メインには関わってこないですンナ。
今回、百合も無いですンナ……すまンナ…
ルミナスクエアの公園にて―――
「えへへ!皆でゴハンを食べれるなんてうれしいな!」
「…ん」
「そ、そう、ですね…カリンも嬉しく…思います!」
公園にセットされているテーブルと椅子に3人の少女が座っていた。
一人は対ホロウ特別行動部第六課のメンバーで、蒼い鬼族の少女、蒼角。
一人は治安局特務捜査班犯罪行動外部顧問『助手』にして『2人目のジェーン・ドゥ』こと、ツヴァイ・J・ドゥ。
そして、最後の一人は、今回の被害者………ではなく、家事代行派遣会社『ヴィクトリア家政』のメイド、カリン・ウィクス。
事の発端は道で空腹になって動けなくなっていた蒼角にツヴァイがテイクアウトしたハンバーガーを分け与え、それがきっかけで仲良くなって『お食事会』に蒼角から誘われたからである。
さて、では何故ヴィクトリア家政のカリンがいるのか。それは……
「うふふ…この度は皆さまお越しいただきありがとうございます。今日はカリンちゃんもお客様だから遠慮しないで沢山食べてね?」
ふわりとどこからともなく現れたのはカリンと同じ『ヴィクトリア家政』のメイド長、アレクサンドリナ・セバスチャン。クラシカルなメイド衣装に包まれた彼女の腕には大きな大きな…それはもう大きなバスケット籠が握られている。
◆◆◆
近くの茂みにて
「…こちら『オオカミ』。ポイントB-2に到着。また作戦範囲内に実行要員のカリン…いえ、『チェーンソー』の配備も完了しております」
『了解よ』
『ありがとうございます』
この公園の中で、4人がいるテーブルを三角形に囲むように3人のエージェントが動いていた。
「…皆様、この度は申し訳ございません。私が気づいた時にはすでに『お食事会』の開催が決定しておりまして…」
狼のシリオンで『ヴィクトリア家政』の現場の執行責任者、フォン・ライカンが無線のインカムに謝罪を述べる。その顔は苦虫を嚙みつぶしたような顔をしていた。
「アタイも、まさかツヴァイがこんな『お食事会』にお招きいただいてるなんて思いもよらなかったわ……もっとこう、お友達との軽い感じだと思ってたわ……こちら『ネズミ』、予定ポイントA-1に到達よ」
ネズミのシリオンで治安局特務捜査班犯罪行動外部顧問のジェーン・ドゥがため息をつきながら懐から双眼鏡を取り出し、テーブルの様子を探る。
『申し訳ございません…私めの落ち度です…もしツヴァイ様がリナの料理を食べて何かあったら…』
「…それ以前にそんなにヤバイの…?その料理…」
『…………はい』
「…そう…最近レトルトとか栄養バーばっかりだったし…ちゃんとしたもの食べさせてあげればよかったわ…」
もう一度ため息をついていると三人目からの通信が入る。
「こちら…えっと、『アンパン』。ポイントC-3に到着。対象に目立った行動はありません」
対ホロウ特別行動部第六課、月城柳は三人の内では比較的一番近いポイントで待機しており、自身の眼鏡のずれを直していた。
『アンパン…?』
「あ、その…私がアンパンが好きで…お二人の様にシリオンではないので…」
『…なるほど、分かりました。ともかく今はこの三人で協力するしかありませんね…何としてもツヴァイ様の口にリナの料理が入らないようにしなくては…』
この三人が出会ったのはライカンが『お食事会』が開催されると知って、その危険を伝えなくてはと急遽連絡と取ったことが発端であり、今は即興のチームとなっていた。
「ジェー……『ネズミ』さん、申し訳ありません…うちの蒼角がお誘いしたばっかりに…」
『いいのよ。ツヴァイにもお友達は必要だと思ってたし…まぁ…今回はさすがに驚いたけど…まさかお友達が対ホロウ特別行動部第六課さんだなんてね…』
「私もまさか蒼角のお友達が特務捜査班の方とは思わず…」
『お互いさまってことね…はぁ…で、月城…いえ『アンパン』さんも料理を止めに?』
「あー…えっと…蒼角が招いた事態ですのでツヴァイさんが食べるのを阻止するのと…あと…」
言葉の歯切れが悪く言いにくそうにしていると、ライカンが『失敬』と割って入る。
『実は『アンパン』様よりリナの料理がどのようなものか確かめたいとのご相談がございまして…実はリナの料理は蒼角様には大変好評でして…』
『え……でもアンタさっき…』
