転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第776話 転生勇者、学園交流会へ向かう (魔法学園) (2)

“ガタガタガタガタガタガタ”

二台の馬車が立派な建物の前で停車する。そこは大きな門と周囲を壁で囲われた公共施設、王都三大学園の一つ魔法学園。

 

「「「「「いらっしゃいませ、ようこそ魔法学園へ」」」」」

魔法学園の正門前には学園の教職員がズラリと並び、王都学園の代表生徒たちの訪れを歓迎する。

・・・って言うかその目がずっと俺に向けられてるんですけど? 何で? 俺、特に悪さをするつもりはないんですけど?

 

「わざわざのお出迎え、王都学園の教職員を代表しお礼申し上げます。本日は王都学園側の引率として魔法学講師である私シルビーナと、生活魔法講師であるビーン・ネイチャーマンが務めますので、何卒よろしくお願いします」

“ザワザワザワ”

 

シルビーナ先生の口上に何やらざわつく魔法学園教職員の方々、そんな中、魔法学園側のいかにも魔法使いと言った初老の男性が一歩前に出て口を開きました。

 

「ようこそ魔法学園へ、我々魔法学園教職員ならびに生徒一同、王都学園の皆さんの訪問を心より歓迎させていただきます。

シルビーナ先生、ネイチャーマン先生、王都学園代表生徒の皆さん、これより我が学園の魔法訓練場へと案内させていただきます、どうぞこちらへ」

どこかで見たことのある容貌の男性に、俺は必死に頭を悩ませる。

 

「ねぇフィリー、あの人って誰だっけ? どこかで見たことがあるんだけど思い出せなくって」

「そういう時は頭に光属性魔力を集めるといいですよ? それから思い出そうとすると割とスッて思い出せますので。授業の時とか試験前の勉強の時にやると効果的だと、以前エミリーが“子供の頃ケビンさんに教わった”と言って教えてくれました。

ジミー君やジェイクと一緒に習ったと言っていましたが」

言われてみればそんな事を教えてもらったような、光属性魔力を頭に纏うと思考能力が高まるとかなんとか。

俺はフィリーの助言に従い頭に光属性魔力を集め、再び前の初老の男性の事を思い浮かべて・・・あっ、魔法学園の学園長じゃん去年王都闘技場で三大学園の合同交流会を行った時、挨拶に立ってたじゃん。

道理で見たことがあると思った、そりゃそうだよね、学園長じゃこの場にいるのは当然だよね。

俺は心のモヤモヤが晴れ凄くスッキリした気持ちになりながら、フィリーに礼の言葉を向けるのでした。

 

“ワァ~~~~~~~~~~”

俺たちが魔法訓練場に入った途端周囲から上がる拍手や歓声、俺は予想外の状況に、周囲をキョロキョロ見回します。

 

「はぁ? 何で魔法訓練場の周りに観客席があるんですか? 魔法訓練なんて危ないだけじゃないですか、後ろから見学するって事ならまだ分からなくもないけど、こんなに大々的な観客席って」

「ジェイク君、驚くのは分かるけど静かにね? この魔法訓練場は別名“魔法演舞場”といって、魔法学園の生徒が外部の方々に自身の魔法の成果を見てもらうための場所なんです。

実際に生徒が普段使用する魔法訓練場は他に幾つかあって、行う魔法の強さに応じて使用許可を貰って訓練に励んでいるわ。

この魔法演舞場は魔法学園の中でも最も強力な結界が張られていて、最上級魔法の<タイダルウエイブ>や<ボルケーノ>なんかを使っても壊れない造りになっているの。同様の施設は王宮魔法師団の訓練施設にあるものくらいかしらね」

 

シルビーナ先生の言葉に“へ~”と感心する俺たち。<ボルケーノ>って言えば去年俺が対戦したセシルさんが使ってきた大技だったような。あれってば最上級魔法だったのかよ、俺よく無事だったな、おい。

 

「あの、シルビーナ先生、一つ質問が。去年の魔法学園との交流会で俺の対戦相手だったセシルさんって生徒がシルビーナ先生の仰った<ボルケーノ>を放ったんですけど、最上級魔法って吟遊詩人の歌う冒険譚に出てくる伝説級の魔法ですよね。

確か“獄炎のルビアナ”と呼ばれる大魔法使いが得意とした魔法で、たった一人でスタンピードを焼き払ったとかワイバーンを焼き尽くしたとかなんとか。そんな魔法を撃たれたのに俺平気だったんですけど、それに王都闘技場も。確かにあの時は咄嗟に魔法を上空に打ち上げましたけど、俺的には物凄い魔法だったなくらいの感想しか浮かばなかったんですけど」

 

これは単純な疑問、いくら俺がマルセル村で訓練を積んできたからって、最上級魔法がその程度だって言われると疑問符しか浮かばない。

 

