幼馴染のアーモンドアイが勝負を仕掛けて来た!! 作:グリザイユの牢獄
……………は?そんな声がある一室に響いた。
「新作のプロモーションとして結婚式のタキシードの服を着てくれ?」
「ええ、そうなんです」
「マジか」
「……大マジです」
少し嫌がる声の冬夜の目の前に居るのはとあるウマ娘の女性。
「アンタ…いくらだんてさんの妹だとしてもそれは無茶あんだろ」
「確かにそうなのですけど…これは冬夜さんにしか出来なくて!」
「……………マジ?」
「大マジです!!」
いっつもどころか世話になってばかり(たまに世話をする)だんてさんの妹なのだ。
彼の妹はコミケなどのイベントに行く時にメイク担当として基本的には会う事になるが彼女の本職は結婚関係の仕事…ウェディングプランナーであり、有名モデルなどのメイクなど行うヘアメイクアーティストでもあるのだ。
彼女はウマ娘にしては珍しく走ることに興味はなく、幼い頃から近所にあった結婚式場の花嫁を見て育ったとだんてさんからはよく話を聞いた。だからこその職なのだろう。
今回の依頼は単純…結婚式でのタキシードのモデルになってほしいとのこと。
「なんで…俺なんだよ」
「元々はある俳優さんを起用しようと考えていたけど…その社長と私が今いる所の社長がアイちゃんと冬夜くんのファンなのよ」
「話で意気投合して……この始末ってか?」
「うん」
「………なるほど」
「お願い!この企画自体が発案すれば大々的な企画になるの!私としてもかなり嬉しいし、兄さんも楽しみみたいだから」
「…マジかよ」
いつもの様子ならば「あ?誰がんなくだらん事やるかよふざけんな」とキレて他に回れと言ってるどころか安心沢相手ならば、一言も話さずに無視して退室してるだろうが今回は別だ。なぜなら引き受けて欲しいと頼まれた人物が人物なのだから断れないのだ。
なんだかんだで色々と恩があるのだ。
「……しゃあねぇか」
「本当!?受けてくれるの!?」
「それ相応の報酬は弾ませてくれ。こういうの俺は知らないしな」
「ありがとう!イベントの企画を行う日はこの日…日曜日ね!時間は11時ね!」
「11時…めっちゃ気がきくじゃんアンタ」
「冬夜くんの性格や生活の様子を聞いてたらこの時間しかないわよ。あっ、そうそう…この企画の事はアイさんには絶対内緒よ?」
「は?なんでだよ」
「いいからいいから」
「………はいはい」
このような感じで話が進んだのである。
今更ながらトレーナー室にて1人でこの事を思い出すとどんな顔してこの依頼を受けたんだろうと今も思ってはいるし、なんでアイには内緒なんだろうと思いながらもスマホの予定に記しておくとアイが部屋に入ってきた。
「アイ、おかえり」
「ふふっ、ただいま!あら?ねぇお兄ちゃんこの日って…」
「個人的な用事が出来たんだ。外せない仕事なんだ…日曜なのにごめんな」
「お兄ちゃんもなの?」
「え?」
「実はこの日、アイも外せない用事があるの。アイ達って似たもの同士なんだね」
「アイも用事か。しかたないか…(友達と遊ぶのか?まぁいいか)……アイ、眠い」
「もうお兄ちゃんたら、ふふっおいで?」
「…………ん」
この男…なんて甘えん坊なのだろう。アイの膝枕でぐっすりと眠った数日後…依頼を果たすために式場に1人で向かったのである。
「………で?なんでアンタもいんだよ」
「ふふふ、俺も暇なんだよね」
「だんてくんさ…仕事してるんだよな?」
「うん、スポンサーの元でライターしてるし配信もしてるし、一応仕事もしてるし実質社会人してるよ」
「なんで居るの?」
「いやぁ、妹が冬夜を呼んでほしいしサポートしてほしいって頼んできたんだよ。元々バックに俺の会社も関わってるから仲介役として関わってるんだよね」
「本命は?」
「妹から伝言…『兄さんが連れてこないと冬夜くんサボる可能性あるでしょ?来ないと企画が瓦解するから呼んできて』」
「オタサーの姫かよ俺は」
「実質姫だろお前は」
そんな事を言いながら目的の式場に向かい、2人の社長から説明を受けながら撮影用のメイクを施されていた。
「おいアンタ、これどのくらい時間かかるんだ?」
「最低でも…2時間くらいかな?」
「は?…どういう事だ」
「実は色々とやってほしい事があるからね、私らとしても様々なシチュエーションを考えてるから」
「…………………ふん」
メイクをされてる途中に受けた説明を聞いて思わず嫌そう!という顔をしている。なんだかんだ言いつつも仕事に対しては思うとこはあるのだ。
社長達やカメラマンが準備のため退出した後にだんて兄弟と冬夜だけの空間となり落ち着きを取り戻す。
「長そうだな。これ」
「社長も楽しみにしてたからな」
「冬夜くんごめんねぇ…今回は『色々』とやりたい事があるらしいから少し長引くの」
「なぁ、さっきから言ってる色々ってなんなんだ?」
「ふふっ、大丈夫よ。貴方なら喜ぶわ」
「…何言ってんだ?」
「写真撮影してりゃすぐ分かるさ、すぐな」
「………………」
そのままメイクをされた後に用意されたタキシードを着て多くのシチュエーションを想定した写真を撮られまくった。
花束を手に取ってる様子の写真だとか、何故かトランプ片手にプロオーバー…何故かタキシードを肩掛けしてる様子の写真だとか(なんで?)
