転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第80話 村人転生者、従魔登録をする

なんやかんやの流れでブー太郎の従魔登録をする事になってしまった。俺、まだ授けの儀の前なんですけど?それって超目立つじゃん、凄い嫌。

でもまぁそんな事言ってももう十二歳ですしね、それくらいの年齢になると職業訓練がてらスキルを発現する子もちらほら出て来るとか。それって最初からスキルを持っていたり生活の中で身に付けていたけど、鑑定なんて出来ないから知らなかったってだけの話ですよね?実はスキルって授けの儀の前でも結構持ってるぞって証拠ですよね?

凄いぞ為政者の洗脳教育、もしかしたら“勇者病”って言葉も彼ら為政者が作ったのかもしれない。そんな言葉、侮蔑用語を作っておけば未成年の平民が下手にスキルを使おうだなんてしませんからね。両親からも“そんな事ばかりやってると<勇者病>って言われちゃいますよ?”とか言って(たしな)められているんだろうな~。

いや~、生暖かい目で見守られる辺境の村に生まれて良かったわ~。これが街場だったら排斥の対象だったわ、本当に。

 

でまぁ授けの儀の前ですが冒険者ギルドで従魔登録をするって事になった訳なんですが、本来なら従魔が主人の言う事を聞くか、街中で暴れたりしないかと言ったテストをするらしいんですけどね。

 

「うん、ケビン君の従魔、ブー太郎だっけ?合格だから。これ審査証明ね」

なんか審査前に合格になっちゃいました。いや、嬉しいんですけど、これって大丈夫なんですか?

 

「まぁ街門脇の肉屋のオヤジさんからの推薦状って言う保証があるって言うのも大きいけど、フードを被ってるだけで完全に人に紛れ込むってよっぽどだからね?しかもきちんと仕事して、主人に指示を仰ぐって、ウチの職員で雇いたいくらいだから。この仕事かなりの力仕事なんだよ、即戦力だよ、しばらく滞在するんだったら働いて行かない?冗談抜きで」

解体所職員のお兄さん、目がマジです。そっか~、冒険者ギルド職員も大変なんだな~。(遠い目)

 

「主任、状態確認終わりました。傷が頭部の打撃痕だけなんで状態は最高ですね。これから血抜きを行っても、仕留めて数時間の獲物と大差ないくらいの最高の肉になりますよ」

 

「よし、すぐに血抜きに入れ。それと商業ギルドにいい肉が入ったと知らせてやれ、アイツら後から知ったりしたらうるさいからな。はいよ爺さん、状態は最高ランクだったよ。ただ買取価格は期待しないでくれよ、ウチで出せるのは丸々一頭でも大銀貨八枚が限界だからな。その辺は価格変動が少ないのが冒険者ギルドと思って諦めてくれ。そのかわり商業ギルドみたいに買い叩いたり買取拒否なんて真似はしないからよ」

 

「よいよい、その辺は心得ておるよ。どうもありがとう」

そう言いオークの状態証明書を受け取り懐にしまうボビー師匠。

俺はそのまま冒険者ギルド受付に向かおうと踵を返したボビー師匠を一旦引き留め、先ほどから気になっていた事を聞いてみた。

 

「あの~、ちょっと気になってたんですけど、さっき上のギルド受付で冒険者たちから絡まれなかったのってなんでなんすかね?

それとボビー師匠が村の隠居老人みたいな真似をしたのも気になっていたんですよ、あれって声を掛けてきた受付のお姉様を見てから急に始めましたよね?」

 

「ほう、流石じゃなケビンよ、よう見とるわい。そうじゃな、ここは子供らの学習も兼ねて答え合わせと行こうかの。先ずケビンは何故そんな疑問を思ったんじゃ?普通なら絡まれずに済んでよかったと思うくらいであろう?」

ボビー師匠の言葉にウンウンと頷くチビッ子軍団とボイルさん。えっ?ボイルさんまで頷いちゃ駄目じゃん。まぁ答えますけどね。

 

「あぁ、それですか。ギルド受付に入った時のあの場にいた冒険者たちの目線や態度ですかね。初め彼らの中には“ん?知らない奴が来たぞ、よそ者か?”と言った視線を送って来る者が結構な数いたんですよ、中にはニヤニヤしながら近づいて来ようとした者も。

でもその全てがあの受付のお姉さんが来た途端視線を逸らしたり仲間らしき者に注意されて急いで自分の席に戻ったり、凄い不自然だったってのが一つ。

もう一つはボビー師匠の態度ですね、あからさまなご老人演技、“私は戦いから退いた老兵です”みたいな印象を相手に与えようとしていましたよね?それって冒険者ギルドや周囲の冒険者に対する警戒と言うよりも、あの受付さんに対する警戒のように思えたんです。

