転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第955話 転生勇者、辺境伯様にご挨拶する

「エミリー、ジェイク君、ジミー君、フィリーちゃん、お疲れ様。無事に鑑定の儀式も終わったみたいですね。

この後はグロリア辺境伯閣下に王都学園の無事な卒業のお礼も兼ねてご挨拶に向かいます。これも貴族の務めと思って頑張ってください」

別室にて鑑定の儀式を済ませ大聖堂に戻った俺たちを待っていたものは、ホーンラビット伯爵閣下の労いの言葉と次の予定の知らせだった。

 

「あの、ホーンラビット伯爵閣下、俺たちの鑑定の結果はここでお見せしなくてもいいのでしょうか?」

「ジェイク君、ホーンラビット伯爵家独立領を治める者としてその気持ちは嬉しく受け取ります。ですが鑑定の儀式により齎されたステータス結果は本来自身の胸に秘めるもの、無暗に多くの者の前で晒すべきものではないのですよ。

立場上グロリア辺境伯閣下にはお知らせしなければなりませんが、後で宿に戻ってから家族にだけ見せてあげてください。

トーマスさん、マリアさん、ジェイク君のステータスが気になるとは思いますが、後の楽しみとして今は我慢してくださいますようお願いいたします」

ホーンラビット伯爵閣下はそう言いトーマスお父さんとマリアお母さんに笑顔を向けると、チラリと横を向き、ケビンお兄ちゃんに目配せをするのだった。

 

「オホンッ、ホーンラビット伯爵閣下、ドラゴンロード男爵殿、ソード男爵殿、クロー騎士爵殿、それとご家族の皆様。本日はお子様方の旅立ちの儀、誠におめでとうございます。

彼らが無事今日のこの良き日を迎えることができたのは、偏に皆様方が彼らを見守り続けてきたからこそ。彼らの成長が皆様方のお陰である事は誰の異論も許さぬ事実であります。

これからは彼らを一人の大人として迎え入れ、彼らの人生を応援していただきたい。これは彼らより先に旅立ちの儀を迎えることの出来た者の願いであります。

 

メルビン司祭長様、領都教会の皆様方、本日はホーンラビット伯爵家独立領の若者たちの旅立ちの儀をお見守り下さり、誠にありがとうございます。彼らはこれより一人の大人として、社会の一員として歩み始めます。

彼らが道に迷い教会の扉を叩いた際は、女神様のお導きをお与え下さいますよう、お願い申し上げます」

ケビンお兄ちゃんは一通りの口上を述べた後、その場で深く一礼をする。こうして旅立ちの儀は終了し、俺たちは教会の大聖堂を後にすることになったのであった。

 

「あぁ、ヘンリー・ドラゴンロード男爵とボビー・ソード男爵、それとトーマス・クロー騎士爵はホーンラビット伯爵閣下のお付きの仕事がありますから馬車の前でお待ちください。

他のご家族の皆さんはどうぞ領都でのお買い物をお楽しみください」

「なっ、ちょっと待てケビン、俺はミッシェルちゃんの新しい服をだな」

「そうだぞ、チェリーちゃんとの交流を邪魔するなんてひどい真似はだな」

ケビンお兄ちゃんの言葉に透かさず抗議の声を上げるヘンリー師匠とトーマスお父さん。気持ちは分かる、俺だってチェリーちゃんのお買い物に一緒したいのをグッと我慢しているんだ。

だからこそ敢えて言おう、絶対に逃がさん!!

