ソードアート・オンライン カタナ使いの歩み   作:千川 悠汰

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間隔を空けずの投稿です



鼠との出会いと愛剣獲得

 現在メダイに向かって全力ダッシュ中。勿論モンスターをトレインしたりしないように『索敵』を使いながら倒したり隠れたりして急いでいる。

 

「オイオイそんなに急いでどうしたんダ?」

 

「えっ!?」

 

 驚いて首を回すと横に…プレイヤーか。プレイヤーが並走してた。

 

「えっと…どちら様でしょうか?」

 

「ニャハハ!随分と器用ダナ、走りながら体だけこっち向くナンて」

 

 腕組みしながら走ってる人に言われたかない。あと結局誰なんだ。

 というか今更メダイに向かう人が僕以外にもいるのか。フィールドボス攻略は終わったのに。

 足元の石とか木の枝とかに気を付けながら走る。索敵使ってるのに音鳴らしてモンスター引っ掛けたりすっ転んだりするなんてごめんだ。もう一度並走する謎のプレイヤーを見てみると、ヒョイヒョイと飛び回るように走っている。

 

「身のこなし軽っ!AGI(俊敏性)特化…ですか?」

 

「それは金を払ってくれたら教えてヤルヨ」

 

少年?少女?のプレイヤーがニシシと笑う。現状わかることと言ったら…多分この人も元ベータテスターだ。

 もう一回何者なのか尋ねてもはぐらかされそうなので用件を聞いてみる。それも答えてくれなかったらお手上げだい。

 

「さっきも言った通りダヨ。そんなに急いでメダイに向かうなんて訳アリダロ。オイラにも聞かせてくれヨー」

 

 並走しながらグリグリと肘で突いてくる。くすくっだい。

 てかメダイって言ったっけ?エスパー?

 

「別に思考が読める訳じゃナイヨ」

 

 読んでんじゃん。怖い。

 

「フィールドボスのイノシシは攻略したダロ?なのにトールバーナに行かずにわざわざはじまりの街の東門、ようはメダイの村の方に向かってるなんて、明らかに何かアリマスって言ってるようなモンだロ」

 

「いやーそれがぁ…」

 

 デスゲーム開始初日、僕は勢いよくトールバーナというかその先の迷宮区攻略に向かってスタートダッシュを切った。のだが。

 

 僕は2つも忘れていたことがあった。

 1つ目。フィールドボスが居ること。イノシシ型のボスなんだけど…僕はベータテストの時はフィールドボス攻略参加出来なかったんだよね。この後の10層までのフィールドボス攻略は全部参加してるから余計印象が薄くなってた。

 2つ目にメダイの村周辺の希少な蜂型モンスターを狩ってると稀にドロップするサーベル。これが結構大事で、デスゲーム化した今となっては少しでもスペック値が高い武器防具は装備したい。生憎イノシシ攻略戦の時には間に合わなかった。というか思い出したのがイノシシ倒してからだった…

 

「という訳でして。単純に僕がド忘れしてただけです」

 

「そんなんで生きていけるのカー?オネーサン心配になっちゃうゾ」

 

 オネーサン…お姉さん!?女の人だったんだ…言わない分別(ふんべつ)は付いてますとも。

 

「というカ、いきなりかなりの情報を教えて貰っちゃったナ」

 

「情報って…さっきもでしたけどまるで情報を売買してるみたい、な…」

 

 と、ここまで言っておいて思い出した。最前線にいるプレイヤーというか元ベータテスターたちの間で噂になっているある人物のことを。

 小柄で、鼻にかかるような特徴的な声。あと顔の左右に3本ずつペイントが入っている。そして、その特徴から鼠と呼ばれまんま鼠の印を付けた攻略本というものを作り道具屋に売っているということも。

 

「その様子だと知ってるみたいダナ。オレっちはアルゴ。攻略本の製作者ダ」

 

「は〜…」

 

「随分と呑気な声を出すじゃナイカ。そんなに信じられないのカ?」

 

「いえ別にそういう訳では」

 

「マア、少年がベータテスターでうっかりさんな事を知れたから上々ダナ」

 

「えっ?…あ!やば」

 

「安心しろヨ、別にペラペラ喋る訳じゃナイってノ。金を積まれたら分からないけどナー」

 

