特撮系魔法少女・モモ 作:緋海
「はい、どうぞ」
「ありがと!おねえちゃん!」
「もう風船離しちゃダメだからね!」
「うん!」
「おばあちゃん、荷物持ちますよ」
「あら、いいのかい?じゃあ、お言葉に甘えようかね」
「任せてください!よいしょ……っと」
「ありがとうねぇ」
「これ、道に落ちてました!」
「これは、財布かい?よく交番に届けてくれたね、ありがとう」
「いえいえ、市民の務めです!」
「ところで……」
「どうしました?」
「君、学生だよね?学校は?」
「……あっ!」
私の名前は本郷トウカ。
突然だけど、私は魔法少女。
魔法少女になって、邪魔という存在と戦っている。
どうしてそんなものになって、そんなことをしているのか。
それは、一か月前のことだった。
「い、急げ急げ!」
私はその日、学校に遅刻しそうになっていた。
理由は一つ。
変な夢を長く見ていたから。
真っ白な、何もない空間で、私がそこに立っていて。
私の目の前に、大きな剣が浮いていて。
『お前の、
そう、問いかけてきた。
私はここはどこなのか、なぜ剣が喋るのか、なぜそう問うのか。
私はその全てが疑問に思わず、答えていた。
「……誰かを、助ける存在に、なりたい」
『……そうか。貴様の欲、はっきりと理解した』
そして剣は私に近づいて、言った。
『さぁ、欲を叶えたければ、手に取れ』
「……」
私はゆっくりと、手を伸ばす。
『しかし、手に取れば……』
ゆっくりと、震えた手で。
『恐怖に、触れることになるだろう』
手の震えは止まり。
力が籠り。
そして、勢いよく手に取った。
そこで目が覚めた。
変な夢を見たな、と思いながら時間を見てみると、急がなければ遅刻する時間だった。
私は急いで準備し、学校に向かった。
たまに風船をとってあげたり、荷物を運んであげたりしながらも、もう少しで学校につく――その時だった。
「っ!?なに、これ……」
感じたことのない感覚が、私に響くように感じた。
それはまるで、何かに誘われるような感覚で。
わからない、こんなもの知らない。
でも、私はそこへ行かないといけない。
そう思って、学校とは全く違う方へ駆け出した。
感覚が強くなるほど、増えていった。
壊れている建物と、私が向かっている場所から逃げる人が。
そして、だんだんと人が少なくなって、感覚が最も強くなる時には。
そこにはもう二つの人影しかなかった。
「キヘヘ……」
謎の化け物と。
「……ぁ……たす……け……」
それに襲われ、首を掴まれている女の子だけ。
その時、ふと夢のことを思い出した。
そして何故か、確信していた。
あの剣が言っていた恐怖は、このことだと。
私は迷わず駆け出し。
「うおおおおおお!!!」
「キヘ……んなぁ!?」
化け物へタックルした。
化け物はよろけ、女の子を離す。
私は叫ぶように女の子に声をかけた。
「早く逃げて!」
「ひっ……わ……わかったっ」
私は自分でもびっくりするくらい、気迫のある声を出す。
女の子はおびえた様子で頷いて、そして走っていった。
「キヘ……てめえ、いい度胸だなぁ?ヒーロー気取りかい、嬢ちゃん」
化け物は、私に笑いながら、でもちょっとイラついてるように言ってきた。
初めて見る、恐ろしさを感じさせる見た目。
けど、私はそれ以前に、
怒りを超えた感情を込めた言葉が、口から零れる。
「こんなことをして……許さない……!」
「何を言っていやがる……ただのガキのくせに睨んできやがって……生意気なぁ!」
私も気づかないうちに、睨んでいたらしい。
それに怒った化け物が私に襲い掛かってきた。
速い。
少なくとも、こんな速さで走ってくる生き物を見たことなかった。
チーターほど?いや、それ以上かもしれない。
当たれば、死んでしまう。
でも、目で追えた。
