幼馴染のアーモンドアイが勝負を仕掛けて来た!! 作:グリザイユの牢獄
理事長室……そこには4人がそれぞれ席に座っていた。
難しい顔をしてる理事長、隣に居るのは本当になんとも言えない顔をしている秘書もとい緑の悪魔たづな。
対面にいるのは『ギロッと睨み腕を組んで見ているアーモンドアイ』と『あたふたしながらアイを宥める冬夜』の姿だった。
「チッ、んなことが起きてたまるかよ」
「お…お兄ちゃん落ち着いて」
「う……うむ。実に!実に違和感!!」
……普通だったらおかしい。
どうあがいても逆だろう?冬夜が理事長を睨むとは想像つくがその逆は想像つかない。宥めている冬夜もそうだ……まるで真逆の態度。
だがその理由はすぐに分かった。
「今のアイさんがトレーナーさんで、今のトレーナーさんの中身がアイさんということで宜しいのでしょうか」
「………チッ、クソ龍斗が」
「…」コクン…
たづなの反応に対してアイ(冬夜)は少しだけ舌打ちした後、イラつきながらも睨んだようにスン─とそして冬夜(アイ)は恥ずかしそうに頷く。
明らかに本来の精神の持ち主ではしない挙動と反応のためもはやビンゴだが、理事長が何度か質問をして互いに白だというのを理解した。
「2人とも入れ替わっているというのは本当のようだな」
「……………」
「はい、信じてくれて助かります」
入れ替わり…アニメとか漫画がやってる時に必ず出される話。ぶっちゃけ言うとテンプレだ。何故こんなことが起きたのかは端的だ。
龍斗とタキオンの実験薬が思ったよりやばいのが出来たという噂が来て駆けつけたら同時に冬夜とアイが青い気体を吸い込みこの始末。
この後「ほう…まさかこんな化学反応が?ちょっと人体調べさせろ!」などと抜かした龍斗をアイの肉体の冬夜が回し蹴りしたのは言わんこっちゃないがそれを軽々避けた上で連続で空中二回転蹴りで蹴り抜こうとしたアイ(冬夜)を受け止めた龍斗もだいぶおかしい。実際見ていたタキオンと冬夜(アイ)は引いていた。
だが、本当に起きたとなればやはり混乱してしまう。
先んじて理事長には事情を伝えて、今後の話し合いをする事になったが流石にあの理事長を持ってしても入れ替わりの事象は初で悩んでいた(あってたまるか)ため考えていたが最終的に龍斗とタキオンが薬が完成するまでこのままになった。
余談だが、ウマ娘になった肉体で龍斗トレーナーをボコボコにしようとするのはやめろと理事長に釘を刺された。
そして現在……
「マジでどうすんだよこれ…」
トレーナー室にてアイの姿で本気で項垂れるアイ(冬夜)に反して、不思議そうな表情をしながらも楽しそうな様子の冬夜(アイ)の姿だった。
「……こんな不思議な状況なのになんでそんなに嬉しそうなんだよ」
「えへへ、だって事故でこんな事になったけど、男の人ってどんな感じなのか体験してみたかったの!お兄ちゃんってやっぱり筋肉ちゃんとつけてるのね!でも体が少し違和感があって重いわ!」
「跳ねるな跳ねるな」
「お兄ちゃん見てみて!お兄ちゃんの綺麗な緑の目!」
ぴょんぴょんジャンプして楽しそうな表情を浮かべる。
食事を終えて、ミーティングとゲームを遊んで風呂に入ろうとしたその瞬間…突如もぞもぞとアイが恥ずかしそうにする。
「……アイ?」
「お兄ちゃん……トイレ」
「……??」
「トイレ!トイレ行きたいの!!!」
「………は?」
「お兄ちゃん!!トイレ!トイレ!」
「……まさかアイ」
ブルブルと震えて涙目になっているアイを見て嫌でも察してしまった。
「どうしよう……やり方分かんない」
「っ!!」
冬夜は速攻で自分の姿となったアイの手を握り、トイレに直行する。男女性別逆になった特大の影響がまさかトイレだとは思わない。ブルブルとアイは震えながら下半身を抑えるも冬夜によってすぐさまズボンのベルトを緩めてそのまま部屋にぶちこまれる。
「…………はぁ」
自分の肉体になったアイをトイレに捩じ込み、部屋の近くで大きなため息を吐いて地面にすわりこむ。
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「??…………どうした?」
自分が女のような女々しい声を出してる様子は気持ち悪さすら感じるもすぐさま呼びかけに答える。
