転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第898話 祭りの翌日は後片付け ボルグ教国編 (3)

目の前の男性から告げられた言葉、それは現在置かれている状況もあり俺の心を大きく混乱させるものであった。

 

「まぁ突然こんな事を言われても意味が分からないという気持ちは分からなくはないがな、事実だ。それと現状は私が何かを仕掛けたという訳ではない、別の者が仕掛けた罠にケビンが嵌った、それが私との回線を開く切っ掛けとなった。

ケビンも薄々警戒はしていたんじゃないのか? 中級天使$$%&にもそれとなく探りを入れていたくらいだからな」

男性の、システムさんの言葉に思考がクリアになる。全ての事象が一つに繋がり、胸のざわめきがスッと落ち着いていくのを感じる。

 

「それじゃ暗黒龍グラードの心臓が消えた後に残された楔も?」

「間違いないだろう、だがその記録を調べるのは私の仕事ではない、それこそ天使たちの役割だ。私はシステム全体の管理を行う事が役割であり存在意義でもあるからな、本来こうして使用者と直接言葉を交わすように設計されてはいない。

大体この姿を与えたのはケビン、お前だからな? 普通創造の女神が創り出した世界を管理するシステムっていったら敬うもんなんじゃないのか? 何でその私をケビンの前世の世界にいるシステム管理を行うサラリーマンの姿として定義付けするんだ? 大体ケビンが無茶苦茶しなければ私が表に出てくる事など無かったんだからな?

お陰で創造の女神には私の存在がバレるわ、ケビンの与えた姿に爆笑されるわで散々だ。今じゃいいおもちゃにされているよ」

そう言い力一杯ため息を吐くシステムさん。凄いエナドリが似合いそう、誕生以来無給で無休のハードモードですものね、お疲れ様でございます。

 

「あぁ、因みにこの空間ではケビンの考えは駄々洩れだからな、今のケビンは魂そのものだから、ある意味仮死状態だから」

「はぁ!? えっ、俺死んじゃったんですか? そういえばさっき罠に嵌ったとかなんとか言ってましたけど」

なんかさっきからパワーワードばっかりなんですが、俺のライフがゼロってマジでゼロなの!?

 

「イヤイヤ、死んでないぞ、ある意味仮死状態と言っただけだからな。ケビンに一番分かり易く言えば、$$%&に時間遅延空間に引き摺り込まれる事があるだろう、あれの更に上、魂に直接干渉されている状態と言えばいいだろうな」

・・・なんかちょっとついて行けなくなってきたぞ、やっぱりシステムさんってスゲーや。

 

「まぁいい、具体的な話を聞けばケビンでも理解できるだろうさ。今言ったようにケビンの魂はとある者により直接的な干渉を受けている。そいつは魂に干渉する権限を持つ者、干渉の内容は魂の初期化。これは死後すべての魂が受ける魂の循環に関わる工程の一つだな。

ただ一つ問題があってだな、この工程は基本的に天上界でしか行えない事になっている。まぁ当然だな、そんな事が好き勝手に行えるようじゃ世界の維持に関わるからな。

だからその者は罠を仕掛けたんだよ、地上世界でも最大級の回線が敷かれているボルグ教国の大聖堂にな」

あぁ、はいはい、なるほど。考えれば話は単純、その御方は地上世界に直接干渉する事は出来ないものの、自らの管轄であるボルク教国の大聖堂に罠を仕掛けることは造作もなかったと。

で、俺の魂に干渉してシステムに関わる何らかの処置を施そうとしたと。

 

「おぉ、大分思考が回ってきたみたいじゃないか。というか順応が早いな、流石理不尽、伊達に周囲を振り回してないわ」

「人の思考にツッコミを入れないでください、いくら駄々洩れでもそこは敢えて発言を待って欲しいっす。あなた様にはちゃんと口で話せって怒られちゃってますけど。

それで魂の初期化を行ったって事は俺の存在というか、記憶が丸っと失われるって事ですかね? 所謂植物人間的な何かになっちゃうとかですか?」

さっきシステムさんが言った「ある意味仮死状態」ってのがそういう事なんだろう。これは俺のミス、魔法や覇気、物理的罠や毒による攻撃には最大限の警戒をしていたけど、まさかシステムを介して直接魂に干渉してくるとは思わなかった。想像すら出来ない事を仕掛けてきた相手が一枚上手だったってだけのこと。

 

