幼馴染のアーモンドアイが勝負を仕掛けて来た!!   作:グリザイユの牢獄

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目覚める朝

目の前の少女の名はアーモンドアイというそうだ。マジの初対面に自分の名前を教えるという本当に危ないことをしてるが、何かの縁があったという事でいいだろう別に。

 

問題は目の前の女の子が迷子だということだ。正直に言って子供のウマ娘というかなり珍しい子相手にどう対応すれば良いかわからず大変だ。

 

最近になって兄貴分は出来ても妹が居ないのも拍車をかけている。

 

 

「パパ…ママ…どこにいったの」

「………親も白状じゃない(…はず)。もう少し待てばきっと会いに来てくれるだろう」

「本当?」

「そうさ…きっと(……そうであってくれ)」

 

実の親がいないからこそ、ちょっと分からないが馬鹿正直に「そんな事知らねえよ」だなんて言えるわけがない。おばあちゃんも小さい子には優しくしなさいと言ってたからな。

 

 

(さて…どうすべきなのか)

 

迷子のウマ娘の子と2人。ここから迷子センターはめちゃくちゃ遠いためこの子を疲労させるだけになる可能性がある。話を聞くに親と逸れたのはこの辺りのためこの場所に居るのが最適解だろう。

 

 

だが…このままいても不安を増長させるだけだ。

 

 

何か手段は…………あ。

 

 

 

「あった」

 

 

 

目の前にあったのは…ストリートピアノ。あまりにも目立つ場所にポツンとある大きなピアノ……これを利用すれば迷子の子の不安を取り除きつつ、保護者を見つけられるかもしれない。

 

 

「……しゃあないか」

「あれ……お兄ちゃん?」

 

 

ぎこちなく幼いアイの頭を撫でた俺は手を繋いで一緒に椅子に座る。子供がピアノを弾こうとする姿に周りの大人は微笑ましそうな目で見てるのだが舐めんなよ?

 

これでもピアノは大型大会に複数優勝した実績あるんだぜ?選曲のチョイスは…当時小学2.3年くらいだった時にめちゃくちゃ流行ったあのゲームの歌。

 

「ん?……これ」

「パズド○…パズ○ラか!?」

 

ストリートピアノがものすごい高い音と共に弾かれるのはパ○ドラのボスBGM。ミオン降臨でピアノ演奏してたあの曲…ソシャゲだけど本当良い曲なんだよな公式はドアホだけどさ。

 

いやもうオタクとしては昔のひげジジイの作曲した曲よりこういった物をひたすらやりたかったんだけどな!まぁいいか役に立ったし。

 

 

だ、だがこれでいい…わざと俺が全力で客寄せパンダになる事で人の気を引かせて彼女の親を見つけ出す。こっから世間体での有名曲を弾き続けた上で注目させる。隣のアイが楽しそうに声を出してはしゃいでるので余計に目立つのもデカい。ここまではしゃげば目立つだろう。

 

数曲くらい有名な曲やってればなんたかなるだろう思っていた時にワクワクとした顔でこちらを見てた。

 

 

「ねぇ…お兄ちゃん!」

「………どうした?」

「アイにもピアノを教えて!!」

 

………………え?マジで言ってる?悪いがこういう事言われるの初めてでちょいとばかし衝撃受けた。それ以前にここまで楽しそうに聞いてるのなんて見たことがない。

 

「さっきのすごーくきれいだった!アイもやりたい!!」

 

 

思わずどう答えるべきか分かんなかったが、無碍には出来ないしおばあちゃんや沖野の兄貴を思い出すように話す。

 

「なら……何をやりたい?どんな曲をやりたい?」

「うーん……あっ!ドラえも○!!さっきお兄ちゃんがやってたの!」

「あぁ『ひま○りの約束』か…ならこれは」

 

チラリと周りの人を見ると、近くのおばさんもどうぞどうぞと優しい顔でやっていいよという顔と共に仕草を見せる。うん……言葉に甘えて………いいのかな?