「ついてる!!なんかついてる!!」
「ついてる?何がだ?」
「あ…えっと!これよ!アレよ!!!!」
「いや何がだ?ついてる物なんて色々あるぞ?」
「男の象徴!!アレよ!!何よこれグロイ!!」
「………………」
「お兄ちゃん助けてよ!!」
…………………あぁはい。と言わんばかりに察する。アーモンドアイは分かんないため仕方ないかもしれないが男には立派な物があるのだ。流石にグロイと言われると傷つくが初めて見たらグロイだろう。
「ちょっと!!お兄ちゃん来て!!」
「はいはい」
「いやぁ!!見たらだめ入って来ないで!!」
「どっちなんだ!?!?」
「お兄ちゃんのエッチ!変態!!スカしてるけどアイの事大好きなの知ってるからね!?」
「……………スカしてるのは余計でも最後の部分を分かってくれるならなんでも良くなったな」
まさかトイレだけでこんな地獄絵図になるとは2人は思わなかった。
このままでは不味いと察した冬夜。ただでさえトイレでこれだけごたついたにも関わらずしばらくはこの姿のまま過ごさないといけないのだからアイのスマホを使って2名呼び寄せた。
ラッキーライラックとブラストワンピースだ。
「……………………」
「あ…アイさん??」
「アイ、顔が怖いぞ??」
「………さっさと座れよお前ら。突っ立ってねぇで」
「………はぁ?」
(アイさんの声のトーンやないし、そもそもあの人はあんな殺気こもった目で見てこないし、まるであの人みたいやな…それとは真反対に)
「ちょっとララァ!ブラスト!!アイ達を助けてよ!!」
「あかん…なんか絵面終わってるわ」
(ちょっとやめなはれや不思議なお兄さん。みっともない姿見せたらあかんよ?)
「お兄ちゃんやだぁ!ララが酷いの!!」
「いや絵面が終わってんのは否定できねぇんだよ」
「なんか……互いの精神がまるで逆になってるみたいだな」
「ブラストさんの言う通り、まるで見た目だけが入れ替わっとる感じがするわ」
「「!!」」
ブラストの発言に対して思わず立ち上がり見た目が冬夜なだけのアイがラッキーライラックに肩にしがみつく。
「うわぁぁん!ララとブラストは分かってぐれだぁぁぁ!!」
「ちょ!?なんやねんどうなってんや!?」
「アイも色々あったんだ。そっとしといてやれ」
それを言ってるのはアイであり机に座ってデッキ片手にシャカぱちしているのだが……まだ精神が入れ替わってる事が完璧に把握してない2人は本気で困惑状態に陥っていた。
「アイ…いい加減に伝えるぞ。困惑してる」
「いやあんたアイさんやろがい」
……………………………………………
「つまりあんたがお兄さんで?そこで指をツンツンしてるお兄ちゃんの中身がアイさん??」
「……うん」
「普通だったら面白いと思うかもしれないけど、こういう現象を直で見てしまうと不思議な感覚だ…ブーは不思議なものを見てるぞ。つまりは…君の名はってやつだな!」
「ブラストワンピース…テメェの言う通りだな」
見た目アーモンドアイの目つきがギラつき言動が荒くて、見た目お兄ちゃんの様子がかなり女々しいこの光景はやはりブラストとララを宇宙猫と同じ感覚にさせるもここまで様変わりしてるのなら信じるしかない。
「要は、ウチらと理事長な秘書さんには事情を伝えてる故に、あのお二人さんが薬を完成させるまでサポートしてくれという事でしょう?」
「話が早くて助かる。あのアル中ヤニカスパチンカスとタキオンが何とかしない限り一生このままだからな」
「………あかん。調子狂う」
「アイはヤニカスとみたいな悪い言葉は使わないぞ…」
「しゃあねぇだろ…中身俺なんだぞお前ら」
「お願い!お兄ちゃんの学園生活をサポートしてほしいの!」
アイからも心配なのか本気で懇願されるがララだけは冷静に思ったことを伝えた。
「この人といえどほんの少し前までは高校生過ごしてはった。なんだかんだ言いながら高校生としての経験は残ってるはず。なのでウチらが何とか見守る形で過ごせば終わる「………と思えればまだ良かったのよ」は?」
彼女の言い分は間違ってない。普通の高校生はまともな学生生活を過ごしてる上に、冬夜は20になってないまだまだほやほやの社会人だ。学生時代の記憶があるだろう。
冬夜が『まともな高校生時代を過ごしている』ならの話だが?