だからあの受付のお姉様はボビー師匠の知り合い、もしくはボビー師匠の耳に入るほどの有名人かなって思ったんです。

そう考えると絡まれなかった事に説明が付く、あの場にいた冒険者は皆あの受付さんを恐れていた、ギルドの偉い人かよっぽどの実力者か」

 

「ふむ、本当にケビンはよく人を見ておるの。

ジェイク、ジミー、エミリー、よく分かったかの。この様に冒険者は周りの状況から情報を集め分析し事態に対応せねばならない。街門前の出来事もそうじゃ、ケビンは串肉を買いに行くと言って屋台に出向き街門脇の肉屋の情報を仕入れて来た、全ては余計な諍いを回避するためにの。

確かに力があり功績を立てる冒険者は称賛されるであろう、だが情報を軽視した冒険者に長生きした者はおらん。王都や領都でトップクラスと呼ばれる冒険者パーティーには必ずと言ってよい程ケビンの様な情報収集を得意とする人物が所属しておるんじゃ、でなければ大きな仕事を熟し尚且つ余計な諍いを回避する事など叶わんのだからな。

前にも言ったが冒険者活動における最大の障害は人間関係じゃ、人とは斯くも恐ろしい、その事努々(ゆめゆめ)忘れるでないぞ」

 

「「「はい、ボビー師匠!」」」

 

「え~、俺そんな話一切聞いた事なかったんですけど?俺には教えは無しですか?

お前は勝手に覚えて来る?情報収集は儂より優秀?そうですか、お褒め頂きありがとうございます。

ってそうじゃないんですよ、これだけ条件が揃っていてまだ気が付きません?

あの受付さん、相当優秀ですよ?それこそあの荒くれ冒険者どもを調教し切っちゃうくらいには。そんな相手があからさまな不審者、子供を引き連れた老人相手に何もしないなんて思います?一応ボイルさんもいますけど、俺とボイルさんは見るからに依頼人ですからね?

あ、解体受付のお兄さん?主任さん?どっちで御呼びしたら?」

 

俺はすぐ側に立つ解体所主任さんを下から見上げる様にして声を掛ける。

 

「好きに呼んでくれていいよ。で、どうしたんだい?」

 

「えっとこの後こちらで貰った状態証明書と従魔の審査証明を上の受付に持って行くんですけどね、オーク丸々一頭って珍しいんですよね?それも最高評価って」

 

「そうだな、俺もほとんど聞いた事がないくらいには珍しいな」

 

「それとオークの従魔も珍しいんですよね?評価も良かったみたいですし」

 

「あぁ、これほど大人しいオークは聞いた事ないな」

 

「これから行く受付四番の女性ってそんな書類を見せられても騒がず淡々と処理してくれる様な人ですかね?パッと見男の庇護欲を誘いそうな危な気な感じの方だったんですけど」

 

「庇護欲を誘いそうな危な気な感じ。お~い、今日の受付四番ってもしかしてシャロンの奴か?」

 

「はい、確かシャロンでした。そうだよシャロンだよ、不味いっすね。アイツ前にも冒険者の獲物を大声で発表して大騒ぎになってませんでしたっけ?」

 

「やっぱり、”天然の殺し屋”シャロンかよ。何であいつがまだ受付やってるんだよ。

坊主済まなかった、こっちで気が付くべき事だったわ。

上に行ったら六番の受付に仏頂面してる男がいるからそいつに”解体主任からこちらに来る様に言われました”って言ってから書類を渡すんだ、そうしたらすぐに対応してくれるはずだ。アイツの受付は人気がないから誰も並んでないと思うがな」

 

危ね~、超地雷踏まされるところだったわ。これ絶対揶揄われただろう、受付のお姉様こっちの動きを試した?

怖、冒険者ギルドめっちゃ怖いわ~。

俺が一人戦慄してると額に手を当てて何やら考え込むボビー師匠。ボビー師匠、どうかなさいましたか?