 

「ハハハハ、何を仰います、我々はホーンラビット伯爵閣下にお仕えする身、しかも我が子の晴れの舞台を応援しないでどうするんですか。

安心してください、奥様やお子様方には白騎士が付いております。彼らは優秀です、きっとご家族に満足の行く買い物を提供してくれることでしょう。白騎士たち、皆様のことは任せたぞ」

「「「「ハッ、お任せください、御主人様」」」」

白騎士たちのエスコートで馬車に乗り込んでいくマリアお母さんとチェリーちゃん。二台の馬車に同乗した家族たちが、楽しげに手を振りながら大聖堂の前から離れていく。

 

「それでは我々も参りましょうか。父ヘンリーは若者たちの馬車の御者をお願いします、俺はホーンラビット伯爵閣下の馬車を動かしますんで」

「クッ、分った。ジミー、ジェイク君、エミリーお嬢様、フィリーちゃん、馬車に乗ってくれるか? これからグロリア辺境伯家居城に向かう」

「「「「はい、よろしくお願いします」」」」

 

トーマスお父さん、授けの儀の時グロリア辺境伯閣下の前で目茶苦茶緊張してたんだよな。確かあの時はお城に泊まることになって宿には帰ってこなかったんだっけ、家に帰ってからしつこく愚痴を聞かされたんだった。

でも大丈夫、今回はヘンリー師匠とボビー師匠もいるから。きっと何とかなるって。

俺はヘンリー師匠に一礼すると、トーマスお父さんにニヤリと笑みを向けてから馬車に乗り込んでいくのだった。

 

――――――――――――――

 

「エミリー嬢、ジェイク殿、ジミー君、フィリー嬢、無事に旅立ちの儀を 迎えることができたことを心から祝福しよう。

ドレイク・ホーンラビット伯爵殿、エミリー嬢が無事に旅立ちの儀を迎えることができたことは大変喜ばしい。グロリア辺境伯家当主として、伯父として、心ばかりの祝いの品を送らせてもらおう」

グロリア辺境伯家居城の来賓室に通された俺たちは、当主タスマニア・フォン・グロリア辺境伯閣下の歓迎を受け、祝いの言葉を贈られることとなった。

ヘンリー師匠とボビー師匠は共に高位冒険者としてお貴族様のパーティーにも何度も出席していただけのことはあり、堂々とした態度でその場に佇んでいる。そんな中ただ一人ガッチガチに緊張し身体を硬直させているトーマスお父さん、その平民ならではの反応、物凄く分かります。

多分俺もトーマスお父さんの立場だったら同じ反応を示したんだろうな~。

 

<勇者>の職業を授かったことで王都学園に通うことになって、アルデンティア第四王子殿下やフレアリーズ第五王女殿下といった雲の上の方々とお言葉を交わすようになって。

今思い返してもとんでもない三年間だったよな~。だって俺ってただの農家の小倅だよ? 一年戦争の絡みで家族揃ってホーンラビット伯爵家の騎士になっているけど、家の生活なんてほとんど変わってないんだよ?

そんな俺たちがグロリア辺境伯閣下の前に立ってお話をお伺いしている、普通に意味が分からないんだけど。

 

そんでもってトーマスお父様、多分気付いてないんだろうけど俺とエミリーが結婚したらグロリア辺境伯閣下とは親戚になります。これを言ったらトーマスお父さん、真っ白に燃え尽きちゃうんだろうな~。

よし、余計なことは言わないでおこう。俺はグロリア辺境伯閣下に三年間の王都学園での生活を支えて下さったことへのお礼を述べるってことで。

 

「グロリア辺境伯閣下、祝いの言葉をいただき感謝申し上げます。三年間の王都学園での生活を無事に過ごすことができ、こうして旅立ちの儀を迎えることができたのは全てグロリア辺境伯閣下の後ろ盾があったればこそ。ホーンラビット伯爵家独立領より旅立った者の代表として、エミリー・ホーンラビット、心よりお礼申し上げます」

““““ザッ””””

エミリーがお礼の口上を述べるのに合わせ、俺とジミーとフィリーはグロリア辺境伯閣下に騎士の礼を向ける。

 

そういえばフィリーはホーンラビット伯爵家の騎士だけど、ジミーだけそういった身分を持ってないんだよな。まぁ王都学園を卒業したらその足で銀級冒険者の登録を済ませるから問題ないんだけど、ジミーの奴、ドラゴンロード男爵家を継がないんだろうか?

