ハイスクールD×D×R~禁断の使徒が頑張るRe:ライフ~   作:ブラッキオ

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前回の一部について疑念に思った方もいるかもしれないので今のうちに言います。
この章は基本的に原作に沿いつつも、イッセー君に新たな剣が舞い降ります。なので、まだマシかなと思えるクオリティです。
が、問題は原作11巻12巻に当たる所。原作的に『今までに比べて真面目なイッセー君の強化イベント』なのですが、ここの主人公がいるだけで話が3,4話くらいで終わるんです。ネタバレすると『要するに曹操を半殺しにして旧魔王派のあいつをぶっ殺せばいいんだね!』です。結果、そこが無かったことになるんですよ。
多分、多くの先達がエタったりこの辺りから完全オリジナル展開でそもそもなかったことにして、いきなり15巻とか辺りからの原作的展開をし出すのが多いのはそれが理由かと思われます。
うp主も今原作の方を苦しみながら読んでいて、『これどうすんだよ』と思いながら必死になって色々考えつつ、原作へのリスペクトと性欲主義イッセー君へのディスペクトの狭間で苦しんでいます。
せめて二天龍以外のドラゴン達もちゃんと出したいのだ(ずんだもん)




第102話 人の心を知らぬもの

 

翌日、俺とリアスはシトリー領の一角に来ていた。緑多い林道を、俺達が乗ったリムジンが走る。何でか分からないが、リアスから花束を渡すように言われ、彼女が用意した花束を持っている。

 

リアスによると、今回はベリアル家ではなくてリアスのお母様経由の話だとか。なんでも、サイラオーグさんの執事さんが俺に用があるそうだ。

 

確か、リアスのお母様ってバアル家の出だったな?そこの繋がりかな?

 

現在いるシトリー領は自然豊かな土地で、自然保護区も多いんだとか。更に医療機関が非常に充実している領土でもあるとリアスが説明してくれた。今から向かう場所も冥界でも超有名な病院だって。

 

病院?はて、どういうことだ?サイラオーグさんが体でも壊したのか?だとしたら、あの人の性格的にこんなお見舞いはギリギリ侮辱に値すると思う。俺だってアニメの寄成ギョウみたいなことはしたくない。何より、彼の身近にいる執事さんだってそれを分からないわけじゃないはずだ。ならどうして俺を病院に呼び出したんだ?

 

疑問に思っていると病院に到着した。車を降りるとそこにいたのは中年の執事さん。

 

「お待ちしておりました」

 

お堅い会釈をする執事さん。そんな彼にリアスは『案内してちょうだい』と言い、病院内へと案内された。

 

広い病院の中で俺はリアスからサイラオーグさんのご家族について話を聞いた。

 

バアル家の現当主、サイラオーグさんの父親はリアスのお母様の腹違いの弟。そして、サイラオーグさんの母親は獅子と司るウァプラ家の出だと。

 

獅子、ね。いかにもサイラオーグさんらしい。俺はライオンが好きかどうかと言われるとそもそも興味ない方だけど、それでもかっこいいとは思う。

 

そんなこんなでどうやら用のある部屋に到着した。中に入るとそこには一人の女性が機械に囲まれて、死んだように眠っていた。

 

「……ごきげんよう、おばさま」

 

リアスはそう言うが、その言葉にはどこまでも深い悲しみが籠っていた。

 

「この方はミスラ・バアル。サイラオーグ様の母君でございます」

 

執事さんに花束を渡すと、彼はそう話した。そうか、この方があの人の……

 

俺がサイラオーグさんのお母様を見ていると執事さんは涙を流しながら俺に懇願した。

 

「今日、ここへお呼びしたのは他でもありません。どうか、どうかこの方を……ミスラ様を目覚めさせるためのご助力を願えないでしょうか、レッドゾーン殿……?」

 

目覚める?どういうことだ?