冬夜は高校時代は、実家から離れて当時はバイト、今では正式な研究員として過ごしてる研究所の近くのアパートで生活費が全面サポートの状態で暮らしていた。高校もちゃっかし全国有数のトップの高校の主席なのだが冬夜にとってはクソほどどうでもよいことだ。
まずは高校1と2年。冬夜は学校の中でしっかりと勉学に励んで…いるわけない。
理由は単純…入っても学校はクソほどつまらなかった
高校に行ってもなんの楽しさもなかったようでクラスの友達もほぼ居なかった。バイトは校則の都合上自由のため咎められなかった上に、研究所の仕事を理由に合法的に公欠で休んでいた。なんなら学校サボってカードゲームの大会やら格ゲーの大会やら、研究という名のバイトなど趣味に明け暮れてた筋金入りの素行不良だ。
テストに関しては高校の勉強をしなくても知識は元々貯蔵はあったため普通に学年トップに居たのだから当時のクラスメイト視点腹立たしかっただろうに。
アイちゃんをもってして「趣味に打ち込むのは良いけど限度があるわよ!?」と言わしめたほど。
高校3年…受験シーズンである。
尚この時期が最も学校に居なかった…主に2年生の最後に現れた絶望神サガのせいで。そのため8月まで学校行くよりカードに触れてる方が遥かに多くトレセン学園の多くの生徒どころか冬夜を推すファンやリスナーすらドン引きする生活をしていた
高校時代は楽しかったという質問対して『まぁ楽しかった』というが半分本当半分嘘で、趣味とバイトでの研究が楽しかったのであって学生生活が楽しかったと一言も言ってないのだ。
「「「…………………」」」
冬夜の高校生活の全容を知ってたアイはともかく、ラッキーライラックやブラストワンピースにとってはあまりにも終わってる生活のため絶句するしかない。これなら遊び呆けてる大学生の方がまだ可愛げあるだろう。
マジもんの社不という物を見せられてラッキーライラックは頭を抱えた。
「あかん……先が思いやられる」
…………………………………………
「お兄ちゃんおはよ…」
「おはよ、目が覚めた?」
「うん…」
朝練がオフの日。起きる時間の癖で5時に起きたアイは目の前に用意された食事を食べ終えるとそのまま冬夜のスーツを着る。
その後はアイの姿になった冬夜をおとなしくさせてトレセン学園の学園の服をゆっくりと着せる。
「アイ…ブラとかつけたくない。てかなんか重い…」
「ダメよ。こう言うのをつけるのにもちゃんと理由があるのよ?」
「そうだけどよ…感覚知らないから気持ち悪いんだよ」
ブラをつける野郎など大抵は居ないしオカマくらいだ。スーツをピシッと着て、目つきなどの欠点もなくなり…もはや欠点のないイケメンというメロ男になったアイに対して冬夜は完璧な優等生であるアイのおかげで、無事に女子高生デビューを果たす(冬夜「デビューしたかねぇよ」)
「うし……行くぞ」
2人は無事にトレセンに行こうと部屋を出て行き、2人で行こうとする。
「とりあえず俺は…乗るか」
「ダメよ!!絶対ダメ!!」
開始早々、アイの姿のまま…冬夜は何食わぬ顔でNinja H2 SX SE+という自分のマイバイクに乗って行こうとした。
もちろんアイによって止められる。冬夜の姿ならともかくアイの姿だと未成年による無免許運転である事をすっかり忘れていた。
…………………………………
「……………………」
1時間目の授業…ラッキーライラックは隣の席のアイもとい冬夜を見ていた。
いつものアイなら真面目にキラキラとした目で呆れるくらい授業に取り組むが
(な…なんや、やる気なさすぎやろ)
冬夜のやる気がかけらもない。目が死んでるし冬夜がアイのエミュをする性格ではないのは知ってるがやる気無さすぎる。確かにほんのたまにチラ見してノートにまとめているが、頭良い人間の特徴というか…独自性が半端ない。
なんなら明らかに高校や大学で習うような公式で省略的に解きまくってる…思わずラッキーライラックもずるいと内心毒づく。