 

 

こうして少し時間が経った時に…

 

 

 

「アイ!」

「アイ!!良かった!」

「あっ!パパ!ママ!」

 

どうやらアイの両親がこちらを見つけたようで駆けつけて抱きしめている。アイの顔は泣くことは泣く、まるで楽しかったと言わんばかりに万年の笑みを浮かべていた。こちらからは聞こえなかったが声の波長的に楽しそうな反応だったのを見るに気に入ったのだろう。

 

最近見た奇妙な冒険のおせっかいな男のようにクールに去ろうとした時、アイの母親らしき人に呼び止められる。

 

「あの…君!」

「…………ん」

「アイを見ててくれてありがとう!貴方が居なかったら……ってあら?貴方…」

(………なんだいきなり?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしかして沙条さんのところの冬夜くんよね?」

「っ!?」

 

 

 

 

現在、アイの両親に連れられてお礼として俺含めて4人でカフェに来ているが、なんと俺が住んでる家のすぐ近くで住んでおり、引っ越してきたばかりの頃からおばあちゃんと仲よくしてもらったそうだ。

 

その縁もあって俺に関しての話も聞いており俺の顔のことも知っていたようだ。

 

おばあちゃんが入院した話を聞いて病院に駆けつけた時、基本的に他人に対してシャットアウト気味だった俺を心配してたおばあちゃんが、最近アイの両親達に自分に何かあったら冬夜をお願いと伝言を伝えられていたようでおばあちゃんが退院するまで自分達の家で過ごさないかと話をしようとしてたらしい。

 

……………うん、マジで知らなかった。他者との関わりを全くしてない故の弊害が出たな。

 

実際にしばらく一緒に暮らそうかと提案もされたが…結果としては今の自分は一緒に生活は断った。今の家を守るのが俺の仕事でもあるためだ。

 

だがその代わり自分たちの娘であるアイと一緒に遊んだりと過ごしてほしいと。

 

「お兄ちゃん〜さっきの続き教えて!!」

 

…めちゃくちゃベタベタしてるな。さっきのピアノが気に入ったのだろう。すぐ知ることになるが…当時住んでた家とアイの実家が2分くらいでいける距離だったから幼いアイが家に来てずっと一緒に遊ぶ機会がかなり増えた。住んでた所ではウマ娘の子供が、かなり少なかったのも大きいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

冗談かもしれないが真面目に言おう。

 

 

アイやアイの両親、沖野の兄貴と関わり始めてからほんの少しだけ真人間になったかもしれない。遅刻、サボり、ブッチからの早退などを計算しながら繰り返していた学校生活が、アイが学校に行こうと誘ったり、一緒に遊んだり図書室で勉強するなどを行い結構真面目に学校生活を過ごしてたと思う。

 

ウチの学校は幼稚園と小中学校が一貫してる珍しい公立学校だったために離れ離れになってなかったのだ。

 

 

沖野の兄貴と関わってからは外に出てない生活ばかりだったのが、色んなレース場やレース場の近くの有名スポットや穴場にも連れて行ってくれたし、全国各地を連れて行ってくれた時もあった。

 

兄貴は少し遠めの有名大学に通うことになったのもあって離れた時期もあったが、その分はアイが一緒にいてくれた。入院してたおばあちゃんに生活を報告した時もきつそうながらも嬉しそうな反応をしてくれたのも覚えている。

 

 

それにウマ娘であるアイと関わる中で色々気づけた事も多かった。

 

 

まず最初に感じたのが『アイの才能』である。

 

ある日…公園でリフティングをして遊んでいた俺とアイだが、プロサッカー選手が魅せプレイなるものを披露してたため俺が難しめにアレンジしつつ軽く再現した。

 

再現性0!やまぐれ!などと言われないように理論で説明し出来るように、再現性もきっちりあるようにしたため、めちゃくちゃ難しいなどと、言われていたがぶっちゃけ楽勝だった。

 

「凄い凄い凄い!アイもやりたい!!」

 

そんな中でアイは、楽しそうに自分もやりたいと言っていたが、正直内心の俺はこれ…できるか?と思うケースが何度もあった。

 

