ジェーン・ドゥは2人笑う。   作:ネムスギボンプ

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第九話 青衣VSエーテリアスVS………

 

 突入組B班は謎の巨大エーテリアスの襲撃を受けていた。

 

 こちらは外に逃げ出した構成員が多く、それを追って外に出たところこの10メートルを越えようかという大きさのエーテリアスが何の前触れもなく裂け目から現れたのだ。これには青衣や治安官たちだけでなく、【黒鳶会】の構成員も驚いていた。

 

 ただ、他のエーテリアスと違っていたのは、それが実に歪であったということ。まるで色んなエーテリアスから『良いとこ取り』だけをしたような奇妙な見た目で、その出で立ちは………

 

「ふむ。これではまるでエーテリアスのキマイラと言えような」

 

  B班はそのキマイラのエーテリアスを前に青衣を残して命に別状はないものの戦闘不能となっていた。また、【黒鳶会】の構成員たちは皆、地に伏せておりそちらの生死は…不明である。

 

「ふむ、我だけではちと骨が折れる難敵であるが…倒れている者のためにも引き下がるわけにはいかぬな」

 

 叫び声と金属音が合わさった雄叫びを轟かせながらドシャドシャ、ガシャガシャと不規則な音を立てて青衣へと突進する。

 

「力任せか、では我からは絡め手でお相手しよう」

 

 誰もいない方向へ誘導するように走った後、三節棍を力いっぱいに地面に叩きつけた反動で飛び上がり、エーテリアスの上空を飛び、突進を回避する。という算段であったが、ちょうどキマイラの真上部分を飛んでいると機械部分から侵蝕されエーテル結晶だらけとなったケーブル付きのチェーンソーが伸び、青衣へ襲い掛かる。

 

「なんと!?だが大ぶりな太刀筋!………ここだ!」

 

 とっさに体を回転させて回避したのちに勢いそのままで振るった三節棍でケーブルとチェーンソーの間を打ちのめし、真っ二つにして地面に着地する。

 

「ふむ…厄介かつ面妖な…だが、足は奪わせてもらったぞ」

 

 次の瞬間、エーテリアスの足元が崩れ、その体の3分の1が地面に埋まる。

 ジェーンが作成した事前の資料による一帯の調査結果と現地に着いてからの青衣によるスキャンで脆弱な地盤の場所を発見しており、飛びあがるために三節棍を打ち据えてその地盤の崩壊を促進させた後に自重のあるエーテリアスの巨体が上に乗れば、即席の落とし穴が完成する。

 エーテリアスはつぎはぎの体で這い上がろうとするが、あっちの足でバランスを取ろうとすれば、こっちの足のバランスが崩れ、と中々這い出せないでいる。

 

「さて、足を奪ったとはいってもこの武装を掻い潜るのは至難の業…2手3手と欲しいところであったぞ………のう?ジェーンよ」

「あら、気づかれちゃった」

 

 いつの間にか後ろにいたジェーンに青衣が視線を送ると、そこには『レディ・ノワール』の姿のジェーンが見知らぬ少女をお姫様抱っこの状態で抱きかかえながら少女に微笑んで、うりうりと頬ずりしている姿があって青衣は一瞬フリーズする。

 

「青衣?」

「……あぁすまぬ。少し呆けておった。」

「あら。もしかして充電がピンチだったりする?」

「いや、そうではないのだ…ジェーンよ。その少女は?」

「ん?あぁ!紹介するわ。この子はツヴァイ、私の可愛いマイハニーよ」

「………まいはにー。」

 

 再度一瞬フリーズした青衣の後ろに宇宙が流れ、思考が定まらない。

 

「………まいはにー。」

「大丈夫?同じ言葉繰り返してるわよ?それより、ア・レ、なに?」

「ん…あぁ、うむ。どうやら烏合の衆が組み合わさったものらしい」

 

 意識を現実世界に戻した青衣はエーテリアスに向き直り、三節棍を構える。

 