「……ふぅ」
そんな時に授業中にも関わらず冬夜は立ち上がり、教室からスッと消えていく。
「ちょっと?アイさん?どこに向かうのですか?」
「…………」
「アイさん!?どこに向かうのですか!?」
「………どこでもいいだろ」
思わずクラスメイトもざわざわとする。あの優等生のアーモンドアイが今まで何も言わずに教室を出る事はなかったのだから驚きだ。ラッキーライラックはブラストや教師に一言言って後を追う。
ラッキーライラックが追いついた時は、冬夜は屋上で呆れるほどにだらけていた。
「アンタ……何してるはるん?」
「はぁ…授業だるすぎる。ほら、やるよ」
冬夜は手に持っていた飲むヨーグルトをライラックに渡して隣に座れよとスペースを開けて2人で飲んでいた。
「……お前らってあんな面倒な授業受けてたんだな」
「ウチとてしんどい思てるけど頑張ってるんやさかいもうちょいきばってや」
「まともに授業受けた事が少ない俺にそれ言うか。ただでさえ簡単なのにつまんないワンパターンの授業受けろとか罰ゲームだろうて」
「アンタ、それウチどころかアイさんも敵に回しとるで???」
「あの数学担当さ、シュレック見えて内心吹き出しそうだった」
「やめい!!ウチも思ってた事はっきり言わんといてや!!」
思わずゴホッゴホッ!咳をして笑いを堪えようとするライラックにスン…とした顔をしたまま冬夜は黄昏る。アイの姿をしつつもいつもの可愛らしさとは裏腹に今の雰囲気が沈黙が似合う瞳のためか可愛いよりイケメンが勝つ。
「ふぅ……学校生活ってこんな感じなんだな」
「あら?今更学生時代の後悔でもしてはるんです?」
「な訳あるか。アレはアレで楽しかった」
「そうですか。真面目に不真面目とはこないな事かいな」
「おいお前……ちとばかし付き合え」
「あら?もうお戻りに?」
「アホかお前は、授業に飽きたから今日はサボるんだよ。アイの様子でも見に行くぞ」
「……ちょ、アンタ正気かいな!?今日は6限あるというのに残り5限全部ばっくれるん!?」
「つまんない物やってもつまらんだろ。他の授業なんざ先公どもより俺の方が教えるのが上手いから安心しろ。勉強なんざ好きなだけ教えてやるしこんな機会なんだ…テメェも派手にサボりに付き合えや」
冬夜はアイが絶対見せないだろうあくどい笑みを浮かべて屋上のゴミ捨て場に飲み物をゴミを蹴って入れた後に歩いていく。ラッキーライラックも慌てながらも冬夜の後を追っていく。
見た目が完璧美少女のアイになっても冬夜は冬夜である。ブレへんなぁ…と言いながら冬夜がやらかさないように見守り役を託されたラッキーライラックは内心先生や自分のトレーナーに謝罪しつつ彼の後を追った。
「おいラッキーライラック…一個提案があるんだよ」
「ん?なんどす?」
「このまま入れ替わったまま生配信してやろうか?ちょいとばかり遊んでやろうかなって」
「……………絶対やめときアンタ」
さらなる大波乱が襲いかかる事はまだ知らない…
沙条冬夜(アーモンドアイ)
アーモンドアイの姿になったお兄ちゃん。目つきが悪くなり、やさぐれたような様子。アイちゃんと決定的に違うのは、彼女の瞳の輝きが漆黒に煌めいてる。入れ替わったとて自分がやる事は変わらないためブレないが、それはそれとしてラッキーライラックは振り回す。
なんだかんだ言いつつアイの完璧なエミュは出来るが趣味ではない。
ウマ娘の肉体になった事で某ヒトヒトの実のモデルニカみたいな思考になってる。
アーモンドアイ(沙条冬夜)
見た目はお兄ちゃん、心はアイちゃん。動きや言動が少女らしくなってるが冬夜のあらゆる欠点が消し飛んでる。現在自分が思ってたより1000倍以上に多忙で内心結構疲れてる。
「じゃあこんなに大変な仕事してるのに平気な顔してるお兄ちゃんってなんなの??」
尚…生配信やら模擬レースやらトレーナー会議やらその他やらなきゃいけない事が待っている