幼馴染のアーモンドアイが勝負を仕掛けて来た!! 作:グリザイユの牢獄
負けず嫌いのアーモンドアイからしてみたら料理の知識を蓄えようとするよね。
『早朝の朝』
「そう、ここだ。この時に全力で出し切れ…そして足掻いて進むんだ」
「はぁ……はぁ…っ!!アァァァ!!!」
きつい……本当にきついわね!!全身から本番でもないのにものすごい量のアドレナリンが出てるから痛みもないんじゃないか思ってしまうわ本当!!
トレセン近くの山道での全力トレーニング…これで20本目。普通だったら悶絶するしスパルタトレーニングの代名詞であるブルボンさんですらも耐えれられないかもしれないえげつない内容。
練習内容自体が高強度インターバルトレーニングな所もあるし汗もドロドロで…冗談でもなく正直言って本当に真面目にきつい。
だけど隣でバイクで並走してるお兄ちゃんは見破っていた。
「負けるな…俺を信じろ。後一本…お前の全力の全てを俺に見せてくれ」
「っ!!」
お兄ちゃんは完全にわたしの性格も分かりきってる。昔っから負けず嫌いなのを知っているからこそ無表情ながらも瞳を見るだけですごく期待してることが。真っ直ぐに私だけを見ているのを分かるから…
「負けないわよ!!!!!」
負けるもんですか…このまま屈するわたしではじゃないから!!
「朝練…終わりだ。おつかれさん」
1時間くらいの朝練を終えて6時頃にトレセン学園に無事に戻ってきた私達。
「後でスマートウォッチで状態の確認とノートに記録も頼む」
「分かったわ」
左腕には実はスマートウォッチをつけている。スマートウォッチ自体は知っていたけど基礎代謝や普段の運動強度、体の調子、運動時間、走行距離、消費エネルギー、血液や基礎代謝などをなんでも記録出来るって聞いた時は驚いたわ。
こんな便利アイテムがあったら喜んで使うわよ。マラソンランナーの人がつけてる気持ちをよく分かるわね。
それだけじゃない…お兄ちゃんが私に施すトレーニングは常人と遥かに異なる。
一つ前提の話をしましょうか?
ウマ娘というのは足はどちらかというと基本的には脆い方。
トレーニングっていうのはすればするだけ故障に近づいていくために『小さい負荷』でトレーニングをするのが当たり前という物。最もこれでも3年間トレーニングなんて行えばボロボロの足になって骨折したり屈腱炎になる。
だけどお兄ちゃんは違った。
私達は普通とは真逆な事をしているのだ。
それは単純…『高負荷のトレーニングを行う事で強靭な骨格に引き締められた筋肉のアーマー、極限まで洗練された体幹を作り巨大な基盤を作った上でさらに強度の高いトレーニングを計算的に行った上で、バランスを整えた食事とマッサージやサウナや酸素カプセル等の疲労回復を行って完璧で究極の肉体を作る』という事。
これについてお兄ちゃんは「怪我しないようなフォームを教えて尚且つ怪我をしにくい身体にするって言えば分かるか?」と言われたけどそこまで理解出来ないほど馬鹿ではないわよ。
むしろお兄ちゃんってクールそうな顔してかなり脳筋じゃない?って言ったら…お兄ちゃん珍しく小さく笑ってアイの額にデコピンした。
これ絶対お兄ちゃん気にしてるじゃん!心の中でポキッとなって傷ついてるよ多分!!
「トレーナー!料理でリベンジするわよ!!」
「いやいきなりか。流石に冷蔵庫の中身は…」
「あら?昨日私とお兄ちゃんで買い物行って材料も余ってるわ」
「……俺よりも知ってるんだな」
思わず感心した表情をわたしに向けるお兄ちゃんを見てるけど、昨日は私が料理をしたわけだし覚えてるのは当然よ?
「でもやれるのか?料理対決と言ってるがアイ…結構俺に負けてるだろ?」
「ふふん、言ってくれるわねお兄ちゃん?」
そう…お兄ちゃん、実は料理が昔からかなり得意なの。幼稚園の頃からお兄ちゃん自作のパンケーキやフレンチトーストやプリンをおやつとしていっぱいごちそうしてくれたし、両親が仕事の時に居なかった時はお兄ちゃんと夜ご飯を食べてた時もあった。
間違いなく経験としてはお兄ちゃんの方が圧倒的よ?