しかし彼女は俺の想像を上回った。

 

「これを……こうして、こう!!」

「………お」

 

なんと彼女はさっき俺が見せた魅せプレイを完全再現した。内心少し驚いたよ、4、5回くらい教えていたがまさかそれを成功させるとは思わなんだ。そして驚いたのはそれだけじゃない。

 

「ここの体の動きをもう少し柔軟に動かせばこの技ってほぼ常時再現出来るよね!」

「あぁ、後は蹴る時の当てる場所もだな」

「わかった!アイ頑張る!」

 

 

ここまで見てたら彼女の長所くらいは分かる。

 

彼女の強みは、ウマ娘達の中でもかなりの肉体の頑強さと同時に持った体の柔らかさだ。

 

真面目に言って反則だ…『筋肉や関節が柔軟で、可動域が広い』ため肉体も鞭のようにあらゆる動きが出来るだけでなく、かなり姿勢が良いというスポーツ選手の必要要素でありながら姿勢が悪い人が多いという矛盾を抱えた要素がある所がびっくりするくらい姿勢が良い。 

 

そして1番びっくりした点は、体が柔らかい割に、肉体ががっちりしてること。

 

体が柔いことの欠点は後のトウカイテイオーを見るのが本当にわかりやすい…それは突発的な怪我。柔軟性が高すぎると、関節を支える力が低下し、捻挫や脱臼などの怪我をしやすくなる。

 

それはウマ娘も例外ではなく普通トレーニングっていうのはすればするだけ故障に近づいていく、足は消耗品だから過剰なトレーニングをすれば当然骨折したり管骨骨膜炎を発症したりして走れなくなるのだが…アーモンドアイの肉体を見てるうちにびびった点がある。

 

それは彼女が体の柔らかさだけでなく、おそらく数多の同年代のウマ娘とは比べ物にならないくらいの肉体の頑強さ。それは過剰なトレーニングを何度もしても全くというほどびくともしないほど。

 

アーモンドアイという子は従来とはかけ離れ、テンプレでは止まらない子だ。

 

 

まさにスポーツマンが欲しいものを全部持った存在が目の前に居たのだ。

 

 

しかしそんな彼女にも軽く欠点があり、負けず嫌いが強いため頑固なとこがあるのと、1から無限に色々なことが出来る事はものすごく長けているが、逆に0から1にする才能があまりない事くらいだ(デメリットになってなくね?)

 

しかし俺がいればそんなデメリットは関係ないのでデメリットじゃないな。

 

「おー、すげぇじゃん」

「まだまだ!このくらいじゃお兄ちゃんには全然届かないもん!もっかい!もっかいしよ!!アイも新しいの作ってみたい!」

「………………」

「お兄ちゃん?」

 

 

(あら?この子気づいてないのか??与えられた1から己の負けず嫌いと共にあらゆる物を作り出す…複写に等しい己の類い稀ない才能に)

 

「いや、さっきのをもう少し精度良くしよっか」

「え?どういう事?」

「……まぁ一言だけ言っておくさ。自分自身の『原石』を見誤るなよアイ」

「???」

 

 

俺もアイから学ぶ事は多かったしあの時間は結構楽しかった。もしトレーナーになったら…アイみたいな子を担当してみたいものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが最も誤算だったのは…

 

 

 

「お兄ちゃんは……ずっとわたしの前にいてね。――……うん! いつかぜったいに追いこすけど、お兄ちゃんは追いこされないで!」

 

 

『くやしいくやしいくやしい~~~~っ!! もういっかい、もういっかいよ! わたしがかつまでやるの!!』

 

 

『――お兄ちゃん……大きくなったら、けっこんしようね。そうすれば、おとなになっても暗くなるまでしょうぶできるでしょ? まいにち、わたしがかつまで…ねむらせないから!』

 

 

「お兄ちゃん、アイとずっといっしょだよ!!」

 

 

………………思ったより懐かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなある日…俺は自分の貯金通帳を見た。

 

「この額は…良し!これで行ける!おばあちゃんの病気の手術も出来る!これで…これで病気も治るんだ!」

 

