とある町の何でも屋の無能力者   作:おサトさん

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正しいと思う道

イピンを撃破した神谷は山道を進む。道路は舗装されずボコボコで、落ち葉と枝で汚い。

 

「しかし、ドミナターから逃げてるとはいえ、寂しいな」

 

(さっきよく分からんやつに襲われたし)

 

人の気配も無く、鳥の囀りや川の流れる音を聞き、久しぶりに癒される。そして歩くこと数分、ポツンと家があった。そして縁側に老人らしき男が座っている。

 

(...喉乾いたな。ダメ元で頼んでみるか)

 

 

「おーい若いの!そんな見てどうした?」

 

視線を感じたのか老人は話しかけてきた。気配を消していたので神谷は驚く。

 

「すごいな爺さん。上手く気配を消していたつもりなのに」

 

 

「まだまだ若造には負けんよ」

 

がははっと老人は笑う。神谷はダメ元で聞いてみる。

 

「あーっ、爺さん悪いが」

 

 

「最近有名なのだろ?気にすんな!どうした!」

 

 

「少しそこで休ませてほしいんだ。後水が欲しいんだ」

 

 

「分かった!入りな!」

 

元気な老人は神谷を家に入れ、居間に案内し、畳に座らせる。数分もしたらお茶と満タンに入れてもらった神谷の水筒からやってきた。

 

「すみません、ゆっくりしてるところを」

 

 

「気にすんな!もう仕事もしてないんだ!暇だったから助かったよ!」

 

 

(元気だなあ.....)

 

どこからそんな元気なのか。神谷は呆れる。

 

「そうだ、俺の名前は神谷秀蔵、97だ。若いの、名前は?」

 

 

「俺は神谷悠です。もう有名人ですが」

 

 

「そうか悠、苗字も一緒だし、少し昔話でもするか」

 

そう言うと老人は真面目な顔をして語り出した。

 

「もう今は衰えたから弱くなったが、俺は昔基準だが1級能力者でな、当時陸軍に入っていたんだ」

 

 

「確か、旧陸軍は能力者を特攻させたって学生の時に聞きましたね...」

 

 

「ああ、俺も特攻したが生き延びたんだ。まあその話は後でだ。その時の俺はかなりのの調子ものでな、軍に入ってからは真面目だったが、学生の時は度々問題を起こしてたんだ」

 

 

今でもお調子者では?と神谷は思ったが、気にせず話を聞く。

 

「でもそんな俺にも女が出来た。無能力者だだったがべらぼうにベッピンで可愛かったよ、だが周りは呆れていたな」

 

懐かしいな、そう老人は懐かしそうに語る。

 

「戦争で俺は兵士として戦った。最初は勝ちまくっていたさ、敵をバンバン倒していった。だがある時俺らの部隊はある島に配属された」

 

老人は険しい顔で語る。

 

「勿論俺も敵を薙ぎ倒していったが、追い詰められていった」

 

 

『大丈夫か茂!?しっかりしろ!?』

 

 

『ははは....何にも感じねーや....』

 

 

『茂!しっかりしろ!!茂!!茂!!』

 

 

『帰ったら社長になって金持ちになるんだろ!?』

 

 

『子供も2人できるんだろ!?』

 

 

『茂!?茂ー!!』

 

 

「茂と...」

 

 

『おいなんでだよ!勲章沢山貰うんだろ!?』

 

 

『弘!聞こえるか!?おい!おい!』

 

 

「弘....」

 

 

『帰ったら親孝行すんだろ!?』

 

 

『悪い、無理だわ....』

 

「明や実、武も、ダチは皆んな死んでった。まるで今までの俺の行動のツケみたいにな」

 

老人はそう自虐的に笑いながら話す。かみやは何も言えなかった。

 

「そして隊長から命令されたのは、突撃命令。死ぬのは運命づけられた」

 

 

「それで、生き延びたと...」

 

 

「そうだ。だが生き延びた。敵の捕虜になったがな。俺は無事に日本に帰ってきた。だがまだ続いた」

 

 

『お前...その足...』

 

 

『ごめんなさい...秀蔵さん』

 

 

「そいつは空襲で足を失っていた。同時に親も姉もな」

 

 

『こんな私だと、秀蔵さんに迷惑を』

 

 

『それでもいい!俺はお前と結婚したい!もう辛い思いなんかさせねえ!!』

 

 

「あいつは泣いて喜んだよ。俺は幸せを掴み取った」

 

 

「....何で、俺にそんな話を?」

 

 

「苗字もそうだが、どんなに辛い思いをしても、絶対に幸せは掴み取るってことを伝えたかっただけだよ」

 

この言葉に、神谷は少し神谷秀蔵という男を羨ましく思った。

 

「ありがとな、こんなおいぼれの話を聞いてくれてな」

 

 

ドオオン!!!

 

外から轟音が鳴り、何かが崩れ落ちる音がする。

 

「何だ!?」

 

2人は家を出て外を見る。

 

「ゴシチョウあららららリリリリ」

 

 

「何だこいつは...」

 

身長4m、腕が4本顔が8つの怪物が、神谷秀蔵の敷地内の倉庫を拳一つで破壊していた。

 

「貴様あ!許されると思うなよ!」

 

倉庫は神谷秀蔵の妻の遺品類が保管されている。だが怪物のせいで全てお釈迦になってしまった。

 

「ぶぶぶんはらららロロロ」

 

怪物は神谷秀蔵と神谷に拳を喰らわせようとする。が、神谷に片手で簡単に塞がれてしまった。

 

「秀蔵さん、離れてください」

 

「これこれこここここここれれられれられれ」

 

神谷はナイフを取り出し分厚い腕を瞬時に切り落とす。怪物は神谷を掴むが指を輪切りにされる。

 

「あいたたたたねたへたたた!!!???」

 

残りの腕で攻撃してくるが既に神谷は怪物の目の前だった。

 

「喰らいやがれ!」

 

巨大もものともしない強靭な蹴りは顔面にモロにぶつかり怪物は吹き飛ばす。そのうち怪物は動かなくなった。

 

 

♦︎♦︎♢♢♦︎♦︎

 

 

その圧倒的な戦闘能力を目の当たりにした神谷秀蔵は、心底興奮していた。

 

「もう終わりました」

 

 

「お前さん、本当に強いな!どうしてそんなに強いんだ?秘訣は?」

 

 

「少し落ち着いてください....」

 

 

「ああ悪い」

 

神谷秀蔵は一旦落ち着いて、真面目な顔で話し始める。

 

「...悠、お前は強い、これからも多くの人がお前の助けを求める。だがな、その力の使い方を間違えるな。お前の力は人を助けることができるし、壊すことが出来る。間違えるなよ」

 

 

「爺さん...」

 

 

「気にすんな!倉庫は直す。悠は正しいと思った道を進め!」

 

 

「色々と、ありがとうございました」

 

神谷は神谷秀蔵の元を去り、歩みを続けていく。




神谷と神谷秀蔵は別に血縁ではございません
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