目覚めていても、この学園の生徒は皆そうしたものばかり。同じ条件なら二年生・三年生が有利なのは当然だからね。

 

「次に魔法学園との交流会メンバーだが、三年生はナバル・パイロン君。パイロン君にはリーダーをお願いするよ。

二年生、フィリー・ソード嬢、ロナウド・テレンザ君、ジェイク・クロー君、カーベル・ハンセン君。カーベル君は昨年代表を辞退した経緯があったけど、今年はよろしく頼むよ。

以上が我が学園の代表となるけど、何か質問はあるかな?」

周囲を見回し掛けられた学園長の言葉に手を挙げたのは、カーベルでした。

 

「学園長、一つお伺いしたい事が。確か昨年度の交流会の後、魔法学園の代表の一人であったミリー・スペンサー嬢が編入されていたはずですが、ミリー嬢は代表にはならないのでしょうか?」

カーベルの言葉に「あぁ、その事ですか」と言葉を漏らす学園長。

 

「確かに、ミリー嬢は二学年の時に王都学園に編入していますし、実力的には王都学園の代表としても申し分ないでしょう。しかしながら交流会で実力を認められ編入した者は交流会には出られないという規則があるのです。

交流会はあくまで生徒同士の交流を謳っています。学園同士の優劣を決める場ではないというのが建前です。ですので編入した者を交流会の代表にする事はこの建前上出来ないのですよ。

それに勝ち負けは関係ないですからね、カーベル君は今の君の実力を十分に発揮してきてください」

学園長の言葉に「そういう事でしたら」と納得を見せるカーベル。

 

「あの、魔法学園の引率はどなたがされるんですか? お話に出てこなかったのでどうしたのかなと、昨年はタスマイヤー先生でしたけれど」

フィリーからの問い掛けに何故か苦笑いを浮かべる学園長。なぜそこで苦笑いを? 

 

「そうですね、例年でしたらタスマイヤー先生にお願いするところなのですが、昨年の事がありましたからね。引率はシルビーナ先生にお願いする事になりました」

「「「「「えっ、シルビーナ先生ですか? 大丈夫なんですか、それって!?」」」」」

 

驚きに声を揃える俺たち、だってシルビーナ先生ですよ? 歩くトラップ発生装置のシルビーナ先生ですよ? 最近罠が巧妙になり過ぎてダンジョントラップよりも解除困難と言われるシルビーナ先生ですよ?

 

「あぁ、うん。君たちの心配はよく分かっているから。補佐役としてネイチャーマン先生にもお願いしているから大丈夫だとは思います。

ネイチャーマン先生はシルビーナ先生よりもちゃんとしているから。

ただネイチャーマン先生は生活魔法の講師だからね、魔法学園側が難色を示す可能性が高いんだよ。その点シルビーナ先生の知名度は高いし、言い方はあれだけど外面はいいんだよ。

まぁ何事もないとは思いますが、臨機応変でよろしくお願いするよ」

 

・・・これってフラグって奴ですよね、絶対何かあるって奴じゃないですか!!

“ポンッ”

「まぁ、頑張れ」

「ジミ~~~~~!!」

口元をニヤリとさせ肩に手を載せるジミー、俺はガックリと首を垂れながら、何事も起きませんようにと祈らずにはいられないのでした。

 




本日二話目です。
いってらっしゃい。
by@aozora
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