「なんか一昨日もヘンなエーテリアスと戦ったのよね…このあたりってヤバイのかしら?」

「ふむ興味深い。後でその話を聞こう。今はこやつの始末をせねばな」

「いいわよ、手を貸すわ。さ、行きましょうかマイハニー」

「ん、わかった。」

 

 ジェーンの腕からすとんと降り立った少女は蛇腹剣を携え、エーテリアスを「視た」。その目は黄緑に光が灯る。

 

「……弱点は3箇所。上部のそれぞれの別種類の躯体の武装の根元。斬撃が通る部分と、強打でなければいけない機械部分があるから気を付けて」

「オッケー、じゃあ1人1つね?青衣は機械部分担当で」

「あいわかった…しかしぬしはあのエーテリアスの弱点が分かるのか…ふぅむ、我にも欲しい機能だ……では、いざ参ろうか!」

 

 三者三様に飛び出し、エーテルの弾の弾幕が飛んでくれば蛇腹剣を伸ばした刃で撃ち落し、機械の腕が迫れば三節棍に纏わせた雷電の一撃で感電させて動きを封じ、閉ざすように生物のような手が周囲を囲めばナイフと仕込みブーツの刃で切り払って道を開いて進んでいった。

 

 ふと、ジェーンは途中で視界の端に見覚えのあるナイロンの紐とその先についている名札が映る。

 

(あれって……ふぅん、偶然じゃなさそうね…とにかくコイツを倒しちゃいましょ)

 

◆◆◆

 

 真っ先に弱点の1つに取り付いたのは、青衣であった。エーテル結晶に覆われた機械の表面は硬く、「なるほどこれでは刃は通らぬな」と納得する。

 

「であれば、打って打って打ち尽くすのみぞ!!とくと馳走するは一刹の連打!」

 

 三節棍をこれでもかと言わんばかりに弱点に叩きつけ、その強固な機械の装甲を深く深く凹ませていき、ついには火を噴かせる。

 

◆◆◆

 

 青衣が機械の装甲を叩きつけていた時、ジェーンもまたそれぞれの弱点部分を貫き、仕込みブーツの刃を巧みに使い、切り裂いていた。

 

「さぁて見っけ!ここね!」

 

 ジェーンはナイフで切り裂いて大きく開いた弱点部分を自信の持てる刃たちで痛めつけていく。ズタズタになったエーテル体組織は塵となって消え始める。

 

「…ツヴァイは!?」

 

◆◆◆

 

 一方ツヴァイは、ジェーンと同じタイミングで取り付き弱点を見据えていたものの、一昨日と同じく体に熱が回り始めていた。

 

「っ…!」

 

 弱点に近づくために蛇腹剣の刃を鞭のように振り回し、飛ばした刃で障害を取り払っていたが、ついには視界が揺らめき始めてしまう。

 

「ま、だ…!!」

 

 足を踏み締めて蛇腹剣にありったけのエーテルを纏わせて振るう。

 放たれた刃達は鞭のような挙動から、ツヴァイの意思で狙った場所を追尾して直角にも曲がるようになり攻勢を強めていく。

 

「穿て…貫、けェッ!!」

 

 『視えた』弱点部分を突き刺し、剣を曲がらせ再び突き刺し、曲がらせ突き刺し、突き刺し、突き刺し、突き刺し突き刺し!突き刺し!!突き刺し!!!

 

 …突き刺し続けた。

 

「ぐっ…ああ、あァァァッ!!」

 

 止まらない。自分の中から止めどなく溢れる破壊衝動は「エーテリアスを殺せ、殺せ、その先で『元』を殺し、喰らえ」と響く。

 目からは黄緑の光が火花のように、空に弾けるように溢れ出していた。

 

「ツヴァイ!!」

 

 知っている声がする。

 

「大丈夫よ、ツヴァイ!アタイが分かる!?」

「あ……」

 

 剣を握っていない左手をしっかりと掴んで抱き寄せる人がいる。その顔は悲しげな顔をしていた。

 