 

「あぁ、おそらく試されたのは儂じゃな。先程の受付、儂の記憶が正しければ“白銀のエミリア”、煌めくレイピアを武器に無数の魔物の群れを単身壊滅させた王国の剣。儂が現役を引退した頃に白金級冒険者として大人気だった強者じゃ。

儂はすっかり爺になっておるがあ奴は当時の面影を色濃く残しておった。あの風貌もわざと地味にしておったのじゃろうて、その容姿、実力から数多くの貴族からも求婚されておったと聞く。まぁ本人は貴族の愛人などまっぴらごめんと言っておったがの」

 

「あ~、すまん。それってウチのギルドマスターだわ。よく抜き打ちで受付に出てるんだよ。まぁ彼女のお陰でこのギルドも随分よくなってるから文句も言えないんだけど、時々お茶目に走るんだよ、本当にすまん」

そう言い頭を下げる解体主任さん。うん、ギルドマスターしょっちゅうやらかしてるのね、偉い人って怖いわ~。

これって“自分は悪くありません”って立ち位置を作ってから来てるじゃん、トラブルが起きてから仲裁に入るパターンじゃん、そんでもってドジっ子受付の教育をしつつ確り恩を売って来るって奴じゃん、マッチポンプ怖!

 

「あ~、さっきからお口ポカ~ンとして状況が良く分かっていない様なチビッ子諸君、君たちにわかり易く言うと“罠に嵌められるところでした”って奴です。しかも罠を回避したら回避したで面倒なギルドマスターに目を付けられるって言うね、ギルドマスターの一人勝ち?だから都会って嫌い。

ジェイク君、エミリーちゃん、ジミー、これから君たちが歩むであろう冒険者って世界は常にこうした罠が張り巡らされています。まぁ今回のものはそれでも比較的マシな方、酷い物になるとエミリーちゃんが貴族の慰み者にされたりジェイク君やジミーが使い捨ての道具にされたりしちゃうかもしれません。そうならない為にも常に考え情報を集める事を心掛けてください。

 

で、今回は全てボビー師匠が引き受けて下さるので皆でボビー師匠に感謝を。

ボビー師匠、ありがとうございます!!」

 

「「「ボビー師匠、ありがとうございます!」」」

 

俺たちは全員でボビー師匠に頭を下げる。その様子に一人焦り出すボビー師匠。

 

「な、ケビン、それは卑怯であろう。それでは儂が白銀に目を付けられてしまうではないか!」

「え~、別に問題ないですよ?だってボビー師匠もう冒険者じゃありませんし、ミルガルの街に来るのって年に一度あるかないかですよね?今回だって子供たちに冒険者ギルドを見せるのとブー太郎の従魔登録って目的が無ければ、来る予定なかったんですよね?はい、問題終了。さっさと要件を済ませて本来の仕事に移りましょうよ」

 

「ウッ、なんか丸め込まれた気はするがケビンの言う通りじゃな。では早速六番の受付に行く事にするかの」

 

「解体主任、色々教えていただきありがとうございました。これ良かったら皆さんで頂いて下さい。ウチの村の特産、ビッグワーム干し肉です。お酒に合うピリ辛味ですんで飲み会のお供にどうぞ」

 

「あ、それ知ってます。こないだ食べました。最初ビッグワーム肉って事で悪戯半分に飲み会のつまみに出してみたんですが、凄く評判が良くって。俺も食べてみたんですがホーンラビットよりも俺は好きですよ。ピリ辛味はすぐ売り切れるんですよね、主任、いらないんだったら下さい」

 

「馬鹿野郎、珍しい物は皆で試食が解体所の習わしだろうが!野郎ども、差し入れだ。今夜はビッグワーム干し肉で一杯ひっかけるぞ」

 

「「「おう!」」」

 

解体所職員さん方が拳を上げて笑顔になられています。飲み会の口実が出来たって訳ですね、良きかな良きかな。

 

「喜んでいただけた様で何よりです。こうした珍味は相手によっては怒り出す方もおられますから。

それでこの場での相談事なんですがご内密にって事で、特にギルドマスターには」

 

「おう、了解した。受付嬢に関してはこっちで気が付いた事にしておいてやるよ。受付で何か聞かれたらそう答えておけばいいさ。それなら爺さんもギルドマスターに目を付けられずに済むだろうよ」

 

「はい、ありがとうございます。ボビー師匠、そう言う事ですんで、後はよろしくお願いしますね」

 

「あ、あぁ、と言うかお主本当に何もんじゃ。“マルセル村の村人ケビンですが何か?”とか言うでないぞ、そんな事百も承知じゃからな。

“ケビンだから仕方がない”、本当にええ言葉じゃて」

何故か頭を抱えるボビー師匠とボイルさん、そして勉強になりますと言った顔付きのチビッ子軍団。そんな中ブー太郎だけが“フゴフゴ”と一人空腹を訴えるのでした。

 

「さぁ、さっさと要件を済ませて屋台で何か食べるぞ~!」

“フゴ~!”




本日二話目です。
一週間、早い。
さぁもうひと頑張りだ!!
いってらっしゃい。
by@aozora
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