Qソドー島で一番活気のある場所とは。
とあるタンク機関車は言った。
「大きな駅だろ、毎日毎日色んな列車が旅に出たり、やってきているんだから」
とあるテンダー機関車は言った。
「それはもちろん港だね!!漁船に客船、貨物船など毎日来ているんだから」
そしてとある小さな機関車は言った。
「ソドー整備工場こそこの島1番の活気のある場所だよ!!日夜問わず君達のために働くからね!!」
■整備工場
ここはクロバンズ・ゲートにある、ソドー島一の大きさを誇る整備工場。常に故障や破損した機関車を修理するため灯火の消えない場所だ。
そこで俺、アルバルドは修理中の2台の機関車を前に項垂れていた。
その2台はつい先日、いたずら貨車たちによって脱線してしまい修理が必要になってしまった俺と、長期間放置されていたせいで錆と苔に覆われていた【アイ】という蒸気機関車だ。
「はぁ…………」
BeeeP!!BeeeP!!
ため息を吐いて頭を抱えていると、変わった汽笛を鳴らしながら1台の小さな機関車が、シリンダー等の部品を載っけた貨車を引っ張ってやって来た。
「コラっ!!そんな所で項垂れていたら仕事の邪魔だろ!!大人しく休憩室に入っていたら?」
俺たち
「あっ、あぁわかっているさ、ライザ……」
思わず目を逸らす。
彼女は【ライザ】、このソドー整備工場の
俺が目を逸らした主な理由は、彼女の服装がかなり凄いのだ。普通、作業着は肌を極力出さないのが鉄則なのだが、彼女はその真逆を行く。
二の腕や肩はもちろんおへそまで出ている上に、下はホットパンツとブーツによってムチムチとした太ももが強調されているのだ。
それでいてこの火花飛び散る中を、平気な顔をして走り回っているんだから凄いとしか言いようがない。
「あっ!!、もしかして……"アイちゃん”がいるから?」ニヤニヤ
「……………」イラァ
トーマスのソレとはまた違った嫌な笑みを浮かべながらコッチを見てくる。
それに対抗して俺はジロリと睨みつけるが真っ赤な顔が邪魔をするのかあまり効果はなかった。
「はぁ、わかってる、わかってるんだよ……
ちゃんと話さないといけないってことは……」
「……………」ニヤニヤ
頭を抱え、嘆くように吐き出す俺とは裏腹にライザはどんどんニコニコ顔になっていく。
俺が悩んでいる原因を知っているからだろう。
俺の悩み、それは――
「どうやって話せばいいのか、わからん………」
「アハハハハハハハハハハwwww」
女性と何を話せば良いのか分からないことだ。
えっ、ライザはって?ライザはなんとなく男友達っぽい感覚なんだよなぁ……その事言ったら思いっきりスパナで殴られたけど……
「でも、そろそろ話した方が良くない?もう一週間よ、ハット卿に頼まれてから」
「………………はぁ、腹くくるか……」
「よしっ!!行ってこい!!」バシッ
「後でちゃんと話してるか、見に行くからな!!」
「イテッ!?……フンッ」
思いっきり背中を叩かれ痛みが走るが、それと同時に少しだけ勇気がわく。親指をたててドヤ顔しているのと、感謝するのは癪に障るので鼻を鳴らす程度に反応してやる。
あぁ、痛えなぁ、多分今の顔と同じぐらい真っ赤になっているよなぁ?
