特撮系魔法少女・モモ   作:緋海

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特訓、頼るべき人と。

そして大地を蹴り飛ばし、前へと跳んだ。

モモは空中で回転した後、右足を敵に伸ばし、左足がその二の足に添えるように曲げられる。

つまりモモは、高速のキックを邪魔にぶつけようとしていた。

 

 

「……っ、行け……!」

 

 

放たれた蹴りはまっすぐと、邪魔に向かっていく。

目標に対し水平に進み、そして針のように鋭い勢いを放っている蹴り。

当たればひとたまりもない、砲弾のような、願いを通すための一撃。

 

 

「また言ってやるよ。甘いってな」

 

 

だが願いは、叶わなかった。

 

 

「っ……!?」

 

「へっ、魔力の通し方が下手くそにもほどがあるぜ!」

 

 

邪魔はモモの足首を両手で抑え込み、何の苦もない様子を見せながら、勢いを殺した。

表情に変化はなく、しかし驚きを隠せないモモの、その隙をついて邪魔はそのままハンマー投げのように振り回し。

 

 

「冥途の土産に教えてやるよ、むごい負け方ってやつをよぉ!」

 

 

そう叫びながら、ルイが隠れている柱の方へ投げた。

モモは、受け身すら取れず柱へと直撃し、落下し、膝をつく。

間違いなくただの人であれば大怪我を負うだろうその姿には、変化はなかった。

だが誰が見ても分かるほどに、間違いなくダメージが蓄積していた。

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

「と、トウカちゃん!」

 

「っ、ルイ……!?」

 

 

息を切らしたモモ――トウカに、隠れていたルイは飛び出す。

モモは小さく目を見開き、ルイを見る。

 

ルイは手を広げて、モモを庇うように立っていた。

 

邪魔は嗤い、少女達を嘲る。

 

 

「いいお友達を持ったなぁ?魔法少女」

 

「これ以上、き、傷つけたら、許さない……!」

 

「許さない、だってよ!笑えるなぁ!……さて、むごい負け方を見せてやる、って言ったな?」

 

「……!ルイ、逃げろっ!」

 

 

そうモモは静かに、しかし力強く言うも、ルイは怯えながら、一歩も動かなかった。

涙を浮かべ、震えを生む。

しかしルイは友のために勇気を振り絞っていた。

 

 

「や、やだっ!」

 

「くっ……!」

 

 

動けないモモと、それを守るように立つルイ。

邪魔はその二人に、ゆっくりと手を広げながら近づく。

恐怖を、痛みを煽るように。

 

 

「……?……ぐがっ!?」

 

 

しかしその歩みは突然、止まった。

邪魔は両手に温かさを、その次の瞬間には鋭い痛み……熱さを感じていた。

その痛みに悶えながら、後退する邪魔。

 

 

「しくった、雑な魔力とはいえ、触ってしまったせいか……!魔法少女!決着は今度つけてやる!」

 

「……ぁ……」

 

「トウカちゃん!!」

 

 

そう叫ぶと、邪魔はコウモリのように羽ばたき、天井を突き破ってどこかへと消えていった。

見届けたモモは、姿がトウカへと変わり、前に突っ伏す。

そしてそのまま、自身を呼ぶルイの声を聞きながら、意識をまどろみへと落としていった。

 

 

 


 

 

 

「……ん……いつつ……」

 

 

目が覚めた私は、上半身を起こし、痛みに声を上げた。

痛みに耐えながら、目から入った情報を確認するとそこは、白かった。

白い天井に、白いカーテン。

そして私は、白いベッドに入っていた。

 

なぜここにいるか分からず、混乱していると、突然カーテンが開いた。

そこにいたのは、私の親友だった。

 

 

「……!トウカちゃん……!」

 

「ルイ、ルイ……わっ!?」

 

 

ルイルイは私に勢いよく抱き着いてきた。

ギューッと、力強く。

 

 

「トウカちゃん……よかった、無事で……!」

 

「い、いでででで……ルイルイ、もう少し優し、いでっ!」

 

「あっ、ごっごめん!つい、嬉しくて」

 

 