「それなんだがな、さっきも言ったが本来魂の初期化は天上界でしか行うことが出来ない、これは創造の女神が定めたというよりそういう仕組み、そういう造りになっているからという事が主な理由だ。だがそいつはその法則を無視して凶行に及んだ。大聖堂と言う聖地の特性を利用し、天上界でしか行えない魂の初期化を実行に移したんだ。

その結果が今だ、現在ケビンは初期化作業の真っ最中という訳だ」

「あっ、なるほど、そういう事か。魂の初期化は天上界が魂を循環させる為に行うもの、つまりその工程を実行するのは」

 

「そう、この私だ。システム上実行された初期化作業は行われる、これは私でも覆すことが出来ない。私に出来るのはこの無茶な初期化によりケビンに何が起きるのかを伝える事ぐらいだ。

ケビンは創造の女神が創りあげたシステムが現行の世界にどういった影響を与えているのかを知っているだろう?」

「・・・人に魔法やスキル、職業を与え、魔物蔓延る世界でも生き残れるようにする。魔法やスキルは魔力現象をシステムにより簡単に使用できるようにしたもの、人に魔力に干渉する基礎制御システムを組み込む事で、詠唱さえ知っていれば誰でも使う事の出来る生活魔法なんて言うとんでもない技術が生まれた」

システムさんは俺の回答にニヤリと笑うと、眼鏡をクイッと押し上げる。

って言うかシステムさんもキラ~ンってやるの? それも俺のイメージなの? なんか黒歴史をいじられてる気分なんですけど!!

 

“パンッパンッパンッパンッパンッパンッ”

「流石は混沌の魔王カオス、パーフェクトな回答だ。人の身でよくぞその答えに辿り着いた、って言うかいい加減種族どうにかしろ、お前絶対人じゃないだろう」

「今それ言う? っていうか種族:***ってなにさ、読めないから、花花花でいいの? いいって言って!!」

システムさん、ぶっ込むぶっ込む、絶対根に持ってたでしょう? こっちの考えが駄々洩れだからって指差して笑うな~~~!!

 

「アッハッハッハッ、凄く楽しい。これが楽しいと言う感情か、人間というものは面白いってとっくに知ってる事をさも初めて知ったかのように語ってやろう。ケビン、こういう流れ、好きだろう?」

「あぁ、好きだよ、大好物だよコンチクショウ!! それで一体俺はどうなるってんだってばよ~!!」

クソッ、システムさんめ、今までの恨みでもあるのかここぞとばかりにいじり倒してきやがって、最高かよ!!

 

「まぁ焦るな、すぐに分かるって始まったようだな」

“ポワッ”

俺の胸のあたりが淡い光を発し、光の玉のような物が抜け出してくる。これは一体。

 

「・・・お前、もしかしてスキル<食いしん坊>か?」

“ポワン、ポワン、ポワン”

光の玉は嬉しげに明滅すると、俺の周りをくるくる回ってから暗闇に向かい飛んでいく。その後次々と身体の中から飛び出してくる光の玉、俺の顔に擦り寄ってから飛んでいくもの、頭にゴンゴンぶつかってから飛んでいくものってあれは<宝箱生成>さんじゃないですか。いや、だって、流石に使えないでしょう、忘れてたわけじゃないのよ? 実験くらいしろ? マジで申し訳ない!!

俺は身体から飛び出していく多くのスキルに“上手く使ってあげられなくてごめん”と謝罪しつつ、“これまで大変お世話になりました”と感謝の念を込めて送り出す。

 

“スーーーーッ”

それは俺の身体から抜け出すように現れた女性、どこかのギルド職員のような制服を着た、清楚な雰囲気を醸し出す者。

 

「<魔物の雇用主>さんですか? いや、本当にお世話になりました。今の俺があるのは全て<魔物の雇用主>さんのお陰です、従業員たちの連絡とか、昇進のアナウンスとか、うちの会社にはなくてはならない存在でした。全ての従業員を代表してお礼申し上げます」

俺は九十度の最敬礼をすると、<魔物の雇用主>さんにいかにお世話になったのかを思い出す。出会いは授けの儀で夢のテイム系スキル<魔物の雇用主>を授かったことから。<魔力支配>とのシナジー効果によりその有用性は爆増、俺が魔法を自在に使えるようになったのも<魔物の雇用主>さんと<魔力支配>さんのお陰。本当に感謝の念しか湧いてこない。

 

