転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第790話 辺境男爵、変態研究者の下を訪れる (3)

「まぁアレはちょっとしたスキル実験だったんですけどね、俺のスキルに<友達生成>っていうよく分からないものがありましてね、鑑定してもらったんですけど“友人とは強制的になるものではない。真の友となるのかはあなた次第”っていう本気で意味の分からない鑑定結果が出たんですよ。

でもほら、スキルって意識すると何となく使い方が分かるじゃないですか、それでじっくり探っていったらどうも素材を集めて従魔のような存在を生み出すスキルっていう事が分かったんです。

でもこれが普通じゃないって言うか、説明通りって言うか、命令権とかは一切なくてただ存在を生み出すだけって感じだったんですよ」

 

“パク、モグモグモグ、カチャッ、ゴクゴク”

パンケーキを口に運び、紅茶を飲みながら話を続ける俺氏。その姿に離れた位置からこちらの様子を窺っている執事さんの顔が引き攣りまくる。

あの様子からすると相当な劇物のようですな、これはますます完全に処理する必要ありですね。

 

目の前に座るケトル嬢は顎に手を当て「<友達生成>、聞いた事のないスキルだけど、高位魔物が持つと言われる<眷属生成>みたいなスキルなのかな? 命令権がないって事は下位互換?」などと呟いています。

あの話だけでそこまで見抜くとは、天才ってやっぱり凄い、ド変態だけど。

 

「その時使用した素材が趣味で手に入れた“呪い人形”、‟呪われた鎧”、‟キャタピラーの攻撃糸の反物”、“魔力液”、それと“精霊砲から回収した魔力結晶”。それらを棺桶のような箱に入れ、蓋をしてからスキル<友達生成>を使ったんです。

想定ではリビングドールかリビングアーマー、デスナイトあたりが生まれるんじゃないかって考えてたんですけどね、蓋を開けて出てきたのは肉体を得た生活支援機構N401だったんです。

いや~、あの時は開いた口が塞がりませんでしたよ、予想外にもほどがありましたからね」

 

俺はパンケーキを食べ終えると、ミニスカメイドさんに「何かお勧めを持って来てくれる? あと紅茶のお代わりを」と頼みます。

ミニスカメイドさんは「畏まりました、ご主人様♡」と言って一礼をし胸の谷間を見せ付けた後、くるりと反転しスカートをひらめかせてから厨房の方へと向かうのでした。

・・・なんか慣れた。これはこれでいいものだ。

 

「ご主人様、ああした衣装がお好みなのでしょうか?」

そんな俺の様子を察したのか横合いから残月がボツリ。

 

「いや、個人的には落ち着いた雰囲気のメイド服の方が好みだ、まさに我が家のメイド服だな。ただああした衣装も華やかではあると認めたまでだ、他者の趣味を許容する度量が必要といった事を学んだよ。

この店の会員ご主人様たちも普段家では見る事の出来ないメイドたちに心踊らせるも、それはそれ、これはこれと割り切っていると思うぞ?

要するにこの“メイド喫茶”というところは、紳士の憩いの場といったものなんだろう」

俺の言葉に「ご主人様はミニスカメイドに興味あり」と呟く残月。

イヤイヤイヤ、違うからね? 話聞いてた? 月影に言って新しい制服の作製をとかマジ止めて、村のみんなからの視線がヤバい事になるから~!!

 

「生活支援機構N401が肉体を手に入れた、つまりスキルにより融合が行われて新たな存在として誕生した? ではシステムとしての生活支援機構N401とは別物と考えた方がいい、だがそれでは解析は不可能か。

いや、データを空の魔力結晶に移し替えれば解析は可能? ここまで滑らかに一個体として存在しているのはスキルによる融合が・・・」

天才魔導研究員ケトル氏、研究モードに突入です。そこで俺はそんなケトル氏に更なる爆弾をプレゼント。

 

「因みにこっちのトライデントは、霊木の材木を素材に作り上げた木製人形に魔法陣と魔力回路を刻み、精霊砲の魔力結晶を三つ埋め込んだ疑似リビングドールだったんですよ。

ちょっとここでは話せないような事が色々ありましてね、結果的に今のような状態に」

「はじめまして、製作者。私はトライデント、基礎システムとして生活支援機構シリーズが使われている事は分かっているが、ナンバーまでは確認できない事をお詫びする。

状態としては完全に別物になっている、よってシステム稼働も感知できなかったはずだ。ただ製作者がいなければ今の私がなかった事も事実、その点は素直に感謝している。我々を生み出してくれてありがとう」

 

トライデントは席に着いたまま軽く礼をし感謝の言葉を向ける。それは残月も同様であった様で、同じく礼をする。

 

「・・・ねぇ、セシリアちゃん、今の見た? 二人とも僕ちんに感謝の気持ちを向けてきてくれてるんだけど? 作られた人形じゃなくて一生命体としての感謝って事だよね? スゴッ、何これ、奇跡なんてもんじゃないんだけど?」

「マスター、落ち着いて下さい。マスターの偉業はそれだけのものであったというだけの事です。生活支援機構N903・個体名セシリアは常にマスターのお傍に」

 

・・・スゲー、まさにSF。構造なんかまったく分からないけどここまで人を再現する技術と造形のセンス、魔導を極めたといってもいい成果、稀代の大天才って言葉はこのケトルのためにあるんじゃないかって感じ。

だって俺みたいにスキルなんていうブラックボックスじゃなくて、明確に再現可能な技術力で作り出してるんよ?