『仰りたいことは分かります。ですが蒼角様曰く、『故郷の味』とのことでして…』
『……世界って広いのね』
「ということで気になってまして…見学を…」
『なるほどね……アタイもツヴァイのためにお料理をちゃんとしてみようかしら…』
一方、テーブルの方ではカリンが半泣きになっていた。
『…ねぇアレ大丈夫なの?』
「………問題ありません。今回の任務では、カリ…『チェーンソー』には特別手当が付与されます」
『手当がついていても大丈夫とは言えないのでは…ないでしょうか…?』
◆◆◆
「あ、ありがとうございます…リナさん…」
「でも、珍しいわね?カリンちゃんからお声掛けしてくれるなんて…よっぽどお腹がすいてたのね?」
「え…え、へへ……ひぃん…」
「あらあら、泣くほどお腹が減っているのね?じゃあ沢山作ってあげるから期待しててね」
その言葉に軽く絶望したカリンは現実逃避し、大好きなイチゴ大福のことを考えることにした。
「ありがとー!リナさん!急にお友達を呼んじゃってごめんね?」
「いえいえ、蒼角ちゃんのご友人様にも食べていただけるなんて、このリナ、大変うれしく存じますわ。本日はこの公園の管理人様よりコンロなどの火器を使用して料理を作っていいという許可をいただいておりますから、皆さまに出来立てのお料理を提供させていただきますわね?」
「やったー!!ツヴァイちゃん!リナさんの作ってくれるゴハンはね!すっっごく美味しいんだよ!」
「ん……楽、しみ」
「うふふ…ご期待に添えますように腕によりをかけて作らせていただきますわね?では、私はお料理をしてまいりますので少しこちらでお待ちくださいませ」
◆◆◆
「!リナが離れました…ゴホン…『チェーンソー』、聞こえていますか?『チェーンソー』?」
少しの間があってから『チェーンソー』はびっくりして無線を返す。
『…あ、は、はい!カリンは大丈夫です!』
「落ち着いてください『チェーンソー』。現在リナは料理を作成するために様々な下準備を行っています。貴女にはその作業を妨害…ではなくサポートしていただきます…これはあなたの生死にも関わってくる重要な任務です」
『わ、分かりました!カリン…じゃなくて、『チェーンソー』、頑張ります!』
「では、まず――」
◆◆◆
と、カリンがインカムに集中していると…
「ねぇ、カリンちゃん!」
と、蒼角が持ってきていたカバンからボードゲームを取り出し、キラキラとした目でカリンを見つめる。
「これ!この前ナギねえに買ってもらったんだ!皆でやりたくて持ってきたんだぁ!」
「ふぇ!?」
「これね!3人から6人まで一緒に遊べるんだ!今はわたしとツヴァイちゃんとカリンちゃん!あとでリナさんも一緒にやろって誘うんだ!」
ボードゲームのお誘い。通常であるならばカリンは「わ、わぁ…いいんですか?」と喜ぶが今はそんな状況ではない。こうしている間にもリナの料理の準備が進んでいく…早く妨害、いやサポートをしなければならない。しかし…
「…もしかして、カリンちゃんボードゲーム苦手だった…?」
「…!あ、あのあのあの…!」
上目遣いに口をへの字にして見てくる蒼角に、カリンは罪悪感を覚えてしまう。確かに任務を遂行しなければツヴァイとカリンは地獄を見ることになる。だからと言って今ここで断ると蒼角を傷つけてしまう…そんな中カリンが出した答えとは…
「~~~~!カリン!ボードゲーム!や、やります!!」
◆◆◆
「…ねぇ、『オオカミ』さん?」
『…申し訳ありません…』
『いえ、私の方こそ…先日蒼角に買い与えなければこんなことには…てっきり六課のところだけで遊ぶのかと思っていたので…』
一方で、リナが作業している場所では、先ほどまで何もなかった場所に何故か土製の竈が出来上がっており、その上に魔女の大鍋と言わんばかりの大きな鍋が置かれていた。
「…ちなみに『お食事会』のメニューは決まっているのかしら?」
『はい。リナ曰くシチューとサンドイッチ…そしてデザートにプリンを出すと聞いております』
『ぜ、全部お作りになられるのですか?…その、野外のここで?』
『そう、申しておりました』
「その行動力は見習わないとね…」
一同が監視する中、リナは鼻歌交じりに大鍋に天然水を注ぎ、次々と食材を―――