「お兄ちゃんが料理してる様子を見てからずーっと料理の勉強をしていたのよ?確かにお兄ちゃんの料理はずっと美味しいし1番のファンは紛れもなくわたしよ?それでもわたしは料理の腕もお兄ちゃんを超えるわ!!」
ふむ…と言わんばかりに考える顔をしているけどお兄ちゃんも少し楽しそう。みんな…お兄ちゃんが無表情なのが多いから不思議な人扱いしてるけど結構分かりやすいのよ?
わたし達はそれぞれ作りたい物を考えるとすぐさま食材を取り出す。
勝負の内容は『主菜』を作るということ。昨日に残ってる味噌汁やサラダもあるしご飯も炊かれてる。
だから単純…わたし達はひたすら主菜に着目できる。
「ふふん…どう?上手く出来たかしら?」
「なるほど…これセセリか」
「そうよ!」
アイが今回作ったのは『鶏肉を使ったガーリックポテト』
昔私が食べたある料理を私が好き好み私なりにアレンジした形。
わたしは研究していた中でこの料理は『山椒』をいっぱいかけて食べるのが本当に美味しいの!お兄ちゃん……食べてくれるかな?
「お兄ちゃん、あーん」
「……ん、あむ」
わたしが箸でお兄ちゃんの口にあーんとするともぐもぐと食べている。
「……美味っ」
「っ!」
「セセリの旨みをじゃがいもで吸い取り、アイが作った甘だれ…これのおかげでコクもある。材料には…はちみつとニンニクと醤油か?セセリ自体が脂が出るし全ての素材がそれを吸い取って引き締めてやがる。多分これ…スポーツしてる人以外でもおつまみとかにも行けそうだよな」
「いや本当……マジで、これ毎日食べてぇ…すげぇよアイ」
もうお兄ちゃんたらっ!ここまでべた褒めするなんて嬉しいじゃない!友達や見知らぬ人に褒められるよりもお兄ちゃんに褒められるのが1番嬉しいのよ!
「アイ…そんなに嬉しかったのか?よほど楽しそうに飛び跳ねてるように見えてんだが…」
「当然じゃない!お兄ちゃんに褒められると凄く嬉しいのよわたしは」
「そうか……良かったと言うべきなのか?」
「自分を卑下しすぎよ?次はお兄ちゃんの番!」
ニコニコと笑うわたしを見てお兄ちゃんはふぅ…人呼吸するとすぐさま材料をキッチンに置く。
「お前に欲の解放の仕方を教えてやる。1番美味い鶏胸の食い方さ」
「!?」
……雰囲気が少し変わった?まるで悪魔的…とも評せるような。すると続ける取り出したのは…大きな大きな鶏皮付きの胸肉。
「まずは皮を下にコイツを観音開きだ。その後ラップをして麺棒で叩く。とりあえず材料を補充してぇしアイ…叩きたいか?」
「え?…いいけど」
「ありがとう。頼りにしてる」
「そ……そこまで言われたらやるしかないわね!」
本当…お兄ちゃんに対して私はチョロいのかもしれない。褒められたり頼られたりするだけでここまで高揚するなんて…惚れた弱みかな。
その途中にお兄ちゃんはニンニク一欠片を潰してオリーブオイルで熱してるのが見える。
「これで良いかしら?」
「フッ………ちょうどいい。すぐさま肉の両面に塩ふたつまみをまぶして、片栗粉を両面にしっかりまぶすんだ。ニンニクに良い色目が付いてんなら…コイツを取り出して鳥胸を皮を下にフライパンに投入だぁ。同時にアルミホイルを被せて弱火で10分待てばいい」
アルミホイル……知ってるわ。アルミホイルの保温効果により、余熱がじっくりとお肉の中に浸透するだけでなく、肉汁を中に閉じ込める効果があること。
「お兄ちゃん……すっごく悪い顔してるわね本当」
「あぁそうかもな。アイのような現役の選手も見た目は体に悪そうな物を食わないとだからなぁ。とりあえずじゃんけんでもするか?」
10分後……
「アルミホイルを外して裏返せば…こうなるのさ」
「っ!!」
こ…これはっ!私の目の前にテレビで見るよりも間違いなく綺麗な狐色をした鶏肉!ジュ〜とジューシーな音を立ててまるで胸肉がもも肉なのではないかと勘違いしてしまうわ!