俺は喜んだ。おばあちゃんの手術費も無事に手にして、これさえ払えばおばあちゃんは元気になる。

 

そう思った矢先電話が鳴る。

 

 

「………はい、沙条」

『その声は冬夜くん!?』

「アンタ…おばあちゃんを担当してる看護師」

『おばあちゃんの容体が急変したの!呼吸をしてないの!』

「……………は?」

 

俺はすぐさま電話を切り、自転車に乗って猛スピードで走り出す。初めて本気で慌てていた、桜の日が近い美しい春であるはずなのにこの悪寒。

 

病院についた時、看護師を見つけたときの顔は、まるで俺に対してなんと言えばいいのか分からない…悲しい顔をしてた。意味が分からず無視して行こうとするも、待ってと手を掴まれて呼び止められて、案内しないといけないと告げられて渋々着いていく。

 

 

地下に降りて…寂しい空間に連れて行かれるとそこは『霊安室』という表記。

 

開けた時にそこに居たのは………………

 

 

そこから先の記憶や俺の人生は…俺が荒れていたのもあったから思い出したくないし、あまり言うべきではない。

 

いつか心決めた時に話そう。

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん………ここは?」

 

そこは光の海……まるで美しくも狭間といえる、三途の川のような物だろうか?俺は眠っていたのだろうか?

 

『………夜』

「………なんだ?」

 

「「冬夜……冬夜!」」

「冬夜!起きて、冬夜!」

 

 

「………誰だ?」

「冬夜…私だ」

 

目の前に3人居た。

 

2人は写真で見たことがあるだけだが俺と容姿が少し似た所がある2人。そしてもう1人は俺が幼い頃にずっと一緒に居てくれた…初めて俺がその最期を見た時、絶叫に等しい叫び声をあげた唯一の…

 

見間違えない…幼い記憶といえどこれだけは消えなかった。

 

「父さん、母さん…おばあちゃん!」

 

目の前に居たのは俺を産んだ父と母、そして親代わりになってくれたおばあちゃんの姿。おばあちゃんを見た時俺は泣きたくなったのだが思いとどまり思う……その姿が見えたという事は俺はもう。

 

 

「そっか………俺はもう死んだんだ」

 

思うところはある。俺は死んだのだろう、ならもういいじゃないか、死人は死人らしく大人しくすべきだ。

 

 

そう思っていた時、父さんは俺に告げる。

 

「いや、お前はまだ死んでいない」

「は?どういう事だよ、俺はもう死んだはず」

「まだだ…今のお前は魂だけが肉体から離れた状態。だが体は無事だ…この道を戻っていけばお前は目覚める」

 

「………もういいよ俺は。もう体は動かない。それにさ…やっと家族に会えたんだ。俺を必要としてる人も居ない、みんな俺が居なくても前を進める」

「諦めるな冬夜。お前にはまだ役目が残っている」

「勝手な事言わないでくれよ。父さんにも母さんにも…おばあちゃんにも謝りたいことがいっぱいあるんだ、本来なら3人に顔向け出来ないのに…俺が居なければ3人はきっと幸せに暮らせたはずなのに…」

 

後悔の念が強くなる。自分が居た事で俺を庇い死んでしまった両親、両親の死の真相を俺が知り苦しい思いをし続けて死んだであろうおばあちゃん。

 

謝らないといえない…謝って俺は、この思いを…後悔を…

 

 

「冬夜………」

 

下を向いていた俺を父は呼んだため俺は見上げると、父は俺の頭に優しく拳骨した。

 

「……え?」

「やはり……俺は実の息子に、成長したといえどビンタは出来ない。…もはやそんな資格はない」

 

父がそんなことを言ってると優しく涙を流して母は抱きしめ、おばあちゃんはあの時の笑顔のままゆっくりと頭を撫でる。

 

「謝るのは私たちの方。ごめんなさい…ごめんね。そばにいてあげられなくて。貴方を守れたと思ったのに…それが逆に貴方に辛い思いをさせてしまった。寂しい思いを1番していたのは貴方のはずなのに。でも1度でも…私たちを追いかけてありがとう」

