幼馴染のアーモンドアイが勝負を仕掛けて来た!! 作:グリザイユの牢獄
少年時代に実の親が死んだ上で凄惨な虐待受けて、親の愛というのをきっちり受けた事ない状態を維持したまま精神ダメージこびりついてる人に未来からお前の息子だよって言われても普通は不安しかないんよな。きっと
まぁ…それでも、自分に息子が居るとなったら頑張るだろうなと思う。
「………………」
冬夜は朝練を急遽終えさせるとトレーナー室でかなり苦しい顔をして考えていた。
(俺の……息子)
「まじか……俺に子供が出来てるのか…まぁ…そうだよな」
自分の現状を試みてなんとなく察してはいたが、自分に息子がいるなど想定外を通り越して内心空いた口が開かない。
当然大人の階段など登ってないし、それ以前に他人に興味なしの権化みたいな男にとっては驚きしかない。
「父親……か」
冬夜にとって父親というのはかなり複雑な存在だ。愛も憎悪も夢も…渇望も色々な感情を植え付けた存在。己の手の震えを無理に押さえつけながらも己の息子だと言う少年の方を見る。
「へぇ…この部屋って昔からだいぶ綺麗だったんだな。……やっぱりお下劣な本とかどこにもないの怖すぎだろ」
……あの野郎は何をしてるんだと言いたくなる。未来の俺もだがアホどもが18禁の本を見せびらかしたりお披露目する中で俺だけは興味も関心も湧いた事もないのは良かった……のか?
「なぁ親父、EDなの?」
「黙れよガキが」
お前が居るなら俺はそういう行為はしてねぇよと毒づく。その様子に少年はいつも見てるよと言わんばかりの顔をして笑う。
(……その笑顔。本当にアイそっくりだな)
「それで…なんでお前はこの時代に来た?」
「え?暇つぶし」
「は?」
目の前のアホンダラはなんと言った?暇つぶしと言ったか?
「暇つぶし。昔の親父と母ちゃんの面を見たくて来てみた」
「……なんだその理由」
「簡単な物だと思うのだよ。好奇心さ」
「何を使って来たんだよ」
「タイムマシン」
「「………なんて?」」
「10年後にタイムマシン出来たよ」
おい………このクソガキは目の前でなんと言った?
「いやどういうことなんだよ!!タイムマシンあるなら未来からの人間が来て……いや目の前に確かに来てるしそれ以前にタイムマシンの写真があるはず!」
「そりゃ作られたばっかだからな。俺はあくまで試運転して動くのかという実験の参加者だし。法律もそれを見越して成立させてんのよ。あっ、一応俺の右手にある装置は強制的に俺の時代に戻ることが出来る装置な」
「なんだろ。情報が多すぎてもう聞きたくない」
「ちなみにタイムマシンを作る協力者兼タイムマシンを作る設計構造を作り上げただけじゃなくて膨大な資金援助をした第一人者はりゅー兄…龍斗くんだぜ」
「あの野郎何してんだよ!!」
まさかの事実に冬夜が本気で頭を抱え出した様子にアイが落ち着いてと諌める。
「ふぅ…落ち着いてね。とりあえずアイからも聞きたいことがあるんだけど…」
「次は母さんか」
「か…母さんって////……コホン。まず何故貴方がウマ娘と同じくらいの速さで走れるか聴かせてくれないかしら」
「単純に言えば突然変異ってやつだよ」
「突然変異??」
「世の中ってのは不思議でね…人類史の長い歴史も証明してるけど時よりとんでもない存在ってのが産まれるんだよ。昔で言うとダヴィンチだとかノイマン、シモヘイヘだとかさ」
「実は俺もその部類でね。意外と居ないんだぜ?男性なのにウマ娘と同格…下手すらそれ以上の身体強度や身体能力を持つ男って」
「!!」
「……なるほどな」
アイがやっぱりと言わんばかりの顔をする中で冬夜がスマホ画面を見せるとあるニュースが流れている様子だった。
「とある少年が高層の建物から飛び降りて無傷、それだけじゃねぇ、居眠り運転で完全にスピード違反した車を蹴り飛ばし無理やり止める…その他にも屋根を軽やかに飛び乗って移動してる様子…後はアスリートのウマ娘でもこじ開ける事が出来ない、所有者もなく誰も住んでいない空き家のドアを鍵ごと破壊してこじ開けて宿代わりにする…後は人間じゃ絶対出せない…ウマ娘が走るスピードで爆走してる様子とかな?」
「……めちゃくちゃじゃない」
アイですら思わず笑えないわよ…と驚くような反応をする。まぁ1番驚きなのは都市伝説になるレベルのめちゃくちゃなやらかしをしまくってる少年相手に引き分けまで持ち込んだアイである。
ウマッターやウマスタでもかなり話題になってるようであり、これらは「Aiじゃない」と判明した時は大変驚くような声が多かったのを覚えてる。
どこかの片田舎とかならここまで大きな騒ぎになる事はなかったが…彼がやらかした場所は府中だ…まぁお察しである。
「まぁ…昔の両親みたくて来たし、1週間はいるつもりだからよろしくな親父!母さん!」