「あの…今私、蠢くものがそのまま鍋に入れられたのが見えたのですが…眼鏡の度が合わなくなっているのでしょうか…」
『大丈夫よ、アタイもなんか見えたわ』
「ヴィクトリア家政流のシチューは、その、独特…なのですか?」
『申し訳ございません…アレはリナ独自のものです…仕方ありません、『チェーンソー』が行動不能な今…プランBで参りましょう』
『了解』
「分かりました……浅羽隊員…いえ、『サボり魔』隊員。出番ですよ」
すると風を切る音と共に『ちょっと!?』という声がする。
『なんか僕だけ呼び方が不名誉過ぎません!?…はぁ…バレても知りませんから、ねっと…』
◆◆◆
「~~♪…?あら?」
リナはふと調味料を取ろうとして横を向くといくつか無くなっていることに気づく。
「おかしいわね…鳥か小動物たちが持って行ってしまったのかしら…困ったわ…」
そのリナの姿を公園の木の上から対ホロウ特別行動部第六課の浅羽悠真が弓で次の矢を番えながら見ていた。
◆◆◆
「全く…感謝してくださいよ?袋のついた矢を撃って調味料だけをかすめ取る、なんて芸当は僕以外にできないですからね?」
『お見事です。これでリナはおそらく調味料を買いに行くはずです。その隙に鍋の中身をすり替えてしまいましょう』
『『サボり魔』隊員、一番目標への距離が近いのはあなたです。よろしくお願いします』
「はいはい…その代わりちゃんと有給、増やしてくださいね…お、離れていきますね…じゃ、行ってきますよっと」
◆◆◆
リナが鍋から離れたのを確認した悠真が鍋に近寄ると、鍋からはすでに、およそシチューの調理では聞くことがないであろう粘性のあるくぐもった音がしていた。
恐る恐る鍋をのぞき込むとそこには異様な光景が広がっていた。
「……おかしいな。僕が知ってるシチューって白い色か…ビーフシチューでも茶色かってぐらいなのに…どうしてこのシチューは紫色をしてるんだろうね…」
『『サボり魔』隊員、急いでください』
「はいはーい、全くしょうがないなぁ…」
と、悠真が鍋に手を掛けようとしたその時だった。
「あらあら…それはまだ、完成していませんよ?」
「え…!?」
悠真は後ろから聞こえた柔らかな女性の声に戦慄した。そんな馬鹿な、さっき離れてから戻ってくるまでこんなに早いはずがない。気配すらなかったというのに一体どういうことで?と一瞬のうちに思考が回るが、振り返ることが出来ない。
「火を着けっぱなしだったので戻って来てみれば何やら見知らぬ方が……あら?もしかして、あなた様は…」
どんどんと近づいてくる声、次第に悠真の呼吸は早くなり、冷たい冷や汗が首を伝り始める。
(こんな、はずじゃ…僕はただ、有給が貰えるって聞いて…!)
さらに近づく気配に、意を決して土下座するかと思ったその時、
「あれー?ハルマサ???どうしてここにいるの?」
「!」
きょとんとした蒼角の声が聞こえて、悠真の緊張がほぐれる。良かった、少なくとも恐怖を感じる心配はなくなりそうだと振り返る。
「いやぁ、蒼角ちゃん!月城さんから蒼角ちゃんが『お食事会』に行くって聞いてね…心配になって見に来ちゃったんだよ」
「えー?うっそだぁ!ハルマサ、本当はサボりに来たんでしょ?美味しいゴハンも食べられるしいいなぁって思っちゃったんでしょ?」
「え、これ…美味し…?…あ、あぁ、うん!そうとも!ハハッ…いやぁ、僕としたことが全部バレちゃったなんて…月城さんには内緒にしてね?」
蒼角が「しょうがないなー、お菓子で黙っててあげるね!」と、にししっと笑っているとリナが「あらあらまぁまぁ」と口を上品に手で当てて笑う。
「やはり蒼角ちゃんの関係者の方でしたのね、以前お見かけしたような気がしまして」
「すいませんね…あ、お邪魔でしょうから僕はこれで…」
「いえいえ、お料理はたくさんありますし、少し材料を買い足しに行こうと思っていたところなのです。ぜひ参加していってくださいませ」
「え…」
「うわぁ!リナさんいいの!?」
「えぇ、皆で食べるご飯は何よりも美味しいものですわ。それに、悠真様も蒼角ちゃんと一緒にいる方がおサボりの言い訳が出来ていいと思いますわよ?」
「あ、え、あ…い、いやぁその」
「やったぁ!!じゃあハルマサ!出来上がるまで一緒にゲームしようよ!!」