■□■□■□
・人間体名は『星野アイ』
・機関車名は『アイ』
・女性である
・出身国はニホン
・気づいたら森の中にいた
俺が聞いて知っている情報はこれだけだ。
好きな物も、何もかも俺は知らない。
ハット卿は色々話をして知っているらしいのだが、俺には何も教えてくれ無かった。
多分、あの依頼が関係している。
俺はハット卿から彼女の教育係を頼まれた。ほとんど新人にも関わらず、「トーマスに教育したエドワード辺りがいいと思います」と進言したが、何かを確信したように俺に命じた。
(にしても、あの時の最後の言葉はどういう意味だったんだ?「嘘に気をつけろ」って……)
ピリッ
「ウグッ、まだお腹が痛むなぁ……」
思考をお腹から発せられた痛みによって中断される。炭水車が完全に壊されているからか、胃が何かに突き刺されたような痛みが走る。
お腹をゆっくり撫でるが収まらない。
そうこうしているうちに休憩室の扉へたどり着いてしまった。お腹の痛みによって気分が憂鬱になりつつもドアノブへ手を伸ばす。
この時、ちゃんとノックをしていたら、俺達の関係は変わっていたのだろうか?まぁ、呪いのようにこの後の人生も苦しめてくるんだが……
ガチャ
「失礼しまー……」
「…………え?/////」ボフッ
言葉が止まる。呼吸を忘れ、目の前の事を処理するのに頭の全てがフル回転する。
目的の人物は休憩室に、確かに居た。ただし、着替えの途中だったのか上半身は下着だけで……
美の神すら嫉妬してしまう程整った顔は、熟れた林檎のように真っ赤になってこちらを見ている。
処女雪を思わせるような肌に恐ろしく細い手足は触っただけで崩れてしまいそうな印象を与える。
それでありながら、ズボンの上からでも分かるハリのあるお尻に、紫色のブラが包んでいる胸はその存在を主張していた。
「……………ブハァッ」パッーン
「?!?!」
そこまで認知した瞬間、何かが破裂した音とともに鼻から何か熱い液体が流れ、意識が落ちた。
「えぇぇ…………」
■□■□■□
天に星が輝き、月はこの草原を優しく照らすただ一つの光源としてそこに存在する。
ここは何処だろう?
まぁ、何処でもいいや……
ここは墓場なんだろう?
昔…むかし?……まぁどっかで聞いた話だ…
皆、空へ還っていく。
ならば、きっとここは大地を走る者たちの安息の地。空を飛ばぬものはみな大地へ還る。
意識が微睡んでいく……
天を仰ぎ見る、星は魂か、星は運命だ。
色とりどりの星が動き、新たな星座を形作る。
Pooooo!!Poooooo!!!!
どこからか汽笛が鳴る。
視界の端に1台のタンク機関車と、可愛らしいドレスを来た少女が見えた気がした。
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーーーー
「ーほーーーーるーー?!」
「大丈ーーわたーーーだから」
少しづつ意識が闇の中から浮上する。
少し、不思議なものを見た気がするが
「それーーー!!ーー2の!!」
「はーーくーーてえ!?」
ただ、今は無性に星が見たくなった。
そろそろ起きれるか?誰か叫んでいるし。
さて、目よひらーー
「3ッ!!」
「へっ?」「あっ!」
視界いっぱいに写るレンチ。
俺が認識できたのはそれだけだった。
ガンッ!?!?!?
額に衝撃が走り、目に星が散る。
俺が見たかった星はこれじゃない……
「グフッ………」
「・・・・やりすぎちゃった」テヘペロ
「えええええええ?!?!」
テヘペロじゃねぇよ!!
閑話休題
「何か申し開きはあるか?ライザ」アタマオサエー
どくどくと流れる血をタオルで抑えながら、レンチをフルスイングした
「あの、頭大丈夫?」
「大丈夫大丈夫、この程度で私達蒸気機関車は死なないから」
心配そうにしているアイの隣でやった張本人はなんてことないように笑って受け流した。
「はぁ、まあいいけどよ……」
「いいんだ……」
おっ、もう血が止まった。
「アルバルドの血も止まったことですし、自己紹介といくよ!!まず、私はライザリン・アマルテイア、機関車名はライザ、ライザって呼んでね!!
仕事はこの整備工場の副所長をしているよ」
「そういや俺、所長に会った記憶が無いな」
「所長は今修理中だよ、この島に来た時海に落ちちゃってね」
「えっ、大丈夫なの?」
「風邪をひいたのと、ボディが錆びちゃった位かな?まあ、修理が終わっても暫くは無理かな?」
「なんで?」
「英語が出来ないから勉強中、さすがにイギリスで働くのに英語は出来なきゃダメでしょ」
「ウグッ」
えっ?なんでアイが今呻いたんだ?