「大丈夫よ…エーテリアスはもう塵になったわ…」

「…終わっ…た?」

「ええ………ねぇ、ツヴァイ。教えてちょうだい?ツヴァイにはエーテリアスの弱点が『視える』のね?」

「ん…」

 

 コクリと頷き、手に持っていた剣をカシャンと落とし、目から黄緑の光が消えて行く。

 視界が歪んでフラフラし始めてると、ジェーンに「おいで」と膝枕される。

 

「…『視る』と…この前と今みたいに代償として熱が出ちゃうのね?」

「ん…」

 

 膝枕されたままツヴァイがもう一度コクリと頷くとジェーンは膝の上の頭を優しく撫でる。

 

「まずはありがとう、ツヴァイ。あんなエーテリアス、アタイと青衣だけじゃ無理だったかもしれないわ…でもね?アタイはツヴァイが今みたいに苦しんでいるのはイヤなの…もしもっと酷くなってツヴァイがいなくなったら…アタイはすっごく悲しいし…つらいし…だから…」

 

 ジェーンはツヴァイの体を起こしてぎゅっと抱きしめる。

 

「よっぽどの事が無い限り、『視る』のをやめてほしいの…出来そう?」

「…分かっ…た」

「ありがとう、いい子ね」

 

 ツヴァイの額にキスをした後、お姫様抱っこをして青衣の方を向くと、「おぉ…」と少し驚いた顔をしている青衣がいた。

 

「どうかした?」

「いや、うむ…なるほどこれがぬしの言う『まいはにー』とやらなのだな、と知見を広めておったのだ」

「そう、アタイの大事なコなの。それはそうと青衣、そこに落ちてる名札…拾ってくれる?」

「ん?名札とな…?ほう、これがどうかしたのか?」

 

 青衣が拾った名札には、『第31研究部 研究員ミシジマ・キョウ』と書かれていた。

 

「…青衣、アンタにこれを渡しておくわ。身元を割り出して欲しいの」

「…ふむ。双方共に同じ『第31研究部』とな…このエーテリアスに関係があると?」

「それはまだ分からないけど、可能性は高いと思うわよ…アタイが拾った名札はヘンなエーテリアスを倒した場所の付近にあったしね」

「ふむ、あい分かった…して、ぬしは今からどうする?朱鳶がもうじき到着すると今連絡があったが」

 

 と、青衣はジェーンに抱き抱えられているツヴァイを見てニヤけながら尋ねる。

 

「…アタイはこの子をアタイ達の愛の巣へ運んで看病するわ。悪いけど朱鳶によろしくね…明日の夕方、そっちに行くわ」

「承った。ではツヴァイ殿……おや?そちらで眠ってしまった『まいはにー』殿が起きたら共闘の感謝をよろしくお伝えしておいてくれ」

「あらホント、寝ちゃったのね…それじゃ気が向いた伝えとくわ。じゃあね」

 

 ジェーンは腕の中の眠り姫に顔を寄せて「いい子ね、おやすみなさい」と囁いたあと、青衣を残して去っていった。

 

 

◆◆◆

 

 

 数分後。朱鳶とセスが急いで駆けつけた時には青衣は瓦礫の上に正座して湯呑みに入った白湯を一服していた。

 

「青衣先輩!朱鳶班長と援護に…って…あれ?」

「どうやら、解決してたみたいね。先輩、ありがとうございます」

「なんのなんの。我も特殊行動班がいなければ危うかったかもしれん」

「先輩…その特殊行動班はどこに?ルミナ分局に一緒に帰って報告を受けたいのですが…」

「あ、そうっスよ!俺まだどんな人達がいるのか知らないから挨拶しときたいっス!」

「うむ…」

 

 青衣は白湯をぐいっと飲み干し、空になった湯呑みを両手で抱き抱えるようにしてニヤリと笑った。

 

「作戦終了と共に2羽の鳥は愛の巣へと舞い戻ったのだ……めでたしめでたし…ほっほっほ…」

 

 朱鳶とセスは頭に「?」を浮かべながら首を傾げた。

 

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