転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第78話 転生勇者、街のお肉屋さんに行く

「と言う事を教えて貰いましてね、まず始めにこのオークを門に入ってすぐの肉屋で売り払って、オークは一頭だけ持ち込むのが無難かと。

僕たちって見た目子供と老人のパーティーじゃないですか、どう考えても馬鹿な銅級冒険者が絡んで来ると思うんですよ。僕とボイルさんは見るからに護衛されている側ですけど、こちらにも俺たちが護衛を代わってやるとか言って絡んできそうだし、ブー太郎の存在もね。だったら少しでも人の注目は削った方がいいかと。

逆に獲物も無しにブー太郎の従魔登録だけって言うのも目立ちますからね、従魔にしたブー太郎に獲物オークを運ばせたって言った方が話が通り易いと思うんですよね。あと面倒なんでグラスウルフの毛皮はバストール商会に売っちゃいません?別に冒険者ランクがどうのって話しじゃないんでしょう?チビッ子は授けの儀の前ですし、ボビー師匠は冒険者活動してませんし」

 

串肉を買いに行っただけのケビンお兄ちゃん、目茶苦茶情報を仕入れて帰ってまいりました。

・・・何この御方、凄過ぎなんですけど。前にドレイク村長代理が言っていた“生き残る事に関してはマルセル村でケビン君に勝る者はいない”ってこういう事なんだろうか。いかに危険を回避するのかって事に常にアンテナを張っている、ケビンお兄ちゃんの思考って“安全第一・命大事に”で出来てるんだろうな、是非見習わないと。

でもケビンお兄ちゃん厨二病だからな~、勇者病<仮性>が暴走すると何をするのか分からないからな~。安全志向なのに全く安全な行動を取らないケビンお兄ちゃんって一体。

 

「うむ、確かにそうであったわい。儂も冒険者ギルドとはずいぶん距離を置いておったからその辺の機微はとんと疎くなっておった様じゃわいて、ほんに申し訳ない。ケビンよ、助かったぞい。

授けの儀の前の子供と老人の組み合わせ、言われてみれば絡まれる要素満載じゃったな、その上ブー太郎に依頼者風の村人二名。銅級冒険者に燻っとる連中にとっては御馳走に見えるじゃろうて。ここであえて厄介事の経験を積ませるのも良いのじゃがそれでは本末転倒もいい所、本来の目的はバストール商会との商談と教会での聖水の購入だからの。

じゃがそうなるとどうすればよいのかの、冒険者ギルドでの面倒事は必至じゃぞ?」

 

「あぁ、その辺は僕が何とかしますんで。取り敢えずオークは三頭お肉屋さん、残り一頭をブー太郎に運ばせましょう。ブー太郎もそれでいいよな」

”フゴフゴ”

 

何か話しが決まったようです。エミリーとジミーは大人たちの話しには興味を示さず只管串肉にかぶり付いています。

 

「ジェイク君も早く食べなよ、この串肉美味しいよ?タレが決め手だよ、タレが」

 

「確かに、このガツンと来る感じはボアの肉だと思うんだけど臭みが少ない。

いや、このタレのお陰でその残った臭みが逆にいい感じの風味になっている。野性味溢れる味わいと言った方がいいか、やっぱり都会の食べ物は違う!」

 

なんかジミーは食レポを始めちゃいました。この辺はやっぱりヘンリー家の男と言った所なんでしょうか、ケビンお兄ちゃんも時々食レポしてるもんな~。ケビンお兄ちゃんのお肉のプレゼンは涎ものだもん。お腹が空いちゃうレベルだもんな~。

もしかしたらあの寡黙なヘンリーおじさんも食レポするんだろうか?武器の説明の時は素晴らしい解説をしてくれたし、自分の興味を引く事に対する考察と解説がヘンリー家の男の特徴なのかもしれない。メアリーおばさん大変そう。

 

 

「次、目的と身分を告げよ」

車列は進み、いよいよ俺たちの番です。街門を守る衛兵に睨みつけられると何も悪い事はしていないのに凄く緊張します。

 

「はい、私は辺境マルセル村のボイルと申します。この度は村長ドレイクの名代としてバストール商会に村の野菜及び特産品をお持ちいたしました。

隣に控えるは元白金級冒険者のボビー氏になります。子供たちは全てマルセル村の子供たちです。

この内の一人が今年授けの儀を行う事になる為、良い機会ですので村の外を見せる為に連れてまいりました。こちらが村長よりお預かりした村民証になります」

ボイルさんが何やら書類の様なものを渡します。それに目を向ける衛兵さんが再びボイルさんに問い質します。

 