 

「冬夜…最後まで居てあげられなくてごめんねぇ。私たちと一緒に過ごすのはもうちょっと先、貴方にはまだやるべきことが残ってる。こっちには来てはいけないの」

 

 

「なんで……俺もそっちにいくよ。俺だって家族とゆっくり過ごしたいんだ」

 

 

俺にはもう未練がない…かもしれない。だがそれでも両親に会えたという喜びが勝った。やはり……俺もどこか家族に対する恋しさがあったのだろう。

 

 

「あぁだがそれは今ではない、お前はもう自由だ…もう私たちに対する後悔は捨てるんだ。何も諦めなくていい…真冬の美しい夜空のように、人の心を…大切な物を導き照らすのだ。お前には…残しているものがあるだろう」

 

「残した………物?」

 

 

 

 

父は掌を前に出すと映像らしき物を見せる。そこには死んだように眠る俺と、夜の中でたった1人、涙を流して俺の手を握り続け泣き腫らしているアーモンドアイの姿があった。

 

『お兄ちゃん…起きて、起きてよぉ……約束したはずよ、これからもずっと一緒だって……この手を離さないでって…….兄ちゃんに任せとけって言ったはずなのに……やだぁ…嫌だよ!置いて行かないでよお兄ちゃん!!』

 

『死んじゃ嫌だよ!起きてよお兄ちゃん!またアイに優しく頭を撫でてよ……もう1人にしないでよ』

 

 

病室の中で俺の目覚めを何日も何日も同じ場所でずっと待ちながら泣いているアイだけじゃない、映像を見ていくと、起きてくれと何度も叫ぶ沖野の兄貴。

アイの隣で泣きながらひたすら呼びかける斉藤さん、有マがあるんだぞ!アイちゃんの勇姿を見なくてもいいのかよ!起きてまたリベンジさせてくれよ!と叫び続ける、様々な界隈で知り合った仲間や関係者。

 

アイを心配すると同時に、アイが看護師に連れられて少し離れた時に「さっさと起きんかいな!アンタの事が大好きなお姫様がずっと泣いとるんやぞ!なんで1人にしてはるんや」と声かけをするラッキーライラックや彼女の同期達。

 

少し悲しそうな顔で花束を起き、不器用に立ち去っていく龍斗と「貴方が居ないと龍斗さんはものすごく退屈そうですよ。目覚めて貴方とアイさんの2人で全てをぶつけに来なさい」と心配した顔で見ているスティルインラブ、その隣で「君はツンデレかい?」と龍斗に話しかけてるアグネスタキオンの姿。

 

冬夜が思った以上に…多くの人物が彼のお見舞いにきていたようだ。

 

 

本当に情けない…思い出した…あの時のアイとの大切な約束をなんで忘れていたんだろう。

 

気持ち悪い?誰がそんな事を思えるのか、俺はそこまで白状じゃないぞ。

 

「………なんで」

「お前は…誰にも必要ないと思っていたのかもしれないが、そうではない。お前が居た事で影響を受けた人も少なくないのだ。お前は…自分が思ってる以上に必要とされているんだぞ」

 

「冬夜、貴方は私たちの分まで幸せになって欲しい。きっと…貴方の旅路は長い道のり、苦しくて辛くなる事もあるかもしれない。だけど…冬夜、貴方なら、冬夜ならどこまで行けるわ!」

 

 

「夢見た場所がどれだけ遠くても…冬夜ならきっと辿り着ける。貴方が帰ってくる場所はここではない…大丈夫。私たちもずっと隣に居る」

 

「……居たのかよ。俺のことを大事な人だと言ってくれる人が……必要としてくれる人がいたのか。それに……」

 

約束を果たさないといけない…2度も破ってしまったのだ。

 

 

今度こそ、あの子の隣に居るために。

 

 

 

「お前の役目は……まだ終わっていない」

「そっか。全く…厳しいな。ごめんな…立ち止まりすぎてた。目が覚めたよ父さん、母さん、おばあちゃん。どうやら俺の役割はまだ終わってないみたいだ。ごめん…しばらくは3人にまた会えない」

