俺の中の天羽奏がうるさい 作:二重人格
アクセス数が思ったより多くてビビった。
朝、窓から差し込む光が顔にあたり眩しさで目が覚める。
寝ぼけ眼で時計を見れば、短い針は8時を指し長い針は12時を指していた。
──もう8時か
花の中学3年生。
もうそろ、始業の時間だ。つまり完全なる遅刻。
そんな中俺は、
「寝るか」
布団を被り、二度寝を決め込んだ。
「ちょいちょいちょーい!
……うるさい、寝かせろ。
いいや!今日こそ学校行くぞ!青春真っ盛りの中3だぞ!いつまでも不登校はアタシが認めないからな!
認める認めないの話じゃないの。気分が乗らないの。
じゃあ乗れ!
いや、無茶苦茶言わないで?」
奏とガッチャンコしてからおよそ1ヵ月前後。
こうして、朝に登校するしないの押し問答は恒例となっていた。
「じゃあいつ行くか決めろ!今すぐ!
じゃあ明日ね明日。
明日だな!ほんとだな!
明日になればそのまた明日。その日になればまた明日だ。
じゃあ結局行かないってことじゃんか!それなら今日だ!今日行くぞ!善は急げだぞ!
善でもなんでもないだろって……」
それにしても今日はしつこいな。
いや、ここ最近からしつこくなってきたんだっけ?
……確かに最後に学校行ったのいつだ?2ヶ月……いや、3ヶ月前とかか?
まあうるさすぎるし、二度寝ができる状況じゃない。
たまには足を運んでやるか。
「分かった、行くよ行きますよ。
お!ほんとか!
……あと5分寝たらな。
今すぐ起きろー!」
叩き起された。ぴえん。
▼▼▼▼▼
そんなわけでやってきたぜ久しき学び舎。
いやあ懐かしいなあ。色んな思い出が……甦ってこねえ。ぼっちでダラダラしてた記憶しかないわ。
やだ…!俺の青春薄すぎ…!?
久しき学生服を身にまとって親にひと声掛けたら無理しないでねと一言。優しさに涙が出てくるね。しんどかったらすぐ帰ってこいよだと。
……普通に罪悪感があるよね。
「……優しいな、お前の両親。
でしょ?優しすぎて俺が惨めに思えてきちゃう。
じゃあ、ちゃんと学校とかいけよ。
……ははは」
もう乾いた笑いしかでねえや。
到着後、そのまま教室へと向かう。
ガラリとドアを開ければ視線が一気にこっちに向けられた。
驚きの目に、なんとも思ってないような目。色んな種類の視線が突き刺さる。
「お、おぉ……天野。久しぶりだな。今日は学校来れたんだな」
「……ども」
先生の驚きの声に軽い会釈を返し自分の席へ。
──おいおい、みんながお前の事見てるじゃん。モテモテか?
──やかましい。珍しいやつが来たから目向けてただけだっての。
ちょけて、からかってくる奏に心の中でため息をこぼす。
──でも先生に対してあの返しは無いだろ。
──うるせえやい。コミュニケーションがちゃんと出来てたらぼっちじゃないんだよ。
その語も授業中だろうがなんだろうが頭の中で話しかけてくる奏。
相変わらず、俺の中の天羽奏はうるさかった。
さて、早速昼休みだ。
購買で適当にパンを買って屋上に向かう階段に腰かけ昼飯を食らう。
本当は屋上行きたいけどね。アニメや漫画と違って開いてないから。鍵がね。
「いやぁ、それにしてもほんとに友達いないんだな。
そうだよ。まあ、昔、小学生の頃とかはいたけどな。
じゃあなんで今はいないんだ?中学は別々か?
……別に。色々あんのよこっちにも」
一心同体とはいえ記憶は共有されてない。
と言うよりも俺が見せたくない俺の記憶を奏は見ることが出来ない。
良かったちゃあ良かったが……。
「んじゃ当分の目標は友達を作る、だな!
なんでさ。要らんよ別に。
アタシが欲しい!
やめてくれい。余計なことはご遠慮願う。そもそも友達と言っても他人だろ?笑顔の裏で何考えてるか分からないし、嫌なやつだったら面倒事に巻き込まれんの。それなら最初から他人と関わらない方が安全でつまり友達を作らないことは自己防衛だ。作れないんじゃなくて作らないの。決して俺がコミュ障とかじゃないから。違うから。断じて。
……拗れてんなあお前。屁理屈もそこまで行けば才能だぜ」
食べ終えたパンのゴミを握りつぶし、階段から腰を上げ立ち上がる。
上体を反らせば腰あたりから骨の鳴る音が聞こえた。
「……今日はもう帰ろっかな。
えー、もうちょっといようぜ。
いて何するって。さっさと帰りてえよ俺。
いや懐かしいからもうちょっと満喫したい。
お生憎。俺はぼっちでつまらんやつだからな満喫はできないんだぜ。へっ」
階段を下り、廊下を歩く。
周りは仲のいい友達と談笑したりと学生生活を満喫している様子。
俺?俺はもはや空気だ。いないものとして扱われてる。扱われてるってのは聞こえが悪いか。ただ関わりがないだけ。
そんな中、歩いていればとある女子生徒が目に入った。
俯いていて元気が無い様子。
手にした教科書類はボロボロで少し髪が濡れてる。
なるほど、いじめられてる子だな。同級生じゃないな。1個か2個下の後輩だろう。
そういえば、あの化け物が襲ってきたライブ、"ノイズ"の襲撃で生き残ったやつが俺以外にこの学校のやつで1人いたとかそんな話聞いたな。
……なるほど、なんとなくだけど読めたぜ。
「……あの子、アタシが最後に助けた子だ。
ま?世間って狭いな。
ああ……虐められてんのかな。
"生き残ったせい"だろ。
……どういうことだ?
自分の身内やら憧れの人やらが死んだのに、なんでお前が生き残ってんだー的な感じ?よくある話だ。SNSとかでもそういう類の呟きを見かけんのよ。恨むべきはノイズなのに、それに当たり散らせないから無理やり敵作って憂さ晴らししてんのさ。良かったー、俺友達いないからこういうことされなくて。やっぱり人ってクソだな。
……お前ってほんとドライだよな。
……なんだよ?助けろってか?
お?分かる?
何となくだけど分かるって考えてる事は。でもお生憎、俺は善人じゃないんで。自分から面倒事には首を突っ込まないの。それが自分の身を守るための処世術ってやつで──
おーい!そこの子ー!
おいこら」
こっちの気持ちも何もお構い無しに声をかける奏。
コノヤロウめ。最近自我強すぎるぞこいつ。
「………え?」
おい顔上げてこっちを見たぞ。やめろ、そんな目で俺を見るな。
暗いお目々の中に見える救いを求める悲しげな瞳。俺は別に善人じゃない。助けを求めたところで何も出来んぞ。
──頼む
懇願するような、そんな奏の言葉が頭の中に響いた。
……はあああああああ(クソデカため息)
これっきりだからな。
「お前、今暇か」
「え、あ、ま、まあ……はい……」
「そうか、じゃあ俺に付き合え」
「な、何を…?」
「何をって、そりゃお前……サボってゲーセンいくんだよ」
「………へ?」
気の抜けた戸惑いの声が聞こえた。
主人公はクズと言うよりも現実を見てるタイプの捻くれ者。
続きを書くモチベがあったら続くよ。