途中でお前ら何を撮りたいんだ?と言いたくなった後にだんてさんの妹が肩をトントンとすると耳元で話し出す。
「冬夜くんにしてもらう事があるんだけど、ここからが本命よ」
「本命?」
その内容に思わず驚愕した。
「……新婦役の女性を連れてきたから一緒に撮影してほしいだと?」
「そう。次は新婦役の人と一緒よ」
「ふざけんじゃねぇよ!聞いてねぇよこちとら!」
「大丈夫よ。貴方の相手は、貴方にとっても彼女にとっても最高のパートナーなんだから!」
「……んだよそれ」
俺にとっての最高のパートナーはたった1人なんだよと思わず呟く彼を見てニコニコとしてる一同。
その様子に訝しみつつもその女性がいるという部屋に向かう。
(……こんな時にアイがいたらな)
そんな思いを心に思いながらもドアを開く。
「………………失礼」
「あら?こんにち…え?」
冬夜の目の先には1人のウェディングドレスを着た女性…ウマ娘がいたが彼女が振り返ったとき冬夜どころが相手が驚いた。
「なっ……アイ!」
「お兄ちゃん!?なんで…」
目の前にいたのは…今日用事があると言っていたアーモンドアイが目の前に居たのである。
…………………………………
それはこちらも数日前のことだ。
「ウェディングドレスですか?」
「うん、そうよ」
トレセンの会議室にだんてさんの妹がアイと話し合っていた。
「簡潔にいえばブライダルモデル…花嫁さんになる人達に向けての写真を撮るの」
「お嫁さん…」
「こちらの雑誌のようにアイちゃんも写真で形に残るのよ」
「あの、結婚前にウェディングドレスを着たらもう結婚できないって聞いたんですけど」
「あら?アイちゃんって冬夜くんといつか式をあげるからその予行練習として最高じゃない?」
「なっ!まだ式はあげないですよ!現役なので!!」
「………ふふっ」
「って………さっきのどういう事なんですか?」
「いずれ分かるわ、いずれね」
彼女に言われた事が気になったまま、トントン拍子で決まった最後に一言言われたのは「今回の事は冬夜くんには内緒ね?」という言葉が気になったまま写真撮影を行っていたが…今回新郎役とのツーショット撮影を行うという話に驚くもまさかの相手が冬夜などという事は聞いてなかったのだ。
………………………………………
「「……………」」
2人はちょっと気まずかった。まさか2人ともこのようなことになるとは伝えられてないどころか目の前にウェディングドレスとタキシード着たパートナーが居るんだから。だが同時に感じた事がある。
「………きれいだ」
「!」
「早くなったけど……綺麗だ。可愛い」
「っ //////ばか、お兄ちゃんも凄くかっこいいわよ」
「…………-……………………ありがとよ」
アイの言葉に思わず沈黙気味になるも少しだけ恥ずかしそうに手を繋ぐ。
「ふふふ…やっぱり成功したわね」
「………よく黙ってたな。これをするって言うなら俺は真面目に来てたぞ」
「あら?冬夜くんなら恥ずかしがって来ない可能性もあったからサプライズすることにしたのよ?兄さんが提案したんだからね?ふふふっ!」
「これが本当のサプライズだな!」
「三十路だろアンタ。ドヤ顔キモいやめろや」
「痛烈すぎんだろ!?!?」
思わずケッ!と言わんばかりの反応をした冬夜であるがニコニコとしてくっつくアイに対してもっと…こう!というカメラマン達がニコニコとしだす。
「チューでもいいよ!」
「………男ってエッチなんやな」
(ぶん殴るぞクソメガネども…)
カメラマンが楽しそうな反応に思わずキレそうになるも笑顔のままアイが抱きしめるとそのままほっぺにキスをする。
「っ!?!?!?」
「今だぞ今!!」
思わず真っ赤な反応をしてしまう冬夜と共に今だー!!と言わんばかりにカメラを撮影していくカメラマン。
するとアイは嬉しそうに冬夜の唇にキスをする。すると冬夜も男を見せたのかアイの腰をスッと支えるように抱きつくとノリノリになる。
………冬夜という男はむっつりなのかしら。
「むぅ!?!?ん………ん///」
「……………………!!」
「……ぷはっ!…ふふ、エヘヘ!ねえお兄ちゃん、貴方の瞳には、アイはどのように映ってるかしら」
「言わせるな………」
花束と共にチャペルの美しい輝きと共に彼らの薬指も光る。愛おしい笑みを浮かべるアイを見て冬夜も横顔を向けるが少し顔は赤い。
「まぁ、大胆!」
「冬夜…ガチか」
「…………結婚したいな」
「結婚は人生の墓場だぞ?」
カメラマンサイドはそんな事を言いながらさまざまなシチュエーションの写真を行っていく。