 

俺が困惑しているとリアスが語り出した。それは、一組の親子がたどった、悲しい運命。

 

サイラオーグさんは先ほど聞いた通り、バアル家当主との間に産まれた子供。故に自動的に次期当主になる男だ。そんな彼が生まれた時、周囲は喜んだ。

 

しかし、現実は非情だった。

 

サイラオーグさんには魔力がないに等しい。更に、バアルの特色である『消滅』の力すらも持っていなかった。

 

バアル家当主は代々魔力に恵まれ、『消滅』の力を持つのが当たり前だった。それを持たずに生まれたサイラオーグさんが押された烙印。それは……『欠陥品』。

 

よりにもよってそれを押したのが実の父親だった。自分が魔力を持たずに生まれたことで同時に母親のミスラさんも蔑まれ、差別されるようになった。中には『不倫の末路だ』なんて言う馬鹿も出てきた始末。

 

ウァプラ家から付いてきた従者を除いて、二人の味方はいなかった。

 

これにリアスのお母様、ヴェネラナさんも悲しみ、グレモリー領で保護すると言った。だが、ヴェネラナさんはあくまでも第二婦人の娘だった。それに、その時既にグレモリーへ嫁に出た身。強く出ることが叶わなかった。

 

更に追い打ちをかける出来事があった。それはそのヴェネラナさんの子供たち……つまりサーゼクスさんとリアスだ。

 

片や魔王ルシファーの名を継ぐ最強の悪魔。片や新世代の筆頭格の悪魔。どちらも『消滅』の力をバアル家以上のものとして受け継いだ。これがバアル家としては非常に面白くない。

 

バアル家は世襲でない魔王を除いてトップに君臨する存在。影響力は果てしない。故にサイラオーグさんの悲劇を知っていても、他家は口出しが出来なかった。

 

ウァプラ家も二人を渡すように言うが、バアル家のメンツは『サイラオーグと言う恥を外に出したくない』と一点張り。サイラオーグさんを一人にさせない為にミスラさんはバアル家に残った。

 

その後、ミスラさんは故郷の力を借りて一部従者と共にバアル領の辺境で暮らしていた。元は何も知らぬお嬢様のミスラさん。助力無しでの田舎暮らしはさぞ堪えたのは想像に難くない。

 

魔力のない悪魔はどこへ行っても虐げられる。辺境という田舎であろうとも。それでもミスラさんはサイラオーグを立派に育て、サイラオーグさんはそれに応えるように立派に育った。

 

いじめられては泣いて帰ってくるサイラオーグさんにミスラさんは言い聞かせていた。

 

――魔力がなくとも、立派な体がある。足りないものがあるなら、別のもので補え。腕力でも、知力でも、何でもいい。誰が何と言おうと、あなたは誇り高き獅子の子にして大王バアルの子だ。レッドゾーンのような皆を導く、気高い男になりなさい。

 

それでも、裏ではサイラオーグに苦難の道を歩ませたことをずっと涙を流して悔やんでいたミスラさん。

 

故にサイラオーグさんは魔力がなくても、実力さえあれば夢を叶えられる冥界を作ろうとしている。

 

だが、悲劇は人の心を知らない。サイラオーグさんとミスラさんに更なる悲しみを与えた。

 

『眠りの病』

 

リアスによると、これは悪魔がかかる病気の一つで、症例は少ないとのこと。その名の通り、深い眠りに陥らせ、目を覚まさなくさせる。そして次第に体は衰弱し、死に至る。ミスラの周囲にある機器は生命維持装置ということだ。

 

サイラオーグさんはその後、実力で後妻の息子を下した。そして実力で次期当主の座を得た。だが、これは同時にサイラオーグさんをよく思わない愚者共が出しゃばるいい機会となる。ミスラさんを使えば、サイラオーグさんをどうにでも出来るからな。

その危険を避けるために、シトリーさんの伝手でシトリー領へとミスラさんは運ばれた。

 

話はそこまでだった。

 

そうか……そうか……

 

「ダイチ……」

 

「すまない。俺としたことが、年甲斐もなく……」

 

俺は流れる涙を拭う。

 

俺は勝手にサイラオーグさんのことを尊敬していた。『この人はすごい人なんだ』って思っていた。でも、違う。本当は俺なんかが尊敬していい人間じゃなかったんだ。

 

それに、サイラオーグさんの過去が俺の嘘のそれとリンクしてしまっている。これじゃあ、サイラオーグさんが道化じゃないか……!

