転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第849話 辺境男爵、ご報告する

マロニエ連山のおばちゃんドラゴンの洞窟から戻って五日、ようやく少しおばちゃんドラゴンの情緒が落ち着いたので、エッガードさんのマルセル村デビューです。

この間俺が何をしていたのかと言えば、祭りに向けての王都での準備ですね。賃貸契約を結んだビーン・ネイチャーマンの家の内装やら小細工やら。ついでに暗殺者ギルドに顔を出して依頼内容の進捗状況を聞いたりでしょうか。

 

それにしても王都暗殺者ギルドの情報網ってどうなってるんでしょうか、裏社会の元締めだけあって、中央貴族のヤバい話が集まる集まる。“これ、何で破産してないの?”ってくらいの貴族家がゴロゴロとですね。

貴族とは名ばかりの借財まみれの崩壊貴族ってのが中央貴族の実態、権力と利権に固執しなければ生きていけないというのが彼らの本音のようです。進むも地獄、諦めるのも地獄、ついでに周りを巻き込んで盛大な自爆をかまそうとしているだなんて、オーランド王国の中央貴族社会って終わってる。

 

でもな~、これってオーランド王国だけの問題じゃないんだよな~。古くから続く王国国家は大なり小なり問題を抱えている現状、オーランド王国だけを責める訳にはいかないっていうね。

その点国内貴族の取り締まりが厳しいのがバルカン帝国、賄賂やら他人の手柄の横取りやらに関しては完全放置なのに、借金まみれで国家の寄生虫になるような家に関してはガンガン潰していくっていうね。流石は実力主義国家、質の悪い味方は家柄に関係なく排除ってのがバルカン帝国の基本方針だったようです。(マスター情報)

 

他にはエッガード絡みの準備を少々。これからは住み込み(ドラゴンロード家)じゃなくて社宅(自己領域内)からの通勤になるので、その為の設備を整えなければなりません。

 

「おはよう霊亀、ホーンラビット伯爵閣下は到着してる?」

“うむ、おはよう。村の長であれば既に到着している。家の中でケビンの到着を待っているぞ”

家の前で枯草を食み日向ぼっこをしている霊亀、この寒さの中でも平気な顔をしている辺り環境の変化には強いようです。

 

俺が足を向けたのはドラゴンロード男爵家、要は実家です。で、ミッシェルちゃんとドラゴンロード男爵家の皆さん、ついでにホーンラビット伯爵閣下にエッガードを紹介してしまおうって算段ですね。

まぁ村中で騒ぎになるのは目に見えているので、押さえるところを最初に押さえてしまおうって事ですね。

 

“ガチャッ”

「メアリーお母さん、ただいま。ホーンラビット伯爵閣下、わざわざ足を運んでいただき申し訳ありません。

ヘンリーお父さん、ジミー、ミッシェルちゃん、朝早くから集まってくれてありがとうね」

玄関扉を開けるとヘンリーお父さんとホーンラビット伯爵閣下がお茶を飲みながら談笑し、ミッシェルちゃんとジミーが大型犬サイズになった良狼にブラシを掛けています。

 

「いやいや、ケビン君、気にしなくてもいいよ。ヘンリーさんと私は正しく親戚だからね、ケビン君が子供の頃はまさか将来ヘンリーさんと親戚になる日が来るだなんて思いもしなかったよ。本当に人生何が起こるのか分からないものだね」

「そうだな、まさか俺も勇者と本気で剣を合わせる事が出来る日が来るだなんて思いもしなかったからな。それを言ったら勇者ジェイクとしょっちゅう剣を合わせていたんじゃないのかと言われそうだが、訓練と存在を懸けた命の削り合いとでは戦いの質が違う。

一人の剣士としてこの時代の最高峰と戦えることに喜びを感じずにはいられない。

そういった意味ではケビンに感謝しないといけないな。ところでケビンの呼び名は決定してるのか? 俺とホーンラビット伯爵閣下は“理不尽の魔王”がいいんじゃないのかと話していたところなんだが」

 

「この中年オヤジども、のんきに人の魔王ネタで盛り上がっていやがったよ。

ホーンラビット伯爵閣下にも言ってますが、今回の祭りではこちら側から魔王って言うのは無しですから、あくまでホーンラビット伯爵家旗下ケビン・ワイルドウッド男爵として戦わないといけないんですからね。冗談でも魔王カオス様とかの名前で呼ぶのはやめてくださいね、後々面倒になりますんで。

うちの従業員たちにもその辺はよく言い聞かせてありますから、マジでシャレになりませんから」

俺の言葉に「「今更何を言ってるの?」」と素の表情で言葉を返すお二方。

説得力があろうがなかろうが建前ってものは重要なの、うちの従業員に無制限で暴れていいって言ったらオーランド王国が一日掛からずに滅びちゃうの!!

