「しかしどうやってあなたがケビンと接触を、あなたたち堕天使は女神様がお創りになった別区画で生活していたはず、地上世界との接点はないはずですが」
「おう、それなんだが、ケビンが私たちに対して祈りと貢物を捧げてくれたのが切っ掛けだな。あの時は驚いだぞ、それこそ信仰心を向けられるのなんて堕天してから初めての経験だったからな。
しかも闇属性魔力処理場の全職員に対してだったから大変よ、堕天使全員がお祭り騒ぎになっちまってな。
これは初めて分かった事なんだが、私たち堕天使であっても純粋な信仰心を向けられた場合しっかり力になるんだわ。それと少しだが神力に対する抵抗が生まれることが観測できた、これは大きな進歩だ。
この事はまだ観測段階で広く公表されていないが、より明確な形で成果が見られた際には正式に天上界でも発表されることになっている。
以前暗黒大陸の堕天使が天使に返り咲いた騒ぎがあっただろう? あの時の衝撃は私たち堕天使の間に深く残っていてな、ただでさえ好感度が高かったケビンから祈りと共に貢物まで届けられるようになったんだ、私たちがケビンと交流を持とうとしても何ら不思議はないだろう?」
所長の言葉に驚き顔になる本部長様。っていうか今の話は俺も初耳だったんですけど? 俺的にはいつもケーナが闇属性魔力を送りまくってるんで、お世話になっている闇属性魔力処理場の皆さんに少しでも感謝の気持ちを伝えられたらと、信仰と共に村の農産物やらビッグワーム干し肉や角無しホーンラビット肉なんかを捧げていただけなんですけどね。
ただ前にあなた様に堕天使は天上界の食品を口に出来ないって話を聞いていたから、光属性魔力が強そうな癒し草や蜂蜜なんかは避けるようにしましたけど。
「ケビン、あなたいつの間にそんなことをしてたのよ、話を聞いてなかったからびっくりしたじゃない」
「いやいや、あなた様には随分前に闇属性魔力処理場の皆さんに感謝の気持ちを送るにはどうしたらいいんですかねってそれとなく相談したことがあったじゃないですか。
実際は礼拝堂で祈りを捧げて女神様像の前に貢物を置いたらちゃんと送る事が出来たんで、これならもっと早くから祈りを捧げればよかったと思ったくらい呆気ないものだったんですが」
「イヤイヤイヤ、普通無理だから、堕天使たちの区画は女神様が特別にお創りになられた場所で、私たち天使でも無暗に近寄ることの出来ない空間だから。あの区画に入るには上級天使様以上の力と許可が必要だから」
「・・・所長、やっぱり俺が処理場見学に行ったのってまずかったんじゃないですか? 所長が一度見学に来いっていうから伺いましたけど、あそこって結構不味い場所だったんじゃないんですか?」
「いや~、そうはいってもうちの職員たちが一度ケビンに会って直接感謝の言葉を伝えたいって言うんだから仕方がないだろうが。アイツらがまともに感情を示したのなんか数万年振りなんだからよ、上司としては叶えてやりたいじゃねえか」
ウグッ、相変わらず所長は男前。こんな上司だったら一生付いていきたくなるんだろうな~、闇属性魔力処理場の職員さんたちの気持ちが分かるわ~。
「それはそうと、そっちのお嬢ちゃんだよ。トワイライトっていったか、ケビンの名付けで存在が安定化したみたいだが、大丈夫なのか? 強過ぎる闇属性魔力は周囲を汚染する、この事は過去の魔王の事例からもはっきりしている事だ。
今回トワイライトは天上界中の天使たちの内に秘められた負の感情、強力な闇の力の素を集積することで、恐るべき闇属性の存在へと生まれ変わった。それは素体となる身体を純粋な闇属性魔力の結晶体である魔王デビルトレントの芯材によって造り出されたトワイライトだからこそできた芸当、制御機構である生活支援機構の働きにより暴走することなく奇跡的な安定を見せることとなった。
だがその全てが初めてのことだ、今のトワイライトは私たちからすればいつ弾けるとも知れない爆弾のように見えているってことだ、ケビンがいいと言うのならうちの処理場で引き受けてもいいんだが」
所長からの言葉はまさかのトワイライトのスカウト、天上人たちからすればトワイライトが危険物のように見えていたとしても不思議じゃない。
でもトワイライトってばすっかり安定しちゃってるんですよね~。暴走の兆しも全く見えないし、むしろ本当に闇属性魔力の依り代なのって聞きたくなるくらいには魔力の漏れが一切ない。
「・・・そうね、ここはちゃんと見ないといけないのよね。何かステータス確認を嫌がるケビンの気持ちが分かったような気がするわ。
大聖堂で何が起きたのかは知ることが出来たし、このまま天上界に帰っても何の問題もないような気はするんだけど、駄目なんでしょうね。
トワイライト、悪いけどあなたのステータスを調べさせてもらうわよ? <管理者権限:ステータスオープン:モニター表示>」
“ブオンッ”
それは再び中空に表れた大きなステータス画面、その場の者たちの視線が一斉にトワイライトのステータスに注がれる。
名前 トワイライト
種族 降臨人形(暗黒)
年齢 0歳
スキル
社畜の逆襲 時空支配 武帝 魔帝(闇) 叡智 亜空間収納 亜神化(闇)
魔法適性
闇
称号 社畜の女神 上級天使を調伏せし者
「「「「・・・・・」」」」
「トワイライト、神様だって」
「そんな訳ないでしょうが!! よく見なさいよ、人形だから、ただの依り代だから。ほら、アレよ、偶像崇拝してたら神像がどことなく神々しくなっちゃったみたいな? よくあるよくある」
何かトワイライトが自己弁護に走ってますが、ヤバいよねってことには違いないかと。でもまぁ今すぐどうのってこともなさそうだしいいのかな?
