幼馴染のアーモンドアイが勝負を仕掛けて来た!! 作:グリザイユの牢獄
決してクレーンゲームの極意を教える物ではありません
「あ……はいはいなるほどなぁ」
お兄ちゃんは珍しく好戦的に見える瞳を向けていた。ゲームセンターは数回お兄ちゃんと行ったことがあるけど特にクレーンゲームで少しやりすぎて近場の所が出禁になってしまったためにあまり行けてなかった。
「流石に景品は取りすぎないようにしないとだめよ?」
「……真面目に景品次第」
「お兄ちゃんがクレーンゲームで遊びすぎて店員さんが泣かれていたんだけどね!!」
もう…すごいやり方で難しい台でもポンポン軽く取ってて店員さんが泣きついてたのを覚えてるわ…しかもどれくらい取れるか勝負しても全く勝てなかったし悔しかった。
動画で色々見たし、クレーンゲームで練習していたから今度こそ…
「あの時のリベンジを果たすわ!ゲームセンターで勝負よ!」
「いいけどどれを取るんだよ。菓子もだがウマ娘のフィギュアや人形もアイが居ないから取る必要…あっ」
お兄ちゃんが見たのはとあるフィギュア…お兄ちゃんが日頃見ている漫画のONE ○IECEやドラゴンボー○などのルフィや悟空といった王道のフィギュアをじっくり見つめている。
「欲しいの?」
「…」コクリ
…目を逸らして頷いてるけどお兄ちゃんって結構かわいいとこあるよね。確かにここら辺もウマ娘の景品の場所に負けず劣らず多くの人が居るし。
「良いわよ!なら私からやるわ!」
私が見つけたのは動画でも見つけた手前に落とし口に落とす台。簡潔に言うならば大台にフィギュアが立って設置されてるあの形ね!
(知ってるわよ?これは普通の人は真ん中から取ろうとするって…だけど私はそうは行かない)
「まずは真ん中…ではなくて手前の落とし台に乗っけるように落としていくわ!」
こういう形式の台は一回で落とせないのよ?だって真ん中を掴んでも力がなくなっちゃう設定だから。
だからこそまずは………手前の壁に乗せる!こうして掴んだアームは景品を掴み運んでいくがその反動で真下に落ちて壁に乗る。
───────はずだった
「嘘でしょ!?」
思わずスズカさんみたいな反応しちゃったけど当たり前よ!なんで反動から置かれていた場所より後ろにいってるわ!?
「どういう事?練習した時はこんな事…『その台はハズレよりだぞ?』っ!?お兄ちゃん!!」
ハズレよりだ…という言葉を片手にフィギュアを持っているお兄ちゃんはクレーンゲーム台を睨みつけるように言った。
「ネットサイトや動画とかで掴み方やコツ…とかの形で調べてたのだろうがそれにはもう一つ単純な条件がある」
「条件?」
「よく見ろ…」
お金を入れようとしたわたしの手を優しく掴みながらお兄ちゃんはアームに指を指す。
「アームがなんなの?」
「よく見ろ…先端を。汚れてるだろ?」
「あっ…」
よく見たらアームが結構汚れて埃がついてるしボロボロになっている。
「こういう汚れがついてると滑りやすいし力も出ねぇ。それ以前にこの台はラバーゴムじゃねぇからアーム弱すぎるんだよ。それにさっきのプレイを見ていたが壁に乗せようとしていただろ?」
「そうよ?それがいいって動画の人が」
「いやいや…それは壁が低い台だからこそ出来たやり方だ。よく見ろよ…めっちゃ高いぞ」
「…そういえば」
「普通はな……ねぇんだよ。そんな優良な台は」
「ひゃっ……!」
お兄ちゃんはやれやれと頭を抱えるように言うとわたしの手を優しく取って別の台にいく。いきなり手を繋ぐなんて…負けないわ!