慌ててルイルイは離れ、凄い勢いで謝ってくる。

私は大丈夫大丈夫と言って、笑う。

本当はものすごく痛かったけど、魔法少女になったときはよく感じているから、ちょっと大丈夫。

 

申し訳なさそうなルイルイと、安心させるように笑う私。

その時間が終わると、静かな時間が生まれる。

お互いに静かになって、目を合わせたり外したりしていた。

私は何を言うか、言われるかをすごく悩んでいた。

 

 

「「あのっ……あっ、どうぞどうぞ」」

 

 

一分くらい経った後、私達は同じタイミングで同じように口を開いた。

エヘヘと小さく笑いながら、私は先話していいよと伝え、ルイルイは話し始めた。

 

 

「……モモは、トウカちゃん、なんだよね」

 

「……そうだよ」

 

「……だから、会わなきゃ、って思ったんだね……いつからなの?魔法少女になったの」

 

「うーん……一か月前くらい」

 

「そんなに最近……どうして隠してたの?」

 

「……危ないから、巻き込ませたくなかった」

 

「そんなのトウカちゃんも一緒でしょ」

 

 

ルイルイは静かな怒りを感じさせる声だった。

分かる、でも、私は嫌だった。

 

 

「……頼りたくなかったの」

 

「……それで、誰かが傷つくことになっても?」

 

 

 

()()

 

 

 

私は、すぐにそう答えた。

ルイルイは、驚いた顔で私の顔を見つめる。

きっと、幻滅してる。

けど、言わないとと思ったから。

 

私はすべてをさらけ出すつもりで、話した。

 

 

「あの力を手に入れてから、()が強くなったの。誰かを守る、助ける力があるなら、だれにも頼らず戦いたいって。きっとよくない力だった、これ」

 

 

私は手のひらを見つめる。

 

 

「私から隠れていた、悪い欲を強くしていったんだよ。だから……本当は、向いてなかった。もっと、優しくて、純粋に……人を助けられる人が、なるべきだった」

 

 

手のひらに、雨がぽつぽつと振り出した。

 

 

「……ふっ、ぐすっ……」

 

 

そして、その勢いはだんだんと増していく。

その時シャーっと、カーテンが閉まる音が聞こえた。

手のひらにかかっている影が、濃くなり。

 

 

「トウカちゃん」

 

「……ルイ、ルイ……」

 

 

私はルイルイに、優しく抱きしめられた。

背中を、頭を、安心させるように撫でられる。

ルイルイは言った。

 

 

「人を守りたい、って欲が強くなるトウカちゃんが、向かないわけないよ」

 

 

私の震えは止まらず、だんだんと増していった。

すすり泣く音が、私達だけに聞こえていた。

 

 

 


 

 

 

「――さっきはごめんね、ありがとう」

 

「ううん、大丈夫だよ。それよりも、すぐに退院できてよかったね」

 

「大した怪我もなくて、気絶してただけだからね。でも、よかった……」

 

 

落ち着いた後、私達は夕暮れになっている、病院の外へと出ていた。

私は軽く擦りむいた傷があるだけで、何の問題もなかったから、すぐに退院できた。

私とルイルイは、魔法少女の力のこと、邪魔のこと、そしてこれからのことを、歩きながら話し合っていた。

 

 

「それであいつ……ええと、邪魔だっけ。負けちゃったんだよね……」

 

「……うん」

 

「そういえば、あの剣を使えばよかったんじゃ?私を助けてくれた時の、あの」

 

「あれは私が落ち着いてないと使えなかったんだ。力が強すぎて……あの時は、焦ってて」

 

「そうなんだ……そうだよね、今日の出来事は初めてばかりだったんだもん……あ、忘れてた!」

 

 

急に大きな声を上げて、ルイルイは鞄の中からスマホを取り出した。

そしてこれを見てと一枚の画像を見せてきた。

 

そこには、邪魔が人々を襲っている姿が映っていた。

 

 

「これって……」

 

「うん、あの邪魔の写真。ネットニュースになってるの」

 

「えっ!?ウソっ!」

 

 

ルイルイは首を振って、スマホの画面を変えていく。

変わっていく画面を見て、邪魔の存在が世間に知れ渡ったことにようやく理解できた。

デマや嘘だという人も少なくないけど、確かに多くの人が襲われた。

だから、こうなってもおかしくない。

だけど。

 