ちゃんと喋れてるのに……
「じゃあ次は、アイちゃんね」
「は〜い♪」
さっきまでの感情はどこへ行ったのか、いきなり顔が変わった。落ち込んでいたりした顔から、綺羅星の宿した目を光らせて嘘みたいな笑顔を見せる。
「私は星野アイ♪、機関車名?はアイです☆。
えーと、…新人ですので…色々?教えてくれる人を待ってます☆……で良かったよね?」
「いいよいいよ!!バッチグー♪」ニヤニヤ
小声でライザに耳打ちしている姿に、胃のあたりが悲鳴をあげる。
(完全に入れ知恵をしたなッ!?アイツ!!)
ニヤニヤとした、いたずら小僧よりも邪悪な笑みを浮かべたライザがこちらを見てくる。
顔に血が登り、赤くなっていく。
「?」
「ッはァー………」
が、頭にハテナを浮かべてコチラを見ているアイが視界に入り、息を吹き出して冷却する。
それをケラケラ笑いながら見ているライザは、このことも織り込み済みだったのだろう。
「あー、こうやって話すのは1週間ぶりだな?俺はアルバルド・カルキノス。機関車名はアルバルドだ。言いづらいならアルでいい……
以上、おわ……」
「それだけで良いの?」ニヤニヤ
「ウグゥ・・・・」ギロリ
「1週間ぶり?」ニコニコ
三者三様の顔を浮かべ見合う。
1人は何も分からないからこそ、ニコニコと笑う仮面を付けて見てる。
1人は色々と知っているからこそ、ニヤニヤと嘲笑い男の背中を押す。
1人は事情を知られているからか、苦しそうにライザを睨みつける。
いや、分かっている。今回悪いのは完全完璧に逃げに走った俺だ。
このチャンスを逃したらもう後がない。
「はぁ……、1週間前とはコートの色が違うから判りづらか?1週間前、君にぶつかった者だ」
「そ・し・て、このオニーサンこそが、君がふとっちょの重役に頼んでいた先生役だよ☆」
「え?………えぇー!!」
目に浮かぶ綺羅星を光らせながら、こちらを見る視線に思わず赤らめた顔を手で覆い隠す。
その驚きは一体何の驚きか知りたいが、藪蛇という言葉がある通り、あまりつつきたくない。
そんな思いもあってか、返答はたた短く。
「まあ、よろしく?」
こんな返答になってしまった。
「くふふふ……あぁ、おもろ」
そう言いながらライザはいい笑顔でコチラを眺めているのだった。
おまけ
「そういえば、アイって何の機関車なんだ?」
「何のってテンダー機関車でしょ?」
「テンダー機関車?、蒸気機関車じゃないの?」
俺の疑問にライザが答えるが、俺が知りたいのはそういうことじゃない。
アイは本当に首を傾げ疑問を口にする。
先にアイの疑問に答えとくか。
「アイの疑問を先に解くぞ。
ざっくり言うと、俺達蒸気機関車の主な種類だな。
テンダー機関車は、俺や
「へ~、そうなんだ」
ただこの考え方の問題は、ギアードロコやガーラット式といった特殊な走り装置を持つ奴らの存在だろう。気になるんだったら調べてみるといい。
「俺が知りたいのは日本の何機関車かってことだ。例えばトーマスだったらLBSCのClassE2みたいな感じだよ」
それにしては、
来島時に軽く改造してもらったって言ってたが軽くでは無いな……
「う~ん……確かハット?…卿が《キューロク》形って言ってたような?」
「《9600形蒸気機関車》ね、1913年頃に製造された機関車らしいよ」
首を傾げ、指を口元に添えて悩むアイ変わってライザが答える。
それにしても、約10年前に製造か。
最短でソドー島に来たとしたら約9年、こいつはあの森の中で放置されていたことになる。
「修理にはどれぐらいかかる?」
「ハット卿がツテを使ってくれてね、船の事情もあるけどだいたい1年以内でいける」
ニヤリといい笑顔でライザが答える。
「そうか、楽しみだな」
「うん、楽しみ!」
アイもニコリと笑った。
その顔に嘘は見えなかった。
おまけ2