わたしはすぐさまお兄ちゃんの腕を組む。
「おい、周りに人がいるんだぞ。」
「だからこそよ。それにお兄ちゃんの方から手を繋いできたんだから!幼い頃から手を繋いてどこまでも行ったんだからファンの視線なんて気にする事ないわよ!」
「……好きにしろ」
「え?お兄ちゃんがすごく優しい!?」
「俺はお前には基本的に寛大なんだが?」
「ふふっ、冗談よ」
そう言うとお兄ちゃんはとある台を見つけて100円を入れつつもわたしにデコピンしながら頭をわしゃわしゃする。痛くないし乱暴ではなく優しさを感じるわね。
「よく見ろ、この台ははっきり言って優良すぎる台だ。」
「どういうこと?」
「まず…この台は某ラウン○ワンで設置されてる設定にそっくりなやつだ」
確か小さい台の上にポツンと景品が置かれてる設定ね。トレセン学園付近はラ○ンドワンが近くにないから見たことはないわ。
「まずは滑り止めがない。これはまぁ分かりやすいが、次にクレーンゲームの機械は古いがラバーゴムのアームが最新式だ。アームを見てると経年劣化したものを取り替えたんだろう」
それだけではなく…お兄ちゃんはここのクレーンゲーム自体に簡単な台が少ないらしく理由としては、『買い物をしに来ている人』をターゲットとしているから。
クレーンゲームを遊びに来ている人よりも買い物ついでの人が多いので、景品を取りやすくする必要性が低いためにクソ台を設置してると言うが、爪の甘さが見られる所はどこだろうと存在するためにその隙を掠め取る。
大事なのは『小手先の取り方のコツ』ではなくて『優良台の選び方のスキル』が重要だとお兄ちゃんは言う。
確かに経験ならお兄ちゃんの方が圧倒的に上だと理解してるわ…
私は悔しい思いをしながらもお兄ちゃんが見つけた優良台で、わたしが学んだ取り方のコツで200円であっさりゲット。
「よし、これでクザンのフィギュアもゲット」
「むぅ〜悔しいわ!!」
「こういうクレーンゲームはコツじゃなくて経験さ」
「も、もう一回よ!!リベンジよ!!」
「…………欲しいものあまりないんだが」
「やだやだやだ!もう一回勝負やって!!」
「…………ふふっ。まぁいいか、アイにも2000円渡すから互いに2000円以内で勝負だ。クレーンゲームの台を見極めて好きなのを取ってこい。終わったらそこ集合な」
「やったわ!言質とったわよ!絶対負けないんだから!!」
結果
アイ
・お菓子6つ
・可愛らしいとある人形1つ
トレーナー
・フィギュア4つ
・お菓子2つ
・クッション1つ
「へぇ…同じ数か」
「これでドローね。だけど…ここまで来たし実質私の勝ちね!」
「まぁ…いいか。いや結構取ったな。大丈夫か…ゲーセンめちゃくちゃ広いし人間だってうじゃうじゃ居るから大丈夫か。つーか俺らの周り人多くない?気にしたくないのに視線がしんどいんだけど…」
「気にしなくていいわよ別に。じゃあまだまだ他のゲームで勝負するわ!例えばこれとかどう!?」
『太鼓の達人よ!!』
太鼓の達人…それは子供でも遊べる音ゲーと呼ばれる物の王道。2人で楽しめるのもあって恋人と遊ぶゲームとしても大人気なゲーム。だけどこのゲームの欠点としては『設置されてる場所が人の横行が激しい所にある』ことで唯一使える場所が大勢の人がかなり行き来する入り口の所にあるためにお兄ちゃんが嫌がると思っていたけど…
「……へぇ」
「あら?珍しく楽しそうね?人通りがかなり多い場所にあるわよ?」
「これはしゃあないだろ。そもそもこのゲーム自体は多くの人が遊んでるし、近くにアイを見てるファンも居る。人が多い少ないは関係ねぇよ」
さっきから思ってたけど同じような人たちが近くに居るのは分かるし、写真を撮ってる人もいたわね。お兄ちゃんも一周回って諦めてるみたい。
そんな事を思ってわたしはあらかじめ買っていた『マイバチ』を手に取る。
「へぇ…お前も持ってたのか」
「ふふん!」
お兄ちゃんがモニターで太鼓の達人を見ていた時に気になっちゃって練習していたの。そのおかげで私は有名曲のやわらか戦車の裏をフルコンボ出来るようになったのよ!
絶対負けないわよ……………ん?
「あれ…『お前も?』」
「まぁ…それでいいか」
するとお兄ちゃんはバッグから私以上に年季のある『マイバチ』を取り出すとお金を入れる。
「とりあえず先攻は俺でいいか?」
「え…いいけど」
なんか珍しく好戦的というか楽しそうというか…あら?もしかしてダメな引き金引いた気がするわ。そんな事を思っているとお兄ちゃんは曲を選んだ。
「悪いなアイ…俺の得意分野は」
「音ゲーだ」
「ちょっと!?それって…」
「たまにはかっこつけるのも必要だろ?」
お兄ちゃんが浮かべる悪魔のような微笑み。選曲されたのは動画でも見た最高難易度の曲。わたしですらこれはやばくない?と思わせた曲。それをお兄ちゃんは何食わぬ顔で選んだあげくに『よんばい』の設定。
「えっ速………」
譜面見えない…お兄ちゃんのバチの動きもまぁ人外すぎない??
何これ………もしかしてお兄ちゃん覚えて叩いてるの!?
