転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第902話 祭りの翌日は後片付け ボルグ教国編 (7)

星の降るような奇跡の夜、降臨された天使様方は矮小なる俺たち地上人たちにお言葉を授けられ、再び天へとお帰りになられた。

ボルグ教国聖教会の大聖堂前広場には、魔王討伐軍として従軍した八万四千名を超える人々と多くの聖教会関係者、騒ぎを聞きつけ集まった数多くの教国国民が膝を突き、天に向かい祈りを捧げている。

 

「さて、教皇猊下、俺から言いたいことは多くありません。今後ボルグ教国はオーランド王国ホーンラビット伯爵領にかかわらないでください。

賠償金やら何やらの話があるようでしたら、オーランド王国王家が窓口になってくださいますのでそちらと交渉していただきますようお願いいたします。

元々距離の離れた他国、今後一生関わり合いになる必要もないでしょう。

それと一番気にされているのはこれですよね」

俺はそう言うと収納の腕輪からマルセル村で回収してきたあるモノを取り出します。

 

「こ、これは、間違いない、鑑定結果でも“祝福されし礼拝堂”となっている」

多分偉い人の一人が声を上げる、それと同時に手を合わせ拝み始める信者様方。

 

「<鑑定>していただけたのですか、手間が省けて助かります。せっかく女神様がお与えくださった祝福なんですけどね、騒ぎの元凶となってしまったことは大変悲しい事実です。貴重で素晴らしい物はその価値が高いほど多くの者を惹き付ける、人心を乱す事は女神様も本意ではないことでしょう。ということで<破砕>!!」

“グシャッ、ザザ~~”

俺が高らかに魔法名を唱えた瞬間、砂のように崩れ去る“祝福されし礼拝堂”。自分で開発した生活魔法はこの身に確りと染みついているのか、スキルを失った今でも全く問題なく使えるようです。

 

俺が行った凶行が信じられないのか、口を開けたまま呆然と固まる聖教会関係者の偉い人たち。でもこのままだとまだ残骸(砂)が聖遺物扱いされてよくないんですよね~。

 

「大福先生、お願いします。この残骸を塵一つ残さずキレイに食べちゃってください!!」

俺の言葉に袖口からするりと飛び出す漆黒の水饅頭、大福先生は砂山の頂点に上るといただきますとばかりに巨大化し、残骸を一瞬にして丸呑みにします。

 

“ブルブルブル♪”

とってもフルーティーってどんな味なんですか!? まぁ喜んでいただけたんなら結構なんですが。

 

「あ、あ、あ、あ、祝福されし礼拝堂が、世界に残すべき女神様の遺産が・・・」

う~ん、まだこんな事言ってるのか。本部長様にダメ出しされて死にそうになってたっていうのに心の芯まで欲深って言うか図太いって言うか。

 

「シルフィー、悪いけどあなた様に連絡入れてもらえる? 帰ったばかりで悪いんだけどちょっと来てほしいって」

俺の言葉に右腕に嵌められた腕輪が光り輝く。それは天から与えられし贈り物、神器は多くの力を貯え主人と共にありたいという意志の下一つの形を生むに至る。

 

「この神聖な気配、高位存在、だと。この者は一体・・・」

その場に現れた者は、穏やかな表情で慈愛の籠った瞳を向ける美しい女性。神の欠片を宿せし神聖器、シルフィー。

シルフィーはスッと天を指差すとニコリと笑みを浮かべ、再び腕輪に戻っていく。

 

その御方は再びの降臨を果たす。多くの天使様方と共にこの地に舞い降りたいと尊き天上人、この世の全ての労働者を慈しむ守護天使、天上界のOL(総合職)あなた様!!