「……………ふぅ〜」
しばらく…というかそれなりの期間は冬夜が面倒を見る事が確定した。普通なら子供だろうが容赦なく追い出してるのだが、アイそっくりの笑顔を見てしまってそれをしようにもしたくないという気持ちが強まる。
アイも承諾をしようか、反対の姿勢で行けばいいのか難しそうな顔をしてる。少年に見せてもらった多くの写真…なんなら冬夜とアイの結婚式の写真まで見せられてるのだから何も言えない。
「学生証も手に持ってるが名前のとこだけ分かりやすく細工されてやがる…13歳って…………いや待て」
「おい、俺は何歳だ?」
「ん?」
「親の年齢くらい知ってるだろう?」
「うん、三十路だけど?」
「お兄ちゃん…みそじって?」
「30歳のこと…30歳の総称だ。それだけじゃ分からないだろう」
「……30ちょい。30ちょいだよ〜」
「……なんではぐらかしてんだよ」
思わず冬夜も訳がわからないと言わんばかりの反応をするが………アイの顔を見た瞬間、思わず嫌な予感を覚えてた。
「おい、アイの年齢は?」
「!!」
「そっちのアイの年齢は?」
「………あー」
嫌な予感がひしひしと強くなる。目の前の少年がなんとも言えない表情を浮かべていた。
「あー……うん」
「29か…30…もしくは31なんだよねぇ。大丈夫だ!一応だけどキスしてくるのも誘ってるのも基本母さんからだから!」
「………おいおいおいおいなんだその不安な答えは!てか年齢差から見て間違いなくアイは……」
あまりにも不安すぎる答えと導き出した結論に思わず冬夜ですら本気で慌てている様子。アイはその反応に「ふーん?」と少しだけニヤニヤして耳元で一言。
「ふふっ…アイの勝ちね」
「それ俺は勝っても負けても世間様からロリコンって指さされるんだよなぁ」
アイは耳元で囁くと、そのまま彼の耳へチュウをした。
……彼の耳たぶをペロリ。思わず冬夜ですら顔を赤くしているがしゃあなし。やっちまったものはしょうがない…なんて言いたくないがなんとなくだが未来は見えていた。
幸せが続いてるならいい…かもしれないがやはり何か思うとこはある。
「親父は母さんが引退した後も母さんが手伝いというかサブトレーナーの役割として担当トレーナーを持たないウマ娘達に教えや適正などを解いていたけど、母さんが俺を産んでからはトレーナーとして第一線は退いて研究を中心にするようになったからな」
「……どういう事?」
「俺が産まれた時にこの肉体の気質が発覚したからな。こういう肉体って歴史において全くない事例すぎて、貴重サンプルという名の実験ネズミとして海外グループに狙われる可能性もあるからな」
「なるほどな。そうだな…ラインクラフトとケイエスミラクルの時もそうだった事を考えるなら…俺はそうするかもな」
「え、それはどういう」
「前者に関しては以前にも伝えたが、ウマ娘のウマソウルってのは最新の科学技術がある今ですら謎が多い。『昏睡していたラインクラフト』という存在は昏睡した原因を含めても稀に見る貴重なサンプル。謎多きウマソウルやウマ娘という存在の多数の事例の一部の解決に導いた」
「そんな貴重な存在を多くの研究所が欲しがらないわけはない」
「ラインクラフトはあくまで研究所が直々に日本政府によるバックをお願いしたのもあったからか俺の所属する研究所と入院先の病院のみでなんとかなったが、下手すら国内の数多の研究所どころか海外の多くの場所にて多くの実験をされていた可能性がある。海外はウマ娘の扱い…日本より雑だからな」
「俺の場合は後者の逆パターンに近い。俺自身の肉体やウマ娘のような耳や尻尾がない男がウマ娘に負けず劣らずの身体能力をしてるのもあったからか貴重なサンプルとしてのレベルも破格。それならば多くの研究所が欲しがる…そうなればあらゆる自由は失われる」
「「…………………」」
「だから親父がどうにかしてなければ俺は今頃こんな形の自由さはなかっただろうからな……ありがとよ」
「………………」
あらゆる意味で複雑な気持ちになる冬夜。己が知らぬ息子が自分が知らない未来の息子の人生を助けたと言われて実感が湧かない。
だが同時に、自分の未来が反面教師であった最初の育ての両親のような存在ではなく、真っ当にやっている事を知って少しだけ安堵すらある。
この不思議な感覚を感じながら冬夜は立ち上がる。
「やれやれ、理事長が居ないし、この時間帯なら緑の悪魔も居るだろう」
仕方がないと言わんばかりに冬夜はスマホを片手に電話をする。
『うむ!こちらは秋川やよいだ!』
「……は?なんで理事長が?」
「理事長?」
「……あーなるほど」
電話に出てきたのは…理事長?おかしい、現在理事長はアメリカに出張なのでトレセン学園にいるはずがない。たづなにかけたはずだ…何故理事長が?