 

「今までどんなに騒いでも、噂程度にしかならなかったのに……」

 

「うーん……なんでだろう……」

 

「……今はそれに考えている暇はないね」

 

「そうだね……」

 

 

今集中しなきゃいけないのは、二つ。

 

 

「邪魔の居場所と、その倒し方。どっちも見つけなきゃ……」

 

「倒し方も?」

 

「うん。戦うとき、また心が静かになってるとは限らないから」

 

「そっか……」

 

それが私の弱点。

剣を使えば、手っ取り早く倒せるかもしれない。

でも周りの被害のことを考えたら、不安が残る。

 

 

「でも、剣以外の必殺技じゃ倒せそうにないし……」

 

「強そうなキックも止められたし……」

 

「うん、魔力の通し方が下手くそだって」

 

 

その言葉を言った瞬間、気づいた。

私は力の使い方を理解しきっていないと。

ある程度は教えられていたけど、全部は知らない。

足を止めて、自分の手を見つめる。

 

 

「知らなきゃ……私のこと」

 

 

そう零した私の手を、ルイルイが包む。

その手はとても暖かくて、安心して、心地よかった。

 

 

「今度は一緒に。私だけは絶っ対に、頼らせるから」

 

 

まっすぐに見つめるその瞳には、私だけが浮かんでいた。

 

 

 


 

 

 

翌日。

私達は郊外の森へと来ていた。

ここはクモの邪魔と戦った場所で、滅多に人が来ない場所として有名だった。

そんなところへ、何をしに来たのかと言うと。

 

 

「特訓だよ、トウカちゃん!」

 

 

だった。

動きやすい格好で私達は準備運動をする。

そこで思った。

 

 

「なんでルイルイがそんなに元気なの?あとなんで準備運動を?」

 

「え、えへへ……実は、こういうの好きで……私オタクだし」

 

 

気分だけでも、と言って照れるように笑うルイルイは、女の子らしく可愛かった。

というより、ルイルイは同年代の他の子と比べて、元から可愛い気がする。

そういうのを考えたことがあんまりないから、基準が分からないけど。

 

それはともかく。

 

 

「特訓って……何やるの?」

 

「こういう時は大体、師匠的な人が教えてくれるんだけど……私達で知識を出し合うしかないね」

 

「うん、じゃあまずは――」

 

 

着身。

私はそう呟いて、魔法少女の姿に変わった。

そういえば着身すれば服装が変わることを忘れていた。

そんなことを考えながら、ルイの方を見る。

ルイは、照れとは違う赤さが顔を包んでいた。

 

 

「……どうした、ルイ」

 

「……」

 

「ルイ?」

 

「……はっ!い、いやっ!?な、何でもないよ!?うんっ、なんでも!」

 

「そ、そうか」

 

謎に慌てながら、手をぶんぶんと否定するルイ。

目をあまり合わせてくれないが、特に問題がないのでいいとする。

少し寂しいが。

 

また、それはともかく。

 

 

「……で、どうする」

 

「え?あ、う、うん。改めて、やるべき特訓は上手な魔力を通す方法……だと思う」

 

「ああ」

 

「それでまず、どうやって魔力を通してるのか、感覚でいいから教えてほしいの」

 

 

私は出来るだけわかりやすく説明した。

 

 

「こう……心臓から……全身に……ぶわーっと……」

 

「……なるほどね!」

 

 

ダメだった。

優しい顔で頷いてくれるが、頭には?が三つも浮かんでいた。

私が説明下手か、感覚的か、情報が足りないのか、もしくはその全てか。

顔の筋肉が動かないが、心の中で落ち込む。

ルイはそれに気づいたのか、慌てて話を続ける。

 

 

「感覚ってことは、練習すれば掴めるかも!」

 

「……そうだな」

 

「それで考えたんだけど、魔力を通してパンチする!どう?それしかないと思うんだけど……」

 

「……いいのか?一応、所有者がいそうだが」

 

 

うっ、といたずらがバレた子供のような顔をしたが。

 

 

「た、多分大丈夫!人あんまり来ないし、それに王道だし、邪魔を倒すためだしっ」

 

 