 

『ケ~ビ~~~~ン!! この忙しいのに往復させるな~~~!! 私はこれからアーカイブの確認作業を行って今回の騒動の報告書を上げないといけないの、上位者権限による閲覧許可を貰っての作業なの、勝手に抜ける訳にはいかないのよ、あなたそこのところ分かってるの!!』

うわ~、あなた様、荒ぶる荒ぶる。これから完徹で報告書作成作業だったんすね、それは大変申し訳ない。

 

「おぉ、いと尊き天上の御方よ、お怒りをお鎮め下さい。これは私の不明、御方様にはご足労をお掛けし申し訳ないとは重々承知いたしておりますが、どうしてもはっきりとさせなければならない事態が発生したのでございます。

あっ、因みに今回の騒動の元凶であった祝福されし礼拝堂ですが、<破砕>して大福先生に食べてもらっちゃいましたんで、報告書にはそう書き記しておいてくださいね」

俺からの言葉に『はぁ!? 何してくれちゃってるのよ、女神様が祝福された建物を壊してスライムに食べさせたって、このケビン~~~!!』と再び荒ぶるあなた様。ドウドウドウ、血圧上がっちゃいますよ?

 

「まぁそれはもう終わったことなんでその辺で。それよりも用というのはこれなんですけどね」

俺はそう言うと、収納の腕輪から三つの武器を取り出します。それは聖剣バルボア、聖杖グランディア、聖弓アテナ、ボルグ教国の至宝である三種の神器。

 

「そ、それは、我々が代々大切に保管してきた女神様から賜ったボルグ教国の象徴!!」

教皇猊下が立ち上がり元気よく声を上げます。事態のまずさに気が付いたのか目が見開かれちゃってちょっと怖いです。

 

「はいはい、落ち着いて。それとこの神器はボルグ教国が賜ったものじゃないから、魔王という人類の脅威に対し、緊急避難的に貸し与えられてたものだから、本来であれば魔王討伐が確認された後女神様にお返ししなければいけない代物だから。そうですよね、あなた様」

俺の言葉に大きく頷く中級天使、その麗しの唇が開かれ天上界の真実が語られる。

 

『三種の神器は本来魔王討伐の後すぐに回収されるべき神器でした。過ぎたる力は人類の発展の妨げになる。これが人類が自らの努力で辿り着いた結果であるのならまだしも、天上界の都合で齎された神器であるのなら言うまでもありません。

ですがここでやはりこの騒ぎの元凶である上級天使の話が出てきます。あの者たちは魔王の発生に対し人類が対処する手段を残すべきであると主張、神器の使用を監視することを条件に教会による管理を黙認させたのです』

「でも今回魔王ではない者に対し神器が使用された、その様子は天上界でも確認されていますよね?」

 

『・・・はい、多くの者がその事実を確認しています』

そう言い悔しげに口を噤むあなた様。そう、この話は本来先に天使様方から確認が行われなければならない事だったんですものね、多分ことがことだけに居酒屋ケビンで話そうとしたのかな? でもそれだと俺が神器を抱えているって疑いを持ち続けられちゃうんですよね~。

 

「ならばこれは本来あるべき場所に返されなければなりません。いと尊き天上の御方様、この品々が確かに神器である事をお確かめいただきたく、お願い申し上げます」

俺が恭しく三種の神器を差し出すと、手に取られ『<管理者権限:鑑定>』と仰られるあなた様。

 

『確かに、これはボルグ教国に保管されていた三種の神器に間違いありません。ボルグ教国の信徒たちよ、長く管理を行い続けたこと感謝します。三種の神器は確かに天上界に戻されました』

あなた様の言葉と共に宙へ浮き、神々しい光に包まれる三種の神器。

 

「お、お待ちください天使様、それではボルグ教国の封印が、この世を滅ぼす厄災が!!」

途端慌てたように声を上げる教皇猊下、そんな教皇猊下の様子に困惑する聖教会関係者たち。

 

“パーーーッ”

眩い光と共に姿を消す三種の神器、あなた様は“これ以上何もないわよね!!”と言わんばかりの圧の籠った視線を俺に向けてきます。

俺はお疲れさまでしたとの思いを込めて、静かに一礼をしあなた様の労を労います。

 