直後がっしりと蒼角に腕を掴まれてズリズリと引きずられていく悠真の頭の中では、あの紫色のシチューと思えない液体を食べることの恐ろしさがどんどんと増幅していっていた。
「待って!蒼角ちゃん!話せばわかるから!そ、そうだ、副課長…月城さん!たすけて!」
『『サボり魔』隊員、そのまま参加してツヴァイさんの分まで何とか完食してください。大丈夫です、一人前の料理が二人前に増えるだけですから』
「ああぁぁぁぁぁ!!!」
その後、ボードゲームのテーブルに座らされた悠真を見たカリンは悠真の憔悴具合から、もしかしたら自分と同じ犠牲者なのかもしれない。と仲間が出来たようで少しほっとした。
◆◆◆
「………」
『………』
『………』
一方で監視を続けているグループの方では、ただただ沈黙であった。
「…ねぇ、これって犠牲者を増やしただけじゃない?」
『…大丈夫です。『サボり魔』隊員の殉職届は私が書いておきます』
『皆さま、逆に考えれば『チェーンソー』と『サボり魔』様という2人の前線実動員が出来たと、そう考えられませんか?』
『……そうですね、『サボり魔』隊員には頑張ってもらいましょう』
「アンタたち…意外にえぐい思考するわね…」
『恐縮です』
次の手を考えていたそんな時、『ネズミ』の仕事用の端末に緊急を伝えるメッセージが入る。
「…全く、こんな時に?…あら…でもちょうどいいかもしれないわね」
『どうしましたか?』
「えぇ、お仕事の連絡が入っちゃって………ツヴァイも行かなきゃならないわね」
『なんと…それは…』
『…えっと…ということは…?』
「…ツヴァイは残念ながら『お食事会』に参加できない…ということね」
その通信を聞いて今回必要なかった犠牲者をそれぞれ思い、『オオカミ』は「その手がありましたか…申し訳ありません…カリン…」と右手で顔を伏せ、『アンパン』は「浅羽隊員……」と罪悪感に苛まれていた。
「…『チェーンソー』ちゃんと『サボり魔』君には申し訳ないことしちゃったわね…」
『いえ…このような事態、誰も予見できるものではございません…』
『えっと…またうちの蒼角と遊んであげて下さい。私たちの仕事の都合上中々友人ができるということが少ないものですから…』
「ありがと、うちのツヴァイにとって蒼角ちゃんみたいな子がお友達でいてくれてアタイとしても安心だわ……あと『オオカミ』さんも、今度ツヴァイの読み書きのお勉強を『チェーンソー』ちゃんに頼んでもいいかしら?」
『えぇ、問題ございません。きっと『チェーンソー』…いえ、カリンも喜ぶことでしょう』
「ありがと、じゃ、ツヴァイを迎えに行ってくるわね」
『お気をつけて』
『頑張ってください』
◆◆◆
3分後――
「というわけなの、楽しいところ申し訳ないんだけどツヴァイ、アタイとお仕事よ」
「ん、わかっ、た」
蒼角は始めこそ驚いていたが、仕事の都合で遊べないことが蒼角自身にもあるので、おとなしく諦めた。
「そっか…じゃあじゃあ!ツヴァイちゃん!今度は一緒にケバブ食べに行こ!なんだっけ…たいむぱふぉーまんす?がいいんだって!」
「ん、たの、し…み」
「あのあの、カリンもいっしょにボードゲーム、楽しかったです!また、ご一緒できたらカリンは嬉しいです!」
「あり、がと」
ふとツヴァイの顔を見ると、本当にどこか嬉しそうな顔をしていた。いや、というよりジェーンから見て、ツヴァイの口角が1ミリほど上がって見えた。
「ふふっ、よかったわねツヴァイ…いいお友達が出来て…」
「あら…貴方様は…」
後ろから物腰柔らかな女性の声がして振り向くと、そこには大きな買い物袋を携えたリナが立っていた。
「あら、ヴィクトリア家政の方ね?申し訳ないんだけどツヴァイは今からお仕事で行かなきゃならなくなっちゃって…せっかく腕を振るって下さるって言うのにごめんなさいね?」
「まぁ、そうなのですね…大変残念ですが、またいつでもお作りいたしますから、お声掛けくださいね?」
「えぇ、ありがと…さ、ツヴァイ、朱鳶たちが現場で待ってるから急ぎましょ」
「ん、分かっ、た…」
足早に駆けていく2人を手を振って見送る面々の中で、ただ一人、悠真は冷静に考えていた。
(…大丈夫。蒼角ちゃんは無限の胃袋…こっちに料理が回ってきてもうまい具合に『いいねぇ、その食べっぷり!こっちも食べなよ!』的な感じで回してあげれば僕の食べる分は少しは…減る!!)