と苦しい言い訳をした。

が、ここまで来てしないというのもおかしな話でもある。

私はほんの少しだけ微笑み、木に近づきながら言った。

 

 

「そうだな、邪魔を倒すためだ。……ならば誰も文句は言わないだろう」

 

 

そして右足を引き、左手を木に添え、右手を引く。

ふぅと息を吐いて、体全身に魔力を通し。

 

 

「……っ」

 

 

右の拳をぶつけた。

微動だにしないはずの木は、殴られたところを中心に、真っ二つに折れた。

 

 

「す、すごい……魔法というより、物理だけど……」

 

 

ルイの驚く声が聞こえるが、私は首を横に振る。

今の感覚は、あの邪魔に止められた攻撃と同じ。

これではまた止められ、被害が増すだけだ。

私の否定を見たルイルイは、うーんと唸る。

 

 

「これじゃダメなんだね……」

 

「ああ」

 

 

少し考えこむが、私には分からない。

がむしゃらにやるしかないと、次の木へ向かっていく。

その時、何かに気づいたように、ルイが声を上げた。

 

 

「そういえば、全身に魔法を通してるって言ってたよね?もしかしたら、一点に集中すれば……!」

 

「……!確かに、可能性はある」

 

 

私は早速、先ほどと同じ構えをとる。

そして、先ほどと違い、右手だけに魔力を通し始める。

全身とは大きく違う、一点に込められた魔力は重さを感じるほど、力強かった。

 

だが。

 

 

「っ……ぐっ……!」

 

「トウカちゃん!?」

 

 

通れば通るほど、溜まれば溜まるほど、震え、痛みも共に溜まってくる。

眉間にかすかにしわが寄る。

左手には既に力がほとんど入っていない。

全身に通っていないことで、支えられなくなっている。

つまり、魔力が暴走している。

そのことを私は、身体で理解した。

 

ダメだ、失敗だ。

今すぐやめなければ私が、いや、そばにいるルイにも被害が届いてしまう。

 

ふと、目がルイへと走った。

そこには、涙を浮かべて走ってくる姿が、映った。

 

 

「……!」

 

 

一瞬だった。

震えが、痛みが、暴走が、止まった。

私は本能で見逃さず、すぐさま木へと打ち込んだ。

 

 

 

拳を放たれた目標は、内側から破裂するように、爆発した。

 

 

 

全身の疲労を無視しながら、ルイの方を見る。

怖がって、いないだろうか。

そこには、驚愕にまみれ座り込んでいるルイがいた。

木を見つめていた瞳は、私に気づいたように、こちらへ向けられた。

そして、ルイはつぶやいた。

 

 

「……い」

 

「……?すまない、よく聞こえな――」

 

「……すごい!!!」

 

「――いっ……?」

 

 

ルイは目をキラキラさせながら、すぐさま起き上がり、私へと駆け寄る。

そして私の右手を、自身の両手で包みながら、言う。

 

 

「とってもすごいっ、カッコよかった!」

 

 

予想していた答えとは違い、困惑する私は、なんとか言葉を紡いだ。

 

 

「か、カッコよかったか」

 

「うん!とっても!私がいつも見てる主人公みたい!でもっ、凄く心配もした!トウカちゃんが無事じゃすまないんじゃ、って……よかったぁ……」

 

「そ、そうか……」

 

 

ルイの嬉しそうな声に私は気を取られつつも、包まれている拳を見て分かった。

 

 

「……きっと、まだこれは完成していない。安定して使えないと、体が叫んでいる」

 

「うん、私から見ても危なかった。してほしいけど、してほしくないって言うか……」

 

「だから」

 

「うん……ひゃっ!?」

 

 

私は、仕返しのように左手をルイの右手に添えた。

 

 

「手伝ってほしい。ルイの力があれば、乗り越えられる気がする」

 

「…………うん、もちろん。私は、そばにいることしかできないけど」

 

「それでいい。それが、いいんだ」

 

 

私には、頼るべき人が、ルイが必要だと、やっと気づけたんだ。




ほしー!すればもらえると聞いたので。
感想高評価ここすき、よろしければお願いします。

最後の文をサブタイにしてたけどたまにの方がいいことに気づいたので一部修正します。
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