「いい訳ないから、称号に女神って付いちゃってるから!! 一つずつ確認していくからね」
<種族>
<降臨人形(暗黒)>
神々の依り代に天の意思が宿り固定化した、暗黒なる神聖存在。天上人の心に宿る負の感情が濃縮され、形を得ることで具現化した社畜の象徴。
<スキル>
<社畜の逆襲>
不眠不休は当たり前、どのような過酷な状況でも決して挫けず倒れず。不倒の身体と不屈の精神を有し、限界を超えたその先の限界を無理やりこじ開ける。
<時空支配>
時と空間のすべてを支配する。その者に干渉できぬ事象は存在しない。
<武帝>
武の到達点、武の頂。
<魔帝(闇)>
魔法の到達点、魔法の頂。
<叡智>
全てを知り、全てを予測し、全てを管理する。
<亜空間収納>
亜空間を収納先として利用、生物・物質・魔力等、それら全てを収納可能。
<亜神化>
その者神に非ず、されど神の如き何か。
「やっぱり神様じゃん」
「神に非ずって書いてあるでしょうが、下手なことは言わない!!」
トワイライトの奴、抵抗するする。下手に神様認定された日にはブラックな職場に逆戻りですからね、まぁ今は居酒屋の店員なんですけど。
でも<亜神化>はヤバいよな~、“神の如き何か”って何? トワイライトってば上級天使の攻撃を軽く相殺してたんですけど? あの上級天使、どれだけ恨み買ってたんだか。
「なぁ**#@、トワイライトの存在って大丈夫なのか? この空間にいる分には地上世界に影響が及ぶ事もないだろうけどよ」
「扱いとしては聖転進化を果たした魔物と同等かと、性質は闇属性魔力に偏っていますが、ケビンと同じ重要監視対象として登録しておきましょう」
何か所長と本部長様が大事なお話をされているようですが、俺に出来ることはないですし、ことの流れを見守るといたしましょう。
「ケビン、そういえば大福たちはどうなっているの? あれだけのことをしでかしておいて何の変化もないってことはないでしょう?」
「えっと、普通にしてますよ? 一応何か言われるかもしれないと思って傍にいてもらってますけど」
“バッ”
俺は右手を前に伸ばすと、掌を上に向けて変身の呪文を唱える。
「我を守護せし盟友よ、今ここに真の姿を現せ。武装合体、アーマードダイフクーン!!」
“ニュインッ、ポヨンッポヨ~ン♪ ガバーッ”
袖口から現れた漆黒の何かが俺の掌の上でスライムの形を作り出す。軽く飛び跳ねた漆黒のスライムは大きく広がり俺の身体を包み込むと、俺を全身鎧姿の戦士へと変貌させる。
「武装合体、アーマードダイフクーン、ここに推参!!」
「はいはい、分かったから。勇者病<仮性>重症患者は少し大人しくしましょうね~。 <管理者権限:ステータスオープン:モニター表示>」
名前 大福
年齢 十五歳
種族 天魔スライム(New)
スキル
魔力支配 空間支配 粘体自在⇒存在自在(New) 学習進化 環境適応⇒全環境適応(New) 美食 無限胃袋⇒亜空間支配(New) 龍装⇒龍化(New) 神聖魔法(New)
魔法適性
全属性
称号
進化せし者 共に歩みし者 勇者の師匠 スライムの王 スライムの神(New) 上級天使を調伏せし者(New)
<種族>
<天魔スライム>
天と魔を統べるスライム。世界の根源に連なる究極の存在。
<スキル>
<存在自在>
我思う故に我あり、どのような存在にもなれる。
<全環境適応>
我は我であり我である、どのような環境であろうと存在可能。
<亜空間支配>
自己の世界を持つ。取り込んだ物は全て自己の世界で管理される。
<龍化>
スライムでありながらドラゴンでもある。
「・・・ケビン、大福は外に出さない方がいいんじゃないかな? 世界のバランスが崩れると思うんだけど。っていうか十分天上界の脅威なんですけど? これどう報告したらいいのよ~~~!!」
あっ、あなた様が壊れた。所長が「これが元祖社畜のノリツッコミ、いいものを見せてもらった!!」とか言ってるし。
俺が「変身解除」と呟くと全身鎧から小型スライム体型に変わった大福が、カウンターテーブルの上に乗ってドヤ顔を見せます。そんな大福に対しどう対処したらよいものかと難しい表情を向ける天使様方。
“でも大福先生は地上世界の魔物だから、危なそうって理由だけで天使が勝手に処分しちゃ駄目なんじゃなかったっけ? 都市や国家を呑み込むような暴走行為を起こしていれば別だろうけど、今のところ天上界に貢献しかしてないし、女神様のお許しが出ないと思いますよ?”