「そりゃそうだけど」
「喋れる余裕あるんだ…」
「慣れてるからな」
「…………あっ。1個『可』が出てしまった」
「1個でも十分凄い方じゃない???」
ミス、ミス????を少し残念そうな顔をしてるけど……
(すごく楽しそう…)
まるでどこか無邪気な子供のような雰囲気を彷彿とするように…てか何この…何?あの意味分からない譜面。
「終わったか…フルコンボしたけど可が1つ出たか…」
お兄ちゃんは満足はしてなさそうだけど後ろで見ていた人が驚いたような反応をしてるこの温度差は尋常ではないわね。
「……やるか?まぁ……俺は見ておくが」
そんな事聞いてきたお兄ちゃんの表情はいつもと変わらない表情をしている。だけど何か…彼にしか分からない含みがあるような。
まぁ…そんな事いいかな。
「ん?どうした?バッグを持たせるなんて」
「ちょっと待ちなさい」
私は片手で財布を取り出すとそのまま100円を入れた。
「え?」
「簡単よ?勝負するのよお兄ちゃん!ほら!お兄ちゃんも隣に立って!ほーら」
「っ!!」
「いいから勝負っ!ほら!」
「……ふふっ、ふっふっふっふっ…あはは!」
「あれ?お兄ちゃん?」
「あぁなんでもないとも…俺がこのゲームをどれだけやり込んだと思っているん......だっ!」
お兄ちゃんはマイバチを持ち楽しそうに太鼓を叩く。そういえば…あまり見た事なかった。お兄ちゃんが心から笑っている姿。
なんだか…とても嬉しそう。
「さぁ!今回は私が選ぶわ!」
「憎悪はどうだ?そっちはむずかしいでもいい、俺は裏でもいいが」
「嫌よ!一緒の難易度じゃなきゃイヤ!!これよ!」
「トゥラタッタ……しかも裏か」
少し経って…
「ああああああああ!!!」
「甘いな…虹達人取りまくってる俺を舐めるな」
「もぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「いや牛か、俺の勝ちだ」
「はぁ......はぁ......も、もう一回!!」
「さっき俺が勝ったら終わりって約束しただろ…」
「やだやだやだ!もう一回やって!!」
「凄いな………いいけどさ」
「やわらか戦車はドンゲーマーが通る道だ。俺も通った」
「きぃぃぃぃぃぃ!!!!」
「フッ、次は俺が選ぶか」
「......もう一回!もう一回やらせて!!」
「いいとも…少しは満足させてくれ」
「これよ!『The Distance of Love』で勝負よ!」
「おまっ……お前!!」
「悔しい〜〜!でも楽しかったわ!」
「そうか。……………良かったよ」
結果としては全敗。だけど凄く楽しかった。今度勝負するなら絶対負けないし。…でも何食わぬ顔で幽玄を一緒に叩こうと提案した時は引いたわ。もちろん叩いたし腕もすごく痛かったけどね。
「高校の時に学校をブッチしてた時に遊んでたからな…暇つぶしみたいなものさ」
「その前に学校サボって遊んでたの?」
「そんなに楽しくなかったからな…」
「ふーん……あっ見て!」
わたしのスマホでウマッターを見ているとどうやらわたしとお兄ちゃんがデートしてる姿がトレンドになったらしい。
・このお兄ちゃん容赦なくて草
・悔しがってるアーモンドアイだけどお兄ちゃんも楽しそうです
・第六で遊んでる時の見てるアイちゃん可愛くて良き
・ちくわ大明神
・オデ…このトレーナー…笑ってるの…ハジメテ
……いやちくわって何よ?
「えー…見られてたのかよ」
「まぁまぁ…トレーナーとウマ娘の関係なんてよくある事だし」
そこら辺のタマモクロス先輩が本当に分かりやすいわね。確か兄弟の子達に自分のトレーナーを家族って紹介していたんだっけ?外堀を埋めるなんて強かですよね先輩。
「…あれ?」
私達が居るのは2階、だけど一階に大勢の人が居た。
「なんだありゃ…」
私達の目の先には大勢のテレビ局のカメラだけじゃない、たくさんの観客…そして彼ら達が囲むように見ているのはショッピングセンターの中で目立つようにあった透明な大きなカラオケボックス。
「あれ……あの人。待て!?嘘だろ!!」
お兄ちゃんも見つけた…彼が子供の頃から追いかけたあのウマ娘。
「みんなー!今日は来てくれてありがとう!!」
「ハイセイコー…ハイセイコーだと!?」
ハイセイコーがわたしたちの目の先に居た。
次回 「呪いと祝福の才能」
お兄ちゃん「オ…オレ、昔から…ハイセイコーの…ファンで」
ハイセイコー「嘘…貴方って子供の頃にずっとレース場の目の前で見てたあの子よね!」
お兄ちゃん「オボエテタンダ……」
ゴルシ「いやお前誰なんだよ?」
アイ(大ファンなんだお兄ちゃん…)
スピカ一同「アレ、さっきまで一緒にいた男と同一人物なのか?」
お兄ちゃん「これ…何?」
沖野「テレビ番組でな…知らないのか?95点以上で1万のカラオケチャレンジ」
お兄ちゃん「知らん…何それ怖い。今はハイセイコーの歌以外聴きたくない」
そんな時だった…
アイ「お兄ちゃんも歌ってよ!」
お兄ちゃん「え"?」
ゴルシ「どうせなら縛りプレイな!お前ウマ娘のライブ曲禁止で!」
お兄ちゃん「何……だと?」
お兄ちゃん(どうするどうする?俺はアニメ曲とゲーム曲とライブ 以外知らん!知らんぞ!!なんなら昔の歌すら知らんしポピュラーな歌なんてほぼ知らん!カラオケなんてそんなに歌った事ない…でもあのハイセイコーが応援してくれてるんだぞ!?そんな中で変な歌歌ったら俺は間違いなく死ぬ……)
お兄ちゃん「……いや何歌えばいいんだ?仮装狂騒曲??」
どうする兄ちゃん!