 

「あぁ……それでこそ私の息子だ。後悔ない人生を歩んで欲しい、そして最期まで歩き続けた旅路を…ここに来た時に話しておくれ」

 

「もう……時間みたい。私たちの分まで強く生きて!もう…私たちができるのはこれしかないから」

 

「っ!?父さん!母さん!おばあちゃん!!」

 

 

目の前に居る父と母と祖母の姿がだんだんと薄くなって消えていく。それはまるで光の粒子のように、それは冬夜を包み込む。

 

 

「私たちはいつでも貴方のそばに居る!」

「行ってこい冬夜!全宇宙がお前を待っているぞ!」

 

 

「「「冬夜!!」」」

 

 

 

 

………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

『病室』

 

「はっ!」

 

俺は目覚めると、早朝の朝だった。

 

体が重かった……頭が痛くて、腕も重い。どうやら体に包帯が巻かれている、右目を覆うように包帯が巻かれていた。

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……今日は何日なんだ?……これは」

 

 

時計を探して日程を見ようとした時、『お兄ちゃんへ』と記された紙があった。

 

『お兄ちゃんへ、もしもこの手紙を見てる時は有マ記念当日、わたしは今頃沖野トレーナーの車にスピカの皆さんと一緒にレース場へ向かっている事でしょう。でも正直言って絶不調です。体が重くて、苦しくて…辛いです。でもこんな事言う資格なんてない。私のせいだもん…あの時もっと早く動けてたら…お兄ちゃんは事故に巻き込まれずこんな辛い思いをしなくて済んだのに』

 

 

『ごめんね…ごめんなさい…お兄ちゃん….会いたいよ、起きて元気な姿を見せて欲しいよ』

 

その手紙には、明らかに濡れたような…涙の跡が分かりやすく見える。だが…それ以上に驚いたのは内容だった。

 

 

「え……なんで、なんで……お前は…お前のせいじゃない…何も悪くないのに……っ!」

 

いや、これはまるで俺じゃないか…両親の死に自責の念を持っていた俺のように、事故に巻き込んでこんな状態にしてしまった俺に対して後悔してるのか?……そんな事、そんな思いしなくていいのに。

 

 

約束を破って…また俺はアイを1人にしたんだぞ!!なんで……どうして!

 

「なんで……なんで……」

 

俺の頬に流れるのは……涙だろう。こんな涙を流したのは…いつぶりだったか、あぁ…霊安室のあの時ぶりか。

 

「グスッ……何が兄ちゃんに任せとけだよ!いつも俺は…アイ達に助けてもらってばっかだったのに!くそ……情けねぇよ……本当に」

 

 

自分が惨めに感じてしまう、だがそんな暇はない、時計を見たら日程が有マ記念当日…あの手紙の事は本当だった。

 

今、少し混乱気味であっても分かる。アイが俺に助けを求めている。

 

 

「行かなきゃ……あの子のところへ」

 

 

無理やり起き上がるとすると体が重くて思わず膝から崩れ落ちる。だけど………この程度は今のアイの苦しさに比べたらどうって事はない。

 

近くにあった杖を片手に重しのように立ち上がり、呼吸を荒くしながら歩き出す。偶然目の前にあった己のスマホを手に取り『ウマイン』を開き連絡を入れた。

 

 

「待ってろ……アイ」

 

…………………………………

 

 

 

 

斉藤さんへ……

 

俺だ、冬夜だ。アンタならこの時間には仕事してんだし起きてるだろ?それに今日は有マ記念を見にいくから尚更だ。斉藤さんもみんなのために車を出すだろう……だから大至急頼みがある。

 

俺はさっき目覚めた。アイの元にすぐさま駆け付けないといけない…だから車で送ってほしい、この地図の点の所に来て欲しい、病院の裏口だ…ここは警備員が居なくてずっと入り口が空いてるんだ。

 

 

いつもごめん、今日も頼らせてもらうよ。

 

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