『ありがとう、私を嫌わず使い続けてくれて。あなたに大きな運命を背負わせてしまった私を大切にしてくれて。あなたのスキルになれて良かった』

その言葉に顔を上げると、優しそうな笑みを浮かべる<魔物の雇用主>さん。

 

“スーーーーッ”

次に現れたのは、ローブ姿の精悍な顔つきの男性。

『ケビン、お前と造り続けた各種生活魔法、楽しかったぞ。魔法神と魔術神に認められてスキル<生活魔法>が生まれた時は爽快だった、まさか私がこんな気持ちにさせられるとは思わなかった。

負けるなよ? 私たちはあくまでシステム、補助であることを忘れるな。

ケビンの魂は既に魔力が何であるのかを知っている。それがどういう事か、お前なら分かるだろう?』

そう言い<魔物の雇用主>さんと一緒に暗闇の空間へ昇っていく<魔力支配>さん。・・・というかなんであの二人、手を握って見つめ合ってるの? 君たち俺の魂の中で何をしていたのかな? 子供が生まれましたって手紙が送られてきても返事のしようがないからね?

 

“スーーーーッ、スーーーーッ”

身体の中から何かが抜ける。それは魂の一部が抜けたような大きな喪失感を伴い、俺の心の中の大切な何かが消えた寂しさと悲しみに襲われる。

 

「・・・そうか、そういう事だよな。<棒>、<自然人>、お前たちも行っちゃうんだよな」

棒、それは少年にとっての必須アイテム、大人になっても忘れることのできない男のロマン。

自然と戯れ自然と共にある。大地を走り、森を駆け抜け、風を感じ、海の雄大さを知る。

俺の根底に流れる思い、俺を形作る基礎、ロマンの塊。

 

「ありがとう、共にいてくれて。ありがとう、俺のスキルになってくれて」

そこにいるのは野性味あふれる狩人のような格好をした偉丈夫と、二メート弱の長柄の棒。俺は長柄の棒を手に取ると、これまでの感謝の気持ちを込めて振り回す。突きの型、薙ぎ払い、回転打ち、様々な技を繰り出し棒との別れを惜しむ。

 

“スッ”

俺は振り終えた長柄の棒を偉丈夫へと手渡す。偉丈夫は小さく頷くと、棒と共に暗闇の空間へ昇っていく。

 

「別れを済ますことが出来たようだな。これまで生きている者の魂を初期化した事はなかったからな、私もスキルたちがこれ程までに人と寄り添っていたという事を初めて知ったよ。

ついでに言っておくがケビンの名前、年齢、種族、職業、スキル、魔法適性、賞罰、称号、加護、それら全てのデータがケビンの魂から失われる。つまり完全に生まれる前の魂と同一の条件となる訳だ。

そして記憶だが、これは残る。理由は単純、肉体という記録装置が残っているからだ。ここでの出来事も確り肉体に送っておいた、阿呆に勝手されたんだ、これくらいの意趣返しはさせてもらうさ」

「ありがとう、その辺は凄く心配だったんだよ。従業員たちには迷惑を掛けるが、記憶が残ってれば、まぁ何とかなるさ」

そう言い笑う俺に釣られ、呆れたように笑い出すシステムさん。

 

「一つ付け加えておく、ケビンの存在は人の魂として扱われているため魔物の観測ようにシステムによる定義付けを行うことが出来ない、かと言って初期化された魂をいじる事も出来ない。つまり今後鑑定を行ってもケビンのステータスは白紙のままとなる。

唯一出来ることは名付けだが、これはケビンも知っての通りその存在に対して必要とする魔力量というものがある。確り休養して魔力が完全回復したら自分で付けるといい。

じゃあな、ケビン。今後関わる事はないと思うが、確り生き抜けよ?」

「分かった、これまで色々と迷惑を掛けてすまなかったな。それと助かったよ、流石の俺でもいきなりすべてのステータスがなくなったってなったらパニックを起こしていたかもしれないからな。魔力枯渇空間くらいは用意してくるとは思っていたけど、魂の初期化は読めなかったしな。

抗うだけ抗ってみるさ」

俺はシステムさんにサムズアップを向けると、戦いに気持ちを切り替える。ここから先は俺とこの罠を仕掛けた何者かとの戦い。

俺はスキルを失った自分に一体何が出来るのかを模索しながらも、口元に浮かぶ笑みを止めることが出来ないのであった。




おはようございます。
お仕事頑張って。
いってらっしゃい。
by@aozora
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