 自分の迂闊さをこっち(ゲームの中)でも思い知ることになるとは…気を付けなきゃ。

 

「っと…ここら辺かな」

 

 ブレーキをかけて立ち止まり、耳を澄ませて辺りの音を探っていく。『聞き耳』取れば良かったかなぁ。いやでもこの状況で『軽金属防具』を捨てるのはちょっと勇気がいる。

 するとアルゴさんがハァーっと呆れたように息を吐き同じように音を探ってくれる。

 

「情報料の代わりって訳じゃないけド、オネーサンが手伝ってやるヨ」

 

 2人して耳を澄ませて探っていく。確かあの蜂───≪ダル・ワスプ≫は名前の通り羽音が鈍い重めの音で…

 

「っ!見つけたぁ!」

 

「アっ!置いてけぼりにするなヨ!」

 

 現在のステータスの限界をもって走り、ギリギリまで近づいてから『曲刀』の基本ソードスキル:リーバーの起動モーションを取る。ソードスキル独特の振動と音を感じながら自身の身体も動かして威力を高める。

 限界まで近づいた甲斐あってか、はたまた弱点クリティカルのお陰か一撃で葬ることが出来た。ドロップは───

 

「ない…」

 

 肩を落とすが、一々落ち込んでいては仕方ない。次だ次!

 

「オイ、アレそうじゃな─」

 

 アルゴさんの言葉を聞き終わる前に走り出し、また同じようにリーバーで仕留める。これを10回ぐらい繰り返した頃だろうか。遂に…

 

「やったぁぁ!!!漸くドロップしたぁ…」

 

 ≪ダル・ワスプ≫からドロップしたレア武器、≪マット・サーベル≫を掲げ振り回す。凡そ3ヶ月ぶりの初期の愛剣に再開したのだから。お願いだからアルゴさんは変人を見る目で僕を見ないでほしい。

 

「マ、マア、一先ずゲットおめでとウ。それでここからは交渉なんだガ─」

 

「あ、これが初期スペックです」

 

 鞘をタップしウインドウを浮かび上がらせる。シンプルなUIにはMatte Saberと名称が書かれており、その下には各種スペックが書かれている。

 アルゴさんは食い入るように見てそれをメモした後、息を吐きながら聞いてきた。

 

「ナア、コイツのデータを見せてくれたのは感謝するけどヨ、良かったのカ?」

 

「これに関してはベータテスト時代に獲得した事があったので。そりゃ、今後知らない武器で命懸けで獲得したってなったらお金獲るかも知れませんけどね」

 

 アルゴさんはそうカ。と呟いてから特徴的な笑いを見せて

 

「それじゃア、トールバーナに戻るカ?」

 

「そう、ですね。特にメダイに用事は無いので」

 

 メダイの村周辺のモンスターはレベルも高いのでトールバーナに着く頃にはレベルも1つ上がりLv.9となっていた。思わぬ成果にホクホクでした。

 無事トールバーナに着き、解散となる。

 

「それじゃあナ。またどこかで会うダロ」

 

「多分、そうなるとは思います」

 

 少なくとも10層までの知識を持っている訳だから、今後も付き合いはあるだろう。そう思いつつ、なんとなく遠慮したいなんて想いもあったがまあそれは諦めるとする。

 

「そういヤ名前聞いてなかったな。何て言うんダ?」

 

「カルシス、です。スペルはCalsisって書きます」

 

「Calsis…カルシス、ネ。改めて、オイラのはArgoダ。なんかあったラメッセージでも送ってくれヨナ」

 

「ええ。アルゴさんも気を付けてくださいね」

 

「アルゴでいいヨ。堅苦しいじゃナイカ」

 

「善処します」

 

 アルゴさんは歩き出すとフッと雑踏に消えた。『隠蔽』か、はたまた本当に隠形だったのか。

 それは兎も角、なんとなくだが長い付き合いになりそうな人だなとは感じた。




思ったより進まなかったどころか迷宮区にすら入りませんでした。次回こそボス攻略戦かな、多分。
それよりも、これで漸くヒロインはアルゴ(多分)と明記出来ます。
アルゴオネーサンの飄々っぷりはプログレを読んでいるとその場面だけ独特の雰囲気になるので分かりやすいですね。今回の話が少しでもその雰囲気に似せられていたら嬉しいです。
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