マルセル村に帰って早々ボビー師匠のところに行ってフィリーとディアとの婚約を済ませたって言ってたから婿入りするって手もあるし、そうなったらソード男爵家を継ぐって手もあるよな。

ジミーはミッシェルちゃんを溺愛しているから爵位はミッシェルちゃんにとか考えていても不思議じゃないしね。

 

「うむ、君たちの感謝の言葉を受け取ろう。まぁ座り給え、旅立ちの儀のこと、学園生活のことを聞かせて欲しい」

グロリア辺境伯閣下はテーブル席を指し示すと席に着くように促してくる。俺たちはホーンラビット伯爵閣下に視線を向けお伺いを立てると、その指示に従いテーブル席に向かうのだった。

 

“スーーーーッ”

「こちらは教会で発行されました鑑定書になります。私もまだ中身を確認していないのですが、三年間の彼らの成長の証、まずはグロリア辺境伯閣下にご覧いただこうとお持ちいたしました」

俺たちの鑑定書はお城に到着した時に教会で渡された封筒ごとホーンラビット伯爵閣下に渡していた。一人一人が差し出しても良かったんだろうけど、こうしたものはホーンラビット伯爵家独立領の代表であるホーンラビット伯爵閣下が渡した方が貴族間の力関係を示す行為としてふさわしいという判断が働いてのことであった。

 

うん、よく分からない。言われてみればなるほど納得なんだけど、咄嗟にそうした政治的配慮に気が付かない。

これっていずれ厄介事に巻き込まれるフラグだよね、お貴族様とかお金持ち相手って、こういった行動での配慮が凄く重要だったりするし。

ジミー、絶対にラビアナお嬢様を落とすんだ、お前ならできる。ホーンラビット伯爵閣下の胃痛が更に大変なことになるかもしれないけど、俺たちの命が掛かってるんだ、何とかしてください。

 

俺は“紳士を作るには三代かかる”ということわざを思い出し、こういった貴族的思考は生まれた時からの環境が大きいんだなと改めて思い知らされるのだった。(ケビンお兄ちゃんのことは考えないものとする。ケビンお兄ちゃんはケビンお兄ちゃんだから)

 

「ほう、これが<聖女>エミリー嬢と<勇者>ジェイク殿のステータスか。これは何とも」

テーブルの上に四枚の<詳細人物鑑定>の鑑定書を並べ、複雑な表情を浮かべるグロリア辺境伯閣下。

 

<鑑定書>

 

名前 エミリー・ホーンラビット

年齢 十五歳

種族 普人族

職業 聖女(武)

スキル

祈願 棒聖 魔力支配 身体支配 神聖拳武<剛腕無双 鎧袖一触 絶対貫通 手加減(極) 聖拳術 回復術(New) 破壊術(New) 蘇生術(New)を統合>(New)

魔法適性

光

 

称号

一途なる者(*)

 

加護

拳神の加護 武神の加護 愛神の加護 戦女神の加護(New) 美の女神の加護(New) 狩猟神の加護(New)

 

<再鑑定>

<神聖拳武>

詳細:その拳には神が宿る。破壊は再生であり再生は破壊である。あるがまま、思うがまま、全ては拳に始まり拳に終わる。

 

ヤバい、エミリーのステータスが武人だ。拳神の加護、武神の加護、戦女神の加護、狩猟神の加護、エミリーが一体何と戦ってるのかが分からない。しかも何故か回復系の神の加護がないってどういうこと? 治療は? 癒しは?

統合スキルの<神聖拳武>、説明が世紀末伝説~!!

そういえば称号を纏めてもらったって言ってたけど、一体どんな称号をまとめたんだろう?