人に対して“こいつには絶対に敵わない”と思ったのってもしかしたら生まれて初めてなんじゃないかな? ジニー師匠やドレイク村長みたいに尊敬し目標に出来る人物とは全く違うけど、純粋に凄いと思う。

 

「ちょっといいですかね? ケトルさんって急ぎの仕事を抱えてたりします? 一つお願いしたい仕事があるんですけど、報酬は支払いますよ?」

“コトッ”

 

「それは?」

俺がテーブルに置いた物、それは掌サイズの正方形をした黒い何か。よく見ればどことなく透き通っているようにも見える。

ケトルはそれを手に取りしげしげと眺めてから口を開いた。

 

「一見魔力結晶のようにも見えるけど、黒い魔力結晶なんて見た事ないんだよね~。でもこれ、どう見ても闇属性魔力の結晶体だよね、感じる魔力波動が闇属性魔力特有のものだし。

普通こうした品は呪われた魔道具や呪物って呼ばれるものだったりするんだけど、これはそういったものとは全く違う純粋な闇属性魔力の結晶体。でも手触りが魔力結晶とはなんか違うんだよな~」

「詳しい話は言えませんが、見立ての通り純粋な闇属性魔力の結晶体です。材質はトレントのような木材に近いという事が分かっています。

この素材を使って生活支援機構の魔力結晶と同じものを作っていただきたい。この仕事、受けていただけますでしょうか?」

 

俺の言葉に腕組みをして唸るケトル、色々と考えを巡らせているんだろう。

 

「正直できるかどうかは不明、扱った事のない素材だしね。ただ挑戦はしてみたいかな、未知の素材ってところも興味があるし。

僕ちんとしては精霊砲みたいな詰まんない事には使って欲しくはないんだけど?」

「あぁ、それはしません。俺もそちらのセシリアを見ていたら試してみたいことが出来ただけですから。ただ俺はケトルさんみたいに複雑な魔導式を組めるわけじゃないんでこれまでの経験を活かした素材のごり押しになるとは思うんですけどね、挑戦したいと思っちゃったんですよね」

 

俺の言葉にニヤリと笑い、「フフフフ、そうだよね~、やっぱりメイドちゃんはロマンだよね~。よ~し、ケビン君のために僕ちんが最高の部品を作ってあげようじゃないか」と言って胸を張るケトル。

俺は「ありがとうございます」と言って頭を下げます。

 

「でもそうなると報酬がですね。僕ちんもただ遊んでいると、ホーネットの旦那に怒られちゃう訳でして」

「それでしたら帝国金貨で三万枚でどうです? 即金でお支払いいたしますよ?」

揉み手で報酬の交渉を始めるケトルに俺は手元の不要物(帝国金貨)を提示します。だってこれ、オーランド王国じゃ使えないんだもん。

他所に行けばそうでもないんだろうけど、今のところ不用品なんですよね~。いつか溶かしてインゴットにでもしようかと思ってたんだし、惜しくもないっていうね。

 

「ハッ、必ずやご期待にお応えいたしましょう。メルルンちゃん、フワトロオムレツ人数分、愛情たっぷりで~♪」

「は~い、ご主人様、直ぐにお持ちしま~す♡」

ケトル氏即決、やっぱり物を言うのは金だったようです。

 

“コトッ、コトッ、コトッ、コトッ”

白いお皿に盛られた美しいばかりの黄金の卵、その輝きにそっと添えられた茹でたブロックルの緑も輝いて見えます。

 

「さぁさぁ旦那、これからが本番。メルルンちゃん、頼むよ~ん♪」

「は~い♡ 美味しくな~れ、美味しくな~れ♪ メルルンの愛情、召し上がれ♡」

それは絞り袋に入れたトメートのソースを使って、ミニスカメイドさんがフワトロオムレツにハートマークを描いてくれるサービス。

・・・ケトルさん、アンタ本物だよ、完璧だよ、まさか在りし日の画面の向こうの光景を体験できる日が来るとは夢にも思わなかったよ。

 

「ご主人様? 当お屋敷のお勧め、プリンパフェパフェで~す♡

はい、ご主人様、ア~ン。美味しいですか?」

俺のところにはさっき注文したお勧めメニューと紅茶を持った別のミニスカメイドさんが、しかもア~ンのオプション付きだと!?