俺の心の声が聞こえたのか頭を抱える天使様方、偉い人たちは大変だ。
「あなた様、黒鴉とシルフィーも鑑定しておきます? 今回は随分と頑張ってくれたんで、もしかしたら何か変化があるかもしれませんし」
俺からの言葉に“いじめ? それって私に対するいじめ?”といった目を向けてくるあなた様。滅相もございません、私は敬虔なあなた様の信者でございます。お役目のフォローも信心からでございますよ?
「クッ、何処までも口の回る。分かったわよ、ちゃんと見るから魔剣黒鴉と闇属性魔力回収の腕輪を出しなさいよ!!」
うわ~、あなた様が逆切れしちゃったよ。まぁそれでもしっかり仕事を熟す辺りは流石初代シャチクイーンといったところか。
“スパーーーン”
「%&’()R'*+&%$#」
あなた様酷い、ちょっとしたお茶目じゃないか。そのハリセン、俺には特効なのよ!?
俺は頭を抱えてもだえ苦しみながらも、黒鴉とシルフィーに姿を見せるよう呼び掛けます。
“スーーーーッ”
俺の身体から抜け出すや頭を優しく撫でてくれる鎧武者姿の女性。
“フワッ”
淡い光と共に中空に顕現し、ゆっくりと降り立つ笑みを湛えた女神。
「・・・はぁ!? ちょっとケビン、この二柱の神性存在は何よ、ちゃんと説明しなさい!!」
「え、だから黒鴉とシルフィー。上級天使の神力を吸いまくったからか、こんな感じになっちゃいました。
とはいっても上級天使の神力を吸っただけですから、あなた様のような本物の神性存在にはとてもとても」
俺の言葉に何故か頭を抱えるあなた様、そんなに焦る事ないと思うんだけど、どうなさったんだか。
「落ち着きなさい私、相手はケビン、これくらいのことは想定して当然なのよ。<管理者権限:ステータスオープン:モニター表示>」
何故かご自身に気合いを入れられるあなた様、中空に浮かぶステータス画面が黒鴉とシルフィーのものに切り替わります。
名前:黒鴉
種族:天魔聖神鳥(New)
年齢:不明
スキル
魔力支配 重力支配 飛行 空間支配 天魔混合 暴食(魔力) 精霊化⇒聖神化(New) 武具化 憑依一体⇒不可分合一(New) 神聖魔法(New)
魔法適性
全属性
称号
混沌より産まれし者 暴食(魔力)の魔王 封印されし者 理不尽に付き従いし者 進化せし者 天昇せし者(New) 上級天使を調伏せし者(New)
<種族>
<天魔聖神鳥>
光にも闇にも神は宿る、すべては女神の泡沫の夢であるがゆえに。闇より生まれ天に届きし神鳥は、聖も魔も併せ持つ超常なる神性存在として世界を見守る。
<スキル>
<聖神化>
それはあたかも聖なる神の如きもの。神聖なる神鳥。
<不可分合一>
別れ得ぬ完全なる融合。
名前:シルフィー(付喪神)
詳細:闇属性魔力回収装置である神聖器に宿りし神性存在。自身の認めし者の身を助け、魔力・神力の保存や供給を行う。
「・・・**#@様、これってどう報告しましょうか?」
「・・・そのまま$$%&の言葉で報告書を上げてくれればいいでしょう。私が同席したことを証言すれば真偽を問われる事もありませんので」
天使様方が混乱しておられます。神性存在って要は神様だよね? 自然神とかそういう扱いになるのかな? まぁ問題があったら何か言われるでしょう。
「ところで黒鴉、何かスキルに不穏な文言があったんだけどさ、<不可分合一>の“別れ得ぬ完全なる融合”ってなに? 俺と黒鴉って一つになっちゃったってこと?」
“カーーーーー♪”
嬉しげな黒鴉の返事、どうやら
カウンター席に座り頭を抱えられる三柱の天使様と、その様子を楽しげに眺める堕天使様。そんなある種混沌とした店内で、“これってヤバくね!?”と一人混乱に陥る俺なのでありました。
おはようございます。
いってらっしゃい。
by@aozora