『注目!音声案内に接続中だ!学生の人は1を、それ以外の方は2を押してほしい!』
「え?」
「なんだこの……なにこれ??」
「へぇ〜今のトレセンもやってるんだ」
スピーカーにして3人で聞いているが……察した。
「これ…音声案内。本人自動音声か?」
冬夜は思わずまじで言ってるのか?と言わんばかりに困惑している。理事長直々に音声案内に接続しようとする姿は間違いなく自由なトレセン学園とも言えるだろう。
いややかましいわ!!
「え…いやこれなに?」
「残念。番号が確認できない!最初からやり直してほしい!!」
「うるせぇ!!腹立つわ!!」
冬夜は、なんかムカついたのかアイが目の前にいるのに容赦なく地面にスマホを叩きつける。
「本人自動音声でやり直し。不快感ツインブーストで草」
「やかましいわ!」
「あの音声10年後も続いてるんだぜ?これが伝統だろ」
「そんな伝統いるか!!」
「母さん…それ」
「あら?この左足のこと?」
「…アンクレット。母さんの左足にずっとつけてる」
アイの左足につけている可愛らしいアンクレット。少年が見ているのは大人になったアイを彷彿としてるような物であり、話によると大人になったアイもアンクレットをつけてるようであり、結婚指輪と同じくらい大切なものだという。
「ふふふ…これはね。パパが有マの後に買ってくれたママの大切な物なのよ」
(…違和感ない。ちゃっかし自分のことママ呼びしてんなアイ)
アンクレットというのは右足は「恋人募集・独立」、左足は「恋人あり・既婚」のサインとされ、古くは古代エジプトなどから身を守るお守りとして使われていた。
そしてウマ娘にとってのアンクレットは命より大切とも言える足につけることで誰よりも信頼し、誰よりも愛してる人がいるということになる。
「…………ふふっ!」
幸せそうな顔をするアイに対して少年はニコニコとした顔で話しかけた。
「母さんって幼稚園くらいの時に小学生だった親父と初めてキスしたんだろ?」
「ん?ええそうよ!お兄ちゃん…いやパパの初めてはこのアイよ!」
「でも母さんって親父との初めてのキスに味を占めてからは、ことある事にキスしまくってたんだろ?母さん、親父とトレセンで再開した後に、今じゃ隠れずところ構わずキスしまくってるけど、当時は嬉しすぎて親父が寝てる時にこっそりキスしまくってたって聞いたぜ」
「!?」
「まぁでも、親父もキスされてる時、母さん視点で、父さんが寝てたとしても親父は実は起きてたなんてあったって聞いたぜ?」
「「!?!?」」
「おまっ!」
突如としての爆弾発言にアイどころか冬夜すら突如火種が飛んで知られたくない事がバレて思わず顔を赤くする。
「お……おおおおお兄ちゃん!?起きてたの?」
「…寝てた時は寝てたけど、起きてた時もある」
「……アイのキスどうだったの?」
「………優しくて、いい匂いがした」
「……………」
「……………」
そのままの勢いでアイは冬夜とキスをした。
「何息子の目の前でイチャイチャしてんだよ!!」
その後…某緑の悪魔相手に3時間の話し合いを終えて冬夜は少年……息子とぐったりしていた。
「おい、俺のせがれ。暇だ」
「いやもうまじで暇だな」
冬夜は息子を認知したのかせがれ呼びし、互いにだらけてる中で冬夜は死んだ顔をしながら立ち上がる。
「久しぶりに動かす」
ウマ娘…ボードゲーム部
次回!
ルラシ「よいしょ!」
3人「ロン!」
龍斗「大三元」
スティル「四暗刻 単騎」
ナカヤマ「国士無双」
ルラシ「……あ」
お兄ちゃん「普通だったら見ぐるみ剥がされてんぞ。まっ、詰んでるぞ」
次回 『ウマ娘 ボードゲーム部』