 

「レッドゾーン様をお呼びしたのは他でもありません。ミスラ様のご病気の治療にご助力願えないでしょうか?」

 

「何故私に?」

 

俺がそう訊くと執事さんは答えてくれた。

 

「ライザー・フェニックスとの戦いの時のことです。彼を大きく傷つけたあなたは癒しの力を以て彼を回復させました。その時に思ったのです。『もしかすれば、レッドゾーン殿であれば、ミスラ様を救えるのではないか?』、と」

 

なるほど、あの時の行動がここに繋がるか。だが、俺の力は強大だ。むやみに振るえば堕落を導く。

 

俺が困っていると執事さんは更に言葉をかける。

 

「……『轟熱伝』、読ませていただきました。レッドゾーン殿もかつてはサイラオーグ様同様に親の力を受け継げなかった。『不死鳥の力』を得ても最初は制御もままならなかった、と」

 

「同情、ですか?」

 

俺がそう問いかけると、黙ってしまう執事さん。分かってる。今のは相当意地の悪いことを言った。

 

「私もひどいことをしている自覚はあります。それでも……それでもお願い出来ないでしょうか……?」

 

……忠義の士とはよく言ったもんだ。

 

よし、やろう。本当は俺の力は不用意な使い方をしてはならない。それでも、だ。それでも、どこまでも真っすぐで清廉な人を見捨てるなんてことは出来ない。この人はサイラオーグさんの夢が叶う瞬間をその目で見るべきだ。

 

「……上等だ」

 

俺はミスラさんの眠るベッドのそばに立ち、その手に触れる。この人は相当衰弱している。そっとだ。そっと回復のオーラを流すんだ。でないと、今度は俺のオーラのせいで体を壊しかねない。

 

俺はゆっくりとオーラを流し込む。おい、ドキンダム。

 

――『なんだ?』

 

ミスラさんの体の解析、頼む。

 

――『……何故そんなことをする必要がある?』

 

病魔の根源を叩くため。

 

――『はっ!お人よしめ。痛い目を見ても知らんぞ』

 

いいさ。痛い目に遭うのは慣れている。

 

俺はドキンダムにミスラさんの体を解析させる。結果はすぐに出た。

 

――『肉体的な病気はもう治った』

 

そうか、それじゃあもう目覚めるってわけか。

 

――『いや、目覚めない』

 

……なんで?

 

――『この女の体が、まだ回復した体に慣れていない。そもそも、『肉体的な病』ならもう治ったが、その眠りの病が精神にまで支障をきたすものなら、簡単には目覚めない。うつ病が脳波の異常とした時、うつ病患者の脳波を正常にしてもその『心』が壊れていたら元も子もないのと同じだ。それこそこの女の力と望み次第、と言ったところか』

 

なるほどな。何言ってるか分かんないが、今は目覚めないってことか。

 

なら、ついでに生命エネルギーも流し込んでおくか。

 

――『ボルギルスみたいにか?』

 

ああ、死んだら俺の心まで病んでしまいそうなシチュエーションだしな。

 

そうだ、ついでにアンチエイジングとか美肌効果とかも流そう。サイラオーグさんもビックリするだろうな。

 

――『お前、ふざけないと気が済まないのか?』

 

……ごめん、ふざけないと俺がバアル家への憎悪でどうにかなりそうなんだ。

 

話を聞いただけでも、俺が『悪』と断じることをやってきたバアル家を、俺は許せないよ。

 

――『そうかよ。ふざけるのは程ほどにしておけ。やつれた自分の母親がいきなり超絶美人になっていたら心臓に悪いだろ』

 

え、そうかな?俺は嬉しいよ?