「はい!OK!!一旦終わりまーす!!」
お姫様抱っこをされてる冬夜の写真を撮り終えた後冬夜だけ呼ばれて別室へ連れられていく。
「あれ?アイは…」
「ちょーっと待ってね。ここからはおそらく誰もやった事がないだろう時間の始まりだから!」
「???」
カメラマンの発言に思わず首を傾げてると扉の向こうから「ちょっ!?テメェそれは尊厳破壊って言うんだよおいやめろ!これが本当の生き恥ウェディングじゃねぇか!!」などという声が聞こえてくる。
「………何をしてるのかしら」
そう思ってると1人…黒いウェディングドレスを着た女性が現れた。
茶髪ではあるが黄色のメッシが施され、黄色のカラーコンタクトと頭上には黒薔薇のカチューシャがつけられ男性が見れば全員振り向くほど美しい背丈の高い女性がいる。
例えるならそう……まさに『カミサマ』だ。
「え?もう1人女性……」
「あぁ、コイツな」
「アイ……見るな。これだけは見るな」
「冬夜」
「…………え?」
「分からないと思うけどこいつは冬夜だぞ?今からは新婦と新婦(女装)の撮影」
「やっぱり君の女装は似合う!有名なのは知っていたがまさかここまでとは!」
「女性の私が言うのもなんだけど…いやマジでエッロ」
「黙れ……黙れテメェら
目の前の女性の正体はなんと冬夜だった。
よくよく見てみると茶髪のウルフカットに黄色のメッシュではあるが髪色にほのかに冬夜の地毛の緑がうっすらと見えるだけでなくドレスに隠れてるが筋肉質な肉体。目つきの悪さは誰かを彷彿とさせるがそれでも姿だけ見れば完璧な女性だ。
「………おい、これモデルがモデルなせいで精神おかしくなりそうだ」
「そりゃあ…その姿のモデルはお前の推しだからな」
「……いいセンスしてるよ」
「お前も重度のシャニマスオタで良かったな」
「……誰がカミサマになるってかよ」
冬夜とだんてが話をしてるとそこにアイも駆け寄る。
「…悪い、靴があまり履き慣れてないやつだから歩きづらくてな」
「…………」
「…………アイ?」
「負けてないから…アイの方が可愛いから」
「俺が勝ってもこっちの方が哀しくなる勝ちだろうが」
そんな事を言いながら2人は撮影を開始する。
「お兄ちゃん!もっと足を大胆に開いて!そう!それよ!そうしたら男の人どころかアイ含めた全員メロメロになるわ!」
「勘弁してくれ…こちとら姿勢がきついんだよ」
何故かアイもノリノリでカメラマンの一員として途中から参戦していた。
……………………………………………
後日
あの日の写真がまとまった雑誌は発売前から配信やテレビ、そしてSNSなどで告知され、買った時に判明するスペシャル写真もあるという事で多くの人から話題を集めて、発売日に長蛇の列とたまに何度も再販されるほどには人気な写真集になった。
ある意味で新時代の結婚写真集としての第一歩だった。
特に1番話題になったのは告知にもなかった女装冬夜とアイのウェディングドレスのツーショット写真であり、冷静になると頭がおかしくなるが、女装冬夜の可愛さとアイの可愛さによって発売日前よりも大きな話題を呼んだ。
そしてこれは…冬夜の居る界隈仲間だけでなくトレセンでも話題を呼んだ。
「お前………すげぇな。一眼見ても冬夜だって分かんねぇぞ」
「なんで私よりあのトレーナーの方が可愛いの??」
「アイ…ブーはびっくりだぞ」
「負けた……冬夜に負けた」
「……ちょっとおハナさんがっくりすんなよ…アンタは今でもまだ若いだろ」
あらゆる意味でトレセンも大きな話題を呼んでいたが冬夜の愉快な仲間達の反応は酷かった。
「エッ…………」
「エッチなのはダメ!死刑!」
「男相手に反応したんだけどどうしてくれんの?」
「お前、推しが好きすぎてとうとうルカちゃんになったの??」
「奥さん居るのに自分が奥さんになってるのすげえわ」
「なんで男に欲情されなきゃいけねぇんだよ!」
アイがそういう目で見るなら殺意が湧くがまさかの自分がそういう目で見られてる事にお兄ちゃんは頭がおかしくなったという。
簡素な紹介
・冬夜
→まさかの旦那役と嫁役を行った男。しばらく街を歩いてると一部女性から嫉妬の目で見られた。雑誌はめちゃくちゃ人気だった。
花嫁のモデルは某シャニマスのルカちゃん
アイさん
→ある意味いい空気吸った乙女。旦那が花嫁姿で一緒にツーショットしてるのにしっかりやれてるのある意味完璧すぎる。
他の大半
→普通にいい空気吸ってるメンツ。そりゃあ売れる雑誌を完成させたんだから満足でしょうよ。