「修理で思い出したが、俺はいつ頃に終わるんだ?」
紅茶を飲みながら談笑に興じてると、ふと思い出したことをライザに聞いた。
するとライザは目を逸らし、何処からか報告書を取り出して渡してきた。
「実はね……」
その前置きからして嫌な予感はあった。
だが、その想像を超える内容が書かれてあった
ーーー
アルバルド号、総点検報告書
・バッファー破損《緩衝器、交換必須》
・シリンダー破損《ヒビあり》
・主連棒破損《ヒビあり》
・動輪《歪みあり》
~~~~~
・火室の一部に銅の使用が確認
・水面計が一つ
・炭水車に、木材とセメントの使用を確認。
※これにより炭水車への水の積載量は半分以下であると推測される。
《結論》
■炭水車は一から作り直した方が良いと判断。
ーーー
「ふぅ~~~・・・・」
「まあ、そうなるよね…」
「あはは……よしよし」
ゆっくり息を吹き出す。
ライザは苦笑いしながら遠い目をする。
アイがゆっくりと俺の頭を撫でる。
報告書に書かれてあった内容により茹で上がった頭が、別の意味で茹で上がる。
「そんな訳で、修理には3ヶ月以上はかかるわね」
「あ、あぁ、了解……あのクソ人間どもめ……」
少し惚けながら報告書のあるページを握り潰したことに誰も何も言わなかった。
「ちなみに、炭水車以外だったらどれぐらい時間がかかるの?」
「1ヶ月半以内で終わる」
「まじで?」
キャラクター
機関車名「ライザ」
人間体名「ライザリン・アマルテイア」
モデル機関車「クラウス社製B形蒸気機関車」
車軸配置0-4-0
モデルキャラはライザのアトリエより、《ライザリン・シュタウト》
ソドー整備工場の頼れる副所長の女性機関車。
今は修理等で表に出れない所長に変わり、整備工場を回している。
元はドイツのとある工場で働いていたが、第一次世界大戦が終結した時にソドー島へ売られた。
ハット卿が改造を施した中の1台であり、軌間を762mmから686mmへ変えられている。
ボディの色は黄色に赤のライン
■性格
男勝りでわんぱく、悪く言えばガキ大将、良く言えば行動力がある。
仕事はキッチリ、妥協しないタイプ。
人を弄ることが好きだが、触れてはいけない線を見極め、触れないようにする優しさもある。
■趣味
探検
■本機運用
整備工場で所長の補佐
車体番号S.S.W-2
(Sodor SteamWorksの2号機の意味)
星野アイ
モデル機関車「9600形蒸気機関車」
車軸配置2-8-0
てなわけで、星野アイの機体は国鉄初の純国産機、9600形蒸気機関車です。
8620形とどっちにしようか迷いましたが、こっちの方がさらに幅広く、活躍出来る気がしたのでこちらになりました。
9600形についてはWiki〇ediaの方が詳しく書かれているのでそちらをご照覧ください。
ランボードは直線、デフなし。
現実を受けいれたのか、この世界に慣れたのか、素直に聞いて学び、友達(ライザ)ができた。
アルバルドは今のところ、おもしろおかしい先生と思っている。下着見られたことはライザのフルスイングでどっか飛んだ。
アルバルド・カルキノス
制服
クリムゾンレッド→カレドニアンブルー
描写は無かったが新しい色の制服を貰ってご満悦。ただ、機関車本体は修理中のためクリムゾンレッドのまま。
黒と赤のラインがかっこいい。
炭水車を破棄し、新しく作ることになった。
女性と関わると顔を真っ赤にしやすく、慣れるのに時間がかかるだろう。
レンチで殴られて意識だけが"鉄道の墓場(仮称)”へ飛ばされた。あの場所への記録はほとんどない。
ソドー鉄道の制服
着用者は、基本的にその機関車のボディと同じ色を着ている。
ほかの鉄道の機関車から、「統一感が無い」と言われるほど色々な種類がある。
オーバーオール型から、軍服のようなものまである。
アルバルドは軍服型、アイは作業着型である。