 

「ハッハッハッハッ、ケビンの下手な冗談はいいとして今日は一体どんな話があるんだ? ホーンラビット伯爵閣下まで呼んだって事はそれなりに重要な話なんだろう?」

「そうですね、重要というより最初にお話ししておかないといけないのがドラゴンロード男爵家の皆さんとホーンラビット伯爵閣下って事だったんですが。

単刀直入に言えばエッガードのことです。ヘンリーお父さんたちはすでに見慣れてしまっているので特に気にしたこともなかったと思いますけど、ホーンラビット伯爵閣下に質問です、エッガードって何だと思いますか?」

俺からの問い掛けに“一体何のこと?”といった表情になるホーンラビット伯爵閣下。

 

「えっと、ケビン君の質問の意図が分からないけど、見た目のまま“卵”と答えるのは適切じゃないって事だよね? となると聞きたいのはエッガード君が何の卵であるのかといった事なのかな?

私は魔物について詳しくないからよく分からないが、大きさからすると大型の魔物、卵を産むとなると鳥系魔物か爬虫類系の魔物。フィヨルド山脈に棲むサンダーバードかワイバーンか、大森林のフォレストスネークって事も考えられるんだけど、魔境のジャイアントスネークの卵って言われても不思議じゃない大きさではあるよね」

流石は智将ドレイク・ホーンラビット伯爵閣下、魔物に詳しくないと言いつつもかなり鋭い線を突いてきます。

 

「ヘンリーお父さんはどう思います?」

「そうだな、俺としてもホーンラビット伯爵閣下の意見とほぼ変わらない。強いてあげれば飛行系魔物であることは間違いないだろう。エッガードの飛行能力は親である魔物が飛行系の能力を持っていなければ説明が付かない。そうでなければグラスウルフ隊のように魔力障壁を足場にして疑似的な飛行を行う事しかできないだろう」

元金級冒険者“笑うオーガ”の分析能力も素晴らしい、こうした予測は長年の経験で培われた知識と直感によるものなんでしょう。こればかりはマルセル村の訓練だけではどうにもなりません、ジミーには是非そうした点も吸収していただきたい。

 

「ミッシェルちゃんはどう思う? ずっと一緒にいてエッガードのことを一番知っているのはミッシェルちゃんでしょう?」

俺からの質問にコテンと首を傾げ、唇に指を当てて考えるミッシェルちゃん。ミッシェルちゃんあざとい、ここぞとばかりに可愛い女の子をアピールして点数稼ぎをなさっておられる。これには母メアリーも大満足のご様子、父ヘンリーとジミー撃沈、顔がだらしないったらありゃしない。

 

「うんとね、ドラゴン!! お空をビューンって飛ぶ魔物はドラゴンだから♪」

両手を広げて身振り手振りで説明するミッシェルちゃん、これにはホーンラビット伯爵もニッコリ。父ヘンリーとジミーデレデレ、母メアリーは大変ご満悦でございます。

 

「そっか~、ドラゴンさんなんだ。それじゃエッガードが孵化したらどうする? ドラゴンさんだったら大騒ぎになっちゃうよ?」

「う~ん、そうなったら私がエッガードのことを守るの~。ヘンリーお父さん、メアリーお母さん、ジミーお兄ちゃん。私の事応援してくれる?」

そう言い家族にキラキラした目を向けるミッシェルちゃん、メアリーお母さんは慈愛の籠った目を向けニコリと微笑み、ヘンリーお父さんとジミーは立ち上がって「「任せておけ」」と宣言しています。

そんな微笑ましい家族団らんの中、一人ホーンラビット伯爵閣下が引き攣った顔を俺に向けてきます。俺はホーンラビット伯爵閣下に顔を向け、ニヤリと微笑みを浮かべます。

 

「イヤイヤイヤイヤ、えっ? 嘘だよね、ケビン君。嫌だな~、本当、ザルバ、お茶とクッキーをっていないし!!」

「ハッハッハッハッ、ホーンラビット伯爵閣下、あまり聖茶に頼り過ぎるのはよろしくないかと。現実を受け止めることは大切ですよ?」

俺はそう言うと収納の腕輪から木製の扉を取り出します。

 

“ガチャリ”

「エッガード、ちょっと来てくれ~」

“キュワーーーー!!”