「う~ん、それは単にそのセシルとかって生徒が実力不足だからじゃない? みんなにも言っておくけど、魔法って撃てればいいってもんじゃないのよ。理解度・習熟度によって魔法の威力はおのずと変わってくるわ。

今の話を聞く限り学園生徒って段階で最上級魔法に手を掛けたことは素直に称賛に値するわね、でもそれって単に入り口に立ったってだけだから。

剣術でも治療術でもそれこそ料理でも、何事も覚えたからって完全に使いこなせるものじゃない。魔法に関してもそう、単に呪文を詠唱するのと現象を明確にし与える魔力量や魔力制御を行ったものとでは結果が全く異なるものとなる。

魔法詠唱は単に魔法を発動させるだけで魔法自体を掌握してる訳じゃないのよ、その辺を勘違いしているとすぐに行き詰まるから気を付けなさい」

 

・・・シルビーナ先生がいつものシルビーナ先生に戻ってる。さっきまでの浮かれたシルビーナ先生は何処に行ったの? 魔法の話になった途端雰囲気ががらりと変わったんだけど?

 

「流石はシルビーナ先生、魔法と生涯を共にした女といわれるだけの事はある。俺もあれくらい魔法に打ち込まなければ、シルビーナ先生の領域に辿り着けないな」

そんなシルビーナ先生を見ながらボツリと呟くナバル先輩。そうか~、あれがマジ基地ゲフンゲフン、魔法ガチ勢の姿なのか。ある意味勇者病<仮性>重症患者のケビンお兄ちゃんと通じるものがあるかも。

ケビンお兄ちゃんの魔法に対する独自理論を聞いたら、シルビーナ先生なら目を輝かせて食いつきそう。

まぁケビンお兄ちゃん新婚さんだし、赤ちゃんが産まれたばかりで忙しいだろうからマルセル村に凸されても困るだろうし黙っておこう。

俺は「ありがとうございました」と礼を述べてから学園交流会に臨むのでした。

 

「それではこれより魔法学園と王都学園の交流会を始めます。第一演舞は魔法学園シルク・ライド、王都学園フィリー・ソード」

 

名前を呼ばれそれぞれの代表生徒が前に出ます。まず初めに魔法学園のシルクさんが標的に向かい短杖を向け詠唱を行います。

 

「<待機><ファイヤーボール×10><ウインドボール×10>」

するとシルクさんの周りに無数のボール魔法が浮かび上がり。

 

「“囲んで穿て、射出”!!」

シルクさんの掛け声と共に撃ち出されたそれぞれ十個の<ファイヤーボール>と<ウインドボール>、それらが標的を取り囲み一斉に襲い掛かる。

 

“ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドーーーーーン”

「「「「「おぉ~~~~~~!!」」」」」

大きな音を立てて撃ち込まれるボール魔法、観客席からは歓声と拍手が送られます。

 

「<待機>の技術を<多重短縮詠唱>と組み合わせて戦術にまで昇華してるって凄くね? 普通に高度な技術だよね、去年あんな代表生徒いたっけ?」

「いや、見てないな。多分昨年は対人戦に強い生徒を集めて挑んだんじゃないのか? 魔法学園側の引率だったブラウニー先生って言ったか、実戦を意識した魔法職の育成に力を入れているとか言ってただろう。

今回のように技術披露の場と対戦相手のある実戦形式の場だとおのずと資質が変わってくる。演舞であれば研究肌の者も活躍できるといった感じでな」

 

ロナウドの言葉になるほどと頷く俺、要は開発者とプレーヤーの違い、名工が名のある剣士になりえないのと同じ事。

 

「<ライトボール×20>」

続いてフィリーの番、フィリーは<ライトボール>を二十個作り出して周囲に展開させます。

 

「“踊れ、踊れ、回って並べ、並んで揃って敵を貫け、突貫”」

振り下ろされた短杖、生み出された<ライトボール>はまるで追いかけっこでもするかのように魔法訓練場の空をクルクル飛び回ると、やがて一列に並び標的に向かい槍のように突っ込んでいく。

 

“ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドーーーーーン”

「「「「「おぉ~~~~~~!!」」」」」

観客席から上がる声、互いの健闘を称え握手するシルクさんとフィリー、甲乙つけ難い演舞に両者に向け拍手が送られる。

 

「なぁジェイク、俺、この後なんだが。何か初っ端から高度な事をされて困ってるんだが。

フィリー師匠が素晴らしい事は知っている、あのシルクとか言う女生徒の詠唱の工夫も中々なものがあると感心してたんだが、その後が俺の番となると。何か助言をくれないか?」

シルクさんとフィリーの演舞の後でビビるカーベル。分かるわ~、その気持ち超分かるわ~。

俺、去年ジミーとロナウドに同じ事されたもん。あの時は参ったよな~。

 

「なぁカーベル、お前フィリーに特訓を受けてるんならある程度魔纏いの真似事は出来るよな、それと確か魔力障壁は既に憶えてたよな?