『騒がせましたね、ボルグ教国の信徒たちよ。皆が女神様と共にあらんことを』

静かに浮き上がり再び飛び立っていくあなた様。去り際に届いた“分かってるんでしょうね、あん?”という念話が俺の心に突き刺さります。

いや、マジ本当、すみませんでした。

 

「あぁぁぁぁぁ、三種の神器が、世界を滅ぼす厄災が・・・」

その場に膝を突き頭を抱えガタガタ震える教皇猊下、俺はそんな教皇猊下の傍に近付き、耳元で小さく囁きます。

 

「ご安心ください教皇猊下、地下に封印された暗黒龍グラードの心臓と真祖ヴァンパイアクイーンの亡骸は俺の方で処分しておきました。呪物倉庫の大量の呪物も既に処分済みです。聖人様と大聖女様方の御遺体はすべて火葬させていただきました事をご了承ください。

それと地下の拷問部屋の壁に封じられていた聖職者のリッチエンペラーは、こちらで浄化させていただきました。教皇猊下がご心配されているような事態は発生いたしませんので、ご安心くださいますよう」

俺の言葉にギョッとした顔をする教皇猊下、何故その事をって実際に行ってきたからに決まってるじゃないですか、聖教会の闇って深過ぎですって。

 

「さて教皇猊下、一つお願いがあるんですよ。この俺、ケビン・ワイルドウッド男爵に掛けられた魔王認定は間違いであったと広く世界に知らしめていただきたいのです。大聖堂がこの有様ですから多少時間が掛かることは理解しますが、少なくとも今年中には完了していただきたい。

その状況次第でボルグ教国の誠意を測らせていただきましょう」(ニヤリ)

「わ、分かりました。すぐにでも取り掛からせていただきます」

そう言い俺に対し深々と頭を下げる教皇猊下、話の早い権力者は好きですよ。俺は満足げに飛び跳ねる大福先生を肩に乗せると、残月と共にその場を離れます。

 

向かった先は新しく広場に建てたボルグ教国資料館、建物の前にはシラベル司祭やシスターミレーヌ、イブリーナ・ボルグから解放された聖女フリージアたちが呆然とした表情で俺のことを見つめてきます。

 

「シラベル司祭、一通り終わりましたよ。いや~、今回は流石に大変でした、実際何度か死ぬかと思いましたし。流石は世界の番人ボルグ教国、一筋縄ではいきませんでした」

そう言いお道化る俺に、引き攣った笑みを浮かべる皆さん。えっと、今のはツッコミポイントですよ? 分かり易くボケたんだけど、スルーされると辛いと言いますか。

 

「ケビン・ワイルドウッド男爵様、寛大な措置をありがとうございます。ワイルドウッド男爵様がその気であればこの首都どころかボルグ教国全体を消し去ることも出来た事でしょう、それをなさらなかったことは偏にワイルドウッド男爵様の恩情、ボルグ教国聖教会の司祭の一人としてお礼申し上げます」

シラベル司祭の言葉に一斉に礼をする資料室の皆さん。うん、やめようか、その高位存在に対するような態度は俺の心にキツイ。

 

「皆さん、どうか頭を上げてください。皆さんが大変なのはこれからです。今宵の出来事は残さなければならないボルグ教国の歴史、そして魔王討伐軍に一体何が起きたのかも克明に調査しなければなりません。

資料室の仕事は多岐に亘るはずです、頑張ってください。

それとシラベル司祭、前に仰っていましたね、“我々は女神様に仕え教会に身を捧げると誓った者たち、たとえ教会が自分たちのことを不必要としたとしても、その思いを曲げることはない”と。

今宵を境に聖教会は大変革を迫られる、その事はこの場の皆が感じた事でしょう。大変なのはこれからです、挫けず己の信念を貫いてください。

あ、いたいた。異端審問官の皆さん、こっちに来てください。

彼らは魔王討伐軍が到着する前にマルセル村に潜入しようとした異端審問官の方々です。シラベル司祭とシスターミレーヌがよく知っている御神木様の下、マルセル村の礼拝堂で共に過ごし教えを受けた方々です。