声を潜めて「<鑑定:称号>」っと。

 

<鑑定:称号>

<一途なる者>

スライムの王の弟子⇒スライム神の弟子(New) 理不尽の弟子⇒名状し難き何かの弟子(New) 愛拳の調教者⇒愛拳の支配者(New) 一途なる思い⇒初志貫徹の勝者(New) 女性神たちの応援 王都をドラゴンより守りし者(New) 魔王討伐軍を撃退せし者(New)

 

・・・そうか~、俺って調教された上に支配されちゃってたのか~。よし、見なかったことにしよう。どうやら勝敗は決してるみたいだしね、余計な波風は立てるべきじゃないしね。

 

<鑑定書>

 

名前 フィリー・ソード

年齢 十五歳

種族 普人族

職業 賢者

スキル

杖術 意思疎通 魔力支配 空間支配<空間把握⇒空間掌握(New) 状況判断⇒未来予測(New)を統合>(New) 身体支配<身体強化 空中歩行 立体起動(New) 身体操作(New) 金剛力を統合>(New) 幻影魔法 念話 精霊術(New)

魔法適性

水 風 土 光

 

称号

ゴブリンの呪いを受けし者 ゴブリンの呪いから解放されし者 スライムの王の弟子⇒スライム神の弟子(New) 理不尽の弟子⇒名状し難き何かの弟子(New) 大賢者の弟子 精霊の友⇒精霊と共に歩みし者(New) 聖者の従者 王都をドラゴンより守りし者(New) 魔王討伐軍を撃退せし者(New)

 

加護

なし

 

フィリーは立派に成長している。普通に凄い称号を持ってるし、グロリア辺境伯閣下も驚かれているはず。だってドラゴン退けてるし、全体的におかしくないし、唯々素晴らしい。

 

まぁ俺のステータスは・・・称号がおかしいけどスキル自体は。何故かグロリア辺境伯閣下が眉間に皺を寄せて俺のことを凝視されているけど、別に世界を救えみたいな神託は受けてないっすからね。

そんでジミーのステータスだけど。

 

名前 ジミー・ドラゴンロード

年齢 十五歳

種族 普人族

職業 剣天

スキル

魔力支配 身体支配 剣天武天<剣理 明鏡止水 鎧袖一触 神剣奥義(New)神武奥義(New) 人身阿修羅(New) 自己回復⇒自己再生(New)を統合>(New)生活魔法 法術 魔物の友 ポケット

魔法適性

なし

 

称号

剣と共に生きし者(*)

 

加護

管理神の加護

 

<再鑑定>

<剣天武天>

詳細:剣の道で天に至り、武の道で天に至る。人の身で神に挑み、神を下す、故に阿修羅。その身に宿りしは真理、天道は常に共にあり。

 

えっと、うん? ごめん、よく分からん。ジミーってば人間辞めちゃった? でもしつこいくらいに「人」って強調してるし、人の可能性を示しているってこと?

でも神様下しちゃってるよ? それってヤバくね?

でもケビンお兄ちゃん、そんなジミーを引っ叩いてたんだけど? よし考えるのは止めよう、今日の昼食は何かな~。

 

そんで毒を食らわば皿まで、ジミーの称号をば拝見させていただきます。「<鑑定:称号>」

 

<鑑定:称号>

<剣と共に生きし者>

スライムの王の弟子⇒スライム神の弟子(New) 理不尽の弟子⇒名状し難き何かの弟子(New) 剣術の修羅 草原の救世主 龍人族を凌駕せし者 霊獣を討伐せし者 鬼神を討ち倒せし者 魔国総合武術大会優勝者 元魔王軍四天王 神々の注目 鬼神の祝福を受けし者 愛神の寵愛を受けし者 神々に挑みし者 霊亀を従わせし者(New) 王都武術大会準優勝者(New) 王都をドラゴンより守りし者(New) 魔王討伐軍を撃退せし者(New) 種族を越えしジゴロ(New) 神々を打ち倒せし者(New)

 

「ブホッ、す、すみません、ホーンラビット伯爵閣下!!」

イテテテテテ、腹筋が、腹筋が、種族を越えしジゴロ~~~~~!!

こんなの無理、誰か助けて~~~!!

他のとんでも称号を遥かに凌駕するパワーワード、俺は未だにダメージを喰らい続ける腹筋を押さえながら、グロリア辺境伯閣下の前で吹き出しそうになっている危険な状況を必死になって堪えるのだった。

 




おはようございます。
いってらっしゃい。
by@aozora
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