開いた扉、聞こえる鳴き声、ドラゴンロード男爵家の人々とホーンラビット伯爵閣下が見つめる中、それは薄暗い扉の中から現れる。

 

“ガバッ”

「エッガードーーーー!!」

“キュワーーーー♪”

立ち上がり、扉の向こうから飛び込んできた赤ちゃんドラゴンと熱い抱擁を交わすミッシェルちゃん。その年相応の花のような笑顔に、見ているこちら側も思わず笑顔になってしまいます。

うちの子たちもこんな感じで心を通い合わすことの出来る相棒を見つけられるだろうか? どんな苦境に立たされようともこの心の絆がある限り、ミッシェルちゃんは全てを乗り越える事が出来るでしょう。

少女と魔物の美しい友情、く~~~~堪らん!! これには会場のオーディエンスも拍手喝采・・・おや? 皆さん固まっていらっしゃるようですが、どうなさったんでしょうか?

 

「ご紹介いたします、目出度く卵から孵化なさいましたエッガードです。それで皆さんには少々ご相談がございまして、ミッシェルちゃん、エッガード、ちょっと話を聞いてくれるかな?」

俺の言葉に戯れるのを止め、こちらに顔を向けるミッシェルちゃんとエッガード。他はドラゴンロード男爵家の方々が何とか回復、ホーンラビット伯爵閣下は収納の腕輪から胃薬と水筒を出されておられます。

備えあれば患いなし、準備万端は為政者の基本ですものね。

 

「お話というのは他でもありません、エッガードのことです。これまでエッガードはドラゴンロード男爵家に住み込みでお世話になっておりましたが、これからはワイルドウッド男爵家で用意した社宅からの通いとなります。通勤はこちらの扉からですので、要するにエッガードが自分の部屋を持ったくらいのつもりでいていただければよいかと。夜は家に帰るのと、たまに休日をいただけるようお願いいたします。

具体的な休日の設定はエッガードとミッシェルちゃんで話し合って決めてください、ミッシェルちゃんはエッガードの生活のこともちゃんと考えてあげるようにね」

俺の言葉に小声でエッガードと内緒話を始めるミッシェルちゃん、「ケビンの言っていることはどういう事であるのか。なんと、母親と同居することになったのか、そうであれば無理はさせられんな」といった声がですね。ミッシェルちゃん、幼女モード終了のようです。

 

「それとですね、エッガードのお母さんが是非皆さんにご挨拶をしたいと申しておりまして、お呼びしてもよろしいでしょうか?」

俺の言葉にゴクリと唾を飲むドラゴンロード男爵家の方々と、ゴックンと胃薬を飲まれるホーンラビット伯爵閣下。そんなにギュッと薬瓶を握り締めなくても、効果は変わりませんよ?

 

「マロニエの御方、どうぞ」

俺はそう言うと一度扉の中に入って、管理者権限でおばちゃんドラゴンを連れ出します。おばちゃんドラゴンは人サイズに小さくなっている上に気配も引っ込めてるので見た目以上のインパクトはないはずですが、それでも少なからず驚きがですね。

 

“はじめまして、私はマロニエ連山に棲む者、エッガードの生みの親です。皆さんがエッガードのことを家族としてどれほど大切に接してきてくださったのかはこの子より聞きました、本当にありがとう。エッガードのことで皆さんに直接お礼が言いたくて、ケビンには無理を言ってしまいました。

私のような存在が人前へ頻繁に姿を現すことの弊害はよく理解しています。ですのでご迷惑をお掛けするつもりはありませんが、これからもエッガードのことをどうぞよろしくお願いいたします”

そう言い頭を下げるおばちゃんドラゴンに、言葉を失う男たち。そんな中母メアリーが口を開きます。

 

「エッガードちゃんのお母さま、ご安心ください。エッガードちゃんはこれまでもこれからもミッシェルのお友達であり大切な家族です。ミッシェル同様家族の一員として接していくことを誓います」

「エッガードの母上殿、ご安心いただきたい。エッガードは我が相棒、唯一無二の存在である。我は我が信念に於いてエッガードを裏切らぬことを誓おう」

おばちゃんドラゴンに優しくも力強い笑みを向ける母メアリー、ミッシェル様は右の拳を握り締め、胸に当て誓いの言葉を宣言します。

 

「ミッシェルちゃん、違うでしょう、こういう時はどう言うのかな?」(ニコッ)

「は、はい。エッガードのお母さん、エッガードと私はずっと仲良しです。これからもよろしくお願いします!!」

エッガードをギュッと抱きしめペコリと頭を下げるミッシェルちゃん。おばちゃんドラゴンはそんな母メアリーとミッシェルちゃんとのやり取りに微笑みを浮かべ、“エッガードのことをよろしくね”と言葉を向けるのでした。




一話投稿にはなれたかな?
ストックが無いんだよね、ごめんね。
いってらっしゃい。
by@aozora
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