「そろそろソガラムには退場してもらうしかないな…」
ケンイチ兄さんとマロウさん、ユーパトリウム子爵が何やら物騒な話をし始めた。
「プリムラや従業員が世話になったみたいだしな」
話を聴いている限りだと、相変わらず嫌がらせがあるようだった。
「だがケンイチ殿…その私の所には騎士団とか…居なくて」
どうやら子爵は平和慣れの為に防衛費をあまり出していなかったようだ。
「はいはい、私がやりますよ」
ケンイチ兄さんが引き受ける事にしたようだ、
「お手柔らかに…」
ユーパトリウム子爵とマロウさんがお願いしていた。
「ケンイチ兄さん…暴れ過ぎないように」
俺は一応やり過ぎないようにと声だけは掛けた。
「さてと、行くか」
ケンイチ兄さんがユーパトリウム子爵夫妻とアネモネ、ベルをランクルに乗せた、勿論俺はハンヴィーだが。
「マロウさんとプリムラ義姉さんは俺のハンヴィーに乗ってください」
俺は2人を乗せるとケンイチ兄さんのランクルのあとに続いた。
「此処がソガラムの店だそうだ」
ケンイチ兄さんが無線機越しに教えてくれた。
「結構デカいな…」
「裏で結構やっているらしいぞ…あくどい事を」
俺はソガラムの店を見あげた。
「ちょっと行ってくる」
ケンイチ兄さんがランクルから降りるとソガラムの店に向かった。
「何でも買い取るのか?」
「はい」
店員と何かの買い取りの交渉をし始めていた。
「それならこいつを買い取ってくれ」
ケンイチ兄さんがそう言うと、アイテムBOXから洞窟蜘蛛を取り出した…ケンイチ兄さんだけは怒らせないようにしないと。
「お客さん!こんな物は困ります」
店員が慌てふためいて騒いでいた。
「どうした、何を騒いでいる」
ソガラムと思しき男が奥から出てきた。
「あんたがソガラムか?」
「そうだ、貴様は何者だ?」
ソガラムが殺気立っていた。
「俺か?俺はケンイチ、商人だ…妻の店が世話になったな」
「お前の女房なぞ知らん」
「市場で店を出していた」
「あの小娘か…」
ソガラムはようやく思い出したようだ。
「子爵まで担ぎ出しやがって、大人しくしてれば良いものを…お前達!」
犬や猫の獣人がぞろぞろと出てきた。
「フシャー!」
背後からベルが飛び出してくると獣人達を威嚇した。
「森猫様が…只人に!」
ベルをみて動揺している猫人へ、ケンイチ兄さんが撫でながら追い打ちをかけた。
「彼女は俺の家族だ…お前達にとって森猫は神の使いなんだろう…?もし戦って死んだら…どうなるのかな?地獄ゆき確定か?」
ケンイチ兄さんの脅しに、
「ソガラム…俺達は抜ける!地獄ゆきなんてまっぴらごめんだ!」
猫人達が我先に逃げ出した。
「これだから猫人は使えねえ…かまわねぇ!やっちまえ!」
眼帯をした犬人が他の犬人に命令を出した。
「ベル…まさか、あいつなのか?」
ケンイチ兄さんがベルの様子から何かに気が付いたようだった。
ミャレーやベルの働きで…あっさりと勝負はついた。
「てめぇ…これだけ殺してただで済むと…」
ソガラムはまだ気がついていない様子だった。
「その犬人が剣を抜いた時点でユーパトリウム子爵暗殺の罪が成立して、俺達はその討伐という任を任されたということになった」
ソガラムが愕然としたが、
「このクソ子爵!騙したな!?」
ユーパトリウム子爵にソガラムが噛みついた。
「これは異な事を、いつ手を組んだ?」
ユーパトリウム子爵が答えた…やはりユルユルに見えても貴族だった。
「そう云えば…少し前にダリアの街でシャガが討伐されたって聞いたけど、何でも鉄の魔獣を召喚する魔導師がって話だったよな」
「猫人や森猫もいたって…おいまさか…」
見物人達の会話が聞こえたのか、ソガラムが顔面蒼白になっていた。
「まさか…お前達なのか…何で」
「妻の店にちょっかいかけた奴がいてね…本当なら大人しくしていようと思ったのだがな」
ソガラムががっくりと膝をついた。
「手に持てるだけの荷物を持って街から出てゆくなら、私の暗殺未遂については不問とする」
ユーパトリウム子爵の寛大な処置に同意しソガラムは妻と娘を連れてその日の内に街から出ていった。