私の意識は夢の方へ向けられながらも、軽々と追えてしまった。
それを見ながら、思い出す。
最後に、剣に教えられた言葉を。
『それを唱えれば、邪魔という恐怖を、打ち砕ける』
そして、私はそれを呟いた。
「
こうして私は、魔法少女になった。
戦い方や、敵の名前、それは着身すると一気に流れ込んできた。
いつもの私なら、パンクするような情報の量。
でも、その時の私にはスッと理解できた。
その後の戦いは割愛する。
どうやって魔法少女になれるようになったかを説明するためだから。
もちろん、あの邪魔は倒した。
邪魔はたくさんいるということも、情報の中にあった。
私は誰かを傷つける邪魔を許せなくて、倒す力を持っている。
そうして、私は邪魔を倒し続けていた。
正確には、わからないことも多い。
邪魔が何なのかとか、なぜ暴れるのかとか。
あの剣が何だったのかとか。
どうして着身すると同じ形の剣を持っているのかとか。
これは魔法なのかとか。
そしてさらに、どうして性格は変わらないのに話し方だけ変わるのかとか。
何もわからないまま、邪魔を倒し続けて一か月が経った。
「――それでねっ、出会ったの!本物の魔法少女に!」
「ぶふぅ!?」
私は飲んでいたジュースを吹き出した。
「だ、大丈夫!?」
「けほっ、けほっ……う、うん、大丈夫!大丈夫だよ!」
心配されるも大丈夫だよと誤魔化す。
私は昼休み、大親友のルイルイと話していた。
なんだろうと思いながら聞いてみると、第一声がそれだった。
邪魔は大きく暴れることもあるのに、一切ニュースや噂にならない。
てっきり記憶できないとかだと思っていた。
いろんな人にバレてもいけないと思い、できるだけ隠れてしていたけど。
まさかルイルイが襲われるなんて思ってもいなかった。
ルイルイは用心深いし、危ないことからはすぐ離れるタイプだから。
それはともかく、どうしよう。
バレてはいないみたいだけど。
「へ、へぇ~……気のせいだったんじゃない?」
「ううん、この目で見たの!はっきりと!名乗ったし!」
どちらかと言うと物静かなルイルイが大興奮で話している。
それは嬉しいんだけど、内容が嬉しくない。
本当のことを言ったら、止められそうだし、もしくは逆に手伝う!なんて言い出しかねない。
一か月戦い続けて、わかった。
命懸けの戦いは怖い。
だから誰も巻き込ませたくない、から隠していたい。
「凄かった……私と同じくらいなのに、戦ってた。私達の知らないところで、大変なことが起きてるのかも」
「……そうだね。ルイルイはどうするの?会ってみたい?」
「うーん……会ってみたい、かも。実はちゃんとお礼言えてなくて、すぐいなくなっちゃって……それに」
「それに?」
ルイルイは自分でもわかっていないような顔で言った。
「なんというか、引き込まれるような……会わなきゃ、って思うの」
「……そう、なんだ」
どうしてそう思うのか。
私もルイルイもわからないまま、話は変わっていった。
「また明日―!」
「う、うん!また明日!」
時は飛んで、放課後。
家に帰った後、私は動きやすい格好に着替えて、街に出歩いていた。
その理由は、見回り。
邪魔がどこにいるか感覚でわかるようになるには、ある程度近くじゃないとダメ。
そして、一日に二回以上は今のところ、邪魔は出てきてない。
だから、自分の足で探すのが一番だった。
「こういう時、使い魔とかいたり、探す魔法とかあるんじゃないかなぁ、魔法少女って」
そんな持っていないものを呟きながら、歩いて回る。
石森市はそんなに大きくないとはいえ、一人で探すのはなかなか骨が折れる。
でも、悪くないこともある。
「おかあさん……どこぉ……」
「大丈夫?お母さん一緒に探そうか」
「健一!ありがとうございます、連れてきていただいて!」
「いえいえ、お気になさらず!」