だったらそれを使ってゴニョゴニョゴニョ」

俺からのアドバイスに「そんな事でいいのか?」と首を傾げるカーベル。

俺の提案を“そんな事”と言い切れる辺り、フィリーの特訓が結構進んでいるって事が窺えます。

 

「第二演舞、魔法学園キャッシー・ローランド、王都学園カーベル・ハンセン」

案内の先生に呼ばれた二人の代表者が前に歩み出て礼をする。

 

「フゥーーーッ、昨年とは一味違う私を見せてあげるわ。<待機><ファイヤーランス×5><ウインドランス×5>“全方位、射出”」

“ブバッ”

中空に現われた十本の凶器、その全てがキャッシーの合図と共に標的を取り囲み、一斉に襲い掛かる。

 

“ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドゴーーーン”

大爆発と共に盛大な火柱を上げる標的、観客席からは歓声と拍手が鳴り響く。

その光景に若干引き気味なカーベル、これから自身の行う演舞が果たしてどう評価されるのかといった不安がカーベルの脳裏をかすめる。

 

“フゥーーー、タンッ”

大きく息を吐いた後、勢いよく飛び上がったカーベル。

 

“シュタンッ、シュタンッ、シュタンッ、シュタンッ”

中空に魔力障壁を展開、まるで宙を駆けるように左右に飛び跳ねるカーベルの動きにどよめく魔法学園の生徒達。

 

“ブオッ”

吹きあがる炎、カーベルの両手に出現する<ファイヤーランス>、だがそれは通常のものとは違い赤黒く燃え盛る。

 

“フンッ”

素早く身を動かし標的の上と正面から<ファイヤーランス>を投げ込むとバッと身を引き警戒の姿勢を取るカーベル。標的には未だ突き刺さった<ファイヤーランス>が炎を上げ存在を示す。

 

「なぁ、あの<ファイヤーランス>おかしくないか? 何でずっと形を保ったまま燃え続けてるんだ?」

「えっ、って言うかあの的、完全に貫かれてないか? ここの的って最上級魔法にも耐えられるはずだよな?」

 

ざわざわと広がる動揺の声、そんな中、王都学園の引率者であるシルビーナ先生がツカツカと前に出て観客席に向き直る。

 

「静粛に、この会場には王都学園代表生徒カーベル・ハンセンが何を行ったのか理解しきれなかった生徒ならびに生徒保護者の方々がおられるかと思います。ですので簡単な説明をさせていただきます」

そう言いまるで階段を上るかのように一歩一歩中空に登っていくシルビーナ先生、その様子に目を見開く観客席の人々。

 

「まず初めにカーベルが宙を飛んでいた現象ですが、彼はこのように中空に魔力障壁で足場を作りその足場を蹴ることであのような動きを実現しました。

無論それ相応の身体能力を必要とする技ですが、身体に魔力を巡らす“魔纏い”の技術を用い身体能力を底上げしたからこその動きと言えるでしょう。そして」

 

“ブンッ”

作り出したものは<ファイヤーランス>と<ウインドランス>、その二つのランス魔法を両手に持ち説明を続けるシルビーナ先生。

 

「このように<無詠唱>でランス魔法を作り出し両手に持つことで標的に迫りました。ランス魔法を手に持つには<魔力操作>と<魔力制御>を高め、それぞれの属性魔力を手に纏う事で可能となります。

そしてさらにカーベルはランス魔法にひと工夫を加えました。それが」

 

シルビーナ先生はそう言うと手に持つ<ファイヤーランス>と<ウインドランス>を正面に持ってきて“フンッ”と一つのランス魔法にしてしまうのでした。

 

「複合魔法、属性の違う魔法を一つの魔法にする魔法技術です。異なる属性を操ることで異なる性質を作り出したり威力を上げる事が出来る。このランスは火属性と風属性を合わせることで豪炎と呼んでも差し支えのない威力のランス魔法にする事が出来ました」

 

そう言い炎に荒れ狂うランス魔法を標的に投げつけるシルビーナ先生、豪炎のランスは爆音とともに標的を吹き飛ばし火柱を上げる。

 

「カーベルが作り出したランス魔法は火属性と土属性の複合魔法である溶岩で出来上がったランス魔法、故に標的を貫き姿をとどめると共に灼熱の炎を上げ続けたのです。以上がただいまの魔法演舞の解説となります」

そう言いまるで講演会が終わった演者のように魔力障壁の階段を下がっていくシルビーナ先生。

 

「なぁジェイク、俺、頑張ったよな? ちゃんと見せ場作ったはずなんだが」

「「「「カーベル、強く生きろ」」」」

演舞を終え戻ってきたカーベルは全てをシルビーナ先生に持っていかれたことで拍手すらもらう事が出来ず、一人がっくりと長椅子に腰掛け回復役のアリスさんに慰められるのであった。(涙)

 




本日二話目です。
いってらっしゃい。
by@aozora
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