「うむ、確かにこの書類は確認できた。そちらの御仁が元白金級冒険者ボビー氏であることも確認が取れた。

だがそちらの大男はこの書類には記されていなかった様だが?」

訝しげな顔でフードを被った大男を見詰める衛兵たち。うん、怪しさ満点ですよね。

 

「あぁ、こいつはこのケビン君の従魔です。彼が今年授けの儀を受ける少年なんですが、どうも使役系のスキルに目覚めたようでして、こうして途中のオークの森で仕留めた獲物をその地のオークを使役して運んで来たところなんですよ。

実際オークの怪力は便利でして、マジックバッグも容量がありますから森に捨てる羽目になる所だったオーク肉を持ってくることが出来ました。お陰で村に土産の一つでも買って行けそうです」

ボイルさんはそう言い予め打ち合わせていた通りに手を上げます。するとそれを合図にフードをどけオークであることを示す豚の顔を晒すブー太郎、周りの人が驚いて小さな悲鳴を上げる所までがお約束です。

 

「そ、そうか。なかなか良いスキルに目覚めた様だな。

テイマー系のスキルは冒険者ばかりでなく森の力仕事や荷物の運搬など様々な活躍の場がある使い勝手の良いスキルだ、少年の将来は有望だぞ、よかったな。

それと街の人間が驚くのでフードは被せておくように、現地で使役したと言う事は従魔登録はまだの様だがその辺はどうするつもりだ?登録しないのであれば街に入れる事は出来ない決まりだが」

 

「はい。この後すぐ側にあると言う肉屋に数頭オークを売ってから従魔登録に向かう予定です」

 

「そうか、ならば案内を付けてやろう。おい、肉屋の小僧が来てるだろう、お客だと言って呼んで来い」

 

「はっ!」

 

「よし、通ってよいぞ」

 

「はい、色々とありがとうございます。こちら些少ではありますが今夜のエール代の足しにして頂ければと存じます」

そう言い袖の下を渡すボイルさん、それを確認し笑顔になる衛兵さん。

 

「よし、この後冒険者ギルドにも向かうとの事であったな、これはこの街の簡単な見取り図だ、役に立つだろう。おい、肉屋の小僧。大事なお客さんだ、丁寧にご案内するんだぞ。」

 

「はい、畏まりました。ではお客さん、こちらになります。

と言ってももう見えてるんですけどね。あそこの骨付き肉の看板がうちの店になります」

 

そう言い丁稚の小僧さんが指差す方向、そこにはお店の上に大きな骨付き肉の看板がのっかったお肉を扱ってますと言った外観のお店が。この国はそれほど識字率が高くないのでああした工夫はとても助かります。

俺はマリアお母さんにガッツリ教えて貰いましたけどね。“冒険者は字が読めないと騙されて大変な目に遭う”って言うのがマリアお母さんの教えでしたから。絶対何かあったか騙された人を見て来たんだろうな~。

エミリーはミランダさんに、ジミーはメアリーさんに教わったそうです。因みにケビンお兄ちゃんは三歳の頃魔法の詠唱を覚えたいって言って字を習ったとか、ケビンお兄ちゃん、業が深いです。

 

「へい、いらっしゃい。お客さん方は外から来たって事は買い取りだね?一体どんな獲物を仕留めて来たんだい?」

 

お肉屋さんの店主は快活な活きのよいオヤジさんでした。

こう、異世界のお肉屋さんってやたらガタイがデカくて金曜日にホッケーマスクをしてチェーンソウを振り回している男性の様な人ってイメージがあったんだけど、どちらかと言えば町の魚屋さんか八百屋さんって感じ?元冒険者とかじゃなくって代々お肉屋さんをやってますって雰囲気です。

 

「オヤジさんこんにちは。門の外の串肉の屋台のオヤジさんにこちらで獲物の買取をしてるってお勧めされて来たんだけど、査定して貰ってもいいですか?ちょっと大物なんだけど」

するとケビンお兄ちゃんが早速交渉を始めます。

卒がない、入り方が自然、田舎者って舐められない様に変に威圧するんじゃなくて、間に人の紹介を挟む事で上手く話を持って行ってる。ケビンお兄ちゃん、本当に何者?ドレイク村長代理の所に入り浸ってるのは伊達じゃないですね。