こんな風に、困っている人を助けられる。
半分趣味みたいなものだけど、邪魔を探すついでに解決していく。
これは、魔法少女になる前からしていた習慣。
早々そんな場面に出会うことはないけれど、それはそれで嬉しい。
困ってる人が誰もいないことは、私にとって幸せでもある。
だからこそ、邪魔のことは許せない。
倒さなければ、必ず。
「……っ!」
そんな風に歩いていると、邪魔の気配……魔力の震えが私の肌を伝った。
知識によると、邪魔は暴れると魔力を震わすらしい。
その震えが濃い方へ向かえば、邪魔に必ず出会える。
そうして向かった先には、まるで影が人の形になったような怪人が、人々を襲っていた。
一般邪魔、いわゆる雑魚邪魔だけど、一度にたくさん現れる。
「こ、このっ、うおりゃあ!……き、効いてない!?」
そして邪魔は、魔力がない攻撃では一切傷つかない。
今のように、鉄パイプで殴っても少し怯むだけ。
一般人からすれば、十分危ない存在。
「えいっ!おりゃっ!……大丈夫ですか!」
人に襲い掛かっている邪魔を蹴り飛ばし、跳ねのけて助ける。
「ああ、ありがとう」
「早く逃げて!早く!」
「あ、ああ!」
普通なら、子供に言われても困惑しそうなところ、私が力んで言うと素直に言うことを聞く。
今になって思えば、これが魔法かもしれない。
もう少し、可愛い魔法も欲しいなと思いながら私は。
「着身」
そう呟いて、『魔法少女・モモ』へと姿を変えた。
それを見た邪魔は、次々と襲い掛かってくる。
「……」
真っ先に殴りに来た一体目の拳を右にいなし、その後ろにいる二体目に左脚のハイキックを顔面に打ち込む。
魔法少女の全身には、魔力が籠る。
そのため魔法少女の攻撃なら、邪魔に攻撃が通る。
足を元に戻す勢いを使い、左肘で後ろから襲ってきた一体目を怯ませる。
前からくる三体目に左ストレートをぶつける。
そのまま打ち上げるように真上に蹴り上げ、右手の掌底を打ち込む。
掌底を食らい、吹っ飛んだ三体目は、爆発した。
邪魔は倒されると爆発する。
倒されたかどうか分かりやすいのはいい。
「……物静かだな、貴様ら。私が言うのもなんだが」
一体目と二体目は、自身の影に手を突っ込み、引き抜いたかと思えば
そして挟み込んで、私に斬りかかろうとするが、あえて何もしなかった。
右肩には後ろから、左肩には前から剣が振り下ろされる。
そして、当たったと同時に、火花が散った。
身体には傷――どころか、衣服すら切れていなかった。
魔法少女も同じように魔力が籠っていなければ、いやそれどころか、ちょっとした魔力攻撃なら、服であれば大したダメージにはならない。
つまり、一般邪魔程度なら苦戦しない。
だが、油断はしない。
下手すれば、無関係の人達が襲われるから。
二つの刃を掴み、邪魔ごと振り回して、まだまだいる方へぶん投げる。
飛ばした邪魔がさらに、複数の邪魔を巻き込む。
五十体もいないが、それでも多いものは多い。
「……斬るか」
私は邪魔を見つめながら剣を掴み、引き抜いた。
ゆっくりと、切っ先を敵へと向ける。
敵は次々と向かってくるが、私は動かない。
それでも邪魔はどんどんと近づいてくる。
間合いに入るまで、3、2――
「1」
ステップを踏むように、邪魔達の中心を通ると同時に、刃を水平にし、左から右へと薙いだ。
全ての邪魔は立ち止まり、一秒と二秒という長い間止まり。
そして、爆発した。
私は剣を背中に戻し、持ち手は握りしめる。
そうして念じると、姿が元に戻った。
「ふぅ、怪我人は……」
私は辺りを見回すと、どこにも人はいない。
よかったと、
こうして、ほとんど毎日を過ごしている。
これがいわゆる、私のルーティーン。
きっと、何か大きな出来事でもない限り、この戦いは変わらないと思う。
そしてその日は、早く来た。