「やっぱお前のような年頃の女の子もこういうのは好きかぁ?ボディービルダー見たいな焼き色の肉は?」
「っ!!それはどうかしら?」
「嘘つくなよ?お前…今ワクワクしてるの丸見えだぜ?」
「!!!」
ば…バレてる!?確かに一目見ただけで美味しそうだと思ってしまう!それに私だって鶏皮とかたくさん食べようと思う時あるのに結構カロリー高いから少し気になっちゃう。
図書館に篭って知識を蓄えるようになったけど…それをしなくても分かる。
「これ……絶対鶏皮がおいしいやつじゃない!!」
「いい目してるな?アイの言う通りさ。ご飯をどんぶりに入れとけよ?」
「っ!!それが1番なのね?」
今のお兄ちゃんの表情はまるで悪魔…腹を空かせた子犬の目の前でおいしい餌を見せびらかしてるのと同じ!!!
言葉通りにご飯をたくさん入れるわ!スペシャルウィークさん達に負けないくらいに!!
「3分経ったか…なら火を消してとりあえず少しだけ切ってアイのご飯の上に…ほら。その後すぐさま香りの付いたニンニクを細かく刻んでフライパンへ」
『そのままフライパンに醤油大さじ2、砂糖を大さじ2…バターを10センチと柚子胡椒を入れる!…弱火でとろみがつくまでじっくりとな』
「……ゴクリ」
お兄ちゃんが何をしようとしてるのかよーく分かった。
これは完全に……『飯テロ』ね!!お腹が空いてるわたしを昇天させるつもりじゃない!?
スポーツ選手はサラダチキンで鶏肉を済ませる事はかなり多いけど…これは間違いなくチキン南蛮にするよりも間違いなくヘルシーな上に他の肉に比べて比較的安上がりな鳥胸だからコスパも良い!
しかも胸肉から得られる持久力は体感する以上に強烈…こんなの……こんなの!!!
「悪の美学…悪の流儀じゃない」
「いいね。野原ひろし─殺しの流儀みたいだな」
「殺しの流儀?何それ???」
「……悪い、聞かなかったことにしてくれ」
殺しの流儀は知らないけど、どうやら完成したみたい。
「よーく見とけよ?これが本当の鶏肉の食べ方さ」
あぁ……これ絶対に美味しい料理だ。ご飯の上で丼物として食べるこの感覚。しかもご飯にも鶏肉の旨みやタレが染み込んで……そんな事を思ってるとお兄ちゃんはわたしにお箸を渡した。
「いい事教えてやる。出来立て料理はすぐさま美味いのさ…逝ってきな」
私は立ち食い状態ですぐさま一口…いや2口3口と口に入れてしまう。
「……美味い。美味しい!!」
めちゃくちゃ美味しい!鶏肉系統はサラダチキンばかり食べるトレセンの生徒からしたら間違いなくこれは刺激が強すぎる!鶏胸肉がこんがり焼けて…しかも想像以上で濃厚で濃い味…
「俺よりアイの方が間違いなく美味しく感じるだろう。適度な運動した後はしょっぱい物を食べたくなるのが普通だ。そんな心の持ち主にはこれは間違いなく刺さるはずだぜ?」
不敵な表情をするお兄ちゃんは間違いなく悪だ…女の子なのに、出来立て料理をこんなにガツガツ食べるのは間違いなくはしたないのに……
「箸が……止まらない…胸肉とは思えないくらい唐揚げ感あって凄くジューシーで…この食感もお肉を食べてるって感じ……本当に…」
「……堕ちたな?アイ」
今日の朝食のアーモンドアイはいつにも増していい食べっぷりだった。
『本日の勝負』
飯テロ、悪だぜ?
その後…
お兄ちゃん「昼ごはん、弁当にさっきの鶏胸肉入れるけど食うか?」
アイ「!!!」尻尾ぶんぶん
お兄ちゃん「嬉しそうだなおい…」