「さて…ツヴァイ様が行かれて寂しいですが、本日はこのメンバー…と後から来る1人で『お食事会』ですわね。改めて、アレクサンドリナ・セバスチャン。本日は腕を振るわせていただきますわね?」
「わーい!じゃあ蒼角がツヴァイちゃんの分まで食べちゃうよー!」
「カ、カリンの分も…良ければ……!」
「あら、カリンちゃん。遠慮しなくても足りなければどんどん作るからいっぱい食べていいのよ?」
「…ひぃん…」
およそ悠真と同じようなことを考えていたカリンだったが、その望みは絶たれ、それを聞いていた悠真もまた、天を仰ぎ見て「あぁ…終わりだ…」とあきらめた顔で笑っていた。
「では、私はお料理に……皆様はもう少しボードゲームをお楽しみくださいませ」
「あ…そうだ…ボードゲームも途中だったからツヴァイちゃんの分どうしよう…」
「そう、ですね…最初からやり直しますか?」
「あらあら……それでしたらリナにお任せくださいませ。後から来る1人をすぐにこちらに寄こしますわ」
「後から来る1人…?僕たち以外にも生贄…じゃなくて参加者が?」
「えぇ」
リナの顔はにっこりとしていた。
◆◆◆
「あと1人…?エレン…は今日はリン店長様とお出かけだったはず…となれば他は・・?」
『オオカミ』が思考を巡らせていると、『アンパン』の方の端末にも連絡が入る。
『あっ…!申し訳ありません『オオカミ』さん、うちの課長がぼーっとしたまま言動を繰り返す状態になっているらしく…!回収に行ってきます!』
「そ、それは何とも稀なご様子…分かりました。リナの料理に関するレポートは後で『チェーンソー』に作成させた後にそちらへお送りいたしますのでご参考ください」
『ありがとうございます…では、私も急ぎ失礼します!』
『アンパン』…月城柳はインカムを外し、急いで去っていく。それを確認した『オオカミ』…ライカンは、「ふむ」と自身のインカムを外す。
「…ツヴァイ様に危害が加わらないことは分かりましたし…保護者の皆様が監視から離れた今、私も―――」
「ミツケタ!ミツケタ!!」
「ライカン!ココニイタ!!」
「ッ!!?」
後ろから聞きなれた二体のボンプの声がして振り返ると、リナのボンプであるドリシラとアナステラがふよふよと宙に浮かびながら笑っていた。
「なっ…!そんな…!クッ!」
双眼鏡で蒼角たちの方を見ると、そこにリナの姿はなく、頭に「?」を浮かべる蒼角と、かわいそうにという顔をしている悠真と、眉は困ったように八の字時になっているものどこか安心したように笑っているカリンの姿がある。
それを見てライカンは背筋がぞっとした。なぜなら3人はそれぞれ別の表情をしていたが…
3人とも明らかにライカンの位置を認識して、こちらを見ている。
「…まさ、か……まさか!」
息を荒くしてライカンが振り返ると、空からふわりふわりとソレは舞い降りてくる。
「あらあらライカンさん…」
それはライカンも知っている人物で――
「どうしたんですか?そんなに驚いた顔をして」
さっきまであの3人と一緒にいたはずで――
「さぁ、『お食事会』にいたしましょう?」
「オショクジカイ!オショクジカイ!!」
「サイゴノバンサン!!」
見まごうことなき、アレクサンドリナ・セバスチャン。その人だった。
震えながら、ライカンは「リ…リナ…?」と声を出すと「あら?」と首を傾げられる。
「どうしたんです?あぁ!もしかしてライカンさんはお疲れなのですね…大丈夫ですわ。本日の『お食事会』のシチューには滋養強壮や体力回復のために色々と入れてありますの」
「い、色々…?」
「えぇ、ですから参りましょう?ドリシラ、アナステラ。ライカンさんは座りすぎで足を痛めているかもしれません。ゆっくりお運びしてあげて下さいね」
「なっ!?」
「ハコブ!ハコブ!!」
「オラオラー!レイキュウシャノオトオリダー!!」
ガシッと両腕を掴まれたライカンは2体のボンプに持ち上げられる。
「ド、ドリシラ!アナステラ!その手を離し…ぐっ…ああぁぁぁぁぁ!!!」
ライカンは抵抗するも、普段よりも何故か力の強いボンプ2体に運ばれていった…。
◆◆◆
その日の夜、蒼角の絵日記には笑顔で虹色の料理を食べる蒼角自身と、それを笑顔で見守るリナ。そして、何故か地面に倒れている悠真、ライカン、カリンの絵が描かれていた。