 

――『こいつ……』

 

俺はオーラを流し込み終えると、手をそっと離す。

 

「レッドゾーン殿……?」

 

「体『は』治りました。目覚めるには、ミスラさんの心次第。明日目覚めるか、それとも何千年も待つことになるか。それは分かりません。……これが、俺の出来る最大限のことです」

 

そう言うと、瞑目する執事さん。

 

「ありがとうございます……ありがとうございます……!」

 

そう言って頭を下げる執事さん。よく見れば涙も流している。

 

「このことは他言無用で。俺の力を求めた者たちの堕落を招くことになるので。今回は『特例』です」

 

「はい……はい……!」

 

執事さんの言葉を聞いていると扉が開く音がした。視線を向けるとそこにいたのは……

 

「ん?レッドゾーン殿にリアスか。どうしたんだ?」

 

サイラオーグさんがいた。

 

 

――

 

 

「そうか、どう礼をすればいいか……」

 

サイラオーグさんに事の顛末を話した。俺を同情につけ入って脅す形になったことに対してサイラオーグさんは執事さんを諫めていた。

 

病室で騒ぐのも良くないと思い、俺達は休憩フロアに移動した。

 

「ごめんなさい、サイラオーグ。ダイチにあなたとミスラおば様のことを勝手に話したわ……」

 

「いや、いいんだ。こうして見舞いに来てくれただけありがたい。それに、俺の過去など、ただのお家騒動だ。七十二柱に連なる家なら珍しいことじゃない」

 

……この人、強がっている。

 

超が付くほどの重装備をした心だ。だが、その奥は普通の人間と変わらない。強く、眩しく、脆いものが見える。

 

「全く、シトリー家とグレモリー家には世話になっているのに、礼の一つもままならないなんてな」

 

「いいのよ。それぐらいさせてもらうわよ。それにそう言うのは気にするなって私のお母様も言っていたでしょ?」

 

リアスとの何気ない会話。そんな中でサイラオーグさんの表情が変わる。

 

「だが、ゲームは別だ。次のレーティングゲーム、勝つのは俺達だ。同情も手加減もいらない。俺が求めるのは、本気のグレモリー眷属と、それを討ち果たした先の勝利だ」

 

そう宣言するサイラオーグさん。彼は自分の拳に視線を落とす。

 

「俺にはこの体しかなかった。故に負ければ全てを失う。ここまで積み上げた権力の類は間違いなく崩れる。『消滅』の力がない俺には、(これ)しかない」

 

そう言うサイラオーグさんはリアスに戦意の満ちた瞳を向ける。

 

「不格好だろうな。だが、それが俺のお前達との戦い方だ」

 

『それに』、とサイラオーグさんは続ける。

 

「烏滸がましいが、岸波殿も俺と同じ道をたどったんだ。俺がここで折れたら、それこそ岸波殿の道に唾を吐きつけることになる。ならば屈するわけにはいかないんだ」

 

その瞳の炎は強く燃え滾っている。ああ、その輝きが俺の心を救ってくれる。俺の愚行を赦してくれる。

 

「言っておきますが、あなたの相手は赤龍帝。それも俺が見込んだ男も一緒だ。奴はリアスというとんでもない上澄みを見ながら『王』を目指している。あいつも簡単に折れるような奴じゃない。覚悟しな」

 

「ああ、楽しみにするさ」

 

そうほほ笑むサイラオーグさんは、どこまでも眩しかった。まるで『傷だらけの黄金の獅子』のように。

 

そんな中、リアスの表情は、少し曇っていた。

 

 

 





原作を読んでいる方なら分かる、バアル家による主人公への敵対行為。今からディハウザー・ベリアル絡みが楽しみですね!

諸事情によりこの作品の全データが吹っ飛んで継続投稿のやる気も吹っ飛んだうp主です。HSD×Dから逃げるのも癪なせいか、リブートも本格的に視野に入って来た次第です。心機一転のリブートをするか、それともこの作品を意地でも続けるかアンケートと取りたいです。因みに、リブート後だと主人公の眷属は完全ハーレムでない方がやりやすそうなので、完全ハーレムでなくなります。とりあえず12章は意地でも書ききります。

  • 無理スンナ。リブートしたらしたで読むで
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