聖教会の立て直しに尽力してくれるはずですので、共に頑張ってください」

「シラベル司祭、シスターミレーヌ、あの時は力になれずすまなかった。我々は御神木様と共に過ごし、自らの信仰を見つめ直す事が出来た、二人の報告が正しくボルグ教国聖教会の未来を案じてのものであったこともな。

聖女フリージア、お力になれなかったこと、心よりお詫びいたします。我々の言葉が信じるに値しないものであることは十分承知しております、その上で我々にも聖女フリージアのお力にならせていただきたい、どうかお願いいたします」

 

そう言い頭を下げる異端審問官たちに困惑する聖女フリージア。

 

「聖女フリージア、無理はしなくてもいい。君の人生は君のモノ、他の誰のものでもないのだから。これからは誰も教えてはくれない、でも君には彼女たちが残した多くの経験があるだろう?

道は開いたよ、後は君らしく頑張って。それじゃあね、バイバイ」

俺はそれだけを告げると彼らの前を後にする。

 

「勇者グロリアス・ブリッジ、聖女セレーナ・ピケル、大賢者バニア・ルーベル、剣聖コーネリア・マーベル、弓聖オルガノ、勇者パーティーの皆さんは揃ってるかな?」

俺からの声掛けに驚く勇者パーティーの皆さん。っていうかそんなに怯えないでくれる? ちょっと傷付くから。

 

「ケビン・ワイルドウッド男爵、様。私たちに何か」

「あぁ、無理して様付けしなくてもいいよ、そんなに大した者じゃないしね。ちょっと色々あってね、天使様方と知り合いだったりとんでもない存在と親しくしていたりするだけ、俺自体は辺境の雇われ男爵だから。

それよりも君たちを送っていくから、ただちょっと上級天使様にスキルを全部取り上げられちゃったんでね、特別な魔道具で移動してもらいます」

そう言い取り出した物は精霊の鍵、魔力障壁で扉を作り、鍵を差し込んで扉を開きます。

 

「「「「「なっ、これは・・・」」」」」

開かれた扉の向こうから洩れる昼間のような明かりに目を見開き驚く皆さん、俺は勇者パーティーに中に入るように促すと、残月に彼らの世話を頼み扉を閉めます。

 

「聖獣招来、いでよ、天魔神鳥黒鴉!!」

その呼び掛けに俺の身体から一条の光が天へ伸びると、三本の足を持つ光り輝く白色の巨大な鳥が星空より舞い降りる。

 

“クカァァァァァァァ”

広場に轟く聖獣の叫び、俺は巨大な輝く鳥の背中に飛び乗ると、サルーン騎士団長に言葉を向ける。

 

「サルーン騎士団長、今回の戦いはこれで終わりですが、あなた方の戦いはこれからだ。ボルグ教国は今宵瀬戸際を迎えた、この国は多くのものから目を逸らし誤魔化し続けた。その嘘も天使様方により白日の下に晒された。

今この国の多くの国民の信仰心が揺らいでいる、そんな彼らを導ける者はあの戦いを乗り越えた魔王討伐軍に参加したあなたたちだけだ。

混乱はこれからです、ボルグ教国の信頼は地に落ち、一からやり直さなければならない。あなた方の信仰心が本当に試されるのはこれからなのです。

勇者パーティーの皆さんはケビン・ワイルドウッドの名に懸けて必ず送り届けましょう、皆さんもお元気で」

“バサッ”

広がる翼、天魔神鳥黒鴉は大きく羽ばたくと、俺を背中に乗せたまま空高く飛び上がる。

空を見上げる多くの人々、天魔神鳥黒鴉は上空一万メートまで高度を上げると、勇者の故郷ナミビア王国に向け飛んでいくのだった。

 

「待って待って、目茶苦茶寒い、凍っちゃう!! もう少し先に行ったら合体でお願いします、スキルって偉大だわ」

俺は改めてスキルの便利さを感じつつ、覇魔混合で全身を覆い、ガタガタ震えながら寒さに耐えるのでした。

 




おはようございます。
いってらっしゃい。
by@aozora
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