 

「おっ、串肉屋って言ったらジルバの奴じゃないか。アイツがウチを紹介って、坊主よっぽど気に入られたんだな。

それで獲物は何処にあるんだい、ってオークじゃないか。それも丸々持って来るって凄いな。オーク肉は旨いんだが労力の割に金にならないって言って実力者はあまり持ってこないんだよ。かと言って銀級の成り立ては討伐が荒くてな、こんなくず肉にどうやって値段を付けたらいいのか迷う羽目になる。冒険者ギルドなら多少の値を付けて引き取ってくれるのと、冒険者ランクにポイントが付くからな、ウチみたいな店にはまともなオーク肉はあまり廻って来ないんだ。

その点このオークは見事な仕留め方だな、傷が全然ない。どれも頭部の打撃か、大した腕だ。理想を言えば血抜きがされていれば最高なんだがこの街に持ち込んだって事はオークの森あたりか、そんなところで血抜きをすれば他の魔物に襲ってくださいって言ってる様なものだからな、やらなくて正解だ。これは高く引き取らせてもらうよ。

それで何頭売ってくれるんだい、出来るだけ多い方がいいんだが」

 

「はい、三頭お願いします。冒険者ギルドに全く卸さないのも何かと問題になりますんで」

 

「なるほど、ちゃんと考えてるんだね。それじゃ、一頭当たりキリのいい所で金貨一枚でどうだろうか。結構頑張った値段だと思うんだが?」

 

「えっ、いいんですか?こちらとしては異存はありません。行っても大銀貨八枚、大銀貨七枚と銀貨五枚あたりが落としどころだと思ってました」

 

「うん、君はちゃんと市場価格が分かっているね。中にはその辺が分かっていない冒険者も多くてね、と言うかほとんどの冒険者が良く分かっていないんだけどね。

普段の価格は君の言う値段で合ってるよ。ただ今は春の掃討の時のオーク肉が底を付き始めていてね、値段が高騰している時期なんだ。もうしばらくすると冒険者ギルドが夏の間引きを行うから値崩れするんだが、それまでしばらくはこんな感じかな?

ただそれでも大銀貨八枚がいい所、今回この値段になったのは単純に状態がいいからだね。傷や出血が少ない魔物は魔力の抜けが少ない為か鮮度が段違いなんだよ。オークの森からって事はおそらく二日から三日は掛かってるとは思うけど、鮮度的には倒して数時間のオークと大差ないんじゃないかな?こんなに状態のいいオーク肉は久しぶりさ、これは捌き甲斐が有るよ」

 

へ~、そうなんだ。魔物って傷が少ない程鮮度がいいんだ。今まで魔物を倒すのは切る事って思ってたけど、食材って考えるとより鮮度を保てる撲殺の方がいいって事か。この辺はゲームでは絶対知る事の出来ないリアルな知識だな。

ゲームだったら一律幾らだもん、倒し方なんて気にしようもない。派手なエフェクトで大技ぶちかますだけ、そんな事してたら素材も何も無いって言う事なんだろうね。

物語の冒険譚に憧れて冒険者になったりただの腕力・スキル自慢が銅級冒険者で燻るのってその辺が原因なんだろうな。俺も最初の頃の勘違いを引き摺ってたらそうなっていたかもしれない、すごく勉強になる。

 

「なるほど納得です、すごく勉強になりました。それと今日の宿なんですけど、どこかお勧めはありませんかね?

実は従魔が一頭いまして、その辺を考慮してくれると助かるんですが」

ケビンお兄ちゃんはそう言うとブー太郎に目配せします。その合図に合わせてフードを取りぺこりと頭を下げるブー太郎。

ケビンお兄ちゃんいつの間にそんな事仕込んでおいたの?ブー太郎ただのオークだよね?なんでそんなに畏まった態度が取れるの?って言うかこの場にいて全く違和感なかったんだけど?

人混みに自然に紛れ込む従魔オークのブー太郎を見て、完全に動きの固まるお肉屋さんの店主と従業員たちなのでありました。




本日二話目です。
最近夜になるとカエルがね、よく鳴いてるんですよ。
この辺は既に田んぼなんかやってる人はいないんですけどね。
カエルも生きるのに必死だな~。
by@aozora
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