そんでもってプリンにも手を出しちゃってるんですね、流石転生者。

 

「ご主人様?」

「残月、真似しようとしなくていいから、自分の分は自分で食べなさい。それとマジックバッグを」

俺は残月から手渡されたマジックバッグに手を入れ、そこから出すフリをして収納の腕輪から帝国金貨を五百枚ずつ入れた皮袋を次々と取り出していくのでした。

 

「いや~、旦那は本当に太っ腹でいらっしゃる。僕ちん張り切って仕事に取り掛からせてもらっちゃいますね~♪」

研究資金が手に入ったからかニマニマの止まらないケトル嬢、ちょっとその顔は人前で見せない方がいいっすよ? 嫁の貰い手が・・・メイドスキーでしたね、余計な事を考えまして申し訳ない。

 

“カランカランカラン”

「「「お帰りなさいませ、ご主人様♡」」」

入り口の扉が開いた事を知らせるドアベルの音、ミニスカメイドさんたちが新たな御主人様の到着を知らせます。

 

“コツン、コツン、コツン、コツン”

その御主人様は軽く店内に目を向けると、真っ直ぐこちらに向かってきます。するとケトル嬢の後ろに控えていたセシリアが軽く礼をしてからサッと椅子を引くのでした。

 

「はじめまして、オーランド王国の不可侵、ケビン・ワイルドウッド男爵殿。私はタスカーナ地方特別行政官ホーネット・ソルティア、君のような大物がこんな辺境の地方都市にどういった用件で来られたのかな?」

 

目の前の席に現われたのは二十代前半といった感じの男性、整った容姿に鋭い視線、纏う雰囲気は一国の王と言っても過言ではない。

うん、これなら大丈夫かな?

 

「はじめまして、ホーネット・ソルティア卿。私はホーンラビット伯爵家旗下所属騎士ケビン・ワイルドウッド男爵、ホーネット卿のお噂はかねがね。

しかし一地方男爵の私の事までご存じとは、流石は“若き天才軍師”と謳われたその情報収集能力は未だ衰えずといった事でしょうか。

それにこの店に配置されている配下の方々の働きも素晴らしい、油断も躊躇もなくケトル嬢を守るために行動されていた、是非オーランド王国王家の者たちにも見習ってほしいものです」

そう言いプリンパフェパフェ(猛毒入り)にスプーンを伸ばす俺氏、ホーネット卿はそんな俺に呆れの混じった視線を向けて来ます。

 

「こちらにお伺いした目的は二つ、天才魔導研究員ケトル氏と接触する事、それとホーネット卿とお会いする事。

私の目的は果たすことが出来ました、憂いが晴れたといったところでしょうか」

俺はそう言うと闇属性魔力を広げ、テーブルの上の毒入り料理と使用した食器類を収納の腕輪に仕舞い込みます。

 

「これらはこちらで処分しておきましょう、放置するには少々危険ですからね。それと動きがあるとすれば夏の終わりから秋の頭に掛けて、ホーネット卿も既に情報は掴んでおられるでしょうが、これはちょっとまずかったかも知れません。

私としては被害を最小限に止めるように動くつもりですが、東部方面軍の被害までは流石に。いずれにしろ先の読めない状況になるものかと、その時どう動かれるのか、ホーネット卿の手腕に期待させていただきます」

 

“ガタッ”

俺が席を立つのに合わせて残月たちも席を立つ、ケトルは一人未練たらたらといった目を残月に向けています。

いや、マジで自重して?

 

「それと一つ、暗黒大陸からの侵攻は当面ないでしょう。原因の一つだった四天王の内、魔将ドルイド・空将ジーグバルト・魔導将エカテリーナが粛清されましたから。魔国は現在魔国王アブソリュートの下新体制として生まれ変わりつつあります、他所にちょっかいを出す余裕はなくなりましたから」

「なっ、何処でそれを、あなたはどこまで先を知っているのか」

 

席を立ち声を上げるホーネット卿、どうやらビンゴだったようです。

 

「正確な事は何も、ただそうした予言を抱える者たちの存在はいくつか。

別に彼らの言葉に従って動いた訳じゃないんですけどね、そうした者に振り回されている者たちがいるって事は掴んでいました。

その中でもホーネット卿は上手く立ち回っていたと思いますよ? よくもこのような難物を従えていると尊敬したほどには。

なに、この世界はそれほど単純じゃない、そして強い。ホーネット卿は自ら信じる道を進まれるがいい、それが結果として何かを残す事に繋がるのですから。

それでは我々はこれで、お互い苦労が絶えませんね」

 

俺はそう言うと気配を消しながらその場を後にする。残されたホーネット卿は、いつまでも開かれた店の扉を見つめ続けるのでした。




本日二話目です。
いってらっしゃい。
by@aozora
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